上 下
56 / 87

五十三日目・行方不明

しおりを挟む
    信は小黒が戻ってこないことを心配していた。
楽お兄ちゃんは すぐに帰ってくるようなことを言ってたけど……。
おそい!
探したいけど、どこを探せばいいのかわからない。
あの後 役人のところへ行ったけど何の情報も入ってないと言っていた。
( お貴族様のところかな?)
知り合いは石岳さんしかいない。
もしかしたら力を貸してくれるかもしれない。でも、どこに住んでるのか知らない。

   一人で帰れるようなことも言ってたけど、小黒が動いてるところは見たことない。箱のまま移動するのかな!?
それとも 箱から出て、ヘビみたいに にょろにょろと動くのかな?
頭に浮かんだその姿に首を振った。
(それは見たくないな)
今は待つしかないか……。


***

(また 甘いものか……)
小黒はうんざりした気持ちのまま出された菓子を食べた。
春花の立てた計画通り空き巣犯
に誘拐された。もちろん俺をさらう理由は一つしかない。
奇術を見たいからだ。
男たちの話からも、それは正しかったとわかった。ところがら本当に俺を欲しがったのは郡主で、男たちはただの使い走りだった。
想定外だったが、それでも女の子の好奇心を満足させればすぐ飽きるだろう。
女心と秋の空と、言うし。
そう考えていたのだが甘かった。

   郡主が他の令嬢たちを招いて、これ見よがしに奇術を見せた。
すると一人の令嬢が他の兄弟にも見せたいから貸してくれと言い出した。そして、それに続くように他の令嬢も言い出した。
俺としても菓子数個では物足りないと思ってたから、やぶさかではなかった。こうして俺の流転の日々が始まった。 

   そこまでは良かった。 
三人、四人と続くと流石に飽きた。どの家も出されるのは菓子ばかり。その上、他所の家だから、
喋ることもできず、窮屈な仏像の中にいる。
すぐに 限界が来た。
信も心配してるだろうからと脱走を試みたが だめだった。
まるで俺の考えだとお見通しだ というように 常に周りに人がいた。
仕方なく幽霊騒ぎを起こした。
そしたら 怖がられて、捨てられるか 寺に預けられるかすると思ったのに……。次の家に回されただけだった。だったら 
仏像に入ったまま 逃げようとしたが、形が悪く。箱のように カタンカタンと転がれない。倒れると無駄に大きな音がしてすぐバレる。
( 他の入れ物が必要だ……)

***

   私の計画通り、仏像が盗まれたと騒ぎ立てるとみんなが協力して探してくれた。役人にも 訴えた。
なかなか見つからないと落ち込んでいる信に 同情して飯を奢って
くれる者もいた。
こうしてみんなの中に仏像を盗まれて、もう奇術の仕事はできないという事実が浸透した。
後は小黒が戻ってくれば、いつもの日常に戻れる。
信たちと別れて自分の仕事に集中できる。そう思ってたのに……。

何故 帰ってこない!

   仏像から出て他の軽い物に入れば自由に行動できる。
みんなが寝静まった時 狙えば問題ない。もし 前みたいに 蔵に閉じ込められたら 幽霊さんに起こせばいい。それなのにどうして!?
……考えられないが あまりの満腹で昇天した!?
いや、いや、それは無い。

   私としては ほったらかしにしては構わないのだか、信たちの手前
そうもいかない。 
(どうしよう……)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした

まほりろ
恋愛
【完結済み】 公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。 壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。 アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。 家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。 修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。 しかし仔猫の正体は聖獣で……。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 ・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。 ・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。 2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます! 誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!! アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...