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五
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今日は午前中から色々あった。しかも全部良いことだから不思議なこともあるもんだ。
屋上への階段を上りながらそんなことを思い出す。
まず一限目の数学、課題を提出したときに昨日授業をサボって課題も提出が遅れたことを謝ったら先生は笑顔で
「いつも提出してる方がすごいんだ、自分でも中々課題の量は多い方だと思ってるから。体調は大丈夫か? お前のことだからうっかり寝てたとかそういうのだろ、適度に休むのが大切だ。こんなことしか出来ないけどさ、よく眠れる飴あげるよ。今ここで食べな、取られたりしたら俺も悲しい。」
内緒話をするように小声でそう言われ飴を渡されたので皆から見えないように食べた。今食べたら授業中眠くなるのではと思ったが眠り始めたときに効果が出るらしく大丈夫らしい。
クラスメイトは訝しげな目を向けてきたが何も言われなかった。
それに購買でパンを買ったとき、ブレザーを貸してくれたお礼をしようと思って横にあったクッキーも一緒に店員に出したらすごく驚いて
「それ、あんたが食べるのかい?」
と聞かれ、あんたには売らないと言われたら嫌だなと思いながら内心構えて
「人に……お礼をしようと思って……」
と下を向くと
「へぇ!?お礼!?あんたがね……。何かやらかしたとかそういう訳では無いよね?それは良い意味だよね、友達が出来たのかい?ああ、決めつけてるわけじゃないよ」
「いや!やらかしたわけでは無いです!いややらかしたのか……?物を借りたのでそのお礼を……。友達、なんですかね、そんな感じです」
「あらま、おばちゃんほんとに嬉しいわ~!とっても嬉しい。こっから食堂が見えるじゃない? だいぶ前の話だけどあんたの髪、綺麗だから目立つのよ。それで惚けて見てたら急に同級生に水をかけられててすっごい心配でね……あらま混んで来ちゃた……、ちょっと嬉しすぎて!ごめんなさいねー!!!!でね、単刀直入に言うとこのクッキータダであげるわ!友達記念に!その子に今日も会うのかい? 楽しくご飯食べられるのが1番!パンもあげちゃう!さあ早く!もう行きな!」
「あ、ありがとうございます!」
「今後もご贔屓に~!あら~あんた髪切ったのかい?すっごい似合ってるね!……」
長くなってしまったことの申し訳なさに耐えられずお辞儀をして屋上に向かった。
初めてお金のやり取り以外をしたけど話術と客の捌き方がすごい。列は長蛇だけど。
さっきまで気圧されて放心してた。まだちょっとびっくりしてる頭のまま最上階に着き、扉を開ける。
「おー、今日は少し遅かったな? 来ないかと思った」
「また明日」がちゃんと来て心の中で安堵する。
「ごめんなさい、色々ありまして。これ、昨日ブレザー貸してくれたのでそのお礼のクッキーです。嫌いだったら僕が食べるので、大丈夫です。買おうとしたらおばちゃんがタダでくれました。」
「そんなん気にしなくてもいいのに!でも貰えるもんは貰っとくよ。どうせならアルも食べろ。あとパンも今食べていいぞ、後で食べようとか考えてそうだけどあんた忘れそうだからな」
「何でバレてんですか、忘れないですよ。でも今食べときます。クッキーありがとうございます。」
そう言って食べる。今日はちゃんと食べれて良かった。
「クッキーうま、てかはっや、パンの早食いで選手権出たら優勝出来るよ。多分」
「出ないですよ。そんなのパンだけの早食い選手権とかどこ……美味しい」
「だろ?美味しすぎてそれがもう最後の1つだった。ありがとな」
「美味しいですけど喋ってる途中に口の中に入れるのはやめてください、危ないですよ」
「大丈夫だったから大丈夫だ。じゃあ今日の授業始めるぞー。杖を出して昨日みたいに構えてみろ」
「授業って……。間違っては無いですけど。」
そう言いながら構える。杖を持って構えるのは2回目なのでとてもわくわくする。
「昨日よりロボット感が減ってて良い感じだな。魔力の流れはイメージ出来るか?昨日やった通りだ。」
魔力の流れをイメージ……。温かくて眠くなる感覚は思い出せるけど全身を流れる感覚が全然思い出せない。イメージって難しい。
「先生……全然……出来ません。向いてないんですかね僕……」
「おう、生徒よ。最初は誰でも初心者なんだから気にしなくてもいい。いずれは1人で出来なければ実践で使えないが、今日は手伝ってやろう」
どんな先生をモデルに喋ってるのか全く分からないが教えてくれるのは助かるので握られた手に集中する。
するとやがて温かい魔力の流れを感じ取り昨日みたいに眠くなってきた、でも昨日は気付いてなかった温かい魔力に混じって冷たい部分が混じっていることに違和感を覚える。
その瞬間相手が手を離して喋りだした。
「まあこんなもんだろ、寝るなよ。まだ感覚は忘れてないよな? 体の中に流れる魔力を杖を使って体の外に出すことを魔術を使うときにはイメージするんだ。んーそうだなさっき食べたクッキーを魔術を使って出せるか?」
喋りたいけど口を開けたら魔力が無くなってしまう気がして感覚も忘れてしまわないように言われた通りイメージをする。杖から外に魔力が通る感覚を感じて、クッキーになれと考えながら魔力を道に通すと2つクッキーが空中に出てきたので急いでキャッチする。
「お!出来たな、1つ貰うぜ、……しょっぱいなぁ。最初はこんなもんだろ、良かったなアル、ってお前泣いてんのか?」
「だって、魔術が使えたんだ……初めてだ……。わっほんとにクッキーしょっぱいですね。なんだこれっ」
嬉しくて涙が出てきた。元々しょっぱいクッキーが更にしょっぱかったが達成感で美味しく感じた。感動していると相手が扉の方を向いて手を振ってきた。
「今日の授業はこれで終わりだ、じゃあな」
それがあまりにも素っ気なくて、引き止めなきゃだめな気がして、気付いたら手首を掴んでた。
「ありがとうございました。また明日もよろしくお願いします。先生」
「おう」
「夜はしっかり寝るんですよ!今よく眠れるようにイメージしといたので!」
「分かってるよ。」
分かってるんだか分かってないような返事もすぐ離れてしまった手も悲しかったがここには来ないような気がしたので大丈夫だと思うことにした。
屋上への階段を上りながらそんなことを思い出す。
まず一限目の数学、課題を提出したときに昨日授業をサボって課題も提出が遅れたことを謝ったら先生は笑顔で
「いつも提出してる方がすごいんだ、自分でも中々課題の量は多い方だと思ってるから。体調は大丈夫か? お前のことだからうっかり寝てたとかそういうのだろ、適度に休むのが大切だ。こんなことしか出来ないけどさ、よく眠れる飴あげるよ。今ここで食べな、取られたりしたら俺も悲しい。」
内緒話をするように小声でそう言われ飴を渡されたので皆から見えないように食べた。今食べたら授業中眠くなるのではと思ったが眠り始めたときに効果が出るらしく大丈夫らしい。
クラスメイトは訝しげな目を向けてきたが何も言われなかった。
それに購買でパンを買ったとき、ブレザーを貸してくれたお礼をしようと思って横にあったクッキーも一緒に店員に出したらすごく驚いて
「それ、あんたが食べるのかい?」
と聞かれ、あんたには売らないと言われたら嫌だなと思いながら内心構えて
「人に……お礼をしようと思って……」
と下を向くと
「へぇ!?お礼!?あんたがね……。何かやらかしたとかそういう訳では無いよね?それは良い意味だよね、友達が出来たのかい?ああ、決めつけてるわけじゃないよ」
「いや!やらかしたわけでは無いです!いややらかしたのか……?物を借りたのでそのお礼を……。友達、なんですかね、そんな感じです」
「あらま、おばちゃんほんとに嬉しいわ~!とっても嬉しい。こっから食堂が見えるじゃない? だいぶ前の話だけどあんたの髪、綺麗だから目立つのよ。それで惚けて見てたら急に同級生に水をかけられててすっごい心配でね……あらま混んで来ちゃた……、ちょっと嬉しすぎて!ごめんなさいねー!!!!でね、単刀直入に言うとこのクッキータダであげるわ!友達記念に!その子に今日も会うのかい? 楽しくご飯食べられるのが1番!パンもあげちゃう!さあ早く!もう行きな!」
「あ、ありがとうございます!」
「今後もご贔屓に~!あら~あんた髪切ったのかい?すっごい似合ってるね!……」
長くなってしまったことの申し訳なさに耐えられずお辞儀をして屋上に向かった。
初めてお金のやり取り以外をしたけど話術と客の捌き方がすごい。列は長蛇だけど。
さっきまで気圧されて放心してた。まだちょっとびっくりしてる頭のまま最上階に着き、扉を開ける。
「おー、今日は少し遅かったな? 来ないかと思った」
「また明日」がちゃんと来て心の中で安堵する。
「ごめんなさい、色々ありまして。これ、昨日ブレザー貸してくれたのでそのお礼のクッキーです。嫌いだったら僕が食べるので、大丈夫です。買おうとしたらおばちゃんがタダでくれました。」
「そんなん気にしなくてもいいのに!でも貰えるもんは貰っとくよ。どうせならアルも食べろ。あとパンも今食べていいぞ、後で食べようとか考えてそうだけどあんた忘れそうだからな」
「何でバレてんですか、忘れないですよ。でも今食べときます。クッキーありがとうございます。」
そう言って食べる。今日はちゃんと食べれて良かった。
「クッキーうま、てかはっや、パンの早食いで選手権出たら優勝出来るよ。多分」
「出ないですよ。そんなのパンだけの早食い選手権とかどこ……美味しい」
「だろ?美味しすぎてそれがもう最後の1つだった。ありがとな」
「美味しいですけど喋ってる途中に口の中に入れるのはやめてください、危ないですよ」
「大丈夫だったから大丈夫だ。じゃあ今日の授業始めるぞー。杖を出して昨日みたいに構えてみろ」
「授業って……。間違っては無いですけど。」
そう言いながら構える。杖を持って構えるのは2回目なのでとてもわくわくする。
「昨日よりロボット感が減ってて良い感じだな。魔力の流れはイメージ出来るか?昨日やった通りだ。」
魔力の流れをイメージ……。温かくて眠くなる感覚は思い出せるけど全身を流れる感覚が全然思い出せない。イメージって難しい。
「先生……全然……出来ません。向いてないんですかね僕……」
「おう、生徒よ。最初は誰でも初心者なんだから気にしなくてもいい。いずれは1人で出来なければ実践で使えないが、今日は手伝ってやろう」
どんな先生をモデルに喋ってるのか全く分からないが教えてくれるのは助かるので握られた手に集中する。
するとやがて温かい魔力の流れを感じ取り昨日みたいに眠くなってきた、でも昨日は気付いてなかった温かい魔力に混じって冷たい部分が混じっていることに違和感を覚える。
その瞬間相手が手を離して喋りだした。
「まあこんなもんだろ、寝るなよ。まだ感覚は忘れてないよな? 体の中に流れる魔力を杖を使って体の外に出すことを魔術を使うときにはイメージするんだ。んーそうだなさっき食べたクッキーを魔術を使って出せるか?」
喋りたいけど口を開けたら魔力が無くなってしまう気がして感覚も忘れてしまわないように言われた通りイメージをする。杖から外に魔力が通る感覚を感じて、クッキーになれと考えながら魔力を道に通すと2つクッキーが空中に出てきたので急いでキャッチする。
「お!出来たな、1つ貰うぜ、……しょっぱいなぁ。最初はこんなもんだろ、良かったなアル、ってお前泣いてんのか?」
「だって、魔術が使えたんだ……初めてだ……。わっほんとにクッキーしょっぱいですね。なんだこれっ」
嬉しくて涙が出てきた。元々しょっぱいクッキーが更にしょっぱかったが達成感で美味しく感じた。感動していると相手が扉の方を向いて手を振ってきた。
「今日の授業はこれで終わりだ、じゃあな」
それがあまりにも素っ気なくて、引き止めなきゃだめな気がして、気付いたら手首を掴んでた。
「ありがとうございました。また明日もよろしくお願いします。先生」
「おう」
「夜はしっかり寝るんですよ!今よく眠れるようにイメージしといたので!」
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