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破鏡
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ビビアンは いつもの席で、いつものお茶を飲みながら フィアナに妖精王との話を説明した。
フィアナは信じられないと首を振って否定する。確かに私も未だに信じられない。
「運命? 有り得ないわ! 人と妖精は相容れない者同士。ビビアンと入れ替わるまで、アルは私の存在自体知らなかったのよ」
運命という言葉にロマンチックなものを想像するかと思ったが、今のフィアナにとっては、不確定なものにしか思えないらしい。
「でも、妖精王が あなたはアルフォンと出会う運命だと言っていたわ」
「ビビアンは妖精王を信じるの?」
フィアナが不満そうに眉間に皺を寄せる。正直、運命の一言で全てを片付けられては、たまったものじゃないと言いたい。ただのこじつけにしか思えない。
でも、同意する事が出来ない。
「……否定するだけの根拠が無いわ」
「じゃあ、ウエディングドレスを着ただけで運命が変わってしまったの?」
「それは……」
私にも分からない。
あのウェディングドレスが本当に魔法のドレスなら、話は違ってくる。魔法と運命。もはや無敵のワードだ。
いくら話しても堂々巡りで、フィアナが納得す答えは 一生かかっても出ないかもしれない。問題は別の事だ。
その事をいざ、切り出そうとするとフィアナが絶望するか顔が浮かぶ。
(どうして、フィアナにばかり悲しい事が起こるのだろう……)
けれど、黙っている事の方がフィアナを深く傷つける。たとえこれで口を聞いてもらえなかったとしても、その事をきちんと話そう。秘密にしても意味が無い。何よりフィアナには、残った時間を悔いなく生きて欲しい。
そのことを伝えるのが友であり、入れ替わった相手の私の責務だ。
「今はそれより、大事な話が有るの」
「今度はいったい何?」
フィアナの不安そうな顔が、一層深くなる。
ビビアンは祈るように真実を伝える。
「フィアナ、私達は入れ替わったけど、もって生まれた物まで、入れ替わったわけじゃないの」
「……どういう事?」
キョトンと首をかしげているフィアナ
を見ていると、くじけそうになる。
ビビアン自身この事を伝えるのは辛い。乾いた唇を何度も舐めて、愚図愚図している自分を叱りつける。
(あなたはビビアン・マーガレット・ロイドなのよ)
気持ちを落ち着けると躊躇いがちに切り出した。
「……落ち着いて聞いてね。……貴女の寿命は変わらないの」
「えっ?」
まるで仮面のように色を失ったフィアナの顔にピシリとひびが入る。
「……ああぁぁぁ」
その亀裂から悲鳴が噴き出して、内側から彼女を壊して行く。
細く長く続く悲鳴に 堪らず目を背ける。見ていられない。
ビビアンはこみ上げてくる苦しみに押し潰されそうになっていた。『死ぬのは あなただ』まるで、そう言って胸に剣を突き立てるように余命宣告をした。妖精王に、そう聞かされた時から この役目は私だも気付いていた。
だから覚悟できているはずだった。
それなのに……。
( こんな姿を見るくらいなら……)
後悔で痛み出した胸を押さえる。
フィアナは、人間として生きると決めた。その事で、新しい人生を手に入れたと思っていたのに、 それは期限つきのものだと知ったのだから残酷すぎる。事実を受け入れるのは難しい。
フィアナの心の内が手に取る様にわかる。もしかしたら、それは私だったかもしれないんだから。
出来る事なら自分の寿命を半分、分け与えたい。 そう言いたくなるほど、泣きくれる姿は、あまりにも 痛ましかった。
悲鳴が止み、それと同時に 支えを失ったように崩れ落ちた。
「フィアナ……」
無力な私は掛ける言葉が見つけられず、ただオロオロするばかり。
溶けてしまいそうなほど涙がとめどなく溢れ、フィアナの頬を滝のように涙だか流れ落ちる。
(ああ、こんな時人間だったら抱きしめて涙を拭ってあげられるのに)
泣き出したフィアナを歯がゆい気持ちで、その周りを飛んで見守るしか出来ない。計り知れないフィアナの悲しみが私にも伝わってくる。
「大丈夫?」
嗚咽をあげるフィアナに、そんな言葉を掛けた自分を蹴飛ばしたい。大丈夫なはず無い。だけど他に慰めの言葉が見つからない。
両手で覆って泣いているフィアナの顔を覗き込んだ。その顔は人形の様に感情が無くなっていた。
涙が零れて居なければ、死んでいるかと思ってしまうほと 無機質なものだった。フィアナが壊れてしまった。
言い知れぬ不安が心を揺さぶる。
「フィ、フィアナ……」
そっと声をかけた。すると、私の呼びかけに微かに頷いて、ヨロヨロと立ち上がった。
呆然としたフィアナの目はうつろで、どこを見ているのかわからない。
私の声が耳に本当に入っているのかも疑わしい。
「フィアナ」
死人のようなフィアナの態度に堪らず
名前を呼ぶと、焦点の合わない目が私を見る。
「っ」
ぞくりと背中を冷たいものが流れる。完全に生きる気力を失くしている。
そうさせたのが自分だと思うと、ごめんなさいと謝りたい。だけど、奥歯を噛み締める。
(死の宣告をしたのは私なんだから、 揺らいでは駄目だ)
そんな無責任なことをしたくない。
本当は立ち直るまで傍にいてあげたい。だけど、今は私の顔も見たくないだろう。
フィアナが、 部屋に向かって歩き出す。傷ついた動物が本能的に一番安全な場所へ帰ろうとするのと同じだ。
酔っ払ってるかのように、あちこちぶつかりながら。おぼつかない足取りに、ちゃんと送り届けようと、ぶつかりそうになる度、服を引っ張って引き戻す。
無事フィアナが部屋に入ったのを見届けると、 後ろ髪引かれる気持ちのまま
飛び立った。
私に出来るのはここまでだ。これから、フィアナに待ち構えていることを思うと苦しい。受け入れるのが 難しいことは分かっている。だけど、一日も早く立ち直って欲しい。
(ああ、どうか……どうか……どうか……)
*****
フィアナは 泣きながら鉛のように重い体を引きずって、何とか部屋に戻って来た。ベッドに腰掛けて震える息を吐きだす。
(ああ、どうして……)
そう考えただけで新しい涙が視界をぼかす。自分が死ぬことが恐ろしい。
妖精にとって死ぬことは当たり前の事だったし、今まで一度も悲しいと思った事が無かった。
他の妖精が朝日と共に金の粉になって消えて行くのをただ見守るだけだった。でも、今は違う。
死にたくない。
お母さんや、アルや、ビビアンと別れると思うと身を切られる程辛くて悲しいし。もっと一緒に居たい。
(心を凍らせられる事が出来れば、こんなに苦しくないのに……)
ビビアンから 自分の余命が後7ヶ月だと聞かされた瞬間、一番先に頭に浮かんだのはアルと別れなくては いけない言う現実だった。自分でも気づかぬうちにアルに対して好き以上の気持ちを持っていたんだ。多分、愛と言うものだと思う。
それを知るタイミングが この時なんて……。自分の身勝手な行動がアルを傷つける。
(アルに何と言えば良いの?)
私に好意を向けてくれた。そんな大切な人なのに……。
騙す気持ちなど微塵もなかった。だけど、恨まれるのは当たり前だ。
きっと黙っていたことを怒るだろう。
何も知らずに私と結婚しまったと。
心を弄んだと罵るだろう。
心のどこかで、ビビアンと入れ替わって人間になったんだから このままアルと生きられる。
死なないと思い込んでいた。
愚かだった。アルとの暮らしが 幸せで、 すべてが上手くいくと信じて疑わなかった。笑って過ごしてるうちに、寿命のことなど すっかり忘れていた。
いいえ。もしかしたら気づかぬうちに、自分で自分をだまして 付きまとう死の影を無意識に見ないふりをしていたのかもしれない。
フィアナは見慣れた自分の手を見る。もう人間でいる事が、当たり前になった。羽もそのうち全部消えてしまう。
(どうしてこんなことに……)
軽い気持ちでビビアンの提案を受けたから、妖精に戻れないと知ってショックだった。それでも、 人間としての新しい人生を与えられた。天からの恵みだと思った。アルの側にずっと居られるし、お母さんにも会いに行ける。
とても幸運だと自分のおかれた状況に満足していた。だから、人間になっても、このままで良いと思っていた。
ビビアンの事も、本気で心配していた。妖精になったことで、ご両親と生き別れのようになってしまっている。そんな状態を 一人で耐えている姿に同情した。何とかして元に戻って欲しいと願っていた。そのための協力を惜しまないと。でも、そのうち入れ替わる必要はないと 考えるようになっていた。
(何て自己中心的な嫌な娘になってしまったんだろう)
この世にそんな上手い話など落ちてはいない。自分の力で手にしなければ、得た時と同じように あっという間に失ってしまう。
(大事に守っていたのに……)
アルを幸せにしたいと思っているのに、私がすることは全部悲しい思いをさせるだけ。
「どうして?……ねぇ、どうして? どうしてなの?……どう……して?……」
誰かに答えを求めるように言葉を繰り返す。でも聞こえてくるのは、すすり泣く自分の声だけ。泣いても、泣いても、涙が溢れる。スカートには雨に打たれたようにシミができていた。
どれぐらい泣いていただろう。気づけば、あんなに泣いていたのに、涙が枯れ果てていた。 もう諦めるしかない。そのことを受け入れるしかない。
アルとの日々は、きっと神様が くれたプレゼントだったんだ。 そうアルは私へのギフト。だったら大事にしなくちゃ。これ以上アルを悲しませたくない。私に出来るアルを幸せにする方法は一つ。
瞳のふちを赤くしたままフィアナは、無理やり口角を上げて笑顔を作る。
フィアナは信じられないと首を振って否定する。確かに私も未だに信じられない。
「運命? 有り得ないわ! 人と妖精は相容れない者同士。ビビアンと入れ替わるまで、アルは私の存在自体知らなかったのよ」
運命という言葉にロマンチックなものを想像するかと思ったが、今のフィアナにとっては、不確定なものにしか思えないらしい。
「でも、妖精王が あなたはアルフォンと出会う運命だと言っていたわ」
「ビビアンは妖精王を信じるの?」
フィアナが不満そうに眉間に皺を寄せる。正直、運命の一言で全てを片付けられては、たまったものじゃないと言いたい。ただのこじつけにしか思えない。
でも、同意する事が出来ない。
「……否定するだけの根拠が無いわ」
「じゃあ、ウエディングドレスを着ただけで運命が変わってしまったの?」
「それは……」
私にも分からない。
あのウェディングドレスが本当に魔法のドレスなら、話は違ってくる。魔法と運命。もはや無敵のワードだ。
いくら話しても堂々巡りで、フィアナが納得す答えは 一生かかっても出ないかもしれない。問題は別の事だ。
その事をいざ、切り出そうとするとフィアナが絶望するか顔が浮かぶ。
(どうして、フィアナにばかり悲しい事が起こるのだろう……)
けれど、黙っている事の方がフィアナを深く傷つける。たとえこれで口を聞いてもらえなかったとしても、その事をきちんと話そう。秘密にしても意味が無い。何よりフィアナには、残った時間を悔いなく生きて欲しい。
そのことを伝えるのが友であり、入れ替わった相手の私の責務だ。
「今はそれより、大事な話が有るの」
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「フィアナ、私達は入れ替わったけど、もって生まれた物まで、入れ替わったわけじゃないの」
「……どういう事?」
キョトンと首をかしげているフィアナ
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ビビアン自身この事を伝えるのは辛い。乾いた唇を何度も舐めて、愚図愚図している自分を叱りつける。
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気持ちを落ち着けると躊躇いがちに切り出した。
「……落ち着いて聞いてね。……貴女の寿命は変わらないの」
「えっ?」
まるで仮面のように色を失ったフィアナの顔にピシリとひびが入る。
「……ああぁぁぁ」
その亀裂から悲鳴が噴き出して、内側から彼女を壊して行く。
細く長く続く悲鳴に 堪らず目を背ける。見ていられない。
ビビアンはこみ上げてくる苦しみに押し潰されそうになっていた。『死ぬのは あなただ』まるで、そう言って胸に剣を突き立てるように余命宣告をした。妖精王に、そう聞かされた時から この役目は私だも気付いていた。
だから覚悟できているはずだった。
それなのに……。
( こんな姿を見るくらいなら……)
後悔で痛み出した胸を押さえる。
フィアナは、人間として生きると決めた。その事で、新しい人生を手に入れたと思っていたのに、 それは期限つきのものだと知ったのだから残酷すぎる。事実を受け入れるのは難しい。
フィアナの心の内が手に取る様にわかる。もしかしたら、それは私だったかもしれないんだから。
出来る事なら自分の寿命を半分、分け与えたい。 そう言いたくなるほど、泣きくれる姿は、あまりにも 痛ましかった。
悲鳴が止み、それと同時に 支えを失ったように崩れ落ちた。
「フィアナ……」
無力な私は掛ける言葉が見つけられず、ただオロオロするばかり。
溶けてしまいそうなほど涙がとめどなく溢れ、フィアナの頬を滝のように涙だか流れ落ちる。
(ああ、こんな時人間だったら抱きしめて涙を拭ってあげられるのに)
泣き出したフィアナを歯がゆい気持ちで、その周りを飛んで見守るしか出来ない。計り知れないフィアナの悲しみが私にも伝わってくる。
「大丈夫?」
嗚咽をあげるフィアナに、そんな言葉を掛けた自分を蹴飛ばしたい。大丈夫なはず無い。だけど他に慰めの言葉が見つからない。
両手で覆って泣いているフィアナの顔を覗き込んだ。その顔は人形の様に感情が無くなっていた。
涙が零れて居なければ、死んでいるかと思ってしまうほと 無機質なものだった。フィアナが壊れてしまった。
言い知れぬ不安が心を揺さぶる。
「フィ、フィアナ……」
そっと声をかけた。すると、私の呼びかけに微かに頷いて、ヨロヨロと立ち上がった。
呆然としたフィアナの目はうつろで、どこを見ているのかわからない。
私の声が耳に本当に入っているのかも疑わしい。
「フィアナ」
死人のようなフィアナの態度に堪らず
名前を呼ぶと、焦点の合わない目が私を見る。
「っ」
ぞくりと背中を冷たいものが流れる。完全に生きる気力を失くしている。
そうさせたのが自分だと思うと、ごめんなさいと謝りたい。だけど、奥歯を噛み締める。
(死の宣告をしたのは私なんだから、 揺らいでは駄目だ)
そんな無責任なことをしたくない。
本当は立ち直るまで傍にいてあげたい。だけど、今は私の顔も見たくないだろう。
フィアナが、 部屋に向かって歩き出す。傷ついた動物が本能的に一番安全な場所へ帰ろうとするのと同じだ。
酔っ払ってるかのように、あちこちぶつかりながら。おぼつかない足取りに、ちゃんと送り届けようと、ぶつかりそうになる度、服を引っ張って引き戻す。
無事フィアナが部屋に入ったのを見届けると、 後ろ髪引かれる気持ちのまま
飛び立った。
私に出来るのはここまでだ。これから、フィアナに待ち構えていることを思うと苦しい。受け入れるのが 難しいことは分かっている。だけど、一日も早く立ち直って欲しい。
(ああ、どうか……どうか……どうか……)
*****
フィアナは 泣きながら鉛のように重い体を引きずって、何とか部屋に戻って来た。ベッドに腰掛けて震える息を吐きだす。
(ああ、どうして……)
そう考えただけで新しい涙が視界をぼかす。自分が死ぬことが恐ろしい。
妖精にとって死ぬことは当たり前の事だったし、今まで一度も悲しいと思った事が無かった。
他の妖精が朝日と共に金の粉になって消えて行くのをただ見守るだけだった。でも、今は違う。
死にたくない。
お母さんや、アルや、ビビアンと別れると思うと身を切られる程辛くて悲しいし。もっと一緒に居たい。
(心を凍らせられる事が出来れば、こんなに苦しくないのに……)
ビビアンから 自分の余命が後7ヶ月だと聞かされた瞬間、一番先に頭に浮かんだのはアルと別れなくては いけない言う現実だった。自分でも気づかぬうちにアルに対して好き以上の気持ちを持っていたんだ。多分、愛と言うものだと思う。
それを知るタイミングが この時なんて……。自分の身勝手な行動がアルを傷つける。
(アルに何と言えば良いの?)
私に好意を向けてくれた。そんな大切な人なのに……。
騙す気持ちなど微塵もなかった。だけど、恨まれるのは当たり前だ。
きっと黙っていたことを怒るだろう。
何も知らずに私と結婚しまったと。
心を弄んだと罵るだろう。
心のどこかで、ビビアンと入れ替わって人間になったんだから このままアルと生きられる。
死なないと思い込んでいた。
愚かだった。アルとの暮らしが 幸せで、 すべてが上手くいくと信じて疑わなかった。笑って過ごしてるうちに、寿命のことなど すっかり忘れていた。
いいえ。もしかしたら気づかぬうちに、自分で自分をだまして 付きまとう死の影を無意識に見ないふりをしていたのかもしれない。
フィアナは見慣れた自分の手を見る。もう人間でいる事が、当たり前になった。羽もそのうち全部消えてしまう。
(どうしてこんなことに……)
軽い気持ちでビビアンの提案を受けたから、妖精に戻れないと知ってショックだった。それでも、 人間としての新しい人生を与えられた。天からの恵みだと思った。アルの側にずっと居られるし、お母さんにも会いに行ける。
とても幸運だと自分のおかれた状況に満足していた。だから、人間になっても、このままで良いと思っていた。
ビビアンの事も、本気で心配していた。妖精になったことで、ご両親と生き別れのようになってしまっている。そんな状態を 一人で耐えている姿に同情した。何とかして元に戻って欲しいと願っていた。そのための協力を惜しまないと。でも、そのうち入れ替わる必要はないと 考えるようになっていた。
(何て自己中心的な嫌な娘になってしまったんだろう)
この世にそんな上手い話など落ちてはいない。自分の力で手にしなければ、得た時と同じように あっという間に失ってしまう。
(大事に守っていたのに……)
アルを幸せにしたいと思っているのに、私がすることは全部悲しい思いをさせるだけ。
「どうして?……ねぇ、どうして? どうしてなの?……どう……して?……」
誰かに答えを求めるように言葉を繰り返す。でも聞こえてくるのは、すすり泣く自分の声だけ。泣いても、泣いても、涙が溢れる。スカートには雨に打たれたようにシミができていた。
どれぐらい泣いていただろう。気づけば、あんなに泣いていたのに、涙が枯れ果てていた。 もう諦めるしかない。そのことを受け入れるしかない。
アルとの日々は、きっと神様が くれたプレゼントだったんだ。 そうアルは私へのギフト。だったら大事にしなくちゃ。これ以上アルを悲しませたくない。私に出来るアルを幸せにする方法は一つ。
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