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四十二日目・準備万端

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   食べ物の味がなくなるのは 供物 ということで、仏像が食べた証拠 という設定にした。
これなら納得するだろう。

  なるべく信と輩を 関わらせたくない。
「それで 小黒はどのぐらい離れてても食べられるの?」
『わかんねえな』
「 ……… 」
「 ……… 」
『なんだよ』 


   実験の結果 一メートルが限界だった。遠隔操作ができるならと思ったが、信に小黒を持たせるしかない。

   次は明日の行動だ。
私と結が後をつけると言っても不測の事態が起きないとは言い切れない。何かあったら信一人に押し付けることになってしまう。
だから、あらかじめ 色々と決めておいた方が お互いにとっていい。

   その一 。
その場で男に小黒を取られたら、しばらく追いかけて姿を見失ったら帰ってくる。その場合小黒は自力で戻ってくる。
「一応 大事なものということだから、取られないようにしてね」
「もちろんです。でも 小黒は一人で大丈夫なんですか?」
「迎えに行きたい」
「う~ん」
ほったらかしになるけど 生き霊なんだから 大抵のことは大丈夫だろう。
「そうは言っても 居場所が分からないから 自分でどうにかしてもらうしかないのよ」
そう言うと結が小黒をじっと見つめる。
「帰ってこなかったら探しに行くね」
『 ありがとうよ。結』

   その二。
どこかの場所まで連れて行かれたら、大人しく奇術を見せる。
食べ物を進められたら 食べずに持ち帰る。何か聞かれたら妹の分だと答える。
( こうすれば同情 ……憐れみを感じてもらえる)
貧乏から 手下になった者が多いから有効だ。

   その三。
   タネを聞かれたから 知らない。 
もしくは 多分ということで自分の考えを話す。小黒を欲しがられたら必死に抵抗する。 追い出されたら 扉を何回も叩く。
その後 トボトボ 帰ってくる。
そして今晩は 向こうに一晩泊まる。
『 何でだよ』
「うん、うん」
 不満を言う 小黒 に同調して結
 が頷く。
「すぐに戻ったら取り返しに信を探しに来るでしょう」
「 ………」
『 ………』
 「いや、二晩
にしよう」
「どうしてですか?」
念には念を入れないと。
とにかく信と小黒の関係が、もう切れていると思わせる必要がある。
「小黒を取り上げたということは 売り飛ばすか、誰かに見せびらかしたいからでしょ。消えたりしたら信のせいだと恨まれるかも」
見せようという時 なくなってたら、恥をかく。輩は何より面子
を大事にするから注意しないといけない。
結が 寂しそうに肩を落とす。
「 じゃあ 
小黒とは しばらく会えないの?」
「 大丈夫。必ず帰ってくるよ」
『 そうだ。心配するな』
見せびらかすと言うことは、
客人扱いだろう。
それなら今までみたいに安物を食べるんじゃなくて、 
すごい料理を食べられるっていう事じゃないか ?

 
そんなことを考えてるんだろう。
ニヤついてる顔を見れば手に取るようにわかる。
信も呆れたように見ている。
何も知らない 純真な結だけが本気で心配している。
「 屋敷の周りで待っているから出てきて」
『分かった』
「もし閉じ込められたら」
 「助けに行く!」
ぐいっと結が身を乗り出す。信は
眉間にシワを寄せる。
「壁を登れないのに簡単に入れますか?」
二人とも完全に小黒に毒されている。 やれやれ と首を振る。
「通る人に声をかけろ」
『了解 』
「はっ?」
「えっ?」
二人とも ポカンとした顔で私を見る。
「箱から声がしたらみんな どう思う?」
「あっ!」
「なるほど……」
怖がってるて寺に預けるか、捨てるかのどちらかだ。
その時 回収 すればいい。
小黒をそのまま連れてはいけないので、信たちが住んでいた 古寺
をあさり それらしい仏像を手に入れた。仏像の中をくり抜いて、小黒を押し込んで封をする。これでなんとか 格好がついた。
ただの箱が気を食べるより こっちの方が真実味がある。

これで準備万端!
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