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十一
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「出来ましたよー」
「おー、何かいつもより豪華だな?今日も美味しそう、食べていい?」
「どうぞー。今日僕誕生日なんですよね、実は。それにクリスマスですよ」
「へぇ!それはめでたいな、誕生日おめでとう」
食べ始めるノア。今年は家に帰れないから誕生日は1人で過ごすことになるんだろうなと思っていたので嬉しい。
「ありがとうございます」
数日前、解答用紙と成績が返ってきて明日は終業式となる日のこと、いつも通りノアと屋上で昼休みを過ごしていた。
そのとき、ふとノアが
「アルは冬休み家に帰るのか?」
と聞いてきたので、何でだろうと思いつつ、
「家まで遠いので帰れないです。1人で寮に篭もります。どうしてですか?」
と若干悲しくなりながら本当のことを言ったら
「そうなのか!あー、えっと、冬休み中って食堂やってないじゃん?だから俺いつも渋々家帰ってたんだけどさ、アルは料理が上手いじゃん?」
「言う程でも無いですけど?」
「いや、上手いよ!だから冬休み中だけで良いから飯作ってくれ!頼む!」
そんな手を合わせて必死に頼むことでも無いのに。目まで瞑ってるし。面白いな、そんなの返事は決まってるのにな。
「良いですよ、僕も1人だと寂しいんで」
「やったー!ありがとな!」
そんな感じで冬休み中は毎日アルの部屋へ晩御飯を作りに行っている。朝も昼も食べて下さいと言ったら食べ過ぎると吐く、晩御飯だけで満腹、なんて言われたので腑に落ちないものの拒絶はされたくないので毎日栄養に気を付けながら晩御飯を作って一緒に食べている。勿論材料代はノアが払ってくれるのでそういう意味でも助かっている。
それで冬休みが始まって2日目である25日の今日、誕生日兼クリスマスなのでいつもより豪華なご飯を食べている今に至る。
まあパーティをするなんて言ってないので例年のようにケーキを食べる訳でもないしプレゼントが貰える訳でもないけどノアが祝ってくれて一緒にご飯を食べれていることにかなり喜んでる自分がいる。
「そう言えば、誕生日いつなんですか?」
「ん、誕生日?いつだっけな、うーん、あ!3月27日だな、多分」
「多分って……、誕生日会とかしないんですか」
「しないな、小さいときはしたけど。まあ祝われるような人間じゃないからな、俺出来損ないだし」
言われてから何となく悪いことをした気持ちになってどうしようと迷ってしまう。慰めるのも何か違う気がするしなぁ。
「そんな気にすんなって!ごめんな、言葉を選べば良かった」
「ケーキ、どんなのが好きですか?」
「うん?苺のやつかな、何で?」
「分かりました、沢山作るんで誕生日会しましょうね」
そう言うとノアはちょっと困ったような顔をして
「沢山って、1つで良いぞ、それにもう春休みじゃねーか。学年一位取るんだろ、約束忘れたのか?アルが学年一位取るまでの命だよどーせ」
この人は本当に酷い、言葉を選ぶことをさっき反省したばっかじゃないのか。わざと言ってるのかと思ってしまう程だ。
「そうですね、誕生日会しましょうね」
そう言っていつもよりも豪華なご飯を食べる。前より料理上手くなったかも。
その後お互いご飯を食べるのに集中していたのでひたすらご飯を食べる音だけが響いていたが、ふとノアが
「何かこれアレみたいだな、アレ」
と言って唸っていたのでちょっと考える、あ、
「同棲ですか?」「そう、介護!」
「「え?」」
介護って、介護かー……。そっか、そうかも。同棲って言ったのが恥ずかしすぎる、耳まで熱くて燃えそうだ。
「そっか、同棲かー、ごめんな介護なんて言って。ど、同棲、だねっ?」
ニヤニヤした顔でここぞとばかりに馬鹿にしてくるこの人は本当に酷い。酷すぎだ。可愛い女の子の照れ顔の真似無駄に上手いし。
「やっぱ、同棲とかってお互いの心遣いが大切だと思うんですよね。お皿、たまには自分の洗って下さい。僕のは後で洗うんで。どうやるか分かりますかー?」
「悪かったって、からかいすぎた。お前のも洗ってやるよ。皿の荒い方ぐらい分かるよ」
笑い過ぎだろ。まだ笑ってるし。全然悪いと思ってないだろ。
お皿を洗ってくれるのは助かるのでもう食べ終わってるノアを待たせないようにスピードを上げて食べる。美味しかった。
「じゃ、心遣いという名の皿洗いしてくるわ。今日も本勝手に読んで良いぞ」
「ありがとうございます」
そう言って図書館みたいなノアの部屋にある壁一面の本を眺める。小説から図鑑まで様々な本があり一生かかっても読み切れなさそうな量の本が綺麗に並んでいる。流石にノアも全部は読んでないそうだ。図書室や図書館で廃棄されそうになった本の中から気になった物をとりあえず持ってくるようにしてるらしい。あ、今日はこの小説にしようかな。
気になるタイトルの本を読む。
どれぐらい時間が経ったんだろう。物語に入り込んでしまっていてノアが隣で本を読んでたのも今気付いた。隣を見るとノアも気付いて、
「その本面白いよな、俺も好きだよ主人公のレオンがさー……」
「ネタバレやめてください!阻止!」
「あー悪いいつもの癖で」
瞬間記憶が得意だから内容もほぼ完璧に覚えているらしく、語り出して唐突にネタバレをされることが何回かあったので気配を察知して止めるのが上手くなった。
「お、もう22時だな、それ貸してやるよ。そろそろ帰って寝な。おやすみ」
「おやすみなさい」
いつも頑なに22時になると自室に帰されることにはもう慣れたが切り替えの速さには時々驚く。ずっと冬休みなら良いのにな。
公開予約の設定忘れてましたすみません!!!
「おー、何かいつもより豪華だな?今日も美味しそう、食べていい?」
「どうぞー。今日僕誕生日なんですよね、実は。それにクリスマスですよ」
「へぇ!それはめでたいな、誕生日おめでとう」
食べ始めるノア。今年は家に帰れないから誕生日は1人で過ごすことになるんだろうなと思っていたので嬉しい。
「ありがとうございます」
数日前、解答用紙と成績が返ってきて明日は終業式となる日のこと、いつも通りノアと屋上で昼休みを過ごしていた。
そのとき、ふとノアが
「アルは冬休み家に帰るのか?」
と聞いてきたので、何でだろうと思いつつ、
「家まで遠いので帰れないです。1人で寮に篭もります。どうしてですか?」
と若干悲しくなりながら本当のことを言ったら
「そうなのか!あー、えっと、冬休み中って食堂やってないじゃん?だから俺いつも渋々家帰ってたんだけどさ、アルは料理が上手いじゃん?」
「言う程でも無いですけど?」
「いや、上手いよ!だから冬休み中だけで良いから飯作ってくれ!頼む!」
そんな手を合わせて必死に頼むことでも無いのに。目まで瞑ってるし。面白いな、そんなの返事は決まってるのにな。
「良いですよ、僕も1人だと寂しいんで」
「やったー!ありがとな!」
そんな感じで冬休み中は毎日アルの部屋へ晩御飯を作りに行っている。朝も昼も食べて下さいと言ったら食べ過ぎると吐く、晩御飯だけで満腹、なんて言われたので腑に落ちないものの拒絶はされたくないので毎日栄養に気を付けながら晩御飯を作って一緒に食べている。勿論材料代はノアが払ってくれるのでそういう意味でも助かっている。
それで冬休みが始まって2日目である25日の今日、誕生日兼クリスマスなのでいつもより豪華なご飯を食べている今に至る。
まあパーティをするなんて言ってないので例年のようにケーキを食べる訳でもないしプレゼントが貰える訳でもないけどノアが祝ってくれて一緒にご飯を食べれていることにかなり喜んでる自分がいる。
「そう言えば、誕生日いつなんですか?」
「ん、誕生日?いつだっけな、うーん、あ!3月27日だな、多分」
「多分って……、誕生日会とかしないんですか」
「しないな、小さいときはしたけど。まあ祝われるような人間じゃないからな、俺出来損ないだし」
言われてから何となく悪いことをした気持ちになってどうしようと迷ってしまう。慰めるのも何か違う気がするしなぁ。
「そんな気にすんなって!ごめんな、言葉を選べば良かった」
「ケーキ、どんなのが好きですか?」
「うん?苺のやつかな、何で?」
「分かりました、沢山作るんで誕生日会しましょうね」
そう言うとノアはちょっと困ったような顔をして
「沢山って、1つで良いぞ、それにもう春休みじゃねーか。学年一位取るんだろ、約束忘れたのか?アルが学年一位取るまでの命だよどーせ」
この人は本当に酷い、言葉を選ぶことをさっき反省したばっかじゃないのか。わざと言ってるのかと思ってしまう程だ。
「そうですね、誕生日会しましょうね」
そう言っていつもよりも豪華なご飯を食べる。前より料理上手くなったかも。
その後お互いご飯を食べるのに集中していたのでひたすらご飯を食べる音だけが響いていたが、ふとノアが
「何かこれアレみたいだな、アレ」
と言って唸っていたのでちょっと考える、あ、
「同棲ですか?」「そう、介護!」
「「え?」」
介護って、介護かー……。そっか、そうかも。同棲って言ったのが恥ずかしすぎる、耳まで熱くて燃えそうだ。
「そっか、同棲かー、ごめんな介護なんて言って。ど、同棲、だねっ?」
ニヤニヤした顔でここぞとばかりに馬鹿にしてくるこの人は本当に酷い。酷すぎだ。可愛い女の子の照れ顔の真似無駄に上手いし。
「やっぱ、同棲とかってお互いの心遣いが大切だと思うんですよね。お皿、たまには自分の洗って下さい。僕のは後で洗うんで。どうやるか分かりますかー?」
「悪かったって、からかいすぎた。お前のも洗ってやるよ。皿の荒い方ぐらい分かるよ」
笑い過ぎだろ。まだ笑ってるし。全然悪いと思ってないだろ。
お皿を洗ってくれるのは助かるのでもう食べ終わってるノアを待たせないようにスピードを上げて食べる。美味しかった。
「じゃ、心遣いという名の皿洗いしてくるわ。今日も本勝手に読んで良いぞ」
「ありがとうございます」
そう言って図書館みたいなノアの部屋にある壁一面の本を眺める。小説から図鑑まで様々な本があり一生かかっても読み切れなさそうな量の本が綺麗に並んでいる。流石にノアも全部は読んでないそうだ。図書室や図書館で廃棄されそうになった本の中から気になった物をとりあえず持ってくるようにしてるらしい。あ、今日はこの小説にしようかな。
気になるタイトルの本を読む。
どれぐらい時間が経ったんだろう。物語に入り込んでしまっていてノアが隣で本を読んでたのも今気付いた。隣を見るとノアも気付いて、
「その本面白いよな、俺も好きだよ主人公のレオンがさー……」
「ネタバレやめてください!阻止!」
「あー悪いいつもの癖で」
瞬間記憶が得意だから内容もほぼ完璧に覚えているらしく、語り出して唐突にネタバレをされることが何回かあったので気配を察知して止めるのが上手くなった。
「お、もう22時だな、それ貸してやるよ。そろそろ帰って寝な。おやすみ」
「おやすみなさい」
いつも頑なに22時になると自室に帰されることにはもう慣れたが切り替えの速さには時々驚く。ずっと冬休みなら良いのにな。
公開予約の設定忘れてましたすみません!!!
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