心ゆくまで異世界観光

natuumi

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鉄と蒸気の国、マキナガルド

奇怪な機械の国、デウスダウン

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 その日はアメリカ経済史の講義が早めに終わった。正直スマホで動画を見ていたから話半分にも聞いてはいなかったが、教授がルーズベルトが嫌いな事はなんとなく分かっただけ偉いだろう。
 都内の大学で経済学部に入り早3年。学んだ事は酒の飲み方だけ。出席日数ギリギリで単位を落としたり落とさなかったりのクソ大学生を満喫中。
 ただ流石にする事がなくて最近は暇を持て余している。1年の頃に入ったアニ研は何時の間にか行かなくなって友達もいないし、学部では一人で受ける孤高な受講態度が見事に功を奏している。
 別に寂しいとかそんなメンヘラ女みたいな事呟かないけど…ただただ暇だ。
 ゲームも余りやらないし、ラノベは異世界転生ものが溢れかえり過ぎて面白くない、アニメは有名どころは大抵見尽くした。
 今やなんの楽しみもない。あるのは来年に控える就活への漠然とした嫌悪と、虚無感だけだ。

 なんか…俺もう死んでも良いかなぁ…。

 そんな時、ふと路地裏を見遣る。特に何の目的があるというわけではない。しかしこのまま直帰しても退屈は消えない。ならせめて少し寄り道でもしていくかと、そう思っただけで。
 こういう狭くて日の当たらない場所は結構好きだ。ポイ捨てされたゴミ、道脇に広がる吐瀉物の跡、フンを撒き散らす鳩。瀟洒な都会から追いやられた汚物の吹き溜りのような場所。そんな場所にいるとなんだかすごい落ち着く。それは俺も大学で行き場を失ったゴミ大学生だからか?

 下らない事を考えると、何時の間にか袋小路に行きついてしまった。
 おっと、道を間違えたか?いやしかし袋小路なんてこんな所にあったか?
 まぁいい、元来た道を戻れば…変なフラグ立てたけど大丈夫だよな?
 まさか大通りに戻るとそこは異世界にーなんて。

なってた。

 晴れていた空は何時の間にか立ち昇る蒸気で曇り薄暗くなっていた。道路の舗装から建物に至るまで全て鉄、鉄、鉄。人までもが金属と融合し、半機械生命体と化している。いやもしかしたら人間を模した機械かもしれない。
 道を走るのは蒸気を吹いて走る巨大な歯車。レールの上を転がっているが公共交通機関か何かだろうか。
 施設の外に飛び出した巨大な歯車を回すあの建物は何を作っているのだろうか。
 ここの人間は?身体の6割以上機械が覆っているが、何故なのだろうか。
 突然のスチームパンクの世界への転生に興奮が冷めやらない。現世で錆びて鈍くなった心の歯車が、潤滑油を得て動き始めたようだ。
 まずい、興奮し過ぎて息が荒くなってきた。
 呼吸が心なしかし辛い。
 なんか目も霞んで…
 いや、これは興奮のせいじゃない
 これは…

 しかいがまっくらになった
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