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【完結】2億4000万の男【寸止め/洗脳?】
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社宅は商店街の外れにあって、少し歩けばいろんな店がある。
その商店街の一本隣りの、ちょっと寂れた裏通り。
神宮寺さんの言う小料理屋はひっそりと佇んでいた。古民家を改装しているらしい。木の引き戸に、鎧張りの外壁。
いかにも、知る人ぞ知る、という風体で、中に入る前からもう美味しい。
「よさそうな店だね」
神宮寺さんがそう言いながら縄暖簾をくぐる。
すぐに作務衣姿の女性が出てきて、「何名様ですか?」とニッコリと笑う。彼が「ふたり」と完結に伝えるとカウンター席に案内された。
「とりあえず生にする?でも日本酒が多いな。どうせなら地元のが飲みたいね」
お互いメニューを見ながら駆けつけ一杯を吟味する。店内には大きな冷蔵庫があって中には日本酒の瓶が並んでいた。見慣れないラベルが物珍しい。
俺がメニューを見て考えあぐねていると、神宮寺さんは顔を上げてカウンターの向こうに声を掛けた。
「大将、俺たち単身赴任で来たばかりで詳しくないんですよ。地元のものでオススメがあれば」
勝手にそう決めてしまった。
そして俺に向かって「いいよね?」とにっこりと笑う。
なるほど、こういう強引さも業績№1たる所以か。妙な所で納得しながらこくんと頷く。
そうして運ばれてきた冷酒は、とても食前酒になるような可愛い酒精ではなさそうだったけど、疲れがとろんと溶けてしまうような甘さだった。
「だからね?おれね?あんたのこと大嫌いなんれすよ」
やたら美味しいお茶漬けを食べながら言う。
やっぱりね、飲みの締めはお茶漬けなんだよね。梅茶漬けとか最高に最高。
今日はやけに気持ちがよくて、なんでも話せる気がした。
美味しい料理に、美味しい酒に、気さくな大将と、心地のいい相槌。
「うんうん、知ってるよ。ごめんね、いつも助かってる」
理解が得られた事に気分が良くなって「んふ」と笑う。
「負担ばっかり掛けるけど、七瀬くんだから任せれるんだよ?」
そうだろうそうだろう。あんたの仕事の引継ぎ、何か知らないけど4人も居たんだからな。4人に引き継ぐような仕事を一人でやってたんだぞ。引き継ぎも地獄だったよ。わかれ。
煽てられて余計に気分が良くなった。
楽しいなぁ。こいつと飲むのがこんなに楽しいなんて。悔しいけど認めてやろう。あんたは文句なしの№1だ。そのアシスタントたる俺ももっと頑張らないと。
「ちょっと飲みすぎちゃったね。そろそろ帰ろう?」
とっとと会計を済ませて、神宮寺さんが俺の脇を抱え上げて椅子から立たせた。
「え、やら、帰りたくない」
まだ飲みたいのに。
特に、さっき飲んだちょっと辛めのスッキリした奴。あれを熱燗で。最後に。おねがい。
名残惜し気に大将を眺める俺を見て、神宮寺さんはくす、と楽し気に息を吐いた。何がおかしいんだ。
「これは、持って帰っていいってことですかねぇ?」
苦笑いしながらカウンターの向こうに声を掛ける。
大将も同じく苦笑いしながら「とっとと持って帰ってください」と返した。
それを見ながら俺は「ラーメン食べたい」と全く別のことを考えていた。
「二軒目行きましょ、ね、じんぐーじさん、ね?」
小料理屋を出てすぐ、神宮寺さんの腕を引く。
行きましょ、って言っても、土地勘ないから神宮寺さん任せにはなってしまうんだけど。
「ダメだよ。七瀬くん、酔ってるから。また今度ね?」
酔ってる。うん、酔ってる。俺は酔ってることを認めない酔っ払いじゃない。
でもまだいけるから大丈夫。頭もはっきりしてるし、まっすぐ歩ける。まだこの楽しい時間を手放したくないんだ。
「………」
今日は俺を労う会じゃなかったのか。俺の外回りお疲れ様ってやつだったはず。だったら俺の行きたいようにさせてよ。
そう目線に込めてじっとりと神宮寺さんを下から睨みつける。
「そんな可愛い顔してもダメ。帰るよ」
渾身のおねだり顔はあっけなく躱されて、神宮寺さんは俺の手を荷物ごと引ったくって歩き始めた。無念。
帰宅途中、コンビニで水だのなんだのを買って、社宅へと戻ってきた。
神宮寺さんは自分のカバンと俺のカバンと、コンビニで買った荷物を全部左手に持って俺の手を右手で引いてる。
俺のカバンだけでも多分結構重いと思うんだけど。その左手凄いな。営業筋恐るべし。まだ行けるなら部屋でもうちょっと飲みたいからそこに2.3本追加できませんか。
「ほら、鍵出して」
部屋についてやっと手を放してくれた神宮寺さんが急かすように手のひらを差し出す。
鍵ね、うんうん、鍵。
神宮寺さんに確保されていたカバンから鍵を出してそのまま手渡すとさっさと鍵を開けて中まで連れ込まれた。
「悪いけど、七瀬くんが寝るまで居座るからね?酔っ払い何するかわからないから」
勝手知ったる同じ間取り。神宮寺さんは俺の定位置である座椅子に腰を下ろした。
失礼な。そんなタチ悪い酔っ払いじゃないですよ俺は。
そりゃあ、もう2.3本買いに出ようかとは思ってたけど…。
まぁ、初めて一緒に飲んだんだもんね。俺がいかにいい酔っ払いかはわからなくて当然だよね。
「じゃあ、寝ます」
仕方ないから今日はこのいい気分のまま寝ましょうか、って事でジャケットを脱いだ。
シャワー浴びて、着替えて、お布団に入りましょう。部屋にあがってクローゼットに向き直る。脱いだジャケットを掛けて、ベルトを外して、ネクタイを…。
…、視線が気になる。
「…あの、ちゃんとやるんで、あんまり見ないで…」
ネクタイを外しながら神宮寺さんを振り返ると、彼はテーブルに肘をついてがっつり俺を見る体勢だった。いっそ清々しい。
「そう?いつも俺のこと見てるから、気にならない方なのかと思ってた」
なんて酷い誤解。そりゃあ時々は「こいつムカつくなぁ」って視線をやることはあったかもしれないけど、そんなに熱烈に見つめたことはないはずだよ?
それでなくても俺はこれから服を脱いでシャワーを浴びるのよ。単身赴任のワンルームの部屋に脱衣所なんて上等なものはない。何が悲しくて上司の前でストリップショーしないといけないの。
「見てないれす。いいから向こう向いて」
男同士だしそんなに気にすることはないのかもしれないけど、じゃあどうぞ見てくださいって脱げちゃうほど俺は豪胆じゃない。
それでも神宮寺さんはジッと見つめてくる。気恥ずかしくて俯いた。
「七瀬くん、酔うと可愛いんだね。真っ赤になってるよ」
その様子に満足したのか、彼はセクハラしながらやっと向こうを向いてくれた。
背中を監視するようにじっとりと睨みながらそろそろと服を脱ぐ。
部屋着やタオルをすぐに取れるところにおいて、バスルームへ逃げ込んだ。
なんなのよ。もう。
シャワーを浴びて、少し酔いが冷めた。
冷めた分、飲み足りなさが際立ってきてちょっとだけ残念な気分になる。
まだ飲んでたいなぁ。この際部屋飲みでもいいから飲めないかなぁ。だってまだ21時過ぎたばっかりなのに。夜はこれからなのに。
浴室から顔だけ出して神宮寺さんの様子を伺うと、彼は頬杖をついたまま目を閉じていた。
寝てるのか?
タオルを引きずり込んで身体を拭う。
それからコソコソと浴室から出て部屋着を着こんで部屋に戻ると、机の上には俺が出しっぱなしにしてた資格の本が開いたまま置いてあった。
本読んで眠くなったのか。子供みたいだな。
頭をタオルでがしがし乾かしながらしゃがみ込んでその寝顔を観察する。ネクタイを緩めて、前髪が少し額にかかってて、無防備でちょっと可愛い。
変な顔してるなら写真撮って笑ってやろうと思ったのに、寝顔まで男前。涎垂らしてたり、白目だったりしない。つまんない。
「そんなに俺が気になる?」
不意に目が開いて、ばっちり視線が合った。思わず固まる。
寝たふりだったのか、それとも今起きたのか。というか、何で俺が見てることにそんなにすぐに気付くの。怖すぎる。
「資格の勉強してるんだね。偉いね」
ぐぐっと伸びをしながら神宮寺さんが言う。「はふ」と欠伸まじりの息を吐いて、目尻に涙が滲んで、そのまま潤んだ目で見られてちょっとドキッとしてしまった。
いやいや、ドキッじゃないんだよ。
「いや、好きなことやってるだけなんで…」
ごまかすように目を逸らしながら答えると、不意に神宮寺さんに手を引かれて場所を入れ替るように座椅子に座らされた。
「やってあげる」
そのままタオルを奪われて頭を撫でるように拭われる。
人に頭触られるのってなんでこんなに気持ちいいんだろう。俺の美容室での寝落ち率は9割を超える。その気持ち良さにすっかり身体の力が抜けた。
「七瀬くんのね、そういうストイックな所好きだよ。尊敬する」
尊敬。尊敬なんて大げさだ。もともと取りたかった資格だし、時間が余ってて手持無沙汰なだけなのに。でもそう言われて悪い気はしない。こしこしと強すぎない力で頭を揉まれて、ふわんと身体の力が抜けた。
「でも時々息抜きもしないと、身体壊さないか心配だよ?」
神宮寺さんの声がちょっと遠くから聞こえる。
なにこれ、最高。ふわふわした酔いに、風呂上りでぽかぽかする身体。頭を優しく撫でられる心地よさ。意識がとろとろしてきた。
「……、そっちで抜くの?」
微睡みかけた脳に神宮寺さんの声が滑り込んできた。
「…はい…?」
言われた意味がよくわからなくて、今にも思考が溶けてしまいそうなのを堪えて目を開けて神宮寺さんを見上げる。彼の目線は少し前に落とされていた。
前、前…。
視線を追って自分の身体を前に見下ろすと、腰の中心、俺の大事な所が全力で存在を主張していた。
その商店街の一本隣りの、ちょっと寂れた裏通り。
神宮寺さんの言う小料理屋はひっそりと佇んでいた。古民家を改装しているらしい。木の引き戸に、鎧張りの外壁。
いかにも、知る人ぞ知る、という風体で、中に入る前からもう美味しい。
「よさそうな店だね」
神宮寺さんがそう言いながら縄暖簾をくぐる。
すぐに作務衣姿の女性が出てきて、「何名様ですか?」とニッコリと笑う。彼が「ふたり」と完結に伝えるとカウンター席に案内された。
「とりあえず生にする?でも日本酒が多いな。どうせなら地元のが飲みたいね」
お互いメニューを見ながら駆けつけ一杯を吟味する。店内には大きな冷蔵庫があって中には日本酒の瓶が並んでいた。見慣れないラベルが物珍しい。
俺がメニューを見て考えあぐねていると、神宮寺さんは顔を上げてカウンターの向こうに声を掛けた。
「大将、俺たち単身赴任で来たばかりで詳しくないんですよ。地元のものでオススメがあれば」
勝手にそう決めてしまった。
そして俺に向かって「いいよね?」とにっこりと笑う。
なるほど、こういう強引さも業績№1たる所以か。妙な所で納得しながらこくんと頷く。
そうして運ばれてきた冷酒は、とても食前酒になるような可愛い酒精ではなさそうだったけど、疲れがとろんと溶けてしまうような甘さだった。
「だからね?おれね?あんたのこと大嫌いなんれすよ」
やたら美味しいお茶漬けを食べながら言う。
やっぱりね、飲みの締めはお茶漬けなんだよね。梅茶漬けとか最高に最高。
今日はやけに気持ちがよくて、なんでも話せる気がした。
美味しい料理に、美味しい酒に、気さくな大将と、心地のいい相槌。
「うんうん、知ってるよ。ごめんね、いつも助かってる」
理解が得られた事に気分が良くなって「んふ」と笑う。
「負担ばっかり掛けるけど、七瀬くんだから任せれるんだよ?」
そうだろうそうだろう。あんたの仕事の引継ぎ、何か知らないけど4人も居たんだからな。4人に引き継ぐような仕事を一人でやってたんだぞ。引き継ぎも地獄だったよ。わかれ。
煽てられて余計に気分が良くなった。
楽しいなぁ。こいつと飲むのがこんなに楽しいなんて。悔しいけど認めてやろう。あんたは文句なしの№1だ。そのアシスタントたる俺ももっと頑張らないと。
「ちょっと飲みすぎちゃったね。そろそろ帰ろう?」
とっとと会計を済ませて、神宮寺さんが俺の脇を抱え上げて椅子から立たせた。
「え、やら、帰りたくない」
まだ飲みたいのに。
特に、さっき飲んだちょっと辛めのスッキリした奴。あれを熱燗で。最後に。おねがい。
名残惜し気に大将を眺める俺を見て、神宮寺さんはくす、と楽し気に息を吐いた。何がおかしいんだ。
「これは、持って帰っていいってことですかねぇ?」
苦笑いしながらカウンターの向こうに声を掛ける。
大将も同じく苦笑いしながら「とっとと持って帰ってください」と返した。
それを見ながら俺は「ラーメン食べたい」と全く別のことを考えていた。
「二軒目行きましょ、ね、じんぐーじさん、ね?」
小料理屋を出てすぐ、神宮寺さんの腕を引く。
行きましょ、って言っても、土地勘ないから神宮寺さん任せにはなってしまうんだけど。
「ダメだよ。七瀬くん、酔ってるから。また今度ね?」
酔ってる。うん、酔ってる。俺は酔ってることを認めない酔っ払いじゃない。
でもまだいけるから大丈夫。頭もはっきりしてるし、まっすぐ歩ける。まだこの楽しい時間を手放したくないんだ。
「………」
今日は俺を労う会じゃなかったのか。俺の外回りお疲れ様ってやつだったはず。だったら俺の行きたいようにさせてよ。
そう目線に込めてじっとりと神宮寺さんを下から睨みつける。
「そんな可愛い顔してもダメ。帰るよ」
渾身のおねだり顔はあっけなく躱されて、神宮寺さんは俺の手を荷物ごと引ったくって歩き始めた。無念。
帰宅途中、コンビニで水だのなんだのを買って、社宅へと戻ってきた。
神宮寺さんは自分のカバンと俺のカバンと、コンビニで買った荷物を全部左手に持って俺の手を右手で引いてる。
俺のカバンだけでも多分結構重いと思うんだけど。その左手凄いな。営業筋恐るべし。まだ行けるなら部屋でもうちょっと飲みたいからそこに2.3本追加できませんか。
「ほら、鍵出して」
部屋についてやっと手を放してくれた神宮寺さんが急かすように手のひらを差し出す。
鍵ね、うんうん、鍵。
神宮寺さんに確保されていたカバンから鍵を出してそのまま手渡すとさっさと鍵を開けて中まで連れ込まれた。
「悪いけど、七瀬くんが寝るまで居座るからね?酔っ払い何するかわからないから」
勝手知ったる同じ間取り。神宮寺さんは俺の定位置である座椅子に腰を下ろした。
失礼な。そんなタチ悪い酔っ払いじゃないですよ俺は。
そりゃあ、もう2.3本買いに出ようかとは思ってたけど…。
まぁ、初めて一緒に飲んだんだもんね。俺がいかにいい酔っ払いかはわからなくて当然だよね。
「じゃあ、寝ます」
仕方ないから今日はこのいい気分のまま寝ましょうか、って事でジャケットを脱いだ。
シャワー浴びて、着替えて、お布団に入りましょう。部屋にあがってクローゼットに向き直る。脱いだジャケットを掛けて、ベルトを外して、ネクタイを…。
…、視線が気になる。
「…あの、ちゃんとやるんで、あんまり見ないで…」
ネクタイを外しながら神宮寺さんを振り返ると、彼はテーブルに肘をついてがっつり俺を見る体勢だった。いっそ清々しい。
「そう?いつも俺のこと見てるから、気にならない方なのかと思ってた」
なんて酷い誤解。そりゃあ時々は「こいつムカつくなぁ」って視線をやることはあったかもしれないけど、そんなに熱烈に見つめたことはないはずだよ?
それでなくても俺はこれから服を脱いでシャワーを浴びるのよ。単身赴任のワンルームの部屋に脱衣所なんて上等なものはない。何が悲しくて上司の前でストリップショーしないといけないの。
「見てないれす。いいから向こう向いて」
男同士だしそんなに気にすることはないのかもしれないけど、じゃあどうぞ見てくださいって脱げちゃうほど俺は豪胆じゃない。
それでも神宮寺さんはジッと見つめてくる。気恥ずかしくて俯いた。
「七瀬くん、酔うと可愛いんだね。真っ赤になってるよ」
その様子に満足したのか、彼はセクハラしながらやっと向こうを向いてくれた。
背中を監視するようにじっとりと睨みながらそろそろと服を脱ぐ。
部屋着やタオルをすぐに取れるところにおいて、バスルームへ逃げ込んだ。
なんなのよ。もう。
シャワーを浴びて、少し酔いが冷めた。
冷めた分、飲み足りなさが際立ってきてちょっとだけ残念な気分になる。
まだ飲んでたいなぁ。この際部屋飲みでもいいから飲めないかなぁ。だってまだ21時過ぎたばっかりなのに。夜はこれからなのに。
浴室から顔だけ出して神宮寺さんの様子を伺うと、彼は頬杖をついたまま目を閉じていた。
寝てるのか?
タオルを引きずり込んで身体を拭う。
それからコソコソと浴室から出て部屋着を着こんで部屋に戻ると、机の上には俺が出しっぱなしにしてた資格の本が開いたまま置いてあった。
本読んで眠くなったのか。子供みたいだな。
頭をタオルでがしがし乾かしながらしゃがみ込んでその寝顔を観察する。ネクタイを緩めて、前髪が少し額にかかってて、無防備でちょっと可愛い。
変な顔してるなら写真撮って笑ってやろうと思ったのに、寝顔まで男前。涎垂らしてたり、白目だったりしない。つまんない。
「そんなに俺が気になる?」
不意に目が開いて、ばっちり視線が合った。思わず固まる。
寝たふりだったのか、それとも今起きたのか。というか、何で俺が見てることにそんなにすぐに気付くの。怖すぎる。
「資格の勉強してるんだね。偉いね」
ぐぐっと伸びをしながら神宮寺さんが言う。「はふ」と欠伸まじりの息を吐いて、目尻に涙が滲んで、そのまま潤んだ目で見られてちょっとドキッとしてしまった。
いやいや、ドキッじゃないんだよ。
「いや、好きなことやってるだけなんで…」
ごまかすように目を逸らしながら答えると、不意に神宮寺さんに手を引かれて場所を入れ替るように座椅子に座らされた。
「やってあげる」
そのままタオルを奪われて頭を撫でるように拭われる。
人に頭触られるのってなんでこんなに気持ちいいんだろう。俺の美容室での寝落ち率は9割を超える。その気持ち良さにすっかり身体の力が抜けた。
「七瀬くんのね、そういうストイックな所好きだよ。尊敬する」
尊敬。尊敬なんて大げさだ。もともと取りたかった資格だし、時間が余ってて手持無沙汰なだけなのに。でもそう言われて悪い気はしない。こしこしと強すぎない力で頭を揉まれて、ふわんと身体の力が抜けた。
「でも時々息抜きもしないと、身体壊さないか心配だよ?」
神宮寺さんの声がちょっと遠くから聞こえる。
なにこれ、最高。ふわふわした酔いに、風呂上りでぽかぽかする身体。頭を優しく撫でられる心地よさ。意識がとろとろしてきた。
「……、そっちで抜くの?」
微睡みかけた脳に神宮寺さんの声が滑り込んできた。
「…はい…?」
言われた意味がよくわからなくて、今にも思考が溶けてしまいそうなのを堪えて目を開けて神宮寺さんを見上げる。彼の目線は少し前に落とされていた。
前、前…。
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