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白いアザレアの花

68.約束

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 誘ってしまった。
 彼が僕の誕生日プレゼントのことを考えてくれてるのが嬉しくて、ちょっと舞い上がって、一番欲しいものを考えたら、それが同棲だった。これなら枕を貰わなくてもすむし。
 それに対して彼は恥ずかしそうに俯きながら「うん」って返事をくれた。
 初めて肌を合わせた時も至高の幸福を感じたけど、それとは別のカテゴリで僕は今最高に幸せだった。人目がなかったら押し倒してる。口だけで嫌がる薫くんを貪ってる。
 ずっと思ってたことではあるんだ。一緒に住みたいって。
 薫くんが仕事に出るのを見送って、僕は部屋で仕事をして、薫くんが帰ってくるのを出迎える。いってらっしゃいとキスをして、おかえりなさいとキスをして。
 一緒に食事をして、一緒にお酒を飲みながら映画を見たり、ゲームをしたり。時々は一緒にお風呂にも入りたい。それからちょっとイイことをして、一緒に寝る。毎日でもいいんだけど多分怒られるからそれは週末だけで我慢する。
 今は外食ばかりだけど、料理を覚えよう。薫くんの身体を僕が作るみたいで興奮する。
 彼の部屋からあのシリーズを全部持ってきて、僕の部屋のテレビボードに並べよう。1人の時に見返して、薫くんの横顔ばかり見てて頭に入ってこなかったストーリーをなぞるんだ。
 ゲームはデュオでVCなんて繋がず直接言い合いながら、2人でランクアップを目指そう。きっとすぐだ。
 彼がシャワーを浴びてる時に押し入ったらどんな顔をするだろう。逆もちょっと期待していいかな。知らない振りして、暫くほったらかしにしたら案外すぐかもしれない。薫くんは快楽に弱いから。
 引っ越しはいつする?マンションの契約はいつまで?家具とか、部屋の配置換えとか、一緒に考えよう。
 沢山話したいことが思い浮かんだけど、残念ながら彼のハンバーグが運ばれてきた。僕が頼んだカニクリームコロッケもすぐに来るだろう。もちろん薫くんに合わせての注文だ。
「帰ったら、ゆっくり話そう」
 そう言うと薫くんは赤い顔のまま小さく頷いた。
 その顔があんまりにも可愛くて、僕は初めて彼とこの店に来たことを思い出して店内を見回した。
 天井で回るシーリングファン。壁に掛けられた額縁には四葉のクローバーの押し花。談笑する人達。運ばれてきた料理に、結露したグラス。
 赤くなった薫くん。
 あの時の僕に伝えたい。君が好きになった人はやっぱり素敵な人で、こんなにも可愛い顔をするんだよって。
 今僕はとても幸せだ。多分これからもっと幸せになる。
 彼のことも幸せにしたい。僕で幸せになって欲しい。
 沢山話をしよう。君のことがもっと知りたい。全部知れても多分満足できない。新しい君を傍で見せて欲しい。
 これからのことを考えて、胸がきゅんきゅん疼いた。
 彼の誕生日には、彼の欲しいものと花束を贈ろう。
 腕一杯の、ブーゲンビリアの花束を。

 花言葉は、あなたしか見えない。
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