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第1章 猫ちゃん転生

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 みんな、だいぶ魔法が使えるようになった。
 さすが、氷結の魔猫と言われたお母さんの血を引いている。
 
 クロのおにいちゃんは、火の魔法が得意だ。
 おかあさんと正反対だけど、これはただ遺伝とかいうのじゃないみたい。
 もう、鳥のたまごくらいの大きさの火の玉を生み出している。
 
 シロのお姉ちゃんは、おかあさんと同じ。
 氷の槍を作って攻撃する。
 まだ、小さい氷のかけらしか作れないけど、おかあさんは天才だっていう。

 ミケのおねえちゃんは土、ハチワレのおにいちゃんは風だ。
 とにかく、みんなちゃんと魔法が使える。
 これは魔法猫のDNAに組み込まれたものらしい。

 それなのに…
 ぼくはなんの魔法も使えない。
 身体の中を力がぐるぐるするのはわかるんだけど。
 おかあさんが言うにはそれを外に出したらいいらしい。
 でも、外に出ていかない。
 もしかして、元の世界では普通の猫だったことが邪魔をしているのかな。
 もとの世界では、魔法なんかなくてもよかったし。
 ごはんは時間がきたら用意してくれてたし。
 ときどきおかあさんが忘れたときは、足元に行ってニャーニャーって鳴いたら用意してくれたし。

 おかあさんは悲しい目でぼくを見る。
 そう、ぼくがこの森では生きていけないって思っているんだ。
 でも、ぼくはみんなより高く跳ぶこともできるし、速く走ることもできる。
 ちゃんと鼠や虫を捕まえることができるんだ。
 だから、大丈夫。
 
 おにいちゃんやおねえちゃんもぼくに魔法の使い方を教えてくれる。
 でも、やっぱり力を外に出すことはできない。
 それでいいと思っていた。
 ぼくは元の世界みたいに平和な日々がずっとずっと続くと思っていたんだ。

「なんか、最近カラスが多いわね」
 なんか、ぼくたちのまわりでカラスを見かけることが多くなった。
 以前ならおかあさんがいたら逃げていくのに、遠くからぼくたちのことを見ている。
 
 だからといって特にかわることはなかった。
 獲物はたくさんいるし、とくに危険はない。
 ただ、おかあさんはすごく警戒していた。
 ワイバーンと出会ったのも、おかあさんの縄張りの中だったって。
 森の奥のほうでなにか動き始めているって。
 なにか、へんな感じがするって。
 そういう勘を大事にしなさいっていうんだ。
 動物は神様からそういう能力を与えてくれているらしい。
 
 そしてついにぼくたちの平和が破られるときがきたのだった。
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