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王子として 子供として
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売人を捕まえて事情聴取をしていたが、 黒幕は国王だと言い出した。 その真偽を確かめようと、 直接やり取りをしていた人間の名前を聞く。
「 その手紙を見せてくれた人は誰ですか?」
「 それは チャールズ・バリンという男だ」
「そんな・・」
ネイサンが 売人の口から出た言葉にショックを受けて崩れ落ちる。
その姿に国王と近しい家臣で ネイサンとも面識が あるのだろうと 察する。
犯人を捕まえようと、ずっと追いかけていたのに、 まさか、その黒幕が 国王だと言われたのは
辛いだろう。 しかし、国王は どんなつもりで、ネイサンに 調査命令を 出したんだろう。
王命で数々の事件を解決している。そのことを知っているのに何故?
ネイサンには バレ無いと 高をくくっていたのか?
(それとも・・)
「ネイサン様・・」
国王が、どんな人物か分からない私には、どちらの言い分が正しいのか 分からない。
適当な慰めは毒でしかない。
それでも ネイサンを慰めて あげたくて、そっとその肩に手を添えると ネイサンが私の手の上に自分の手を重ねる。
その冷たくなった指先に ネイサンの心が映っている。
(可哀想に・・)
信じていた者に 裏切られる気持ちは 痛いほど分かる。 あの浮気男。 好きだったから許したけれど 何年経っても、その時 感じたショックは 傷跡となって消えることが無い。 現に 今も思い出すだけで 無性に腹が立つ。 こっちは試験勉強で必死だったのに 寂しかったからだと?
彼氏なら彼女の応援をしろ!
パキッ!
物思いに耽っていたが 聞こえてきた何かを踏みつける音に ハッとしてクロエは 敵だと反射的に売人の剣を音のした方へ飛ばす。
「誰!?」
「うわぁ!」
振り向くと逃げようとしていた売人が、驚いて倒れている。
後ろ手に縛っただけでは 駄目か。
全く 油断も隙もないとは このことだ 。
クロエは逃げられないように 売人の背中を踏みつける。
「 お嬢ちゃん。行儀が悪いよ」
「 黙りなさい」
こんな状態なのに売人が軽口を言う。 本当に食えない男だ。
このままでは、また逃げようとする。
どうしたら、いいか ネイサンに相談しようと見たが、 俯いたまま ジッとしている。ショックから立ち直るには時間が必要なようだ。
きっと、売人が逃げようとした事にも気づいてはいまい。 それほどまで 売人の言葉がネイサンを苦しめている。
「ネイサン・・」
ネイサンが あんな状態では、この後も脱走しそうだ。 こういう時こそ、私がしっかりしなくちゃ。 自分で何とかしようと考えたが、 他に拘束する道具はないし、 ピーターさんに助けを求めるには 森を抜けないといけない。
どうやったら、この男に言うことを聞かせられるか・・。逃げたら酷い目に あうと脅せれは、いいんだけど・・。
ネイサンと渡り合った売人に 私の腕前では歯が立たない。からかわれるのが、オチだ。
今回も出番がなかったと、残念に思いながら愛刀に目を向ける。と、その時 もう一振りの剣に目がいく。 そうか!
クロエは、ぽんと手を打つ 。
良いのが あるじゃないか。火炎剣を抜刀すると、 勢いよく炎が吹き出る。 準備完了。
その剣先を売人に向ける。
「 さあ、立ちなさい」
*****
ネイサンの部屋のドアから漏れる明かりを見て クロエは腰に手を当て、やれやれと首を振る。
心配して見に来てみれば まだ寝てない。
これで徹夜は何日目?
このままでは体を壊してしまう。
あの後 ネイサンが気持ちを奮い立たせて 売人を連行して街まで戻ってきたのは良いが それ以来ずっとこの調子だ。
コンコン!
「・・・」
ノックしても返事も無い。
ドアを開けるとネイサンが机にかじりついている。そんなネイサンを見て、ため息をつく。
テーブルの上には大好物のオムライスが手つかずで置いてある。帰ってから、お茶の一杯も口にしていない 。
無理をしているネイサンの姿に心が痛む。
売人の事情聴取や、それに関連する証拠探しなどして 忙しさで気を紛らわそうと 自分で自分を痛めつけている。見ているこっちが辛い 。
強制的にでも寝かせないと。
しかし、だからといって 言うことを聞くはずがない。でも、ネイサンが立ち直るのを待っていたら 病気になってしまう。
こうなったら荒治療が必要ね。
部屋に入るとクロエは、明かりを隠すように机の前に立つ。 影ができて初めて私の存在に気づいたネイサンが顔を上げる。
「クロエ・・」
目の下にクマがあり、生気も無い。 ゾンビみたいだ。まったく世話が焼ける。ネイサンが 決められないなら、私が決めてあげる。
「ネイサン様。 記憶を読み取る魔法石を使ってください」
「っ」
ズバリと そう切り出すと ネイサンが顔を強張らせる。
(完全無敵のネイサンも人の子ね)
まだ、記憶が録画できる魔法石に余裕があるはず。しかし、かたくなに無視し続けている。
知るのが怖いの だろう。それは、十分理解している。 しかし、このままでは父親に対して不信感を残したままになってしまう。 うやむやにしていい話ではない。
「 お気持ちは わかりますが、 この件の調査の責任者はネイサン様です。ネイサン様には、 真実を確かめる責務があります」
「・・・」
辛そうに耳を傾けるネイサンに 思いを込めて言葉を紡ぐ。
厳しいことを言っていることは自覚している 。
そう進言するのは、所詮かんだ。
(どうして 国王が関与しているとは 思えない)
供述書を読んでみたが、あまりにも売人にとって都合がいい。
「もし、国王が加担していたなら、 それを正すべきです。 それができるのは息子であるネイサン様だけです」
「・・・」
逃げるようにネイサンが目をそらす。
そのことは、ネイサンも本当は分かっている。
いつかは、対峙しなくてはいけない問題だ と。
でも、そのことを自分で決意できないでいる。
誰かに背中を押されるのを待っているのだ。
だったら私が押そう。
バンと 机に両手をついて ネイサンに詰め寄る。 「逃げるのは簡単です。目を瞑って、 耳を塞いで、 口を閉じればいいだけです。 でも、逃げ切れますか?」
「・・・」
ネイサンが私を悲しそうに見上げる。
クロエは、その瞳に優しく微笑む。
ネイサンなら乗り越えられる。
そんな風に思っている私の言葉は無責任なようにも聞こえる。 でも 本心だ。 私が知っているネイサンは鋼の心を持っている。
「その事を分かっているから、辛くて 眠れなくて、食事も喉を通らないんです」
「・・・」
「 私はネイサン様の味方です。だから、決心して下さい」
「・・・・・・そうだな・・」
長い沈黙の後、疲れたような 諦めたような返事をするネイサンは少年のように傷つきやすそうな顔をしている。その顔にキュンとする。
よしよしと頭を撫でたくなる。
クロエは ネイサンの手を取ると 大丈夫。お姉さんがついていると ぎゅっと握る。
だから、頑張れと心の中で応援する。
「ネイサン様・・」
「たとえ・・悪い結果だとしても・・」
硬い表情で話し始めたネイサンだったが 言葉が続かない。 私の手前 虚勢を張っているだけだ。(ギリギリだ)
王子として 領主として皆を守る立場にある。
だから、自分の弱さを見せないようにしている。 それが 今はスキだらけで 突いたら倒れそうなほど弱っている。こんな脆いネイサンを見るのは初めてだ。
クロエは、ネイサンを抱きしめる。
「 クロエ?」
厳しい決断をさせて、ごめんねと謝る気持ちと 期待に応えようとする、その気高さに ありがとうと言いたい気持ちのすべてを込めて その腕に力を込める。
私のネイサン。最高に素敵で優しいて良い子。
支えてあげる 。
「どんな時でも、傍にいますから」
そう誓う。
何か もっと力になる言葉を言いたいのに、 いつもの おしゃべりは影を潜めて 何も思いつかない 。それでも自分の気持ちを伝えたくて、言葉ではなく態度で示そうとネイサンの背中を叩く。
*****
突然クロエが 私を抱きしめると背中をトントンと叩く。そんな子供を あやすような事をされると甘えてしまいたくなる。 気が緩んで涙がこみ上げる。これでは立場が逆だ。 けれど、クロエから流れ込んでくる 優しさに勇気もらう。
もし一人だったら、先延ばしにしていただろう。否、正直に言えば目を瞑っていた。 傷つきたくない。尊敬する父上を失いたくない。
逃げてしまいたい。 そんな思いばかりだった。
でも、クロエは 私が逃げることを許してはくれない。 クロエの前で良い人間でいたい。
期待を裏切りたくない。そう思ってしまう。
それに父上が関与してしないと 信じたい。
悲観的になるのは早い。
「 ありがとう。クロエ」
私を抱きしめるクロエの体は、折れてしまいそうなほど華奢だ 。それなのに 芯が まっすぐ通って ぶれることがない。 強い心の持ち主。
姉のように、時には母のように 私を包んでくれる。 守らなければいけない者に、守られている。 そう いう事なのだ。 ネイサンは甘えるように クロエの首筋に顔を埋める。
(少しだけ。もう少しだけこうさせてくれ)
*****
私を抱いていた手を解いて ネイサンが立ち上がる。 その顔には、いつもの微笑みが浮かぶ。それを見てクロエは、もう大丈夫だと安心して笑みを返す。
クロエは、ネイサンに自分の小さな手を出すと ネイサンがその大きな手を重ねる。
「 では、行きましょう」
「ああ」
しっかりと 手をつなぐと 部屋の外へと歩き出す
***
クロエは 流れる景色をぼんやりと見る。
10日間に渡る旅行(出張)が終わった。
売人は王都から来た兵士たちに引き渡され 私たちは帰途についた。
馬車に揺られながら 今回の事件のことを振り返る。 結局、国王が 関与しているのかどうかは曖昧のまま終わった。 チャールズ・バリンは 国王の右腕と呼ばれている大臣の補佐官の一人で 書類の紙は本物だったが 国王のサイン偽物だった。 つまり、売人は いいように利用されただけだ 。
しかし、補佐官が単独犯なのか 誰かの命でしたしていたか までは分からなかった。
後は国王の調査に 任せるという事で決着がついた。
前の席では ネイサンが厳しい顔で 報告書を書いている。 仕事、仕事で よく飽きないものだ。
今回の旅行中 ネイサンの笑顔を見たのは、ほんの少し。景色さえ見ていない。
いつに なったら暇になるのか・・。
(・・・)
このままでは駄目だ。
せっかく、事件も解決したんだから 楽しまなくちゃ。 でも、馬車の中で旅行気分を味合わせると言っても・・。
そうだ。 ピーターさんに娘さんたちの為と焼き栗を渡したが、ピーターさんが 私も食べなさいと 返された 焼き栗があった。
「はい。 休憩の時間です」
そう言うと ネイサンから書類を取り上げる。
「あっ、何をする」
「いいから、いいから」
取り返そうとするネイサン背を向けて 書類をカバンに押し込むと 有無を言わさずに テーブルの上を片付ける。
「クロエ・・」
「まあ、これでも食べて待っててください」
不服そうな ネイサンの口に焼き栗を押し込む。
その間に お皿の上に焼き栗を並べて、お茶の用意に取り掛かる。
嫌がると思ったが、素直に食べ始めと笑顔になった。
「んっ、美味しい。これは何だい?」
「 でしょう。焼き栗ですよ。もっと 食べ下さい」
2個目を押し込む。 する、気に入ったのから ネイサン自ら 3個目に手を伸ばす。
「 焼き栗?いつのまに作ったんだい?」
「 作ったんじゃありません。買ったんですよ。ネイサンが ザンガルの名物だと言ってたでしょ」
「 そうだった。忘れてた」
全く仕事しか頭に ないんだから。 そんな味気ない生活 全く楽しくない。
お茶のカップを手渡しながら 私用に買ったお土産を自慢しようと思いつく。
いかに自分が 損をしたか分からせてやる。
鞄の中から小物入れを取り出すと ネイサンの顔の前に突き出す。
「 ほら、見てください。 綺麗でしょ。ネイサンが仕事してる間に買ったんです」
「本当だ。とても精巧な作りだね」
ネイサンが手に 取ると いろんな角度から感心したように見ている。嫌味を言ったのに、ネイサンは小物入れに夢中だ。
全く きいてない。 そのうち自分でも作れるとか言い出しそうだと呆れる。
「ピーターさんは、うさぎの置物を買いましたから 興味があるなら見せてもらったらどうですか?」
「 ピーターと一緒だったのか?」
入れ物から目を離して私は見る。 クロエは、そうだと頷く。
「そうですよ。二人で 観光がてらい、ろんなところを見て回って。 すそれで美味しいご飯を食べて、 お土産を買って 荷物まで持ってもらいました」
「・・・」
話をしていると なぜかネイサンの 機嫌が悪くなる 。何か気に障ることを言った?
急に黙りこくったかと思うと 入れ物を突き返して おもむろに書類をえ手を伸ばす。
「んっ」
「ネイサン様?」
「・・・」
名前呼んでも返事もしない。拗ねてる?
なんで? 話なんて、ちょっとしかしてないのに・・。 お土産を買えなかったから?
それとも、名物料理を食べれなかったから?
そんなことで気分を害するとは思えないけど・・。 ピーターさんと一緒だと言ってから・・!
(ああ、自分だけ仲間外れにされたと思ったのね)
大人気ない。 仕事を優先した自分のせいなのに。 こんな事ならネイサンに、お土産の一つも買っておけばよかった。
ネイサンが 仏頂面で乱暴に書類を捲っている。
男って、いつもこうだ。
面倒くさい生き物だ。 まあ、でもこのまま放っておいたら長引きそうだ。 でも 今からザンガルには戻れない。なんとか機嫌を直してもらわないと
帰りの間ずっと気まずい。
拗ねてる原因が仲間外れなら、 一緒に出かけたいと言えばいいのでは?
「 そういえば・・私、クレール領に 住んで3年ですけど、 街に行ったことがないんですよね」
「・・・」
馬車の窓を鏡 代わりにして、ネイサンの様子を伺いながら 独り言のように呟く。
すると、ネイサンが伏し目がちに私を盗み見る。
(おっ! 食いついた)
「 一度行ってみたいけど・・一人で楽しくないし・・クレール領の名物って何だったかしら?」
「・・・」
指で顎を支えながら小首を傾げる。すると、ネイサンが 書類から目を離して そわそわする。
(ふふっ)
「他の使用人たちとは、さして親しくもないし・・ ジェームズさんは、歳が歳だし・・」
「 それなら、私が連れて行ってあげよう」
「 本当ですか?」
くるりと身体ごとネイサンを向くと嬉しそうに合わせた手を傾げた頬をつける。
すると、ネイサンが満面の笑みになる。
( 単純ね)
「 クレールのことなら任せろ。ピーターより詳しい ぞ」
そう言って 自分の胸を叩く。
ピーターより?
もしかして・・それが原因 なの?
子供だ。本当に子供だ。 使用人をライバル視して、どうする。 歳が離れてるんだから、ピーターさんに 兄のポジション奪われるはずもないのに・・。
「では、計画を練ろう」
新しくお茶を注いでいると ネイサンが地図を広げる。 本気度が高い。
(なっ・・)
完璧を求めるネイサンだもの 計画にも、それを求めるはず。 分刻みのスケジュールになりそう。
「どこが 良いかな・・。連れて行きたい場所が、いっぱいあって困るなあ・・。まずは・・」
ネイサンが大事な書類を裏返して リストを書き出す。 今更 行きたいとは言えない。
「 お仕事が、あるんですから 無理なさらなくても・・」
「 何を言っている。他ならぬクロエの願いだ。仕事より大事だ」
「 それは・・楽しみです・・」
引きつった笑みで答える。
駄目だ。付き合うしかない。
クロエは、横を向いて小さくため息をつく。
****
ネイサンからの報告書が届いたその日 、王都の外れの河に 補佐官の チャールズ・バリンの 溺死体が浮かんだ。
第1部 『 二子石』と 火炎剣 完
そして、二人の事件は まだ続く。
「 その手紙を見せてくれた人は誰ですか?」
「 それは チャールズ・バリンという男だ」
「そんな・・」
ネイサンが 売人の口から出た言葉にショックを受けて崩れ落ちる。
その姿に国王と近しい家臣で ネイサンとも面識が あるのだろうと 察する。
犯人を捕まえようと、ずっと追いかけていたのに、 まさか、その黒幕が 国王だと言われたのは
辛いだろう。 しかし、国王は どんなつもりで、ネイサンに 調査命令を 出したんだろう。
王命で数々の事件を解決している。そのことを知っているのに何故?
ネイサンには バレ無いと 高をくくっていたのか?
(それとも・・)
「ネイサン様・・」
国王が、どんな人物か分からない私には、どちらの言い分が正しいのか 分からない。
適当な慰めは毒でしかない。
それでも ネイサンを慰めて あげたくて、そっとその肩に手を添えると ネイサンが私の手の上に自分の手を重ねる。
その冷たくなった指先に ネイサンの心が映っている。
(可哀想に・・)
信じていた者に 裏切られる気持ちは 痛いほど分かる。 あの浮気男。 好きだったから許したけれど 何年経っても、その時 感じたショックは 傷跡となって消えることが無い。 現に 今も思い出すだけで 無性に腹が立つ。 こっちは試験勉強で必死だったのに 寂しかったからだと?
彼氏なら彼女の応援をしろ!
パキッ!
物思いに耽っていたが 聞こえてきた何かを踏みつける音に ハッとしてクロエは 敵だと反射的に売人の剣を音のした方へ飛ばす。
「誰!?」
「うわぁ!」
振り向くと逃げようとしていた売人が、驚いて倒れている。
後ろ手に縛っただけでは 駄目か。
全く 油断も隙もないとは このことだ 。
クロエは逃げられないように 売人の背中を踏みつける。
「 お嬢ちゃん。行儀が悪いよ」
「 黙りなさい」
こんな状態なのに売人が軽口を言う。 本当に食えない男だ。
このままでは、また逃げようとする。
どうしたら、いいか ネイサンに相談しようと見たが、 俯いたまま ジッとしている。ショックから立ち直るには時間が必要なようだ。
きっと、売人が逃げようとした事にも気づいてはいまい。 それほどまで 売人の言葉がネイサンを苦しめている。
「ネイサン・・」
ネイサンが あんな状態では、この後も脱走しそうだ。 こういう時こそ、私がしっかりしなくちゃ。 自分で何とかしようと考えたが、 他に拘束する道具はないし、 ピーターさんに助けを求めるには 森を抜けないといけない。
どうやったら、この男に言うことを聞かせられるか・・。逃げたら酷い目に あうと脅せれは、いいんだけど・・。
ネイサンと渡り合った売人に 私の腕前では歯が立たない。からかわれるのが、オチだ。
今回も出番がなかったと、残念に思いながら愛刀に目を向ける。と、その時 もう一振りの剣に目がいく。 そうか!
クロエは、ぽんと手を打つ 。
良いのが あるじゃないか。火炎剣を抜刀すると、 勢いよく炎が吹き出る。 準備完了。
その剣先を売人に向ける。
「 さあ、立ちなさい」
*****
ネイサンの部屋のドアから漏れる明かりを見て クロエは腰に手を当て、やれやれと首を振る。
心配して見に来てみれば まだ寝てない。
これで徹夜は何日目?
このままでは体を壊してしまう。
あの後 ネイサンが気持ちを奮い立たせて 売人を連行して街まで戻ってきたのは良いが それ以来ずっとこの調子だ。
コンコン!
「・・・」
ノックしても返事も無い。
ドアを開けるとネイサンが机にかじりついている。そんなネイサンを見て、ため息をつく。
テーブルの上には大好物のオムライスが手つかずで置いてある。帰ってから、お茶の一杯も口にしていない 。
無理をしているネイサンの姿に心が痛む。
売人の事情聴取や、それに関連する証拠探しなどして 忙しさで気を紛らわそうと 自分で自分を痛めつけている。見ているこっちが辛い 。
強制的にでも寝かせないと。
しかし、だからといって 言うことを聞くはずがない。でも、ネイサンが立ち直るのを待っていたら 病気になってしまう。
こうなったら荒治療が必要ね。
部屋に入るとクロエは、明かりを隠すように机の前に立つ。 影ができて初めて私の存在に気づいたネイサンが顔を上げる。
「クロエ・・」
目の下にクマがあり、生気も無い。 ゾンビみたいだ。まったく世話が焼ける。ネイサンが 決められないなら、私が決めてあげる。
「ネイサン様。 記憶を読み取る魔法石を使ってください」
「っ」
ズバリと そう切り出すと ネイサンが顔を強張らせる。
(完全無敵のネイサンも人の子ね)
まだ、記憶が録画できる魔法石に余裕があるはず。しかし、かたくなに無視し続けている。
知るのが怖いの だろう。それは、十分理解している。 しかし、このままでは父親に対して不信感を残したままになってしまう。 うやむやにしていい話ではない。
「 お気持ちは わかりますが、 この件の調査の責任者はネイサン様です。ネイサン様には、 真実を確かめる責務があります」
「・・・」
辛そうに耳を傾けるネイサンに 思いを込めて言葉を紡ぐ。
厳しいことを言っていることは自覚している 。
そう進言するのは、所詮かんだ。
(どうして 国王が関与しているとは 思えない)
供述書を読んでみたが、あまりにも売人にとって都合がいい。
「もし、国王が加担していたなら、 それを正すべきです。 それができるのは息子であるネイサン様だけです」
「・・・」
逃げるようにネイサンが目をそらす。
そのことは、ネイサンも本当は分かっている。
いつかは、対峙しなくてはいけない問題だ と。
でも、そのことを自分で決意できないでいる。
誰かに背中を押されるのを待っているのだ。
だったら私が押そう。
バンと 机に両手をついて ネイサンに詰め寄る。 「逃げるのは簡単です。目を瞑って、 耳を塞いで、 口を閉じればいいだけです。 でも、逃げ切れますか?」
「・・・」
ネイサンが私を悲しそうに見上げる。
クロエは、その瞳に優しく微笑む。
ネイサンなら乗り越えられる。
そんな風に思っている私の言葉は無責任なようにも聞こえる。 でも 本心だ。 私が知っているネイサンは鋼の心を持っている。
「その事を分かっているから、辛くて 眠れなくて、食事も喉を通らないんです」
「・・・」
「 私はネイサン様の味方です。だから、決心して下さい」
「・・・・・・そうだな・・」
長い沈黙の後、疲れたような 諦めたような返事をするネイサンは少年のように傷つきやすそうな顔をしている。その顔にキュンとする。
よしよしと頭を撫でたくなる。
クロエは ネイサンの手を取ると 大丈夫。お姉さんがついていると ぎゅっと握る。
だから、頑張れと心の中で応援する。
「ネイサン様・・」
「たとえ・・悪い結果だとしても・・」
硬い表情で話し始めたネイサンだったが 言葉が続かない。 私の手前 虚勢を張っているだけだ。(ギリギリだ)
王子として 領主として皆を守る立場にある。
だから、自分の弱さを見せないようにしている。 それが 今はスキだらけで 突いたら倒れそうなほど弱っている。こんな脆いネイサンを見るのは初めてだ。
クロエは、ネイサンを抱きしめる。
「 クロエ?」
厳しい決断をさせて、ごめんねと謝る気持ちと 期待に応えようとする、その気高さに ありがとうと言いたい気持ちのすべてを込めて その腕に力を込める。
私のネイサン。最高に素敵で優しいて良い子。
支えてあげる 。
「どんな時でも、傍にいますから」
そう誓う。
何か もっと力になる言葉を言いたいのに、 いつもの おしゃべりは影を潜めて 何も思いつかない 。それでも自分の気持ちを伝えたくて、言葉ではなく態度で示そうとネイサンの背中を叩く。
*****
突然クロエが 私を抱きしめると背中をトントンと叩く。そんな子供を あやすような事をされると甘えてしまいたくなる。 気が緩んで涙がこみ上げる。これでは立場が逆だ。 けれど、クロエから流れ込んでくる 優しさに勇気もらう。
もし一人だったら、先延ばしにしていただろう。否、正直に言えば目を瞑っていた。 傷つきたくない。尊敬する父上を失いたくない。
逃げてしまいたい。 そんな思いばかりだった。
でも、クロエは 私が逃げることを許してはくれない。 クロエの前で良い人間でいたい。
期待を裏切りたくない。そう思ってしまう。
それに父上が関与してしないと 信じたい。
悲観的になるのは早い。
「 ありがとう。クロエ」
私を抱きしめるクロエの体は、折れてしまいそうなほど華奢だ 。それなのに 芯が まっすぐ通って ぶれることがない。 強い心の持ち主。
姉のように、時には母のように 私を包んでくれる。 守らなければいけない者に、守られている。 そう いう事なのだ。 ネイサンは甘えるように クロエの首筋に顔を埋める。
(少しだけ。もう少しだけこうさせてくれ)
*****
私を抱いていた手を解いて ネイサンが立ち上がる。 その顔には、いつもの微笑みが浮かぶ。それを見てクロエは、もう大丈夫だと安心して笑みを返す。
クロエは、ネイサンに自分の小さな手を出すと ネイサンがその大きな手を重ねる。
「 では、行きましょう」
「ああ」
しっかりと 手をつなぐと 部屋の外へと歩き出す
***
クロエは 流れる景色をぼんやりと見る。
10日間に渡る旅行(出張)が終わった。
売人は王都から来た兵士たちに引き渡され 私たちは帰途についた。
馬車に揺られながら 今回の事件のことを振り返る。 結局、国王が 関与しているのかどうかは曖昧のまま終わった。 チャールズ・バリンは 国王の右腕と呼ばれている大臣の補佐官の一人で 書類の紙は本物だったが 国王のサイン偽物だった。 つまり、売人は いいように利用されただけだ 。
しかし、補佐官が単独犯なのか 誰かの命でしたしていたか までは分からなかった。
後は国王の調査に 任せるという事で決着がついた。
前の席では ネイサンが厳しい顔で 報告書を書いている。 仕事、仕事で よく飽きないものだ。
今回の旅行中 ネイサンの笑顔を見たのは、ほんの少し。景色さえ見ていない。
いつに なったら暇になるのか・・。
(・・・)
このままでは駄目だ。
せっかく、事件も解決したんだから 楽しまなくちゃ。 でも、馬車の中で旅行気分を味合わせると言っても・・。
そうだ。 ピーターさんに娘さんたちの為と焼き栗を渡したが、ピーターさんが 私も食べなさいと 返された 焼き栗があった。
「はい。 休憩の時間です」
そう言うと ネイサンから書類を取り上げる。
「あっ、何をする」
「いいから、いいから」
取り返そうとするネイサン背を向けて 書類をカバンに押し込むと 有無を言わさずに テーブルの上を片付ける。
「クロエ・・」
「まあ、これでも食べて待っててください」
不服そうな ネイサンの口に焼き栗を押し込む。
その間に お皿の上に焼き栗を並べて、お茶の用意に取り掛かる。
嫌がると思ったが、素直に食べ始めと笑顔になった。
「んっ、美味しい。これは何だい?」
「 でしょう。焼き栗ですよ。もっと 食べ下さい」
2個目を押し込む。 する、気に入ったのから ネイサン自ら 3個目に手を伸ばす。
「 焼き栗?いつのまに作ったんだい?」
「 作ったんじゃありません。買ったんですよ。ネイサンが ザンガルの名物だと言ってたでしょ」
「 そうだった。忘れてた」
全く仕事しか頭に ないんだから。 そんな味気ない生活 全く楽しくない。
お茶のカップを手渡しながら 私用に買ったお土産を自慢しようと思いつく。
いかに自分が 損をしたか分からせてやる。
鞄の中から小物入れを取り出すと ネイサンの顔の前に突き出す。
「 ほら、見てください。 綺麗でしょ。ネイサンが仕事してる間に買ったんです」
「本当だ。とても精巧な作りだね」
ネイサンが手に 取ると いろんな角度から感心したように見ている。嫌味を言ったのに、ネイサンは小物入れに夢中だ。
全く きいてない。 そのうち自分でも作れるとか言い出しそうだと呆れる。
「ピーターさんは、うさぎの置物を買いましたから 興味があるなら見せてもらったらどうですか?」
「 ピーターと一緒だったのか?」
入れ物から目を離して私は見る。 クロエは、そうだと頷く。
「そうですよ。二人で 観光がてらい、ろんなところを見て回って。 すそれで美味しいご飯を食べて、 お土産を買って 荷物まで持ってもらいました」
「・・・」
話をしていると なぜかネイサンの 機嫌が悪くなる 。何か気に障ることを言った?
急に黙りこくったかと思うと 入れ物を突き返して おもむろに書類をえ手を伸ばす。
「んっ」
「ネイサン様?」
「・・・」
名前呼んでも返事もしない。拗ねてる?
なんで? 話なんて、ちょっとしかしてないのに・・。 お土産を買えなかったから?
それとも、名物料理を食べれなかったから?
そんなことで気分を害するとは思えないけど・・。 ピーターさんと一緒だと言ってから・・!
(ああ、自分だけ仲間外れにされたと思ったのね)
大人気ない。 仕事を優先した自分のせいなのに。 こんな事ならネイサンに、お土産の一つも買っておけばよかった。
ネイサンが 仏頂面で乱暴に書類を捲っている。
男って、いつもこうだ。
面倒くさい生き物だ。 まあ、でもこのまま放っておいたら長引きそうだ。 でも 今からザンガルには戻れない。なんとか機嫌を直してもらわないと
帰りの間ずっと気まずい。
拗ねてる原因が仲間外れなら、 一緒に出かけたいと言えばいいのでは?
「 そういえば・・私、クレール領に 住んで3年ですけど、 街に行ったことがないんですよね」
「・・・」
馬車の窓を鏡 代わりにして、ネイサンの様子を伺いながら 独り言のように呟く。
すると、ネイサンが伏し目がちに私を盗み見る。
(おっ! 食いついた)
「 一度行ってみたいけど・・一人で楽しくないし・・クレール領の名物って何だったかしら?」
「・・・」
指で顎を支えながら小首を傾げる。すると、ネイサンが 書類から目を離して そわそわする。
(ふふっ)
「他の使用人たちとは、さして親しくもないし・・ ジェームズさんは、歳が歳だし・・」
「 それなら、私が連れて行ってあげよう」
「 本当ですか?」
くるりと身体ごとネイサンを向くと嬉しそうに合わせた手を傾げた頬をつける。
すると、ネイサンが満面の笑みになる。
( 単純ね)
「 クレールのことなら任せろ。ピーターより詳しい ぞ」
そう言って 自分の胸を叩く。
ピーターより?
もしかして・・それが原因 なの?
子供だ。本当に子供だ。 使用人をライバル視して、どうする。 歳が離れてるんだから、ピーターさんに 兄のポジション奪われるはずもないのに・・。
「では、計画を練ろう」
新しくお茶を注いでいると ネイサンが地図を広げる。 本気度が高い。
(なっ・・)
完璧を求めるネイサンだもの 計画にも、それを求めるはず。 分刻みのスケジュールになりそう。
「どこが 良いかな・・。連れて行きたい場所が、いっぱいあって困るなあ・・。まずは・・」
ネイサンが大事な書類を裏返して リストを書き出す。 今更 行きたいとは言えない。
「 お仕事が、あるんですから 無理なさらなくても・・」
「 何を言っている。他ならぬクロエの願いだ。仕事より大事だ」
「 それは・・楽しみです・・」
引きつった笑みで答える。
駄目だ。付き合うしかない。
クロエは、横を向いて小さくため息をつく。
****
ネイサンからの報告書が届いたその日 、王都の外れの河に 補佐官の チャールズ・バリンの 溺死体が浮かんだ。
第1部 『 二子石』と 火炎剣 完
そして、二人の事件は まだ続く。
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