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第2章 アナタに捧ぐ鎮魂歌

23暴走②*

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*長くなってしまったので2回に分けて投稿させて頂きますm(_ _)m



 ぬちゅぬちゅといやらしい水音が自分の腰の下あたりから聞こえてくる。

「ぅん、んっ、」

 時折、内壁を擦り上げる指が良い場所を当たる度、あらぬ声が出そうになるのを全裸になったベッドの上で枕に顔を埋め必至に耐えていた。

 せめてもの抵抗で、自分の痴態を見たくなくてうつ伏せになって目を瞑ってみたけれど、それはものすごーく甘い考えだった。と、今、まさに心底痛感している。

「…だいぶ柔らかくなってきたな」

 そんな報告入りません!あ、ああっ、そこっ、そこやめて!声が我慢出来なくなるからぁん!!

 指の動き一々反応してしまう自分の身体が恨めしい。

 視界からの情報が入って来ない分、耳と相手から与えらる刺激に身体が余計に過敏になっている気がする、っていうか絶対過敏になってるっ。

 あの瓶の中身何度も聞いたけど、本当に大丈夫なの!?僕騙されてないよね、ね!?

「痛くはないだろ?」

 お陰様であんなに激痛に苛まれていた身体はまだ燃えるように熱を持ってはいるが痛くはない。痛くはないがそれと差し替えられた感覚に息も絶え絶えになっているから、たまったもんじゃない。

 後悔は後から悔やむから後悔で、なるべく後悔はしたくないから、選んだはずなんだけどーー、

「指もう一本増やすからな」

(~~~っ!!)

 選んだばかりの選択肢に早くも後悔しはじめていた…。










 ーーー数十分前。


「………今、なん、と?」

「だから俺と性交しー」
「だぁーっ!わざわざ言い直して言うなー!!」

 しまった、勢いで怒鳴ったら目眩がっ…。

 ボスン、と大声を上げるために浮き上がった僕の身体を柔らかな布団が受け止めてくれた。

「アルヴィン、無理はするな」

 誰のせいだと思ってるんですか、誰の。

 焦って心配するギルフィスの顔を今の出来る限りで精一杯、きつく睨みつけてやる。すると、だから言うかどうか迷ったんだ、と彼はあからさまに肩を落としてみせた。

 自分より大きな、しかも魔王呼ばれる男の情けなくしょぼくれた姿。こんな姿を他の魔族の皆さんが目にしたら、一体どう思うんだろうか。

「言って君が嫌がるのは充分に分かっていたんだけどな。しかし、暴走が自然に完治するには時間がかかるし、完治するまでに途中、いつまた振り返すか分からない。俺なら君の暴走した魔力を一時的に落ち着かせることは出来るが、残念ながらいつも側にいられるわけじゃないしな」

 そうですね、流石にストーカーな魔王様にずっと付いていられるのは勘弁願いたいです。…いや、そこで悲しそうな顔されても困るんですけど。話の続きがあるならどうぞ続けて下さい。

「そこで手取り早くかつ安全な方法なのが、君と俺が繋がって、君の乱れている魔力の流れを俺の魔力の流れに同調させて正常に戻す、という方法なんだ。これなら数時間で済むし、負担もほとんどない」

 魔族の中にもたまに魔力暴走を引き起こす者がいて、僕ほど命が危険にさらされるケースはないが、その場合、外部から魔力接触をし暴走した者の魔力を正常に戻してやる、というのが通常の暴走をした際の治し方なんだそうだ。
 しかし、僕の場合そのやり方だと魔力量が多過ぎるせいで治るまでかなりの時間がかかってしまい、身体への負担も大きいらしい。

「君が眠っている間に外部から試してみたが、やはり結果は微々たるものだった」

だから、互いがより魔力を感じられる深い場所で直接繋がって一気に、というのが最善な方法なんだとギルフィスは言う。

「ちなみに、外部からの魔力接触だけだと、どのくらい…?」

 治るまでどれくらいかかるか。参考までにお聞かせください、魔王様。

 ギルフィスはこちらの問いに暫し黙考し、それから口を開いた。

「…はっきりとした期間は言えないが、年単位はかかると思う」

「年…」

 一ヶ月くらいならなんとか、と夢見た自分が甘かった。それじゃあ、お独り様生活どころか、現在の日常生活にも思いっきり支障がでるじゃないか。

 魔力の暴走で熱いはずの身体からサァーと血の気が引いて冷たくなる錯覚がした。

 まだまだ、今の生活でやらなきゃいないことは沢山ある。貞操を取るか日常生活を取るか。完治にどれくらいかかるか分かった時点で、残念ながら自分の取るべき選択肢は決まってしまった。

 それでも最後の抵抗とばかりに往生際悪く、頭から布団をかぶって目を閉じた。頭で結論が付いてもそれに心が追いつかないのだから、少しくらいは待って欲しい。
その耳に追い打ちをかけるかのようにギルフィスの声が語りかけてくる。

「俺もこんなカタチで君に触れるのは本意ではないんだ」

 (僕だって全く全然本意じゃありません)

「今回はことは治療だと思って」

 (今回は、って何?次回は永遠にないから)

「君の負担が減るよう薬も用意したし」

「……薬って、まさかそれ、媚薬じゃないでしょうね」

 布団からそろり顔を出して、未だギルフィスの手の中にある茶色の小瓶に目を向ける。

 最初、暴走を緩和する類の薬かと思ったけど、治療方法の話の中に薬の存在は一切出て来なかった。なら、用途は自ずと限られてくる。

 僕、媚薬は作るのも使われるのも論外なんですけど。

「あー…違う違う。これは媚薬ではなくてー」

 薬の効果を聞いて、職業柄つい好奇心には勝てずに勢いで服用してしまったことは、数十分後の後悔に多分に含まれるのであった。













ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
☆次回は1時間後の予定です。
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