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小話「いたちごっこ」

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*本編とは直接関係の無い話なのでお読みなさらなかったとしても支障はないと思います。フィンリーとリッキーが8歳のときの話です。

   

   闇属性は謎の多い属性です。ほとんど何も分かっておらず、自由自在に使えたことのある魔術師は未だにいません。しかし水晶玉の判定には出ますので、あるにはあります。続いては聖属性。こちらも謎が深い属性です。聖属性は一見闇属性とは相反するもののように思われがちですが……
  「おいフィンリー!」
 大声にびっくりして反射で体が跳ねた。苦手な赤髪ばかが来た、めんどくさいから話しかけないで欲しい、声大きいし。周りの人が迷惑そうに此方を見たので申し訳ないと会釈した。
 「うるさいよリッキー、ここ図書館ね」
 「あー、ごめんごめん、あとお前その俺が話しかけるとびっくりするのやめろよ、俺がいじめてるみたいになるだろ」
 ……なんだこいつ!と言いかけたがこんなやつに言い返す時間は無駄だ。
 「……本題は?内容」
 聞くと嬉しそうに杖を取り出すリッキー、子供か?子供か。
 「魔法使えた!肉体強化!フィンリーはまだ使えないだろ!」
 「肉体強化って目に見えないじゃん」
 ドヤ顔にムカついたので指摘するとリッキーは唖然としてこっちを見た、ばかめ。
 「いや!きっと方法はあるはずだ!」
 また声が大きくなるリッキー。迷惑そうに此方を見る人。近付いてくる司書。最悪だ、最悪しかない。
 「すみません、出て行きますね」
 摘み出される前にそう笑顔で愛想良く挨拶してからリッキーを引っ張って外へ出た。
 
   王宮の中庭は人が少なくて5月の今は気温も丁度良く心休まる鳥のさえずりも聞こえてくる読書に最適な場所だ。全部うるさいやつが隣にいたら台無しだが。こいつ、唸り声までうるさいのか。
 「う"ーーーん」
 「帰っていい?」
 「だめだ、絶対魔法見せてやる、方法はあるけど、なあ」
 頑固だから帰してもらえないし頑固だから結局その方法にするんだろうなぁ。
 「もういいよなんでも、早くしてよ」
 「じゃあ手貸して」
 「やだよ」
 「だから迷ってたんだ、これしか方法無い」
 本当に怖いなんだこいつ、まあちょっと良いこと思い付いたから付き合っても良いかな。そう思いながら手を出す。
 「はい」
 「うわ、怖い、やめてくれよ」
 「は?」
 「お前が素直なときにはろくなことが無いんだよ、うーん、じゃあ今から手を握りながら俺に強化魔法かけるから痛くなったら言ってくれ、魔法は成功ってことで」
 脳筋な提案すぎないか?
 ある魔法を用意してから頷いて合図を出す。リッキーの瞳がいつも以上に爛々としているので身構える。
 「いくぞ、肉体強化」
 そう言うと確かに握る力が強くなって痛かった。
 「痛い、弱体魔法」
 「はあ?」
 思った通り上手くいって思った通りの拍子抜け顔をするからニンマリと笑ってしまった。するとリッキーはスンと真顔になってから唱えたのだ
 「肉体強化」
 「弱体魔法」
 「肉体強化!」
 「弱体魔法!!」
 「肉体強化!!!」
 「弱体魔法!!!!」
 「は、この辺で勘弁しといてやるよ、手が細すぎて折っちまうかもしれないからな」
 「弱体化しすぎると君の取り柄が無くなっちゃうからやめておくよ」
  周りを見ると誰もいなくなっていて鳥のさえずりも聞こえなくなっていた。
 
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