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第2章 S級冒険者炎王アッシュ
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「約束が違います!」
ぼくは、ゴーディにつかみかかる。
「うっせえな」
ゴーディはぼくの腹にパンチをくらわす。
「げぇ」
ぼくはその場で崩れ、腹の痛みにのたうつ。
「おまえは、俺たちの奴隷なんだよ」
そう言ってゴーディはぼくに唾をはきかける。
この海坊主は、C級冒険者クラン暁の虎のアタッカーだ。
ぼくのような駆け出し冒険者が敵うわけがない。
どうしてこんなことになったんだろう。
ぼくは田舎から冒険者になるために出てきた。
身体能力も高いほうなので、村では剣使いが上手いほうだった。
しかし、貧乏な村に生まれたぼくたちは15歳になると長男を除いて家を出ていかなければならない。
ほとんどの仲間は豪農や商人、工房に出稼ぎにでる。
でも、そんなことをしても村に戻ってくることはできず、村はいつまでたっても裕福にはならない。
それでぼくが選んだのが、冒険者になることだった。
S級冒険者にでもなれば、とんでもない収入を得ることができる。
小さな村ならいくつでも救うことができる。
もちろんS級冒険者になれるなんて一握りの者だけだ。
でも、あの時のぼくはそれができると思っていた。
ぼくは村の誰よりも速かったし強かったんだ。
ぼくはミリアと一緒に、大きな夢を抱いてこの町にやってきた。
でも、それは冒険者ギルドの試験で、粉々に打ち破られた。
ぼくは誰よりも弱かったし、教官相手になにもすることができなかった。
はじめて剣が怖い、戦うのが怖いと思った。
それでも、なんとか冒険者になることができた。
ミリアも同じ。
村では一番の魔法使いだったのに、ここでは平均以下の魔法しか使えなかった。
ぼくたちは井の中の蛙だった。
ただ、まだぼくたちの考えは甘かったんだ。
ぼくは自分のことを主人公だと思ってた。
自分がモブに過ぎないということがわかっていなかった。
本来なら地味なクエストをこなして、実力をつけていかなければならなかった。
そうすれば平凡な冒険者になれたのだろう。
でも、ぼくは自分を漫画や小説の主人公のように思っていた。
これから才能を見出して、二つ名を持つような冒険者になれるんだって。
そこにつけこむような輩がいるとは知らずに。
酒場でぼくはミリアとこれからのことを話していた。
とにかく、働かなければ明日の宿賃すらない。
「きみたちは新人冒険者だね」
後ろからかけられた声にぼくたちは振り向いたのだった。
ぼくは、ゴーディにつかみかかる。
「うっせえな」
ゴーディはぼくの腹にパンチをくらわす。
「げぇ」
ぼくはその場で崩れ、腹の痛みにのたうつ。
「おまえは、俺たちの奴隷なんだよ」
そう言ってゴーディはぼくに唾をはきかける。
この海坊主は、C級冒険者クラン暁の虎のアタッカーだ。
ぼくのような駆け出し冒険者が敵うわけがない。
どうしてこんなことになったんだろう。
ぼくは田舎から冒険者になるために出てきた。
身体能力も高いほうなので、村では剣使いが上手いほうだった。
しかし、貧乏な村に生まれたぼくたちは15歳になると長男を除いて家を出ていかなければならない。
ほとんどの仲間は豪農や商人、工房に出稼ぎにでる。
でも、そんなことをしても村に戻ってくることはできず、村はいつまでたっても裕福にはならない。
それでぼくが選んだのが、冒険者になることだった。
S級冒険者にでもなれば、とんでもない収入を得ることができる。
小さな村ならいくつでも救うことができる。
もちろんS級冒険者になれるなんて一握りの者だけだ。
でも、あの時のぼくはそれができると思っていた。
ぼくは村の誰よりも速かったし強かったんだ。
ぼくはミリアと一緒に、大きな夢を抱いてこの町にやってきた。
でも、それは冒険者ギルドの試験で、粉々に打ち破られた。
ぼくは誰よりも弱かったし、教官相手になにもすることができなかった。
はじめて剣が怖い、戦うのが怖いと思った。
それでも、なんとか冒険者になることができた。
ミリアも同じ。
村では一番の魔法使いだったのに、ここでは平均以下の魔法しか使えなかった。
ぼくたちは井の中の蛙だった。
ただ、まだぼくたちの考えは甘かったんだ。
ぼくは自分のことを主人公だと思ってた。
自分がモブに過ぎないということがわかっていなかった。
本来なら地味なクエストをこなして、実力をつけていかなければならなかった。
そうすれば平凡な冒険者になれたのだろう。
でも、ぼくは自分を漫画や小説の主人公のように思っていた。
これから才能を見出して、二つ名を持つような冒険者になれるんだって。
そこにつけこむような輩がいるとは知らずに。
酒場でぼくはミリアとこれからのことを話していた。
とにかく、働かなければ明日の宿賃すらない。
「きみたちは新人冒険者だね」
後ろからかけられた声にぼくたちは振り向いたのだった。
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