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鉄と蒸気の国、マキナガルド
魔術と神術
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魔法には二種類ある。
一つはマナやエーテルといった元素とそれを取り込んだ人間の想像力をもって生み出される奇跡、魔術だ。魔術にはそれの核を成す元素が必要になるけど、それが世界にあるかないか、または使う人間が適合するかどうかで使用の可否不可避が変わる。
もう一つは神が世界の全ての理を書いた一冊の本「神の書」に書かれた神の奇跡、神術だ。神術はその呪文通りに言葉を発すれば体力やマナなんかは使わず、自然の摂理の如く決まった現象が発生する。ただ、神術はそれが書かれた神の書の世界でしか効果を発しない。
つまり、魔術がゲームで言う所のRPGにおける一般的な魔法。
そんで、神術がゲームで言う所のチートとかデバックコードだろうか。
「んー、なるほど?それでロキの使ってたあの魔法は?どっちなんだ?」
「あれは神術だ。このマキナガルドには魔術の素となる物質が無いからね」
へぇー……ってん?
「ロキ、それはおかしくないか?」
「鋭いね、ショート。言ってみなよ」
「アンタ、この世界についてある程度は知ってるみたいだけど、まだ来て数日だろ?なんでこの世界の住人が知らないような神の裏ワザなんて知ってるんだ?」
少しは頭が働くようだな、と言わんばかりの感心の表情。
「すまないが、これ以上はワケありでね。言うわけにはいかないんだ」
「えぇ?ここまで来て勿体ぶるの?」
ケチな野郎だなー。と思っていると、彼がしかめっ面で言い放って来た。
「ショート。これで神術の事が分かっただろう?」
「ああ、つまりは呪文さえ唱えられれば誰でも扱えるんだろ?俺にもできるじゃん」
「いいや。神術は神が使う言葉、この世界ではマキナ語で書かれている。24の音階で構成される他でも類を見ない難しい言語だ。君が生きていられる数日間だけじゃ到底習得できないよ」
うっ…確かに。ドレミファソラシドもまともに聞き取れない俺には…。
「いや、短い呪文くらいなら!」
「たとえ呪文だけ唱えられるようになってもその後は?さっきから私に通訳させてばかりで自分で聞き取ろうともしない君が、一体どうやって習得した魔法を売るんだい?他の異世界人は更に色んな言語を話す。たまたま最初に出会った私が同じ言葉を話せる人間だっただけで、どうやってこの過酷な世界を生きていくつもりなんだい?」
うっ…!
言葉の刃が深々と胸を抉る。
「その甘えと傲慢さ、君はどうやら余程平和な世界か、箱庭で育った貴族が王族のようだね。人に頼ってばかりで、いざと言う時は自分に力があると思ってる。兄上を見ているようで実に不快だよ」
ロキの兄というと…雷神トールか?いや、笑えない冗談を考えてる場合ではない。
彼の眉間に明確な憤りが彫り刻まれていた。長続きはせずにすぐにため息と共に怒気も吐き出されて行くが、依然として機嫌は悪そうだ。
「すまない、突然酷いこと言って。でも私達だって余裕を持って世界を旅してるわけではないんだ。ショートを抱えて旅できるような体力は無い」
頭が冷えて多少は暖かくなるも、現実に冷やされる彼の言葉。
「世界樹に案内しよう。ショートはもといた世界に戻った方がいい」
自分も丁度それを考えていた所だ。
前の世界で凡人してた俺が、異世界来た途端仲間ができて無双するなんて小説の中だけの話だったんだ。
実際はロクに友達もいなかった俺に仲間なんてできるはずもなく、大学の講義すら聞く気も無かった俺に生きていく術を教えてくれる人間もいるはずもない。
ふととある現世の漫画の言葉を思い出す。
「世間はお前のお母さんではない」
脳の奥でこだまする声を、今は黙って噛み締めるしかなかった。
一つはマナやエーテルといった元素とそれを取り込んだ人間の想像力をもって生み出される奇跡、魔術だ。魔術にはそれの核を成す元素が必要になるけど、それが世界にあるかないか、または使う人間が適合するかどうかで使用の可否不可避が変わる。
もう一つは神が世界の全ての理を書いた一冊の本「神の書」に書かれた神の奇跡、神術だ。神術はその呪文通りに言葉を発すれば体力やマナなんかは使わず、自然の摂理の如く決まった現象が発生する。ただ、神術はそれが書かれた神の書の世界でしか効果を発しない。
つまり、魔術がゲームで言う所のRPGにおける一般的な魔法。
そんで、神術がゲームで言う所のチートとかデバックコードだろうか。
「んー、なるほど?それでロキの使ってたあの魔法は?どっちなんだ?」
「あれは神術だ。このマキナガルドには魔術の素となる物質が無いからね」
へぇー……ってん?
「ロキ、それはおかしくないか?」
「鋭いね、ショート。言ってみなよ」
「アンタ、この世界についてある程度は知ってるみたいだけど、まだ来て数日だろ?なんでこの世界の住人が知らないような神の裏ワザなんて知ってるんだ?」
少しは頭が働くようだな、と言わんばかりの感心の表情。
「すまないが、これ以上はワケありでね。言うわけにはいかないんだ」
「えぇ?ここまで来て勿体ぶるの?」
ケチな野郎だなー。と思っていると、彼がしかめっ面で言い放って来た。
「ショート。これで神術の事が分かっただろう?」
「ああ、つまりは呪文さえ唱えられれば誰でも扱えるんだろ?俺にもできるじゃん」
「いいや。神術は神が使う言葉、この世界ではマキナ語で書かれている。24の音階で構成される他でも類を見ない難しい言語だ。君が生きていられる数日間だけじゃ到底習得できないよ」
うっ…確かに。ドレミファソラシドもまともに聞き取れない俺には…。
「いや、短い呪文くらいなら!」
「たとえ呪文だけ唱えられるようになってもその後は?さっきから私に通訳させてばかりで自分で聞き取ろうともしない君が、一体どうやって習得した魔法を売るんだい?他の異世界人は更に色んな言語を話す。たまたま最初に出会った私が同じ言葉を話せる人間だっただけで、どうやってこの過酷な世界を生きていくつもりなんだい?」
うっ…!
言葉の刃が深々と胸を抉る。
「その甘えと傲慢さ、君はどうやら余程平和な世界か、箱庭で育った貴族が王族のようだね。人に頼ってばかりで、いざと言う時は自分に力があると思ってる。兄上を見ているようで実に不快だよ」
ロキの兄というと…雷神トールか?いや、笑えない冗談を考えてる場合ではない。
彼の眉間に明確な憤りが彫り刻まれていた。長続きはせずにすぐにため息と共に怒気も吐き出されて行くが、依然として機嫌は悪そうだ。
「すまない、突然酷いこと言って。でも私達だって余裕を持って世界を旅してるわけではないんだ。ショートを抱えて旅できるような体力は無い」
頭が冷えて多少は暖かくなるも、現実に冷やされる彼の言葉。
「世界樹に案内しよう。ショートはもといた世界に戻った方がいい」
自分も丁度それを考えていた所だ。
前の世界で凡人してた俺が、異世界来た途端仲間ができて無双するなんて小説の中だけの話だったんだ。
実際はロクに友達もいなかった俺に仲間なんてできるはずもなく、大学の講義すら聞く気も無かった俺に生きていく術を教えてくれる人間もいるはずもない。
ふととある現世の漫画の言葉を思い出す。
「世間はお前のお母さんではない」
脳の奥でこだまする声を、今は黙って噛み締めるしかなかった。
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