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アカンサスの花
23.ユキヤナギ
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しまった。
思わず好きな映画を進めてしまったけど、この映画じゃいい雰囲気に持っていけないぞ。
丈夫な盾を持って戦うヒーローのルーツになるストーリー。メインは主人公がそうなるまでの経緯と、歴史に取り残された彼の葛藤。ちょっとだけロマンスはあるけど、実らない。
この映画でくっついて目を覗き込んだりなんかしたらそれはただの空気読めない奴だ。
でも勧めてしまったんだから今更他の映画をなんていうのも変だし、諦めてディスクをプレイヤー代わりのゲーム機に入れた。
まぁ、時間は沢山あるんだから2本目を見てもいいか。
映画が始まって、ビールを飲む。半分くらいに減った主税のグラスにビールを注ぐと、主税もほんの少し口角を上げて、同じように俺のグラスにビールを注いでくれた。
お互い、既に1本空けてしまっている。でも主税もまだ余裕がありそうだ。このグラスが空になるころにおかわりを取りに行こう。
プロローグの場面で主税が真面目な顔して箸でポテトチップスを食べるもんだから、我慢できずに顔を背けて「くっ」と笑ってしまった。盗み見た主税は申し訳なさそうな顔でポテトチップスを咀嚼していた。
映画が終わるまでに、2人とももう1本ずつビールを空けた。まだまだ飲めるけど、ちょっといい気分。主税はどうだろう。べろべろになられたら困るな。客用の布団なんかないから、シングルベットに二人なんて勘弁しろよ。合意と取られたらめんどくさい。
ポテトチップスも二人で食べた。俺はもう何度も見たことある映画だからそっちのけで存分にニヤニヤさせてもらった。その度にきょどっとする主税の表情がまたおかしくて。
「凄い、イメージと全然違った」
主税が最後の一口のビールを飲んで呟いた。口調も顔色もまだ平気そうだ。
「どんな風に思ってたの?あ、まだ飲む?」
時計を見上げたけど、もう1本くらい見ても全然余裕な時間。お互いが準備していたから酒もまだまだある。正直、減らして貰わないと冷蔵庫に他のものが入らない。
主税が「うん」と頷いたのを確認してソファから立ち上がる。その前に、ポテトチップスのごみを細くたたんで、箸置きみたいにして割りばしを主税の前に置いた。駄目だ。まだニヤニヤしてしまう。
新しいビールを取って来て、お互いのグラスに注ぎあう。
「アメコミだしアメリカ映画だから、もっと「どかーん。ばきゅーん。わー」って感じなのかと」
その子供みたいな表現にまた笑ってしまった。「ばきゅーん」って。
コイツ、要所要所で可愛いんだよな。
「薫くんのオススメじゃなかったら絶対見てなかった。新しい世界が開けた気分」
目をキラキラさせながら言う主税。コイツはホントに映画が好きなんだな。
俺も結構好きだと思ってたけど、この反応を見ていると自分がにわかなんじゃないかって気になってくる。
「続きも見たいな。また見せて貰ってもいい?」
そう言ってから、主税は変な顔をして目を逸らした。また目尻が赤くなっている。思わず言ったけど遠慮したってところかな。
「いいよ。また一緒に見よう」
社交辞令なんかじゃなく、本気でそう返した。
好きな映画にこんな風にリアクションしてもらって嬉しくないわけがない。もっとこのシリーズを見てもらいたい。
どんな感想をくれるのか、楽しみだ。
思わず好きな映画を進めてしまったけど、この映画じゃいい雰囲気に持っていけないぞ。
丈夫な盾を持って戦うヒーローのルーツになるストーリー。メインは主人公がそうなるまでの経緯と、歴史に取り残された彼の葛藤。ちょっとだけロマンスはあるけど、実らない。
この映画でくっついて目を覗き込んだりなんかしたらそれはただの空気読めない奴だ。
でも勧めてしまったんだから今更他の映画をなんていうのも変だし、諦めてディスクをプレイヤー代わりのゲーム機に入れた。
まぁ、時間は沢山あるんだから2本目を見てもいいか。
映画が始まって、ビールを飲む。半分くらいに減った主税のグラスにビールを注ぐと、主税もほんの少し口角を上げて、同じように俺のグラスにビールを注いでくれた。
お互い、既に1本空けてしまっている。でも主税もまだ余裕がありそうだ。このグラスが空になるころにおかわりを取りに行こう。
プロローグの場面で主税が真面目な顔して箸でポテトチップスを食べるもんだから、我慢できずに顔を背けて「くっ」と笑ってしまった。盗み見た主税は申し訳なさそうな顔でポテトチップスを咀嚼していた。
映画が終わるまでに、2人とももう1本ずつビールを空けた。まだまだ飲めるけど、ちょっといい気分。主税はどうだろう。べろべろになられたら困るな。客用の布団なんかないから、シングルベットに二人なんて勘弁しろよ。合意と取られたらめんどくさい。
ポテトチップスも二人で食べた。俺はもう何度も見たことある映画だからそっちのけで存分にニヤニヤさせてもらった。その度にきょどっとする主税の表情がまたおかしくて。
「凄い、イメージと全然違った」
主税が最後の一口のビールを飲んで呟いた。口調も顔色もまだ平気そうだ。
「どんな風に思ってたの?あ、まだ飲む?」
時計を見上げたけど、もう1本くらい見ても全然余裕な時間。お互いが準備していたから酒もまだまだある。正直、減らして貰わないと冷蔵庫に他のものが入らない。
主税が「うん」と頷いたのを確認してソファから立ち上がる。その前に、ポテトチップスのごみを細くたたんで、箸置きみたいにして割りばしを主税の前に置いた。駄目だ。まだニヤニヤしてしまう。
新しいビールを取って来て、お互いのグラスに注ぎあう。
「アメコミだしアメリカ映画だから、もっと「どかーん。ばきゅーん。わー」って感じなのかと」
その子供みたいな表現にまた笑ってしまった。「ばきゅーん」って。
コイツ、要所要所で可愛いんだよな。
「薫くんのオススメじゃなかったら絶対見てなかった。新しい世界が開けた気分」
目をキラキラさせながら言う主税。コイツはホントに映画が好きなんだな。
俺も結構好きだと思ってたけど、この反応を見ていると自分がにわかなんじゃないかって気になってくる。
「続きも見たいな。また見せて貰ってもいい?」
そう言ってから、主税は変な顔をして目を逸らした。また目尻が赤くなっている。思わず言ったけど遠慮したってところかな。
「いいよ。また一緒に見よう」
社交辞令なんかじゃなく、本気でそう返した。
好きな映画にこんな風にリアクションしてもらって嬉しくないわけがない。もっとこのシリーズを見てもらいたい。
どんな感想をくれるのか、楽しみだ。
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