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本編
引っ搔く野良猫
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とはいえ、実の所僕は少し焦っている。
彼がチョコレートではなく「チョコレートをくれる僕」に依存するように仕向けてるこの方法だけど、あんまり長く続けたくないからだ。急激に血糖値が上がるという事を何度も繰り返していると、血管が傷付きやすくなったり糖尿病を発症したり——、彼を”キズモノ”にしてしまう可能性が出てくる。最大限気を付けてはいるけど、絶対ではない。
それにもう1つ。僕らが一人の囚人を担当できる任期が基本的に一年で、彼に後任は居ない。つまりはそういう事だ。
だから次の段階として、彼を責める手段を増やすことにした。チョコレートも併用はするけど、最終的にはこっちだけにしていく。
「ねぇ山む」
「口を開くな異常者め」
いつものお粥の時間。顎の筋力を衰えさせないためなんだろう、木のスプーンをがじがじと噛んでいる山村くんに早速新しい提案をしようと声を掛けると、彼はじろりと僕を睨んでけんもほろろのお手本みたいに話を遮った。
お粥はすっかり空だけど、咀嚼運動で満腹中枢を刺激して少しでも満足感が得られるように一生懸命スプーンを齧る様子は健気でいじらしい。
「ふぅん……」
——けど、強がってツンツンするのは可愛いからいいとしてもそれはちょっといただけない。
今までは僕の言葉をしっかり受けて反発してくれたから、君の感情を知ることができたし楽しい会話だと思ってたけど、コミュケーションを元から拒否されるのは流石に許容できない。
聞くのも怖いだなんて、君らしくもない。
突き返された空の器と歯型だらけのスプーンが乗ったトレイを、いつもなら先に下げさせるけどそのまま横にスライドさせて、僕は改めて山村くんに視線を合わせた。きつい視線が睨み返してくる。
「……今まで僕はちゃぁんと君に提案と相談をして、君が納得した上で僕のすることを受け入れられるようにしてあげてたつもりなんだけど……そう、口を開かずやってもいいわけだ?」
二言はない? と念を押す。
様子の変わった僕に対して山村くんは出会ったばかりの頃のような警戒心を滲ませつつも、表面上は澄ました顔のまま「次はどれほど悪趣味な人体実験だろうな」と嘯いて鼻で笑って見せた。
つまり「勝手にしろ」ってことだね。
それならそれで助かる。これからすることを山村くんに受け入れさせるにはどう会話を持って行けばいいか悩んでたから。
最近は少し懐いて来たと思ってたのに、どんどん依存してる自分に気付いて怖くなって慌てて引っ掻いて来たってとこかな。まぁ、いい頃合いでもある。
「そうだね。今度はえっちな人体実験だよ。僕は君に痛いことはしたくないから、代わりに気持ちいいことで落としに行こうかなぁと思って。ここに来てからそんなこと出来なくて3日前にも夢精しちゃった山村くんには朗報だね」
「な……ッ!!」
言ってるそばからみるみるうちに頬がかぁっと赤らんで行く様子はとっても可愛かった。
僕が把握してないわけないでしょ、君の健康管理の全てを担ってるんだから。むしろこれも見越して君の健康状態を改善させてたんだから当然その辺りだってチェックする。方法は思春期の息子さんを持つお母さんが「あらあら」と思うやつと一緒。
山村くんは何か僕に言い返したいんだろうけど上手く言葉が出てこないみたいで、「な」とか「ど」とか零しながら頬を真っ赤に染めている。僕は背後の監視カメラがちゃんとその表情を残せるように少しだけ右にずれた。
「今日から早速始めよう。よかったねぇ、気が狂いかねない退屈な毎日とさよならできる」
すぐ恋しくなっちゃうかもしれないけどね。
彼がチョコレートではなく「チョコレートをくれる僕」に依存するように仕向けてるこの方法だけど、あんまり長く続けたくないからだ。急激に血糖値が上がるという事を何度も繰り返していると、血管が傷付きやすくなったり糖尿病を発症したり——、彼を”キズモノ”にしてしまう可能性が出てくる。最大限気を付けてはいるけど、絶対ではない。
それにもう1つ。僕らが一人の囚人を担当できる任期が基本的に一年で、彼に後任は居ない。つまりはそういう事だ。
だから次の段階として、彼を責める手段を増やすことにした。チョコレートも併用はするけど、最終的にはこっちだけにしていく。
「ねぇ山む」
「口を開くな異常者め」
いつものお粥の時間。顎の筋力を衰えさせないためなんだろう、木のスプーンをがじがじと噛んでいる山村くんに早速新しい提案をしようと声を掛けると、彼はじろりと僕を睨んでけんもほろろのお手本みたいに話を遮った。
お粥はすっかり空だけど、咀嚼運動で満腹中枢を刺激して少しでも満足感が得られるように一生懸命スプーンを齧る様子は健気でいじらしい。
「ふぅん……」
——けど、強がってツンツンするのは可愛いからいいとしてもそれはちょっといただけない。
今までは僕の言葉をしっかり受けて反発してくれたから、君の感情を知ることができたし楽しい会話だと思ってたけど、コミュケーションを元から拒否されるのは流石に許容できない。
聞くのも怖いだなんて、君らしくもない。
突き返された空の器と歯型だらけのスプーンが乗ったトレイを、いつもなら先に下げさせるけどそのまま横にスライドさせて、僕は改めて山村くんに視線を合わせた。きつい視線が睨み返してくる。
「……今まで僕はちゃぁんと君に提案と相談をして、君が納得した上で僕のすることを受け入れられるようにしてあげてたつもりなんだけど……そう、口を開かずやってもいいわけだ?」
二言はない? と念を押す。
様子の変わった僕に対して山村くんは出会ったばかりの頃のような警戒心を滲ませつつも、表面上は澄ました顔のまま「次はどれほど悪趣味な人体実験だろうな」と嘯いて鼻で笑って見せた。
つまり「勝手にしろ」ってことだね。
それならそれで助かる。これからすることを山村くんに受け入れさせるにはどう会話を持って行けばいいか悩んでたから。
最近は少し懐いて来たと思ってたのに、どんどん依存してる自分に気付いて怖くなって慌てて引っ掻いて来たってとこかな。まぁ、いい頃合いでもある。
「そうだね。今度はえっちな人体実験だよ。僕は君に痛いことはしたくないから、代わりに気持ちいいことで落としに行こうかなぁと思って。ここに来てからそんなこと出来なくて3日前にも夢精しちゃった山村くんには朗報だね」
「な……ッ!!」
言ってるそばからみるみるうちに頬がかぁっと赤らんで行く様子はとっても可愛かった。
僕が把握してないわけないでしょ、君の健康管理の全てを担ってるんだから。むしろこれも見越して君の健康状態を改善させてたんだから当然その辺りだってチェックする。方法は思春期の息子さんを持つお母さんが「あらあら」と思うやつと一緒。
山村くんは何か僕に言い返したいんだろうけど上手く言葉が出てこないみたいで、「な」とか「ど」とか零しながら頬を真っ赤に染めている。僕は背後の監視カメラがちゃんとその表情を残せるように少しだけ右にずれた。
「今日から早速始めよう。よかったねぇ、気が狂いかねない退屈な毎日とさよならできる」
すぐ恋しくなっちゃうかもしれないけどね。
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