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0章 ペガスの商人
カル・カボネ隊商
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商品には需要の価格弾力性というものがある。
価格が高ければ需要(人々が物を欲しいと思う意欲)は下がり、逆もまた然りである事は周知の事実だろう。パン1個を500Gで売ってもあまり売れないが、同じパンを100Gで売れば高い時よりも売れる事は当然のことだ。
だが、値段が変化する事によってどの程度需要が変化するのか、それが商品によって全く異なる事はあまり知られていない。
例えばキャンディなんかの嗜好品。大きな棒付きの奴を100Gで売り出したとすれば普通に売れるが、これが500Gになったらどうだろう。食べれなくても死ぬわけではないし、超甘党を置いておいておそらく買う人はほとんどいなくなるはずだ。
これがキャンディではなく水なら?この地では自力で手に入れられない綺麗な飲水を1L100円、勿論アホほど売れるだろう。じゃあもしこれが500円になったら?そう、それでも人々は買わざるを得ないのだ。なにせ買わなきゃ死ぬ可能性すらあるからだ。
こうした値段による需要の変化が大きい商品の性質を「価格弾力性が高い」、逆に需要の変化が少ない商品の性質を「価格弾力性が低い」という。
一般的に、菓子や本などの嗜好品や他で代替できる商品は価格弾力性が高く、食料や水などの食料品や生活必需品、気象性の高い宝石などの商品は価格弾力性が低い。
この価格弾力性を知った俺の商売は大盛り上がりだ。なんせ俺のキャラバン、カル・カボネ隊商はこの東大陸最大の行商人集団。大陸の方々に散らばった町の中にはウチからしか水や一部の食料を仕入れられない所もある。そのおかげでその町の中でだけ値段を2~3倍に釣り上げれて買わせることも可能なのだ。これが笑わずにいられるかってんだ。
特に今向かっているペガスは金の成る畑だ。穴掘るしか取り柄のない町は自給してる食料や水が少ないからそれさえ買い占めれば値段は俺らの思うまま。
今の所は様子を見て相場の2~3倍に抑えてるが、そろそろもっと値段を増やしても良い頃かな。
「ボス!10時の方向からボルボスの群!距離300!数50!」
荷車の転がる音と蹄の音に紛れて馬車の外からよく通る女性の声が聞こえてきた。これはキャラバンの運行を指揮する号令係の声だ。
おっと、皮算用する前にまずは確実にペガスに着かないとな。
俺は馬車の荷台から顔を出し、馬に乗って並走する号令係に尋ねる。
「避けれるか?」
「風魔法でかく乱して進路を多少変更すれば可能です!」
「ならばそれで。指示は任せる」
「承知しました!」
了解した号令係が首飾りのように下げた4種類の笛を一本ずつ吹いてそれぞれ独特な音色を奏でる。こうして左翼、右翼、予備、全体とそれぞれの部隊に指令を出していくのだ。
「左翼魔法部隊・10時方向・風魔法」
「右翼魔法部隊・2時方向・炎魔法」
「予備部隊・距離50・応戦」
「全隊・炎が指し示す方向」
号令係の指示の通り隊商が行動を起こしていく。右翼の騎馬隊が杖を一斉に振り上げて砂嵐を巻き起こす。群れが砂嵐に飲まれたのち、左翼の騎馬隊から鏑矢のように放たれた炎魔法に従ってキャラバンは進行方向を変えていった。
俺たちはカル・カボネ隊商。こうして訓練した護衛部隊を連れ、魔物がうろつく荒野の中を命がけで荷を運ぶ商人集団だ。
だからちょっとぐらい良い思いをしてもいいだろう?
その夕方、我らがカル・カボネ隊商はペガスに到着した。巨人の亡骸の下に町を作るなんざ趣味の悪い町だと思うが、金が手に入るなら何度でも来るさ。
さぁ、まずは買い占めだ。
「隊商各員、最初にやる事はわかるな!?貸付は一人100万Gまで!この町に停泊中は利子0で貸し出してやるが、町を出たら月3割!」
号令係が馬車から降りていく商人達を整列させて大声を張り上げる。
小さな町とはいえ、商品の買い占めにはそれなりに金が必要だ。それを一時的に利子なしで貸し出してやるのもカル・カボネ隊商だ。まぁ、取りっぱぐれはほとんどないからな。
「各品目の売出し価格は価格表を参照しろ!これが今回の価格表だ!」
ペガスの馬車の停泊場で号令係がそう言いながら価格表の写しを整列する商人達に手渡ししていく。それを見てざわつく商人達。それもそのはず、今回水をはじめとする必需品の価格は相場の4倍なのだから。今回はかなり強気な値段設定にしてみた。だが、売れるさ。以前は最大3倍に値上がった品目があってもほとんど売れた量は変わらなかった。やはり俺の価格弾力性の理論は正しいのだ。
「上納金は売上の10%!売上の未申告や上納金の未納があれば荒野のど真ん中に置き去りにするからな!以上、解散!」
さぁ、ここからが俺たちの本当の仕事だ。
価格が高ければ需要(人々が物を欲しいと思う意欲)は下がり、逆もまた然りである事は周知の事実だろう。パン1個を500Gで売ってもあまり売れないが、同じパンを100Gで売れば高い時よりも売れる事は当然のことだ。
だが、値段が変化する事によってどの程度需要が変化するのか、それが商品によって全く異なる事はあまり知られていない。
例えばキャンディなんかの嗜好品。大きな棒付きの奴を100Gで売り出したとすれば普通に売れるが、これが500Gになったらどうだろう。食べれなくても死ぬわけではないし、超甘党を置いておいておそらく買う人はほとんどいなくなるはずだ。
これがキャンディではなく水なら?この地では自力で手に入れられない綺麗な飲水を1L100円、勿論アホほど売れるだろう。じゃあもしこれが500円になったら?そう、それでも人々は買わざるを得ないのだ。なにせ買わなきゃ死ぬ可能性すらあるからだ。
こうした値段による需要の変化が大きい商品の性質を「価格弾力性が高い」、逆に需要の変化が少ない商品の性質を「価格弾力性が低い」という。
一般的に、菓子や本などの嗜好品や他で代替できる商品は価格弾力性が高く、食料や水などの食料品や生活必需品、気象性の高い宝石などの商品は価格弾力性が低い。
この価格弾力性を知った俺の商売は大盛り上がりだ。なんせ俺のキャラバン、カル・カボネ隊商はこの東大陸最大の行商人集団。大陸の方々に散らばった町の中にはウチからしか水や一部の食料を仕入れられない所もある。そのおかげでその町の中でだけ値段を2~3倍に釣り上げれて買わせることも可能なのだ。これが笑わずにいられるかってんだ。
特に今向かっているペガスは金の成る畑だ。穴掘るしか取り柄のない町は自給してる食料や水が少ないからそれさえ買い占めれば値段は俺らの思うまま。
今の所は様子を見て相場の2~3倍に抑えてるが、そろそろもっと値段を増やしても良い頃かな。
「ボス!10時の方向からボルボスの群!距離300!数50!」
荷車の転がる音と蹄の音に紛れて馬車の外からよく通る女性の声が聞こえてきた。これはキャラバンの運行を指揮する号令係の声だ。
おっと、皮算用する前にまずは確実にペガスに着かないとな。
俺は馬車の荷台から顔を出し、馬に乗って並走する号令係に尋ねる。
「避けれるか?」
「風魔法でかく乱して進路を多少変更すれば可能です!」
「ならばそれで。指示は任せる」
「承知しました!」
了解した号令係が首飾りのように下げた4種類の笛を一本ずつ吹いてそれぞれ独特な音色を奏でる。こうして左翼、右翼、予備、全体とそれぞれの部隊に指令を出していくのだ。
「左翼魔法部隊・10時方向・風魔法」
「右翼魔法部隊・2時方向・炎魔法」
「予備部隊・距離50・応戦」
「全隊・炎が指し示す方向」
号令係の指示の通り隊商が行動を起こしていく。右翼の騎馬隊が杖を一斉に振り上げて砂嵐を巻き起こす。群れが砂嵐に飲まれたのち、左翼の騎馬隊から鏑矢のように放たれた炎魔法に従ってキャラバンは進行方向を変えていった。
俺たちはカル・カボネ隊商。こうして訓練した護衛部隊を連れ、魔物がうろつく荒野の中を命がけで荷を運ぶ商人集団だ。
だからちょっとぐらい良い思いをしてもいいだろう?
その夕方、我らがカル・カボネ隊商はペガスに到着した。巨人の亡骸の下に町を作るなんざ趣味の悪い町だと思うが、金が手に入るなら何度でも来るさ。
さぁ、まずは買い占めだ。
「隊商各員、最初にやる事はわかるな!?貸付は一人100万Gまで!この町に停泊中は利子0で貸し出してやるが、町を出たら月3割!」
号令係が馬車から降りていく商人達を整列させて大声を張り上げる。
小さな町とはいえ、商品の買い占めにはそれなりに金が必要だ。それを一時的に利子なしで貸し出してやるのもカル・カボネ隊商だ。まぁ、取りっぱぐれはほとんどないからな。
「各品目の売出し価格は価格表を参照しろ!これが今回の価格表だ!」
ペガスの馬車の停泊場で号令係がそう言いながら価格表の写しを整列する商人達に手渡ししていく。それを見てざわつく商人達。それもそのはず、今回水をはじめとする必需品の価格は相場の4倍なのだから。今回はかなり強気な値段設定にしてみた。だが、売れるさ。以前は最大3倍に値上がった品目があってもほとんど売れた量は変わらなかった。やはり俺の価格弾力性の理論は正しいのだ。
「上納金は売上の10%!売上の未申告や上納金の未納があれば荒野のど真ん中に置き去りにするからな!以上、解散!」
さぁ、ここからが俺たちの本当の仕事だ。
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