29 / 77
モモの花
29.プラタナス
しおりを挟む
昨日も昨日とて、狩りはうまくいかず。まぁ、わかってたんだけどね。熊が3頭くらい掛かったけど、もちろんリリースした。
目覚ましのアラームで起きて、伸びをして、通知のチェックをして、身体を解して。
主税からの連絡はきてなかった。
コーヒーを飲みながら、今日の予定を組み立てる。
洗濯、掃除。今日は夕方ごろから雨が降るらしいから布団は干さない。
シャワーを浴びたら丁度いい頃だろうから、家を出て飯食って、この前主税がしてくれたみたいにお土産を山ほど買っていこう。冷蔵庫テロだ。
主税から貰ったコーヒーゼリーは丁度いい弾力で、雑味のないスッキリとした味だった。2つ入ってたけどペロっと食べてしまった。ブラックのままと、コーヒーミルクをかけたやつと。
俺は何を持っていこう。思案しながら予定をこなしていく。
結構酒を飲むみたいだから、ちょっといいつまみでも買っていこうか。
主税もこうやって色々考えてくれたんだろうか。そうやって考えると、ちょっと嬉しくなった。
マンションが見えた頃、主税がエントランスの前で年嵩の女性と話をしているのが見えた。
数本の花を大事そうに持っている。一瞬おやっと思ったけど、エプロンをかけた明らかに仕事中ですという風体から、多分件の花屋だろうということが伺えた。結構常連らしい。
すぐにこちらに気付いた主税がにっこりと笑って、小さく手を振った。
俺もお土産の紙袋を持った手を振って同じように笑いかける。反対の手にはビニール袋が食い込んでいるから持ち上げられない。
花屋の女性は俺を見て一瞬驚いたような顔をして、そのまま主税の方を見た。
それからにんまりと笑って主税に一言二言声を掛けた。背中をとんとんと叩いて店に戻る。主税はここからでも分かるくらい赤くなっていた。何の話をしてたんだ。
「おまたせ。わざわざ降りてきてくれてありがとう」
相対して声を掛けるとすぐに主税は俺のビニール袋を奪って恥ずかしそうにはにかんだ。
「いや、部屋の花が、枯れちゃったから」
そう言って手に持った花を見せてくる。あくまで偶然と言いたいらしい。そういう気遣いができる奴だとは思わなかった。
エレベーターに乗り込んで、声を掛ける。
「結構常連なんだね。それはなんて花?」
あとなんの話してたのかも聞きたかったけど、それは野暮だろう。
主税は顔を赤くしてふらふらと目線を泳がせてから、小さく囁くように答えた。
「ルピナスって、言うんだって」
なんで花の名前を言うだけで照れてるんだコイツは。
部屋に案内されて、唖然とした。
「ひっろ…」
外観からして結構いい部屋住んでんだろうなとは思ったけど、予想を超えていた。え、何㎡あるの?家賃いくら?
しかも部屋にベッドがないってことは少なくとももう一部屋あるってことだ。
言葉を失って立ち尽くしている俺を見て主税は困ったように眉尻を下げた。
「ほとんどのスペース使ってないから、もっと狭くてもいいんだけどね…」
キッチンのカウンターに俺から奪った荷物を置いて、すぐに花を解き始める。
俺は部屋を無遠慮にぐるぐると部屋を見回してしまった。
奥にディスプレイが3台くらい置いてあるデスクがある。あそこで仕事をしているらしい。あたりまえだけど本格的で、ちょっとカッコイイとか思ってしまった。
主税は伏せてあった花瓶に花を活けて、カウンターに置いてから不意に「ごめん」と言った。
「案内もせずに。ソファ、座って」
いや、部屋に圧倒されてたから全然いいです。
目覚ましのアラームで起きて、伸びをして、通知のチェックをして、身体を解して。
主税からの連絡はきてなかった。
コーヒーを飲みながら、今日の予定を組み立てる。
洗濯、掃除。今日は夕方ごろから雨が降るらしいから布団は干さない。
シャワーを浴びたら丁度いい頃だろうから、家を出て飯食って、この前主税がしてくれたみたいにお土産を山ほど買っていこう。冷蔵庫テロだ。
主税から貰ったコーヒーゼリーは丁度いい弾力で、雑味のないスッキリとした味だった。2つ入ってたけどペロっと食べてしまった。ブラックのままと、コーヒーミルクをかけたやつと。
俺は何を持っていこう。思案しながら予定をこなしていく。
結構酒を飲むみたいだから、ちょっといいつまみでも買っていこうか。
主税もこうやって色々考えてくれたんだろうか。そうやって考えると、ちょっと嬉しくなった。
マンションが見えた頃、主税がエントランスの前で年嵩の女性と話をしているのが見えた。
数本の花を大事そうに持っている。一瞬おやっと思ったけど、エプロンをかけた明らかに仕事中ですという風体から、多分件の花屋だろうということが伺えた。結構常連らしい。
すぐにこちらに気付いた主税がにっこりと笑って、小さく手を振った。
俺もお土産の紙袋を持った手を振って同じように笑いかける。反対の手にはビニール袋が食い込んでいるから持ち上げられない。
花屋の女性は俺を見て一瞬驚いたような顔をして、そのまま主税の方を見た。
それからにんまりと笑って主税に一言二言声を掛けた。背中をとんとんと叩いて店に戻る。主税はここからでも分かるくらい赤くなっていた。何の話をしてたんだ。
「おまたせ。わざわざ降りてきてくれてありがとう」
相対して声を掛けるとすぐに主税は俺のビニール袋を奪って恥ずかしそうにはにかんだ。
「いや、部屋の花が、枯れちゃったから」
そう言って手に持った花を見せてくる。あくまで偶然と言いたいらしい。そういう気遣いができる奴だとは思わなかった。
エレベーターに乗り込んで、声を掛ける。
「結構常連なんだね。それはなんて花?」
あとなんの話してたのかも聞きたかったけど、それは野暮だろう。
主税は顔を赤くしてふらふらと目線を泳がせてから、小さく囁くように答えた。
「ルピナスって、言うんだって」
なんで花の名前を言うだけで照れてるんだコイツは。
部屋に案内されて、唖然とした。
「ひっろ…」
外観からして結構いい部屋住んでんだろうなとは思ったけど、予想を超えていた。え、何㎡あるの?家賃いくら?
しかも部屋にベッドがないってことは少なくとももう一部屋あるってことだ。
言葉を失って立ち尽くしている俺を見て主税は困ったように眉尻を下げた。
「ほとんどのスペース使ってないから、もっと狭くてもいいんだけどね…」
キッチンのカウンターに俺から奪った荷物を置いて、すぐに花を解き始める。
俺は部屋を無遠慮にぐるぐると部屋を見回してしまった。
奥にディスプレイが3台くらい置いてあるデスクがある。あそこで仕事をしているらしい。あたりまえだけど本格的で、ちょっとカッコイイとか思ってしまった。
主税は伏せてあった花瓶に花を活けて、カウンターに置いてから不意に「ごめん」と言った。
「案内もせずに。ソファ、座って」
いや、部屋に圧倒されてたから全然いいです。
10
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
視線の先
茉莉花 香乃
BL
放課後、僕はあいつに声をかけられた。
「セーラー服着た写真撮らせて?」
……からかわれてるんだ…そう思ったけど…あいつは本気だった
ハッピーエンド
他サイトにも公開しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
サンタからの贈り物
未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。
※別小説のセルフリメイクです。
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる