春花の開けてはいけない箱の飼育日誌

あべ鈴峰

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六十八日目・一件落着

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 ゴツン!
何かが頭に当たったかと思うと 弾んで下に落ちてきた。春花は 反射的につかんだ。
私の巾着だ。と言っても 元はツボを保護するための巾着だから 両腕で抱えるほどの大きい。
なんでここに?
それにどうして上から?
突然のことに信たちの涙も引っ込んでしまった。それより不思議なのは こんなに大きな物
が ぶつかったのに平気なことだ。
重さも大してなかった。
何が入っているのか と 信たちに手伝ってもらって巾着を開けようとすると 真っ黒いモノが喋ってた。
『よっ!』
「っ?」
「っ!」
なんで?
どうして?
そんな疑問の言葉で頭が真っ白になる。
驚きすぎたのか手の力が抜けたようだ。落ちそうになったが 信たちが受け止めていた。
「 小黒……」
「小黒 だよね」
『おうよー!』
人の気持ちを考えない。
 この軽さ 本人で
間違いない。

✳✳✳

「 うわーん」
「うっ、うっ、うっ」
 突然 二人が泣き出して軽くパニックになる。
『 おいおい 人前だぞ。泣くな』
こんなところじゃ 目立つ。
『 泣きやめ』
「 嫌だ」
そう言うと 結が首を振って 俺を抱きしめてきた。
「 どこに行ってたんですかー」
信がそう言うと 結ごと抱きしめてきた。
『なっ、何だよ。春花 助けてくれ 2 人が変だ』
しかし、
「 おかえり」と言って 信ごと春花も抱きしめてきた。 三人にぎゅうぎゅうに抱きしめられて息ができない。
『くっ、苦しい……』

✳✳✳

   最後に大きな火が昇ったかと思うと炎の勢いが弱くなった。 天に届きそうだった煙も細くなっていく。
これで成仏してくれたなら嬉しいが。
終わりを察したらしく 住職の最後の挨拶の言葉は聞かずに三々五々散ってい。
( 興味を失うのも早いな)
「堅、ご苦労」
「はい」
父上のねぎらいの言葉に拝手をして頷いた。

  その後は宴会へと続いた。美女たちに 踊りを見ながら山海の珍味に舌鼓 。
そのこには住職の姿もある。
( 生臭さ坊主が)
色々あったがこれで終わりそうだ。

✳✳✳

  小黒は卓の真ん中に鎮座していた。
その周りにはご馳走が並べられていた。
(珍しく 酒もある)
旅に出てから行って一滴も呑んでない。
久しぶりに食卓を囲んでいた。
こんな歓迎生まれて初めてだ。
お祝いされるのは どこか気恥ずかしい。
「じゃあやっぱり。お化け人形に入っていたのは小黒だったんだ」
『ああ、そうだ』
あの時は良いものを手に入れたと思ったが 思い返してみれば 散々な目にあった。よく助かったものだ 。もし 捕まってたらと思うと
ゾッとする。
あのままだったら 火あぶりだ。今こうしていられなかっただろう。
「 全く どれだけ心配したと思ってるのよ」
「そうです。ジッとしてくれたら良かったのに」
「迷子に
なったら動いちゃダメなんだって」
「 とっとと帰ってきなさいよ!」
三 人が 俺 を必死に探してくれたことが嬉しくて口元が緩みがちだ。でも、そのことを知られるのが恥ずかしい。 だから ついつい素っ気ない返事になってしまった。
『 悪かったよ』
「 でも小黒が無事帰ってきて嬉しいよ」
「うん。 結も」
「僕も嬉しいです」
信 がそう言って 涙くから。俺ももらい泣きしちまう。

✳✳✳

 ぐーぐいびきをかいて寝ている小黒を見て
春花は小さく 首を振った。
 死んだと諦めていたら 生きていたのは思いもよらなかった。
今夜から安心して寝れる。 そう思うと瞼が重くなる。また明日から仕事に戻れる。
全然うまってない写生帖を思い出した。
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