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七十九日目・歯車
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宮貫は 今日こそは、そう決めて家を出た。
ここに来るまでは予定通り 何の邪魔も入らなかった。 昨日と同じ時間に兄と妹が家を出た。後は弟 待ちだ。順調だ。
物陰でジッと待っているとカタカタと木のぶつかる音に顔を出した。弟が出かけた。
今日は入れそうだ。
弟の姿が見えなくなるのを確かめると、家に近づいた。
「こちらでございます」
だが その前に 聞き覚えのある声が近づいてる。
(石岳!?……まさか)
だがその声は石岳で間違いない。
( まずいぞ)
サッと物陰に隠れた。
✳✳✳
万城は 石岳の案内で信の家を訪ねていた。
信の兄なら年若いはずだ。それなら 世に知られていないのも頷ける。しかし 兄がいたことは初耳だ。 兄妹だけだと思っていたが。
兄がいるなら安心できる。
(どんな相手だろう……)
胸がときめく、まるで恋人を待つような気分だ。無意識に襟を合わせた。
信の家は通りから外れた。よく市井の者が住む何の変哲もない家だ。
「信、居るか?」
石岳が門を叩く。
・・・
返事がない。
「信、俺だ 石岳だ!」
・・・
「不在のようだな」
会えなくて残念だ。決して裕福とは言えない生活のようだ。きっと全員で働きに出ているのだろう。
「ちょっと聞いてきます」
石岳がその場を離れると、暇を持て余して、見るとはなしに 周りを見た。
チリッ
視線!? 私をつけてきたのか?
(………)
いや、さっきまでは感じなかった。
もしそうだったとしたら、石岳が私より先に気づかないはずがない。と言う事は……。
私がこの家に近づいたからだろう。
信の兄も被害者と言っていた。
つまり この視線は盗みに入ろうとしている泥棒のものか?
(………)
当たりをつけてくるりと振り返ると さっと何かが隠れた。間違いない。泥棒がいる。
猫にしては影が大きい。
足の向きを変えて踏み出そうとしたとき、
「万城様」
間の悪いことに石岳に、名前を呼ばれて振り返ってしまった。視線が切れた。
「万城様!?」
「………」
もう一度見た時には気配は消えていた。 逃げられたか……。
「どうかなさいましたか?」
「 いや 何でもない 。それより どうだった?」
「 はい。信は画材店
に働きに行っているようです」
画材店か……。
無駄足になったことは残念だが、まあいい。約束を取り付ければ確実に会えるだから。
✳✳✳
宮貫は急いでその場を離れた。
まずいぞ。まずいぞ
どうして石岳はあの家が分かったんだ?
(…………)
いや待って。……それなら郡戸を探して欲しいと言ってきたりしない。
どういうことだ?
他の理由で偶然たまたま 来たのか?
いや この世に偶然はない。
今は 歯車がはまってないだけだ。
それが、はまったら……。
こうなったら、偽情報で 石岳を引き離してる隙に あの家に盗みに入るしかない。そう決意した。
ここに来るまでは予定通り 何の邪魔も入らなかった。 昨日と同じ時間に兄と妹が家を出た。後は弟 待ちだ。順調だ。
物陰でジッと待っているとカタカタと木のぶつかる音に顔を出した。弟が出かけた。
今日は入れそうだ。
弟の姿が見えなくなるのを確かめると、家に近づいた。
「こちらでございます」
だが その前に 聞き覚えのある声が近づいてる。
(石岳!?……まさか)
だがその声は石岳で間違いない。
( まずいぞ)
サッと物陰に隠れた。
✳✳✳
万城は 石岳の案内で信の家を訪ねていた。
信の兄なら年若いはずだ。それなら 世に知られていないのも頷ける。しかし 兄がいたことは初耳だ。 兄妹だけだと思っていたが。
兄がいるなら安心できる。
(どんな相手だろう……)
胸がときめく、まるで恋人を待つような気分だ。無意識に襟を合わせた。
信の家は通りから外れた。よく市井の者が住む何の変哲もない家だ。
「信、居るか?」
石岳が門を叩く。
・・・
返事がない。
「信、俺だ 石岳だ!」
・・・
「不在のようだな」
会えなくて残念だ。決して裕福とは言えない生活のようだ。きっと全員で働きに出ているのだろう。
「ちょっと聞いてきます」
石岳がその場を離れると、暇を持て余して、見るとはなしに 周りを見た。
チリッ
視線!? 私をつけてきたのか?
(………)
いや、さっきまでは感じなかった。
もしそうだったとしたら、石岳が私より先に気づかないはずがない。と言う事は……。
私がこの家に近づいたからだろう。
信の兄も被害者と言っていた。
つまり この視線は盗みに入ろうとしている泥棒のものか?
(………)
当たりをつけてくるりと振り返ると さっと何かが隠れた。間違いない。泥棒がいる。
猫にしては影が大きい。
足の向きを変えて踏み出そうとしたとき、
「万城様」
間の悪いことに石岳に、名前を呼ばれて振り返ってしまった。視線が切れた。
「万城様!?」
「………」
もう一度見た時には気配は消えていた。 逃げられたか……。
「どうかなさいましたか?」
「 いや 何でもない 。それより どうだった?」
「 はい。信は画材店
に働きに行っているようです」
画材店か……。
無駄足になったことは残念だが、まあいい。約束を取り付ければ確実に会えるだから。
✳✳✳
宮貫は急いでその場を離れた。
まずいぞ。まずいぞ
どうして石岳はあの家が分かったんだ?
(…………)
いや待って。……それなら郡戸を探して欲しいと言ってきたりしない。
どういうことだ?
他の理由で偶然たまたま 来たのか?
いや この世に偶然はない。
今は 歯車がはまってないだけだ。
それが、はまったら……。
こうなったら、偽情報で 石岳を引き離してる隙に あの家に盗みに入るしかない。そう決意した。
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