ギャルゲーのはずが攻略対象外男子に好かれてます。

12月

side雪平 去年のクリスマス②

 何故落胆してしまったのか当時の自分は分からなかった。

 自分の容姿と生徒会長という肩書きで校内では有名だったし、校外でもそれなりに知れ渡っていたから自分でも自意識過剰になっていたかもしれないなんて、その場で内心恥じたものだ。

 後から思えばプラス、冬休みだからと知り合いの美容師に髪色をクリスマスレッド（グリーンをメッシュしたかったらしいが必死に断った）にされていたから、身近な人間以外は気付かないのは当然だった。

 とにかく、このままでは不審者だ。




「君、ちょっと来て」



 返事を待たず僕は冷え切った手を強引に繋ぎ、人混みを抜い街の外れにある小さな公園まで移動した。

 クリスマスとこの寒空で誰もいない公園の色禿げたベンチに少年を座らせそのまま待つように言い、近くのコンビニまで急いだ。

 彼がそのまま待っていてくれる保証は何もない。

 不安を募らせ息を切らしながら戻ると、彼は蹲るようにそこで待っていてくれた。

 僕は安堵しコンビニの袋から使い捨てカイロをまず渡し、次にレモネードと肉まんを押し付けた。

 渡した時点で先に欲しいものを聞けば良かったと後悔したが、彼は手にした温かさに僅かに表情を緩めた。




「ありがとうございます」




 顔は笑っているけど、心はまだ冷え切っている気がした。

 僕はその笑顔に応えたが内心気に入らなかった。感情を押し殺し笑う少年もだが少年をそうさせた原因に1番腹が立った。

 僕は彼の隣に座り佇んでいた理由を聞けば、彼はまた同じ笑顔で大した事じゃないと言葉を濁す。

 本当に苛だたしい。

 粘り強く尋ね、漸く幼馴染みと少しとだけ入れ違いがあってと口にし、別れの際持っていた袋を僕にお礼だと渡しいらないなら捨てて下さいと最後に言って消えていった。

 中にはやはり誰かに渡すはずだった紺色のマフラーがクリスマス用にラッピングされて入っていた。