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ため息の味は?
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ロアンヌはレストランで食事をする為に、レグールの仕事場に来ていた。
レグールが私の顎をくいっと掴んで顔を近づける。
(私、何か気にさわることした?)
レグールの瞳を調べても、映っているのは私だけ。
「もうこれ以上、綺麗になるな」
「えっ? 」
「こんな素敵なロアンヌを見たら、他の男が 放っておかないだろう」
私が悪いとばかりに、睨み付けてきた。レグールの不満タラタラな口調に、 クスリと笑う。
(それは、レグール様も同じなのに)
ロアンヌはレグールの指を外すと、自分もぐいっと顔を近づける。
「私はすでに、婚約しているんですよ。口説かれても、ちゃんと断ります」
そう言って約束すると、レグールの顔に笑みが広がる。
「そうだった。じゃあ、仕事終わせて、ロアンヌを自慢しにレストラン行こう」
そそくさと、レグールが外套を置いて机に着く。ロアンヌは長椅子に座ると、仕事に励むイーグルを見つめながら、ニヤニヤしてしまう自分を隠そうと横を向く。
どうしても、レグールの言葉を思い出してしまう。
『これ以上綺麗』、『こんな素敵な』。こんなセリフを言われる日が来るなんて、夢みたい。
(好きな人に褒めてもらう事が、こんなに嬉しいなんて……)
ロアンヌは幸せを噛みしめるように、重ねた手を胸に当てる。
この瞬間を覚えていたい。
「ふぅ~」
甘いため息をつく。
それなのに、その幸せを脅かしそうな手紙のことを思い出してしまった。
"相手の出方を待つ" そういう他人任せの時間を過ごしているからか、ふとした時に影が差す。母にも相談したけれどアンと同じ意見だった。
「はぁ~」
胸が重いと、苦いため息をつく。
「ため息なんてついて、どうしたんだい? 」
レグールの声に顔を向ける。
いつのまにか、仕事が終わっていたようだ。横に座ると、私の手をとる。
「まだ、クリスのことをで悩んでいるのかい? 」
「 いいえ、別に……」
手紙のことは言えない。
言ってしまえば、レグールに心配をかけてしまう。悩みを振り払うと、なんでもないと首を振る。
レグールが私の指を自分の親指で一本づつ撫でる。
「別にロアンヌが相手をしなくても、友達ぐらいいるだろう 」
「友達ですか?」
そう改めて聞かれると、誰もいない気がする。ディーンは友達と言うより兄と言う存在だし……。
「クリスは、綺麗な顔立ちをしているからモテてるだろう」
「それが、そうでもないんです。クリスは、どうしてか女の子にモテないんです」
(と言うより嫌われている? )
最初は普通に遊んでいた。でも何故か、途中で女の子たちがクリスの側に近付かなくなった。
10歳の頃には女の子たちに避けられて、中にはクリスと一緒なら遊ばないとまで言う女の子が出てきた。
だからと言って、一人で出かけるのも後ろめたくて……。結局 私もだんだんと女の子たちと疎遠になり、誰の家とも行き来がなくなった。今でも付き合いがあるのは、親戚の女の子達だけだ。
「だったら男友達はどうだ? 」
「ああ、そうなんです。男の人には人気があるんです。だけど、クリスは 男の人と友達になりたくないみたいなんです」
男の子と遊べなくて寂しくないのかと聞いた事がある。すると、男の子は汚いし 乱暴だから嫌いだと言っていた。
(私は 男の子なんだから、ちょっとぐらい乱暴でも良いと思うのだけど……)
「それでも向こうは、クリスと友達になりたいらしくて、手紙やプレゼントをよくもらっていました。家に招待されたこともありましたけど……」
クリスとの 仲を取り持って欲しいと、私に頼んで来た人もいた。
人を見た目で判断して、好意を無視するのは悪いことだ。私以外にも友達が居た方が良い。と、説得したこともあったけど……。
「結局、全部断っていました」
「 ……… 」
私の指を撫でていたレグールの動きが止る。どうしたのかと視線を動かすと、空を見ているような目をしている。
「レグール様?」
「……ロアンヌは……男色……」
そして、まるで独り言のように何かを呟いた。
「男なんですか?」
レグールが途中で顔を背けたから、よく聞き取れなかった。聞き直そうと声を掛けたが返事も無い。
不安になって、覗き込むようにその横顔を見つめる。レグールの噛み締めている唇を見て沈黙する。
何か嫌な事でも思い出してるように見える。言いたくないのに、わざわざ聞く必要は無い。
でも、何もしないと言うのは婚約者としては怠慢だ。このままにしておいたら、その事を考えて続けてしまう。
「どうしたんですか、レグール様? お顔が怖いです」
「 ……… 」
だから、 直接その事には触れず。気持ちを切り替えさせるために、何も気づかないふりをして、レグールの眉間を撫でて皺を伸ばす。すると、レグールが私の指を掴むと指先にキスした。
「ふふっ」
こう言う小さなスキンシップが私の心をくすぐる。
「ちょっと、昔の嫌な事を思い出してたんだ」
「そうなのですか?」
レグールは、私と違って男だし、戦にも言っている。年上だし、人には言えないことも経験しているに違いない。
( 心の傷が癒えてないのかも)
もっと大人なら、もっと過去を知っていたら、……。そんなことを考えてしまう。
でも、背伸びして、知ったかぶりして言った言葉はメッキと同じ。綺麗だけど、剥がれてしまえば無様だ。
それに人生経験の浅い私が、それを理解するのは難しいだろう。やれる事といえばせいぜい 話を聞く程度だ。
そんな事しか出来ない自分が情けない。心を照らす灯りになりたい。
「私なら、どんな話を聞かされても平気です」
「昔の事さ。今はロアンヌがいるから平気だ」
「 ……… 」
レグールが、こっちへおいでと言うように手を差し出す。
ロアンヌはレグールの膝の上に座る。するとレグールが抱き寄せて甘えるように私の首筋に顔を埋めた。慰めるように髪を撫でる。
誰だって言えないことはある。私だって手紙のことを内緒にしている。
だけど、傍に居ることを許してくれるのは、私を受け入れているからだ。
何にも聞かずに髪を撫で続けているとレグールが体の力を抜いて、もたれかかる。何時も大人のレグール様が 幼な子のようだ 。ロアンヌはレグールの頭のてっぺんにキスをする。
体の力を抜いたと思わせて、顔の位置を調整するのに成功した。顔半分をロアンヌの胸に押し付けて、残り半分でロアンヌの胸を見る。眼福の時間。
それでも、過去が追いかけ来る。
若くて、弱者は、ナグサミ者になりやすい。 自分自身襲われそうになったこともあった。 もちろん返り討ちにしたが、 そう出来ない者もいた。
(助けられなかった……)
忘れたい嫌な記憶だ。
無意識に首を動かすと温かく柔らかくて、いい匂いがするモノに頭を擦り付けていた。
シンメトリーの二つの山が
見える。見ただけで指が触りたくてうずうずする。しかし、ここは仕事場。我慢するしかない。
この後は食事をすることになっている。 ロアンヌも、せっかく着飾ったのに 行かないのは勿体無い。
(だけど……ちょっとくらいなら)
こんなに露わになっていては、抗われないと言うものだ。
ドレスと素肌の境界線を指で、ゆっくりと何往復もする。
ドクドクというロアンヌの心臓の音が 、うるさくなる。途中で指を止めると、ゆっくりと下へドレスを押し下げる。スーッとロアンヌの白い肌が桃色に染まり、胸が大きく上下する。
このまま最後まで押し下げてしまいたい。そして、口に含んでしまいた。
しかし、 そうなれば部屋から出られなくなる。誰が来るかわからない場所で、愛し合うのはロアンヌを軽んじていることになる。今夜はここまで。そう自分に言い聞かせる。
指を外して起き上がると、真っ赤な顔のロアンヌが潤んだ瞳で私を見つめている。
(私を煽らないでくれ)
その火を消すように、お互いに息が整うまで抱き合った。
*****
一仕事終えて部屋に戻ってきたディーンは、クリスが机に向かっている姿に驚きを隠せない。勉強? 本だって、ほとんどを読まないのに。
どういう風の吹き回しだ?
(もしかして……。このところおとなしいと思っていたが、 計画を練っているのか? )
あの日以来、ロアンヌはクリスと距離を置き、用がない時以外会っていない。
(着せ替えごっこも終わった)
それでもクリスは、差し入れにかこつけて、ロアンヌの部屋に出入りしているようだが、 昔のように我が儘を言わなくなっている。
( 一体何を考えてるんだ? )
興味を持ったディーンは、気づかれないように足音を忍ばせて背後に回ると、覗き込む 。
(どれどれ)
読書ではなく。何か絵を書いている。子供の落書き程度の画力に 理解が難しい。花の絵? それとも女の子と花?
いや、花に漏れた女の子?
レグールが私の顎をくいっと掴んで顔を近づける。
(私、何か気にさわることした?)
レグールの瞳を調べても、映っているのは私だけ。
「もうこれ以上、綺麗になるな」
「えっ? 」
「こんな素敵なロアンヌを見たら、他の男が 放っておかないだろう」
私が悪いとばかりに、睨み付けてきた。レグールの不満タラタラな口調に、 クスリと笑う。
(それは、レグール様も同じなのに)
ロアンヌはレグールの指を外すと、自分もぐいっと顔を近づける。
「私はすでに、婚約しているんですよ。口説かれても、ちゃんと断ります」
そう言って約束すると、レグールの顔に笑みが広がる。
「そうだった。じゃあ、仕事終わせて、ロアンヌを自慢しにレストラン行こう」
そそくさと、レグールが外套を置いて机に着く。ロアンヌは長椅子に座ると、仕事に励むイーグルを見つめながら、ニヤニヤしてしまう自分を隠そうと横を向く。
どうしても、レグールの言葉を思い出してしまう。
『これ以上綺麗』、『こんな素敵な』。こんなセリフを言われる日が来るなんて、夢みたい。
(好きな人に褒めてもらう事が、こんなに嬉しいなんて……)
ロアンヌは幸せを噛みしめるように、重ねた手を胸に当てる。
この瞬間を覚えていたい。
「ふぅ~」
甘いため息をつく。
それなのに、その幸せを脅かしそうな手紙のことを思い出してしまった。
"相手の出方を待つ" そういう他人任せの時間を過ごしているからか、ふとした時に影が差す。母にも相談したけれどアンと同じ意見だった。
「はぁ~」
胸が重いと、苦いため息をつく。
「ため息なんてついて、どうしたんだい? 」
レグールの声に顔を向ける。
いつのまにか、仕事が終わっていたようだ。横に座ると、私の手をとる。
「まだ、クリスのことをで悩んでいるのかい? 」
「 いいえ、別に……」
手紙のことは言えない。
言ってしまえば、レグールに心配をかけてしまう。悩みを振り払うと、なんでもないと首を振る。
レグールが私の指を自分の親指で一本づつ撫でる。
「別にロアンヌが相手をしなくても、友達ぐらいいるだろう 」
「友達ですか?」
そう改めて聞かれると、誰もいない気がする。ディーンは友達と言うより兄と言う存在だし……。
「クリスは、綺麗な顔立ちをしているからモテてるだろう」
「それが、そうでもないんです。クリスは、どうしてか女の子にモテないんです」
(と言うより嫌われている? )
最初は普通に遊んでいた。でも何故か、途中で女の子たちがクリスの側に近付かなくなった。
10歳の頃には女の子たちに避けられて、中にはクリスと一緒なら遊ばないとまで言う女の子が出てきた。
だからと言って、一人で出かけるのも後ろめたくて……。結局 私もだんだんと女の子たちと疎遠になり、誰の家とも行き来がなくなった。今でも付き合いがあるのは、親戚の女の子達だけだ。
「だったら男友達はどうだ? 」
「ああ、そうなんです。男の人には人気があるんです。だけど、クリスは 男の人と友達になりたくないみたいなんです」
男の子と遊べなくて寂しくないのかと聞いた事がある。すると、男の子は汚いし 乱暴だから嫌いだと言っていた。
(私は 男の子なんだから、ちょっとぐらい乱暴でも良いと思うのだけど……)
「それでも向こうは、クリスと友達になりたいらしくて、手紙やプレゼントをよくもらっていました。家に招待されたこともありましたけど……」
クリスとの 仲を取り持って欲しいと、私に頼んで来た人もいた。
人を見た目で判断して、好意を無視するのは悪いことだ。私以外にも友達が居た方が良い。と、説得したこともあったけど……。
「結局、全部断っていました」
「 ……… 」
私の指を撫でていたレグールの動きが止る。どうしたのかと視線を動かすと、空を見ているような目をしている。
「レグール様?」
「……ロアンヌは……男色……」
そして、まるで独り言のように何かを呟いた。
「男なんですか?」
レグールが途中で顔を背けたから、よく聞き取れなかった。聞き直そうと声を掛けたが返事も無い。
不安になって、覗き込むようにその横顔を見つめる。レグールの噛み締めている唇を見て沈黙する。
何か嫌な事でも思い出してるように見える。言いたくないのに、わざわざ聞く必要は無い。
でも、何もしないと言うのは婚約者としては怠慢だ。このままにしておいたら、その事を考えて続けてしまう。
「どうしたんですか、レグール様? お顔が怖いです」
「 ……… 」
だから、 直接その事には触れず。気持ちを切り替えさせるために、何も気づかないふりをして、レグールの眉間を撫でて皺を伸ばす。すると、レグールが私の指を掴むと指先にキスした。
「ふふっ」
こう言う小さなスキンシップが私の心をくすぐる。
「ちょっと、昔の嫌な事を思い出してたんだ」
「そうなのですか?」
レグールは、私と違って男だし、戦にも言っている。年上だし、人には言えないことも経験しているに違いない。
( 心の傷が癒えてないのかも)
もっと大人なら、もっと過去を知っていたら、……。そんなことを考えてしまう。
でも、背伸びして、知ったかぶりして言った言葉はメッキと同じ。綺麗だけど、剥がれてしまえば無様だ。
それに人生経験の浅い私が、それを理解するのは難しいだろう。やれる事といえばせいぜい 話を聞く程度だ。
そんな事しか出来ない自分が情けない。心を照らす灯りになりたい。
「私なら、どんな話を聞かされても平気です」
「昔の事さ。今はロアンヌがいるから平気だ」
「 ……… 」
レグールが、こっちへおいでと言うように手を差し出す。
ロアンヌはレグールの膝の上に座る。するとレグールが抱き寄せて甘えるように私の首筋に顔を埋めた。慰めるように髪を撫でる。
誰だって言えないことはある。私だって手紙のことを内緒にしている。
だけど、傍に居ることを許してくれるのは、私を受け入れているからだ。
何にも聞かずに髪を撫で続けているとレグールが体の力を抜いて、もたれかかる。何時も大人のレグール様が 幼な子のようだ 。ロアンヌはレグールの頭のてっぺんにキスをする。
体の力を抜いたと思わせて、顔の位置を調整するのに成功した。顔半分をロアンヌの胸に押し付けて、残り半分でロアンヌの胸を見る。眼福の時間。
それでも、過去が追いかけ来る。
若くて、弱者は、ナグサミ者になりやすい。 自分自身襲われそうになったこともあった。 もちろん返り討ちにしたが、 そう出来ない者もいた。
(助けられなかった……)
忘れたい嫌な記憶だ。
無意識に首を動かすと温かく柔らかくて、いい匂いがするモノに頭を擦り付けていた。
シンメトリーの二つの山が
見える。見ただけで指が触りたくてうずうずする。しかし、ここは仕事場。我慢するしかない。
この後は食事をすることになっている。 ロアンヌも、せっかく着飾ったのに 行かないのは勿体無い。
(だけど……ちょっとくらいなら)
こんなに露わになっていては、抗われないと言うものだ。
ドレスと素肌の境界線を指で、ゆっくりと何往復もする。
ドクドクというロアンヌの心臓の音が 、うるさくなる。途中で指を止めると、ゆっくりと下へドレスを押し下げる。スーッとロアンヌの白い肌が桃色に染まり、胸が大きく上下する。
このまま最後まで押し下げてしまいたい。そして、口に含んでしまいた。
しかし、 そうなれば部屋から出られなくなる。誰が来るかわからない場所で、愛し合うのはロアンヌを軽んじていることになる。今夜はここまで。そう自分に言い聞かせる。
指を外して起き上がると、真っ赤な顔のロアンヌが潤んだ瞳で私を見つめている。
(私を煽らないでくれ)
その火を消すように、お互いに息が整うまで抱き合った。
*****
一仕事終えて部屋に戻ってきたディーンは、クリスが机に向かっている姿に驚きを隠せない。勉強? 本だって、ほとんどを読まないのに。
どういう風の吹き回しだ?
(もしかして……。このところおとなしいと思っていたが、 計画を練っているのか? )
あの日以来、ロアンヌはクリスと距離を置き、用がない時以外会っていない。
(着せ替えごっこも終わった)
それでもクリスは、差し入れにかこつけて、ロアンヌの部屋に出入りしているようだが、 昔のように我が儘を言わなくなっている。
( 一体何を考えてるんだ? )
興味を持ったディーンは、気づかれないように足音を忍ばせて背後に回ると、覗き込む 。
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