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三十九日目・触り心地
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信は いっこうに 箱を受け取らない楽兄さんに苛立っていた。
(何なんだよ この人は!)
自分に小黒を押し付けようとする事をふしんに思う。 飼い主だろう。 あいちゃくはないのか!?
本当の気持ちを知りたいと、その目を見る。本気っぽい……。
もしかして大飯ぐらいだからか?
否、それなら奇術をすればいいだけだ。きっと、俺たちの知らない
大きな秘密があるんだ。そんな奴
を子供に渡そうとするなんてひどい奴だ。
( 絶対 受け取らない)
力いっぱい 押し返した。
すると、急に手が行き場を失った。
「えっ?」
『いい加減にしろよ!』
声のした方を見ると押し付け合っていたはずの箱が卓の上にあった。
(飛んだのか!?)
さすが 物の怪。
小さな箱の蓋が開いてソイツが出てきた。引っ張った餅みたいに箱に行くにつれて 先細りしている。顔は目が二つだけ、口はない。お化けだと言って 妹が書く 落書きみたいだな。プンスカ怒っている。のっぺりした顔で 表情がとぼしいのに、なぜかそう感じ取れる。
「くっ、黒い……」
「だから小黒よ」
その名の通り黒い餅 みたいな 見た目だ。
「うわぁ~、本当にもちみたい」
妹が そう言って小黒に近づこうとする。いつもなら、すぐにでも妹を遠ざけようとする。
だけど、その見た目に ききかんが薄れる。
「ふふっ、かわいい」
妹が そう言って小黒の顔をつつく。
( うわぁ~)
心の中ではドン引きだ。
だけど 昔からそうだ。妹は猫でもカエルでも何でもかわいいと言う。
( 後でよく手を洗わせよう)
くすぐったいのか身をくねらせる。
『止めろ!』
「いいでしょう。ちょっとぐらい」
調子に乗った妹がつつき回すが、
逃げ回るだけで こうげきしてこない。害はなさそうだ。
そのことで 余計に楽兄さんの気持ちが分からなくなる。
「どうして 妹にゆずろうとしたんですか?」
そう聞くとポリポリ と 額を指でかく。言いたくなさそうだ。いわゆる 個人的理由か?
それでも返事をきたいして見ていると 手で口元をかくして俺に耳打ちしてきた。
「おしゃべりなんだよ」
「はっ?」
聞き間違いかと楽兄さんを見るとこくりとうなずいた。
(ええっー! そんな理由)
あまりにも バカバカしい。
そんなことで 捨てようとするなんて、自分勝手な人だ。
うろんな目を向けると手をばたつかせた。
「だって 四六時中 しゃべってるのよ」
「 ……… 」
それは俺も感じた。妹もおしゃべりだけど それ以上だ。
「それが 毎日。 もう うんざりなのよ」
心の底からそう思っているようで気持ちが伝わってくる。あんがい しんこくなのかもしれない。そんなことを考えていると コツン、コツンと聞きなれない 音に目を向けた。すると 小黒が箱をかたむけてケンケンしてるみたいに卓の上を逃げ回っていた。
「結、止めろ」
「いやだ」
「いい子だからー」
「いやだもん」
まんめんの笑みの結を見て、ハマッたなと思った。
(ああなると しつこい)
逃げる小黒と追う妹 。二人は小さな卓の上で こうぼうせんを繰り広げていた。妹が手をつきき出すと器用に箱をかたむけてよける。
空をつかんだ妹が身を乗り出して捕まえようとする、とくるくる箱を動かしていどうする。
しまいには卓の端と端で にらみ合っている。
「助けろよ」
小黒がそう言うが 俺も楽兄さんも、そのまま見ていた。
止めるほどのことでもない。
どうせ、撫でられるだけだ。
結局 妹に捕まった小黒が腕の中でぐったりしている。
「お兄ちゃん。小黒を箱から出していい」
「えっ?」
怖いもの知らずにもほどがある。
箱と体がくっついているのは、それなりの理由があるはずだ。
「やめとけ 」
「………」
「結」
きっと睨んで首を振る。
「分かった……」
素直に言うことを聞いてくれてよかったと胸をなでおろす。
相手は物の怪だ。万が一 ということもある。
楽兄さんが三人と一匹分のお茶を出した。 そこで、もう少ししたら帰ること、奇術を見せて欲しい客が出てきたことを聞いた。
「それじゃあ、帰っちゃうんだね」
「そうだよ」
結が 小黒と離れたくないと抱きかかえた。
「目をつけられているかわからないけど、大通りの方に行かない方がいいと思う」
「そうですね ……」
奇術が見せられないなら、その方がいいのは分かかる。でもそうなると飯が食えなくなる。
(どうしたらいいんだ。困ったな……)
俺たちに優しい店主の人もいるから、早い時間に行って食べ物を分けてもらおう。それでも ギリギリだ。
「家で飯を食わせてやれよ」
小黒の一言にパッと楽兄さんを見ると考え込んでいる。
もしそうなら ありがたい。
それに、妹をあずけられれば仕事も探しやすい。
*****
頷いて欲しそうに 私を見ている信を見て決めた。
こっちの都合だし、小黒の面倒を見てくれるなら私も安心できる。
「分かった。そうしよう」
コクンと頷く。
「やったー!ずっと一緒にいられるね」
そう言うと結が小黒を撫でた。ペット扱いに小黒が嫌そうな顔している。お構いなしにベタベタと よく触れるものだ。
まだ幼いから物の怪も犬猫と同じように考えているのかも。触り続けてるけど 興味がわく。
「結、触った感じてどうなの?」
「固いよ」
やっぱりね。
「固い!?」
信が驚いて小黒を見る。みんなそうだ。見た目とのギャップに騙される。すると信がふらふらと近いて行くと、小黒の頭をつまんだ。
(へっ?)
慎重なはずの信も触ってる。
やっぱり兄妹 同じことしてる。
「本当だ……」
そう言って嫌そうに手をじっと見ている。
「どうしたの?」
気になって声をかけた。
すると、信が振り返った。その顔は何とも言えない表情を浮かべていた。
ヌルヌルしてるの? 変な匂いがするの ?
「なっ、何!?」
(何なんだよ この人は!)
自分に小黒を押し付けようとする事をふしんに思う。 飼い主だろう。 あいちゃくはないのか!?
本当の気持ちを知りたいと、その目を見る。本気っぽい……。
もしかして大飯ぐらいだからか?
否、それなら奇術をすればいいだけだ。きっと、俺たちの知らない
大きな秘密があるんだ。そんな奴
を子供に渡そうとするなんてひどい奴だ。
( 絶対 受け取らない)
力いっぱい 押し返した。
すると、急に手が行き場を失った。
「えっ?」
『いい加減にしろよ!』
声のした方を見ると押し付け合っていたはずの箱が卓の上にあった。
(飛んだのか!?)
さすが 物の怪。
小さな箱の蓋が開いてソイツが出てきた。引っ張った餅みたいに箱に行くにつれて 先細りしている。顔は目が二つだけ、口はない。お化けだと言って 妹が書く 落書きみたいだな。プンスカ怒っている。のっぺりした顔で 表情がとぼしいのに、なぜかそう感じ取れる。
「くっ、黒い……」
「だから小黒よ」
その名の通り黒い餅 みたいな 見た目だ。
「うわぁ~、本当にもちみたい」
妹が そう言って小黒に近づこうとする。いつもなら、すぐにでも妹を遠ざけようとする。
だけど、その見た目に ききかんが薄れる。
「ふふっ、かわいい」
妹が そう言って小黒の顔をつつく。
( うわぁ~)
心の中ではドン引きだ。
だけど 昔からそうだ。妹は猫でもカエルでも何でもかわいいと言う。
( 後でよく手を洗わせよう)
くすぐったいのか身をくねらせる。
『止めろ!』
「いいでしょう。ちょっとぐらい」
調子に乗った妹がつつき回すが、
逃げ回るだけで こうげきしてこない。害はなさそうだ。
そのことで 余計に楽兄さんの気持ちが分からなくなる。
「どうして 妹にゆずろうとしたんですか?」
そう聞くとポリポリ と 額を指でかく。言いたくなさそうだ。いわゆる 個人的理由か?
それでも返事をきたいして見ていると 手で口元をかくして俺に耳打ちしてきた。
「おしゃべりなんだよ」
「はっ?」
聞き間違いかと楽兄さんを見るとこくりとうなずいた。
(ええっー! そんな理由)
あまりにも バカバカしい。
そんなことで 捨てようとするなんて、自分勝手な人だ。
うろんな目を向けると手をばたつかせた。
「だって 四六時中 しゃべってるのよ」
「 ……… 」
それは俺も感じた。妹もおしゃべりだけど それ以上だ。
「それが 毎日。 もう うんざりなのよ」
心の底からそう思っているようで気持ちが伝わってくる。あんがい しんこくなのかもしれない。そんなことを考えていると コツン、コツンと聞きなれない 音に目を向けた。すると 小黒が箱をかたむけてケンケンしてるみたいに卓の上を逃げ回っていた。
「結、止めろ」
「いやだ」
「いい子だからー」
「いやだもん」
まんめんの笑みの結を見て、ハマッたなと思った。
(ああなると しつこい)
逃げる小黒と追う妹 。二人は小さな卓の上で こうぼうせんを繰り広げていた。妹が手をつきき出すと器用に箱をかたむけてよける。
空をつかんだ妹が身を乗り出して捕まえようとする、とくるくる箱を動かしていどうする。
しまいには卓の端と端で にらみ合っている。
「助けろよ」
小黒がそう言うが 俺も楽兄さんも、そのまま見ていた。
止めるほどのことでもない。
どうせ、撫でられるだけだ。
結局 妹に捕まった小黒が腕の中でぐったりしている。
「お兄ちゃん。小黒を箱から出していい」
「えっ?」
怖いもの知らずにもほどがある。
箱と体がくっついているのは、それなりの理由があるはずだ。
「やめとけ 」
「………」
「結」
きっと睨んで首を振る。
「分かった……」
素直に言うことを聞いてくれてよかったと胸をなでおろす。
相手は物の怪だ。万が一 ということもある。
楽兄さんが三人と一匹分のお茶を出した。 そこで、もう少ししたら帰ること、奇術を見せて欲しい客が出てきたことを聞いた。
「それじゃあ、帰っちゃうんだね」
「そうだよ」
結が 小黒と離れたくないと抱きかかえた。
「目をつけられているかわからないけど、大通りの方に行かない方がいいと思う」
「そうですね ……」
奇術が見せられないなら、その方がいいのは分かかる。でもそうなると飯が食えなくなる。
(どうしたらいいんだ。困ったな……)
俺たちに優しい店主の人もいるから、早い時間に行って食べ物を分けてもらおう。それでも ギリギリだ。
「家で飯を食わせてやれよ」
小黒の一言にパッと楽兄さんを見ると考え込んでいる。
もしそうなら ありがたい。
それに、妹をあずけられれば仕事も探しやすい。
*****
頷いて欲しそうに 私を見ている信を見て決めた。
こっちの都合だし、小黒の面倒を見てくれるなら私も安心できる。
「分かった。そうしよう」
コクンと頷く。
「やったー!ずっと一緒にいられるね」
そう言うと結が小黒を撫でた。ペット扱いに小黒が嫌そうな顔している。お構いなしにベタベタと よく触れるものだ。
まだ幼いから物の怪も犬猫と同じように考えているのかも。触り続けてるけど 興味がわく。
「結、触った感じてどうなの?」
「固いよ」
やっぱりね。
「固い!?」
信が驚いて小黒を見る。みんなそうだ。見た目とのギャップに騙される。すると信がふらふらと近いて行くと、小黒の頭をつまんだ。
(へっ?)
慎重なはずの信も触ってる。
やっぱり兄妹 同じことしてる。
「本当だ……」
そう言って嫌そうに手をじっと見ている。
「どうしたの?」
気になって声をかけた。
すると、信が振り返った。その顔は何とも言えない表情を浮かべていた。
ヌルヌルしてるの? 変な匂いがするの ?
「なっ、何!?」
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