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第1章 初恋の彼は、私の運命の人じゃなかった
Ep.78 イケナイ場所
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「脱げ」
「…………へ?」
腕をひっ捕まれ放り込まれたバークレイズ伯爵家の一室。衣装部屋らしきそこの扉を閉めたルドルフさんの第一声に、思わず両手で自分を抱き締めながら一気に後ずさった。
「あっ、あの!協力して貰えるのは感謝していますしルドルフさんが色事好きなのも存じてますけど私には心に決めた人が居ますので!お礼は別の事でお願いしま……わっ!!!」
「馬鹿じゃないの、何勘違いしてんの!?その私服じゃ潜入なんて到底無理でしょ。俺は廊下で待つからこのドレスに着替えてっつってんの!大体手なんか出したらガイアスが君のブローチにかけた防御魔法で瞬殺だし、そうじゃなくたって君みたいな色気のないぼんやり娘なんてこっちから願い下げだね!」
頭から被せられたワインレッドのドレスにあたふたする私にそう捲し立てたルドルフさんがさっさと廊下に出ていった。数秒置いて、段々怒りが湧いてくる。
「いっ、色気なくて悪かったですね!そりゃ百戦錬磨の色男から見れば私なんてどうせお子ちゃまでしょうけど!いくら捜査の為とは言え人様のお屋敷に上がり込んでドレスを拝借するのは非常識だと思います!」
「ここは俺の実家だよ、さっさと着替えろこのド天然娘!」
「……あ」
そう言えばこの人の公式ネーム、ルドルフ・バークレイズでした。
うわぁ、落ち着かないなぁ……。
背中はV字に大きく開き、前は胸元に大きなハート型の穴が開いた大胆なドレス。着慣れてない上にスースーして、どうにも気持ちが落ち着かない。
あのあとドレスに着替えた私を無言で連れてきた酒場の長い隠し階段を下りながら、ルドルフさんがため息混じりに振り向いた。
「ただでさえ衣装に着られてるんだから、そんなソワソワしてたら尚更浮くよ」
「うぅ、そうは言っても恥ずかしいんだから仕方ないじゃないですか!それに今は誰も居ませんし……と言うか、結局どこに向かってるんです?」
こんなドレスに着替えさせたってことはまた夜会?それとも、特別な繋がりの貴族達が集まるサロンかしら?
そう首を傾げてたら、白地に金色の枠の仮面を渡された。促されるままそれを着けると、同じように仮面をつけたルドルフさんが重たい鉄扉に手をかける。
「言ったでしょ?あの資料を修復する魔法薬は特殊で、魔法関連に厳しいこの国では合法的な入手は不可能。だけど、この欲望渦巻く貴族社会で、皆が皆大人しく安全なものだけ手にして満足してる訳が無いでしょ?」
ギィ……と鈍い音を立てて僅かに扉が開く。流れ込んでくる強い光の濁流に目が眩んだ。
「どこの国にも一ヶ所くらいはあるもんさ。“イケナイ物”を取引してる場所がね」
ルドルフさんが勢いよく扉を開く。
日の光が届かない筈の地下な筈のそこの景色に、思わず言葉を失った。
どこの建物からも聞こえてくる大量のメダルがぶつかり合う音、漂うお酒の匂い、通りを煌びやかに彩る派手な色の電気石ネオン。これは、まさに……!
「ダーツだ、ポーカーだ、ルーレットだ……!これぞまさにベガス……!」
「……?ベガスってのはわかんないけど、まぁそう言うこと。様は裏カジノってやつさ。……っ!」
「ひゃっ!」
ガシャンと耳に当たった金属音に驚く。開いたままの扉の向こう側で、見張りらしき兵士二人が左右から互いの槍を✕印になるよう交差させたのだ。
「失礼、入場証のご提示願います」
「えっ!?」
入場証なんて聞いてない!でも、確かに違法なものばかりを扱うような地下都市にそんなすんなり入れるわけないよね。どうしよう……!
「あぁ、これは失礼。これでどう?」
パチンと指を鳴らしたルドルフさんの指先に、先ほどガイアの手紙に入っていた謎のコインが現れる。それを見た兵士二人が顔色を変え、ゆっくり槍を下ろした。
「これはこれは、大変失礼いたしました」
「どうぞ、泡沫の夢をお楽しみくださいませ」
振り返らず歩きだしたルドルフさんに続いて裏カジノへと踏み込む。背後で重たい鉄扉が閉まる音が聞こえた。
「あのコインはここへの入場証だったんですね。ルドルフさん何で知ってたんですか?」
「白竜騎士団うちは元々国内の治安改善も任務の一環だからね。ここには数年前から目をつけてたんだよ」
完全匿名性を売りに、特殊な入場証と仮面を持つ者のみが入ることを許される賭博場。確かに犯罪の温床になりそうな場所だもんね。
「ただご覧の通り中に居る人間は皆仮面で素性を隠しているし、そもそも身分が高い人間は自らここへは足を運ばない。実際に賭け事をしているのは婚姻関係等を理由に言いなりにされた下級貴族や、スラムから買われたゴロツキばかり。少しでも勘付かれたら尻尾だけ切られてはい、おしまいってワケ」
だからこそ調査は慎重に進めなければならず、これまではガイアとルドルフさんの二人のみで水面下での情報収集を進めていたのだそうだ。あ、あのゲーム見たことある!ルーレットだっけ?
「それがまさか自らここへ足を踏み入れることになるとはね……。潜入捜査は得られるものも多いけどリスクが高いんだよなぁ。どこに公爵家の子飼いが彷徨いてるかわかんないんだしその仮面絶対取らないでよ?潜入捜査なんだからね!」
はーいと返事をしつつも、初の景色についつい目移りしてしまう。
あっちは黒い蝶ネクタイをつけた人がお客さん相手にカードやメダルを配っている。速すぎて手付きが見えない!裏カジノとは言えスタッフはやっぱりプロなんだなぁ。
他にも道沿いで簡単な手品のタネ破りのような勝負をしている人たちなんかも居て興味津々だ。
「裏カジノって言っても端から見てる分には恐い雰囲気はないんですね。ルドルフさん、建物がいっぱいですけどまずはどこに行くんですか?」
「とりあえず軍資金をメダルに変えるから中心にある交換所に行く。はぐれないでよね」
「わっ!ちょっとルドルフさん!歩くの速いです!人も多くて追いかけにくいんですからもう少しゆっくり……!ルドルフさんってば……ひゃっ!!」
はぐれないように小走りで追いかけてたのに、急に立ち止まったルドルフさんの背中に激突してしまった。どうしたんですかと聞くより早く、建物と建物の間に引き込まれる。
「あのねぇ!潜入捜査だっつってんのにあんな往来で本名連呼するなんて馬鹿なの!?ちょっとは頭使いなよ!」
肩を震わせひと息で捲し立てたルドルフさんの言葉にハッと口を紡ぐ。
「わかったんなら気をつけてよね。どうしても呼びたいなら略名とかあだ名にして、くれぐれも自分の名前も周りに知られないように。それから……」
意味深にルドルフさんが視線を向けた先を見ると、漆黒に赤の飾りが入った仮面の二人組がさっきまで私達が居た辺りを彷徨いているところで。彼等がどうかしたのかと首を傾げば、ルドルフさんはトンと仮面の眉間辺りを指先で叩いた。
「あの二人の仮面、眉間に蝶の装飾がついてるでしょ?あいつらに見つかんないように気をつけて。アレ、キャンベル公爵家に買われた奴らの仮面だから」
「ーっ!!」
驚いてもう一度そちらを見たけれど、二人組は既に居なくなっていた。とりあえず見つからずに済んだのでホッと胸を撫で下ろす。
「ここは完全匿名性ではあるけど、同じ主人に買われた者同士が衝突するのを避ける為にある程度は仮面で判別出来るようになってるから。もし誰かと話す際は常に仮面を気にかけること」
「はい!」
それから……と振り返ったルドルフさんが、ビシッと私の鼻先に人差し指を突きつける。
「今見た通りどこに公爵家の手下が居るかわかんないし、あいつらの狙いは君なんだからね!俺だってバレたらヤバイんだから絶っっっ対に名前をこれ以上呼ばないでよ!!」
「はっ、はい!肝に銘じます!!」
わかればよろしい、と再び歩きだしたその背中を見ながら考える。
(あだ名……あだ名かぁ。いきなり言われてもそんな簡単には出てこないよね)
あだ名で呼び合うほどお互いのことも知らないし。と思ったところでふと思い出した。そうだ、確かゲームでは好感度があがるとヒロインちゃんが攻略対象を色々な愛称呼びが出来る仕様になってたな。
ゲームのアイシラちゃんはルドルフさんのことはなんて呼んでたっけ。確かえーと……そうだ!
「待ってください、るー君!」
ゴッと音を立てて、体勢を崩したルドルフさんが真横の壁に激突した。ぶつかった壁に体重を預けて額に手を当て、ずるずると地面にしゃがみこむ。
「なんっっっだよその間の抜けた呼び方は……!」
「えっ、ダメでしたか!?だってるー君が名前で呼んだら駄目だって言うから……」
「~~~っ!はぁぁぁ……、もう何でもいいや。好きに呼べば」
うんざりとした様子でそっけなく答えつつ、私は見てしまった。髪の隙間から覗くその耳が真っ赤になっているのを。
(なんか、意外と可愛いかも?)
ふふっと笑いながら、もう一度歩きだそうとしたその時。路地の反対側から何かが崩れ落ちるような音がした。悲鳴も聞こえたので何かあったんじゃないかと反射的に駆け寄ろうとして、曲がり角から出てきた別の人にぶつかってしまう。
「あいたたたた……!失礼致しました、前を見ていなく……て……!?」
見上げたその先の男性達の眉間に、銀色の蝶の装飾が煌めく。
チラッと後ろを見てみるも、はぐれてしまったようでるー君の姿はない。これってもしかして、早くも大ピンチなのでは無いですか?
~Ep.78 イケナイ場所~
「…………へ?」
腕をひっ捕まれ放り込まれたバークレイズ伯爵家の一室。衣装部屋らしきそこの扉を閉めたルドルフさんの第一声に、思わず両手で自分を抱き締めながら一気に後ずさった。
「あっ、あの!協力して貰えるのは感謝していますしルドルフさんが色事好きなのも存じてますけど私には心に決めた人が居ますので!お礼は別の事でお願いしま……わっ!!!」
「馬鹿じゃないの、何勘違いしてんの!?その私服じゃ潜入なんて到底無理でしょ。俺は廊下で待つからこのドレスに着替えてっつってんの!大体手なんか出したらガイアスが君のブローチにかけた防御魔法で瞬殺だし、そうじゃなくたって君みたいな色気のないぼんやり娘なんてこっちから願い下げだね!」
頭から被せられたワインレッドのドレスにあたふたする私にそう捲し立てたルドルフさんがさっさと廊下に出ていった。数秒置いて、段々怒りが湧いてくる。
「いっ、色気なくて悪かったですね!そりゃ百戦錬磨の色男から見れば私なんてどうせお子ちゃまでしょうけど!いくら捜査の為とは言え人様のお屋敷に上がり込んでドレスを拝借するのは非常識だと思います!」
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「……あ」
そう言えばこの人の公式ネーム、ルドルフ・バークレイズでした。
うわぁ、落ち着かないなぁ……。
背中はV字に大きく開き、前は胸元に大きなハート型の穴が開いた大胆なドレス。着慣れてない上にスースーして、どうにも気持ちが落ち着かない。
あのあとドレスに着替えた私を無言で連れてきた酒場の長い隠し階段を下りながら、ルドルフさんがため息混じりに振り向いた。
「ただでさえ衣装に着られてるんだから、そんなソワソワしてたら尚更浮くよ」
「うぅ、そうは言っても恥ずかしいんだから仕方ないじゃないですか!それに今は誰も居ませんし……と言うか、結局どこに向かってるんです?」
こんなドレスに着替えさせたってことはまた夜会?それとも、特別な繋がりの貴族達が集まるサロンかしら?
そう首を傾げてたら、白地に金色の枠の仮面を渡された。促されるままそれを着けると、同じように仮面をつけたルドルフさんが重たい鉄扉に手をかける。
「言ったでしょ?あの資料を修復する魔法薬は特殊で、魔法関連に厳しいこの国では合法的な入手は不可能。だけど、この欲望渦巻く貴族社会で、皆が皆大人しく安全なものだけ手にして満足してる訳が無いでしょ?」
ギィ……と鈍い音を立てて僅かに扉が開く。流れ込んでくる強い光の濁流に目が眩んだ。
「どこの国にも一ヶ所くらいはあるもんさ。“イケナイ物”を取引してる場所がね」
ルドルフさんが勢いよく扉を開く。
日の光が届かない筈の地下な筈のそこの景色に、思わず言葉を失った。
どこの建物からも聞こえてくる大量のメダルがぶつかり合う音、漂うお酒の匂い、通りを煌びやかに彩る派手な色の電気石ネオン。これは、まさに……!
「ダーツだ、ポーカーだ、ルーレットだ……!これぞまさにベガス……!」
「……?ベガスってのはわかんないけど、まぁそう言うこと。様は裏カジノってやつさ。……っ!」
「ひゃっ!」
ガシャンと耳に当たった金属音に驚く。開いたままの扉の向こう側で、見張りらしき兵士二人が左右から互いの槍を✕印になるよう交差させたのだ。
「失礼、入場証のご提示願います」
「えっ!?」
入場証なんて聞いてない!でも、確かに違法なものばかりを扱うような地下都市にそんなすんなり入れるわけないよね。どうしよう……!
「あぁ、これは失礼。これでどう?」
パチンと指を鳴らしたルドルフさんの指先に、先ほどガイアの手紙に入っていた謎のコインが現れる。それを見た兵士二人が顔色を変え、ゆっくり槍を下ろした。
「これはこれは、大変失礼いたしました」
「どうぞ、泡沫の夢をお楽しみくださいませ」
振り返らず歩きだしたルドルフさんに続いて裏カジノへと踏み込む。背後で重たい鉄扉が閉まる音が聞こえた。
「あのコインはここへの入場証だったんですね。ルドルフさん何で知ってたんですか?」
「白竜騎士団うちは元々国内の治安改善も任務の一環だからね。ここには数年前から目をつけてたんだよ」
完全匿名性を売りに、特殊な入場証と仮面を持つ者のみが入ることを許される賭博場。確かに犯罪の温床になりそうな場所だもんね。
「ただご覧の通り中に居る人間は皆仮面で素性を隠しているし、そもそも身分が高い人間は自らここへは足を運ばない。実際に賭け事をしているのは婚姻関係等を理由に言いなりにされた下級貴族や、スラムから買われたゴロツキばかり。少しでも勘付かれたら尻尾だけ切られてはい、おしまいってワケ」
だからこそ調査は慎重に進めなければならず、これまではガイアとルドルフさんの二人のみで水面下での情報収集を進めていたのだそうだ。あ、あのゲーム見たことある!ルーレットだっけ?
「それがまさか自らここへ足を踏み入れることになるとはね……。潜入捜査は得られるものも多いけどリスクが高いんだよなぁ。どこに公爵家の子飼いが彷徨いてるかわかんないんだしその仮面絶対取らないでよ?潜入捜査なんだからね!」
はーいと返事をしつつも、初の景色についつい目移りしてしまう。
あっちは黒い蝶ネクタイをつけた人がお客さん相手にカードやメダルを配っている。速すぎて手付きが見えない!裏カジノとは言えスタッフはやっぱりプロなんだなぁ。
他にも道沿いで簡単な手品のタネ破りのような勝負をしている人たちなんかも居て興味津々だ。
「裏カジノって言っても端から見てる分には恐い雰囲気はないんですね。ルドルフさん、建物がいっぱいですけどまずはどこに行くんですか?」
「とりあえず軍資金をメダルに変えるから中心にある交換所に行く。はぐれないでよね」
「わっ!ちょっとルドルフさん!歩くの速いです!人も多くて追いかけにくいんですからもう少しゆっくり……!ルドルフさんってば……ひゃっ!!」
はぐれないように小走りで追いかけてたのに、急に立ち止まったルドルフさんの背中に激突してしまった。どうしたんですかと聞くより早く、建物と建物の間に引き込まれる。
「あのねぇ!潜入捜査だっつってんのにあんな往来で本名連呼するなんて馬鹿なの!?ちょっとは頭使いなよ!」
肩を震わせひと息で捲し立てたルドルフさんの言葉にハッと口を紡ぐ。
「わかったんなら気をつけてよね。どうしても呼びたいなら略名とかあだ名にして、くれぐれも自分の名前も周りに知られないように。それから……」
意味深にルドルフさんが視線を向けた先を見ると、漆黒に赤の飾りが入った仮面の二人組がさっきまで私達が居た辺りを彷徨いているところで。彼等がどうかしたのかと首を傾げば、ルドルフさんはトンと仮面の眉間辺りを指先で叩いた。
「あの二人の仮面、眉間に蝶の装飾がついてるでしょ?あいつらに見つかんないように気をつけて。アレ、キャンベル公爵家に買われた奴らの仮面だから」
「ーっ!!」
驚いてもう一度そちらを見たけれど、二人組は既に居なくなっていた。とりあえず見つからずに済んだのでホッと胸を撫で下ろす。
「ここは完全匿名性ではあるけど、同じ主人に買われた者同士が衝突するのを避ける為にある程度は仮面で判別出来るようになってるから。もし誰かと話す際は常に仮面を気にかけること」
「はい!」
それから……と振り返ったルドルフさんが、ビシッと私の鼻先に人差し指を突きつける。
「今見た通りどこに公爵家の手下が居るかわかんないし、あいつらの狙いは君なんだからね!俺だってバレたらヤバイんだから絶っっっ対に名前をこれ以上呼ばないでよ!!」
「はっ、はい!肝に銘じます!!」
わかればよろしい、と再び歩きだしたその背中を見ながら考える。
(あだ名……あだ名かぁ。いきなり言われてもそんな簡単には出てこないよね)
あだ名で呼び合うほどお互いのことも知らないし。と思ったところでふと思い出した。そうだ、確かゲームでは好感度があがるとヒロインちゃんが攻略対象を色々な愛称呼びが出来る仕様になってたな。
ゲームのアイシラちゃんはルドルフさんのことはなんて呼んでたっけ。確かえーと……そうだ!
「待ってください、るー君!」
ゴッと音を立てて、体勢を崩したルドルフさんが真横の壁に激突した。ぶつかった壁に体重を預けて額に手を当て、ずるずると地面にしゃがみこむ。
「なんっっっだよその間の抜けた呼び方は……!」
「えっ、ダメでしたか!?だってるー君が名前で呼んだら駄目だって言うから……」
「~~~っ!はぁぁぁ……、もう何でもいいや。好きに呼べば」
うんざりとした様子でそっけなく答えつつ、私は見てしまった。髪の隙間から覗くその耳が真っ赤になっているのを。
(なんか、意外と可愛いかも?)
ふふっと笑いながら、もう一度歩きだそうとしたその時。路地の反対側から何かが崩れ落ちるような音がした。悲鳴も聞こえたので何かあったんじゃないかと反射的に駆け寄ろうとして、曲がり角から出てきた別の人にぶつかってしまう。
「あいたたたた……!失礼致しました、前を見ていなく……て……!?」
見上げたその先の男性達の眉間に、銀色の蝶の装飾が煌めく。
チラッと後ろを見てみるも、はぐれてしまったようでるー君の姿はない。これってもしかして、早くも大ピンチなのでは無いですか?
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