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旅行(出張)の目的
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ジェームズさん達に見送られて、「さあ、楽しい旅行の時間だ」と、出発したクロエだったが、15分も過ぎると 景色を眺めるのにも飽きた。
「・・・」
馬車の窓から見えるのは山、森に生える木、青い空の 三つ。何分経っても 景色が変わらない。花でも咲いていたら楽しめるのに。
(はぁ~、つまらない)
おしゃべりしようにもネイサンは 相変わらず険しい顔で書類を読んでいる。
こっちから 声を掛けない限り、話しそうにない。 話しかけてみる?駄目だ。仕事の邪魔をしては、いけない。
今回はメイドではなく、従者だもの。
おとなしくしていよう。
何時もの ひらひらした可愛らしい膝丈のメイド服ではなく、大人で シックな ふくらはぎ丈のワンピースだ。 落ち着きが大事だ。
でも、どうしてメイドではダメなんだろう?
そもそも、どうして今回は私を 同行させようと思ったんだろう。 別に他の人でも構わないのでは?
旅行に行けると浮かれていたけれど・・。
「う~ん」
顎を手で押さえながら、その理由を考えてみる。
・・そうか!ポンと手を打つ。
日頃の私を見て、役に立つと見込んだんだ。
でも、何を?
剣術?話術?料理?・・・もしかして 美人を連れてると敵が油断するから?
まぁ、顔は、そこそこ良いと思う。こっちの両親に感謝ね。
冗談は ともかく、何も言わないなら 大したことは 頼まれないのかも。計画を練るのが大好きなネイサンの性格を考えれば、無いだろ。
今回は旅行は盗賊討伐じゃないから戦う事も無いだろうし。 自由時間がたっぷりありそう。
だったら、折角の旅行なんだから、色々と見て回って、美味しい物を食べて、お土産を買いたい。
その為には、情報収集が感じね。 でも、ガイドブックがあるわけでもないし。 聞ける人は一人しかいない。 どうしようかと、話しかけるタイミングを見計らう。
しかし、全然書類から目を離さない。すごい集中力だ。でも、このまま仕事が終わるのを待っていたら目的地に着いちゃう。
「ネイサン様。今から行くザンガルは 何が名物なんですか?」
ネイサンが読んでいた書類から顔を上げると私と向き合うために書類をまとめてカバンにしまう。
私とちゃんと向き合って話すためだ。
小さな子供だからと、ないがしろにしない。
こう言う片手間にしないところに、好感が持てる。
書類を見ないで思い出そうと空を見ている。
既に、どんなところか把握しているらしい、やはりネイサン抜かりがない。
「そうだな・・ 栗と芋だな」
「へー、栗ですか」
そうか、ならモンブランみたいな お菓子があるかも。絶対食べよう。
そんなことを考えていたクロエだったが、 肝心のことを 聞いていなかったことを 思い出した。
自由時間は、どれくらいあるんだろ。
連れて来たからには何かしら仕事があるはずだ。
それによっては、観光する箇所を厳選しないと いけなくなる。
今回の旅行の目的は『双子石』の調査と言っていた。 一緒に同行しているピーターさんは御者だけど、 私は従者だ。従者は常に主と行動を共にする。
だったら、私は書記みたいな事を すればいいのかな?それなら、私でも務まるけど・・。
やはり、先に確認しておかないと不安だ。
「ネイサン様。調査ということですけど、具体的には何をするんですか?」
「 今回は石を買った人間を見つけたして、売人を突き止める」
購入リストが、あることは知ってるけど・・。
買ってないとシラを切られたら終わりでは?
そんな緩い方法で探し出せるの?
「・・・」
「心配するな、ちゃんと考えている」
そのちゃんとを 言って欲しいのに。笑顔で誤魔化そうとしている。
だけど、突然、ネイサンが訪ねて行ったら、ある程度の反発は予想出来る。口だけだったらいいけど、もし襲ってきたら?
でも、怖がってはいられない。
ネイサンは最強と謳われる騎士たけど・・。
そばに居るのが、子供の体の私一人で大丈夫なんだろうか?
犯人を本気で捕まえるなら 私たちに協力してくれる兵士の様な人たちが必要だ。普通に考えれば、その方が安全だし、効率が良い。
王命で色々解決してるらしいけど、一度もネイサンの部下の人を見たことが無い。
まさかの現地集合、現地解散?
行き当たりばったりの 作戦では、うまくいかない事は 素人の私でも分かる。
「前々から思ってたんですけど、ネイサン様の兵は、どこに居るんですか?」
「兵?いないよ」
ネイサンが、ためらいもなく首を横に振る。
いない? そんな馬鹿な!どんなに優秀でも、 一人で全てをこなせるはずが無い。
「 では、どうやって事件を解決してるんですか?」
「そうだなあ・・大抵は現場で協力者を得るかな」
協力者?・・地元の傭兵とか、 そう言うを雇うの?
それとも、王子だから、皆従うの?
そんな簡単なことではないと思うけど・・。
ネイサンの答えに眉をひそめる。
もしかして、話が通じてない?
「 いえ、そうではなく戦力のことです」
「 戦力?」
「 ですから・・」
何故 通じない。
まるで、初めての言葉を聞くような反応のネイサンを見て 説明しようと 口を開いたが使用人たちの言葉を思い出して 口を閉じる。
魔獣の群れを一撃で倒したとか、 大量の魔力を消費する魔法石を一瞬で1000個作ったとか、 眉唾ものだと思っていたが 真実だったと理解する。
たぶん今まで一度もピンチになった事が無いんだ。 それほど魔力が多いんだ。
全てが規格外。聞く内容を間違えた。
ネイサンが、一人いれば全て片付くんだ。
「クロエ?」
「えっ、ああ、いいです。分かりました」
首をかしげるネイサンを見てクロエは自分の顔の前で手を振る。
私は戦力外ってことだ。確かにネイサンに比べれば私は、 役立たずだ。
でも、魔力以外のことなら私にも出番ある。
クロエは、無意識に 自信を取り戻そうと 護身用にと持参した愛刀をつかむ。 慣れ親しんだ感触に安心する。
クロエは、愛刀を膝の上に乗せると感謝を込めて撫でる。私の愛刀。 相棒と言ってもいい。 この3年間、毎日 振り続けて来たんだから。
「それを持って来たのか?」
「もちろんです」
ネイサンの質問にクロエは即答する。
魔力の無い私にとっては必需品だ。
取り上げられないように 大事に抱えると、ネイサンが、くすりと笑う。 子供みたいだと思ってるな。ムッとして睨みつける。
「どれ、貸してごらん。手入れしてないだろ」
「 いいえ。ちゃんと研いで刃こぼれのないようにしています」
間違った指摘に、ツンとそっぽを向く。 昔、治療に来た軍人さんに剣の手入れを怠ると、いざという時使い物にならないと注意された。
そう言われて、ものは試しと、枝 を切ってみたが、切れなかった。 ジェームズさんに相談すると 、刃は定期的に研がないと、なまくらいになると教えてもらった 。
それ以来ちゃんとしている。
「 いいから」
ネイサンが渡せと手を出す。
いいでしょう。私が大事にしてることを証明しましょう。
「分かりました」
剣 を渡すとネイサンが鞘から外して、刀身を見る。 しっかり手入れしていると私を 見て軽く頷く。 今度は片目をつむって 刀身を自分の目の高さまで持ち上げる。
こうして、じっくり見られると自分を評価されているみたいで落ち着かない。
別に褒めて欲しいわけじゃない。私が満足していれば、それで十分だ。
いや、嘘だ。ものすごく褒めて欲しい。
ダメ出しされたら凹む。 どうなんだろう?合格点もらえる?
ネイサンが刃に指を当てて、すーっとなぞると、その側から輝きだす。
「なっ、 何してるんですか?」
慌てて止めようとした時には 遅かった。
刀身の中央に2本の線が入ったかと思うと間にアラベスクの模様が浮き出る。 キラキラ輝きだした愛刀を見て、木こりになった気分だ。
『 お前が渡した剣は、この金の剣か?それとも、この銀の剣か?』
『い いえ、私が渡したのは銅の剣です』
ネイサンが剣を収めると鞘をひとなでしてから渡してくる。
勝手なことをと思うが 本人に悪気はないだけに 受け入れるしかない。
「よく手入れしてある。でも、子供が使うには重いから軽くした。それと魔力を賦与しておいたから」
「 ・・ありがとうございます」
褒められて嬉しいが、味も素っ気もない実用一点張りの私の剣が、白い鞘の宝刀?になってしまった。 剣を受け取りながらも、もはや別物だと、がっかりする。 私の愛刀が都会から帰ってきて別人になった。 どれほど変わったのかと抜刀するとアレ?と思う。 柄のフィット感は変わらない。
よかった。変わったのは見た目だけだ。 中身は変わってない。
「 クロエ。いざとなったら剣を抜くのか?」
ネイサンが深刻そうに、その覚悟があるのかと聞いて来た。
「・・・」
馬車の窓から見えるのは山、森に生える木、青い空の 三つ。何分経っても 景色が変わらない。花でも咲いていたら楽しめるのに。
(はぁ~、つまらない)
おしゃべりしようにもネイサンは 相変わらず険しい顔で書類を読んでいる。
こっちから 声を掛けない限り、話しそうにない。 話しかけてみる?駄目だ。仕事の邪魔をしては、いけない。
今回はメイドではなく、従者だもの。
おとなしくしていよう。
何時もの ひらひらした可愛らしい膝丈のメイド服ではなく、大人で シックな ふくらはぎ丈のワンピースだ。 落ち着きが大事だ。
でも、どうしてメイドではダメなんだろう?
そもそも、どうして今回は私を 同行させようと思ったんだろう。 別に他の人でも構わないのでは?
旅行に行けると浮かれていたけれど・・。
「う~ん」
顎を手で押さえながら、その理由を考えてみる。
・・そうか!ポンと手を打つ。
日頃の私を見て、役に立つと見込んだんだ。
でも、何を?
剣術?話術?料理?・・・もしかして 美人を連れてると敵が油断するから?
まぁ、顔は、そこそこ良いと思う。こっちの両親に感謝ね。
冗談は ともかく、何も言わないなら 大したことは 頼まれないのかも。計画を練るのが大好きなネイサンの性格を考えれば、無いだろ。
今回は旅行は盗賊討伐じゃないから戦う事も無いだろうし。 自由時間がたっぷりありそう。
だったら、折角の旅行なんだから、色々と見て回って、美味しい物を食べて、お土産を買いたい。
その為には、情報収集が感じね。 でも、ガイドブックがあるわけでもないし。 聞ける人は一人しかいない。 どうしようかと、話しかけるタイミングを見計らう。
しかし、全然書類から目を離さない。すごい集中力だ。でも、このまま仕事が終わるのを待っていたら目的地に着いちゃう。
「ネイサン様。今から行くザンガルは 何が名物なんですか?」
ネイサンが読んでいた書類から顔を上げると私と向き合うために書類をまとめてカバンにしまう。
私とちゃんと向き合って話すためだ。
小さな子供だからと、ないがしろにしない。
こう言う片手間にしないところに、好感が持てる。
書類を見ないで思い出そうと空を見ている。
既に、どんなところか把握しているらしい、やはりネイサン抜かりがない。
「そうだな・・ 栗と芋だな」
「へー、栗ですか」
そうか、ならモンブランみたいな お菓子があるかも。絶対食べよう。
そんなことを考えていたクロエだったが、 肝心のことを 聞いていなかったことを 思い出した。
自由時間は、どれくらいあるんだろ。
連れて来たからには何かしら仕事があるはずだ。
それによっては、観光する箇所を厳選しないと いけなくなる。
今回の旅行の目的は『双子石』の調査と言っていた。 一緒に同行しているピーターさんは御者だけど、 私は従者だ。従者は常に主と行動を共にする。
だったら、私は書記みたいな事を すればいいのかな?それなら、私でも務まるけど・・。
やはり、先に確認しておかないと不安だ。
「ネイサン様。調査ということですけど、具体的には何をするんですか?」
「 今回は石を買った人間を見つけたして、売人を突き止める」
購入リストが、あることは知ってるけど・・。
買ってないとシラを切られたら終わりでは?
そんな緩い方法で探し出せるの?
「・・・」
「心配するな、ちゃんと考えている」
そのちゃんとを 言って欲しいのに。笑顔で誤魔化そうとしている。
だけど、突然、ネイサンが訪ねて行ったら、ある程度の反発は予想出来る。口だけだったらいいけど、もし襲ってきたら?
でも、怖がってはいられない。
ネイサンは最強と謳われる騎士たけど・・。
そばに居るのが、子供の体の私一人で大丈夫なんだろうか?
犯人を本気で捕まえるなら 私たちに協力してくれる兵士の様な人たちが必要だ。普通に考えれば、その方が安全だし、効率が良い。
王命で色々解決してるらしいけど、一度もネイサンの部下の人を見たことが無い。
まさかの現地集合、現地解散?
行き当たりばったりの 作戦では、うまくいかない事は 素人の私でも分かる。
「前々から思ってたんですけど、ネイサン様の兵は、どこに居るんですか?」
「兵?いないよ」
ネイサンが、ためらいもなく首を横に振る。
いない? そんな馬鹿な!どんなに優秀でも、 一人で全てをこなせるはずが無い。
「 では、どうやって事件を解決してるんですか?」
「そうだなあ・・大抵は現場で協力者を得るかな」
協力者?・・地元の傭兵とか、 そう言うを雇うの?
それとも、王子だから、皆従うの?
そんな簡単なことではないと思うけど・・。
ネイサンの答えに眉をひそめる。
もしかして、話が通じてない?
「 いえ、そうではなく戦力のことです」
「 戦力?」
「 ですから・・」
何故 通じない。
まるで、初めての言葉を聞くような反応のネイサンを見て 説明しようと 口を開いたが使用人たちの言葉を思い出して 口を閉じる。
魔獣の群れを一撃で倒したとか、 大量の魔力を消費する魔法石を一瞬で1000個作ったとか、 眉唾ものだと思っていたが 真実だったと理解する。
たぶん今まで一度もピンチになった事が無いんだ。 それほど魔力が多いんだ。
全てが規格外。聞く内容を間違えた。
ネイサンが、一人いれば全て片付くんだ。
「クロエ?」
「えっ、ああ、いいです。分かりました」
首をかしげるネイサンを見てクロエは自分の顔の前で手を振る。
私は戦力外ってことだ。確かにネイサンに比べれば私は、 役立たずだ。
でも、魔力以外のことなら私にも出番ある。
クロエは、無意識に 自信を取り戻そうと 護身用にと持参した愛刀をつかむ。 慣れ親しんだ感触に安心する。
クロエは、愛刀を膝の上に乗せると感謝を込めて撫でる。私の愛刀。 相棒と言ってもいい。 この3年間、毎日 振り続けて来たんだから。
「それを持って来たのか?」
「もちろんです」
ネイサンの質問にクロエは即答する。
魔力の無い私にとっては必需品だ。
取り上げられないように 大事に抱えると、ネイサンが、くすりと笑う。 子供みたいだと思ってるな。ムッとして睨みつける。
「どれ、貸してごらん。手入れしてないだろ」
「 いいえ。ちゃんと研いで刃こぼれのないようにしています」
間違った指摘に、ツンとそっぽを向く。 昔、治療に来た軍人さんに剣の手入れを怠ると、いざという時使い物にならないと注意された。
そう言われて、ものは試しと、枝 を切ってみたが、切れなかった。 ジェームズさんに相談すると 、刃は定期的に研がないと、なまくらいになると教えてもらった 。
それ以来ちゃんとしている。
「 いいから」
ネイサンが渡せと手を出す。
いいでしょう。私が大事にしてることを証明しましょう。
「分かりました」
剣 を渡すとネイサンが鞘から外して、刀身を見る。 しっかり手入れしていると私を 見て軽く頷く。 今度は片目をつむって 刀身を自分の目の高さまで持ち上げる。
こうして、じっくり見られると自分を評価されているみたいで落ち着かない。
別に褒めて欲しいわけじゃない。私が満足していれば、それで十分だ。
いや、嘘だ。ものすごく褒めて欲しい。
ダメ出しされたら凹む。 どうなんだろう?合格点もらえる?
ネイサンが刃に指を当てて、すーっとなぞると、その側から輝きだす。
「なっ、 何してるんですか?」
慌てて止めようとした時には 遅かった。
刀身の中央に2本の線が入ったかと思うと間にアラベスクの模様が浮き出る。 キラキラ輝きだした愛刀を見て、木こりになった気分だ。
『 お前が渡した剣は、この金の剣か?それとも、この銀の剣か?』
『い いえ、私が渡したのは銅の剣です』
ネイサンが剣を収めると鞘をひとなでしてから渡してくる。
勝手なことをと思うが 本人に悪気はないだけに 受け入れるしかない。
「よく手入れしてある。でも、子供が使うには重いから軽くした。それと魔力を賦与しておいたから」
「 ・・ありがとうございます」
褒められて嬉しいが、味も素っ気もない実用一点張りの私の剣が、白い鞘の宝刀?になってしまった。 剣を受け取りながらも、もはや別物だと、がっかりする。 私の愛刀が都会から帰ってきて別人になった。 どれほど変わったのかと抜刀するとアレ?と思う。 柄のフィット感は変わらない。
よかった。変わったのは見た目だけだ。 中身は変わってない。
「 クロエ。いざとなったら剣を抜くのか?」
ネイサンが深刻そうに、その覚悟があるのかと聞いて来た。
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