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五十日目・新しい仏像
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大きな屋敷の一室。
部屋の中央の卓の上に置かれた古びた仏像を三人の男たちが頭寄せ合ってみていた。その仏像に一人の男がワンタンを置く。
「………」
「………」
「………」
しばらくの沈黙が続く。男たちは どこかは緊張感が漂っている。
「もういいだろう」
その一言に男の一人がワンタンを 一口食べた。それを二人が固唾を飲んで見守っている。食べた男の顔に苦悩の表情が広がる。
「味はするか?」
「どうだ。早く答えろ!」
食べなかった二人が食べた男の反応に注視している。食べた男が、おもむろに箸を置く。
「…… 美味しいです」
「 何!? かしてみろ」
別の男がワンタンを食べる。
しかし、同じように食べた男も眉間にしわ寄せた。それを見て最後の一人も食べたが反応は同じだった。二番目に食べた男か、ドンと卓を殴り付けた。
「どういうことだ!」
男の怒鳴り声が響く。すると慌てたように二人の男たちが跪く。
「 主様、間違いなくあの仏像です」
「そうです。きっと仕掛けがあるんです」
「 ふむ……立て」
主と呼ばれた男がかすかに頷く。
男たちが立ち上がると主の機嫌を伺うように盗み見る。主が仏像 手に取って ジロジロと仏像の仕掛けを探して見ていると、急に二人のうちの一人が大声出した。
「あっ、主様! 底、底です。底を
見てください」
言われるがまま仏像をひっくり返すと 貼り付けてあ った紙に剥がれ
かかっていた。
そして、その紙をはがすと大きな穴が出てきた。主のこめかみに青
筋が立つ。
「 やられたな」
仏像を乱暴に放り投げる。
「 子供のくせに小癪な真似をして!」
険しい顔をする主に向かって二人が拱手をする。
「今度こそ本物を持ってきます」
「もう一度、私たちに機会
をください」
「………」
主が顎をこすりながら 二人を眺めていたが、分かった とうなずいた。
「いいだろう」
「ありがとうございます」
「だが 次はないぞ」
「はっ!」
その返事に主が鷹揚に頷く。
***
明日にでも乗り込んでくるかもしれない。春花は その日のうちに骨董屋で仏像を手に入れると、底
に穴を開けた。店主が一本の木から切り出したと言っていたが、持ったとき大きい割に軽いから中が空洞かもしれないと当たりをつけた。
(これを買って正解だったわね)
こぶし二つ分ほどの穴を開けた。
正直、小黒の体のサイズは知らない。勘で彫ってみた。
駄目だったら また彫ればいい。
「小黒 入ってみて」
そう言うと背を向ける。
同じように信と結もも続いた。
ガタガタと木と木のぶつかる音がしていたが、静かになった。
「 どう入れる?」
『 ああ、大丈夫だ』
その言葉に振り返ると仏像を持ち上げて、底を確認した。
けっこうキツキツだ。地肌?が少しはみ出でいる。
まあ、問題ない。
明日はこれで行こう。
『 しかし、これ前よりきついぞ』
「 我慢しなさい!」
『何で、俺がこんな目に……』
「ふん! 楽して稼ごうとするからよ」
自業自得だと文句を言う小黒を
ピシャリと叱りつけると、舌打ちして来た。まったく反省の色がない。
「はい……」
「わかりました」
その代わり元気のない声が返って来た。そっちを見ると信たちがしょんぼりと俯いていた。
(あっ……)
信たちの腕を掴んで引き寄せると目線を合わせる。もちろん 騙した小黒が悪い。その事は今回の件で十分分かっただろう。
でも、そう言う目に また遇わないように言い聞かせておくことは大事だ。
「これに懲りて、信も結も 直ぐに信じちゃ駄目よ」
「うん」
「はい」
素直に返事をする二人の頭を撫でる。何としてもピンチをチャンスに変えないと。その為にも、盗ませる方法を考えよう。物がない家だから探してない場所はないだろう。それなのに あったら変な思うかもしれない。自然に盗ませる隙
を作らないと……。
(鉢合わせしたくないし……)
ただ家を留守にするだけじゃ駄目だ。何かないかなぁ~。
そうだ。奇術を見せてから家に帰る。そして、出かける。そうすれば本物だと確信して盗んでくれる。よし、決まった!
「みんな、聞いて」
部屋の中央の卓の上に置かれた古びた仏像を三人の男たちが頭寄せ合ってみていた。その仏像に一人の男がワンタンを置く。
「………」
「………」
「………」
しばらくの沈黙が続く。男たちは どこかは緊張感が漂っている。
「もういいだろう」
その一言に男の一人がワンタンを 一口食べた。それを二人が固唾を飲んで見守っている。食べた男の顔に苦悩の表情が広がる。
「味はするか?」
「どうだ。早く答えろ!」
食べなかった二人が食べた男の反応に注視している。食べた男が、おもむろに箸を置く。
「…… 美味しいです」
「 何!? かしてみろ」
別の男がワンタンを食べる。
しかし、同じように食べた男も眉間にしわ寄せた。それを見て最後の一人も食べたが反応は同じだった。二番目に食べた男か、ドンと卓を殴り付けた。
「どういうことだ!」
男の怒鳴り声が響く。すると慌てたように二人の男たちが跪く。
「 主様、間違いなくあの仏像です」
「そうです。きっと仕掛けがあるんです」
「 ふむ……立て」
主と呼ばれた男がかすかに頷く。
男たちが立ち上がると主の機嫌を伺うように盗み見る。主が仏像 手に取って ジロジロと仏像の仕掛けを探して見ていると、急に二人のうちの一人が大声出した。
「あっ、主様! 底、底です。底を
見てください」
言われるがまま仏像をひっくり返すと 貼り付けてあ った紙に剥がれ
かかっていた。
そして、その紙をはがすと大きな穴が出てきた。主のこめかみに青
筋が立つ。
「 やられたな」
仏像を乱暴に放り投げる。
「 子供のくせに小癪な真似をして!」
険しい顔をする主に向かって二人が拱手をする。
「今度こそ本物を持ってきます」
「もう一度、私たちに機会
をください」
「………」
主が顎をこすりながら 二人を眺めていたが、分かった とうなずいた。
「いいだろう」
「ありがとうございます」
「だが 次はないぞ」
「はっ!」
その返事に主が鷹揚に頷く。
***
明日にでも乗り込んでくるかもしれない。春花は その日のうちに骨董屋で仏像を手に入れると、底
に穴を開けた。店主が一本の木から切り出したと言っていたが、持ったとき大きい割に軽いから中が空洞かもしれないと当たりをつけた。
(これを買って正解だったわね)
こぶし二つ分ほどの穴を開けた。
正直、小黒の体のサイズは知らない。勘で彫ってみた。
駄目だったら また彫ればいい。
「小黒 入ってみて」
そう言うと背を向ける。
同じように信と結もも続いた。
ガタガタと木と木のぶつかる音がしていたが、静かになった。
「 どう入れる?」
『 ああ、大丈夫だ』
その言葉に振り返ると仏像を持ち上げて、底を確認した。
けっこうキツキツだ。地肌?が少しはみ出でいる。
まあ、問題ない。
明日はこれで行こう。
『 しかし、これ前よりきついぞ』
「 我慢しなさい!」
『何で、俺がこんな目に……』
「ふん! 楽して稼ごうとするからよ」
自業自得だと文句を言う小黒を
ピシャリと叱りつけると、舌打ちして来た。まったく反省の色がない。
「はい……」
「わかりました」
その代わり元気のない声が返って来た。そっちを見ると信たちがしょんぼりと俯いていた。
(あっ……)
信たちの腕を掴んで引き寄せると目線を合わせる。もちろん 騙した小黒が悪い。その事は今回の件で十分分かっただろう。
でも、そう言う目に また遇わないように言い聞かせておくことは大事だ。
「これに懲りて、信も結も 直ぐに信じちゃ駄目よ」
「うん」
「はい」
素直に返事をする二人の頭を撫でる。何としてもピンチをチャンスに変えないと。その為にも、盗ませる方法を考えよう。物がない家だから探してない場所はないだろう。それなのに あったら変な思うかもしれない。自然に盗ませる隙
を作らないと……。
(鉢合わせしたくないし……)
ただ家を留守にするだけじゃ駄目だ。何かないかなぁ~。
そうだ。奇術を見せてから家に帰る。そして、出かける。そうすれば本物だと確信して盗んでくれる。よし、決まった!
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