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三十二日目・答えはすぐそこ
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父が家を出て、母が死んで二年。物乞いをして生き延びていたが、降ってわいたような出来事に不安を抱えていた。
気付けば、約束の場所に向かいながら自然と足取りが遅くなる。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「えっ、ああ 何でもない」
弾む足取りで、前を歩く妹を見ながら食べ物、欲しさに言うことを聞いた事を後悔していた。
(あの時は 腹をすかしていた)
実際に姿を見たわけじゃない。
声だけだ。それなのに、手を貸してしまった。
(あの力……)
最初は 面白かったけど、今は怖い。今は 食べ物だけど、いつ気が変わって 人間を食うかもしれない。
たまに 気の触れた人を見かけるけど、アイツが犯人かもしれない。
( 気を許したらダメだ )
だけど、この手伝いが失くなると
三日も 四日も、飯が食えない日がザラになる。 ヒモジイのは辛い。
腹が空きすぎて眠れない事も辛い。
「はぁ~」
妹にヒモジイ思いをさせたくない。だけど……。
母さんが生きていたら、こんな暮らしをさせなくて済むのに……。
どこかで雇ってもらうにも、妹も一緒はダメだと言われる。
だけど、妹ももう七つだ。一人で留守番させてもいいかもしれない。苦しくても安心が第一次だ。
「はぁ~」
「お兄ちゃん。早く!」
くるりと振り返った妹が俺の手を掴んでグイグイ引っ張る。
妹は気にしてないみたいだけど、俺は あんな得体の知れないモノ
の力を借りたくない。
*****
小黒は箱の中でガタガタと震えていた。
まずい。本当ーに、まずい!!
こんなことなら、合言葉を作っておけばよかった。
どう考えてもバレるのは時間の問題だ。
(暇つぶしと、飯が食えるからと軽い気持ちでやったばかりに……)
そうなったら俺は、どうなるんだ? 捨てられる?
否、燃やされる!?
(ああ どうしよう……)
俺、殺されちゃう!!
*****
「ふんふん」
出来上がった薬草の包みの数に鼻歌が出る。旅に出てからずっと、つつましい生活をしていたけど。
今晩は、久々に美味しいものが食べられそうだ。パンパンとほこりを払うと手を洗いに外に出た。
すると、
トントン
木を叩く音がする。
(?)
誰が叩いてるの?
*****
トントン!
何時もの合図だ。
(来たーー!)
飛び上がった拍子に蓋に頭をぶつけた。
『っ』
声をあげそうになるの口を閉じて我慢した。
「まずい。まずい。まずい。まずい。まずい」
喉はカラカラ、心臓?がギュウギュウに締め付けられる。
*****
いつものように妹が柱を叩いたが、今日は返事がない。
(おかしいな……)
妹が、もう一度 叩いた。やはり 返事がない。三日目にして異変だ。
どうしたんだろうと、妹が振り返る。何かあったに違いない。こういう時は様子を見た方がいい。
「帰ろう」
「ええー!」
「今日は居ないんだよ」
「桂花コウ、食べたかったのに」
「仕方がないだろう。留守ないんだから」
「 ……… 」
しゃがんで、なだめるように肩に手を置く。それでも、妹が不満げに唇を突き出す。
「明日来よう。なっ?」
「……うん……」
納得できないようで、機嫌の悪い妹と手を引いて帰ろうとすると、後ろから声をかけられた。
****
春花は 何をしているのかと物陰から覗くと、幼い兄妹が家の柱の前で何かしている。
あの兄妹が叩いたのかな?
変わった遊びだ。そう思っていたが ハッとした。ここが遊び場なら、あの兄弟は、ここで起きている事を知っているかもしれない。「ちょっと……」
声をかけるとさっと、お兄ちゃんが妹の前に出た。
( 警戒されてる)
知らない人だもの、そうなるよね 。笑顔を笑顔。そう心がけて近づく。
「聞きたいことがあるんだけど」
「あなたは誰ですか?」
言葉は遮るように お兄ちゃんが食ってかかってきた。喧嘩腰の態度に、ため息がでる。ここまでカードが硬いとは……。
ポリポリと頬を掻く。
(困ったな……)
「私はこの家の住人よ」
そう言うと、一気に二人の態度が変わった。やっぱり何か知っている。
「えっ? ここ空き家じゃなかったんですか」
「本当! この家に住んでるの?」
兄の後ろに隠れていたい妹が前に出てきた。その妹の嬉しそうな顔に気を良くして頭を撫でた。
「そうだよ」
「じゃあ」
「でも、見たことありません」
胡散臭そうに私を見ていたお兄ちゃんが 話し掛けてきた。
(疑り深いな)
お兄ちゃんの方はまだ 警戒を解かないと……。
「 だって、日中は仕事で出かけてるから今日は たまたま居たのよ」
「 ……… 」
お兄ちゃんが顎に手を当てて横を見ている。何か考えている様子だ。クイクイと袖を引っ張られ、そちらを向くと妹が顔を近づけてきた。
「あのね」
「なあに?」
妹が話しかけようとすると、それに気づいた兄が腕を引っ張って妹を引き寄せると何か耳打ちした。すると、妹が しょんぼりした顔になった。
(何? 何を言ったの)
そこまで、がっかりされると余計に気になる。
「どうしたの?」
「お邪魔しました」
「えっ? ちょっと……」
そう言ってお兄ちゃんが頭を下げて帰って行く。春花は 手をつないで帰っていく二人の後ろ姿を何もかも出来ずに見送った。
「参ったなあ……」
(少し話しただけなのに……)
私、怖い顔してる?
もしかして 男の格好してるから?
何か知ってそうだったのに……。
まあいいや、チャンスは またあるだろう。雨が降る前に薬草を売りに行こう。そう考えるを切り替えた。
気付けば、約束の場所に向かいながら自然と足取りが遅くなる。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「えっ、ああ 何でもない」
弾む足取りで、前を歩く妹を見ながら食べ物、欲しさに言うことを聞いた事を後悔していた。
(あの時は 腹をすかしていた)
実際に姿を見たわけじゃない。
声だけだ。それなのに、手を貸してしまった。
(あの力……)
最初は 面白かったけど、今は怖い。今は 食べ物だけど、いつ気が変わって 人間を食うかもしれない。
たまに 気の触れた人を見かけるけど、アイツが犯人かもしれない。
( 気を許したらダメだ )
だけど、この手伝いが失くなると
三日も 四日も、飯が食えない日がザラになる。 ヒモジイのは辛い。
腹が空きすぎて眠れない事も辛い。
「はぁ~」
妹にヒモジイ思いをさせたくない。だけど……。
母さんが生きていたら、こんな暮らしをさせなくて済むのに……。
どこかで雇ってもらうにも、妹も一緒はダメだと言われる。
だけど、妹ももう七つだ。一人で留守番させてもいいかもしれない。苦しくても安心が第一次だ。
「はぁ~」
「お兄ちゃん。早く!」
くるりと振り返った妹が俺の手を掴んでグイグイ引っ張る。
妹は気にしてないみたいだけど、俺は あんな得体の知れないモノ
の力を借りたくない。
*****
小黒は箱の中でガタガタと震えていた。
まずい。本当ーに、まずい!!
こんなことなら、合言葉を作っておけばよかった。
どう考えてもバレるのは時間の問題だ。
(暇つぶしと、飯が食えるからと軽い気持ちでやったばかりに……)
そうなったら俺は、どうなるんだ? 捨てられる?
否、燃やされる!?
(ああ どうしよう……)
俺、殺されちゃう!!
*****
「ふんふん」
出来上がった薬草の包みの数に鼻歌が出る。旅に出てからずっと、つつましい生活をしていたけど。
今晩は、久々に美味しいものが食べられそうだ。パンパンとほこりを払うと手を洗いに外に出た。
すると、
トントン
木を叩く音がする。
(?)
誰が叩いてるの?
*****
トントン!
何時もの合図だ。
(来たーー!)
飛び上がった拍子に蓋に頭をぶつけた。
『っ』
声をあげそうになるの口を閉じて我慢した。
「まずい。まずい。まずい。まずい。まずい」
喉はカラカラ、心臓?がギュウギュウに締め付けられる。
*****
いつものように妹が柱を叩いたが、今日は返事がない。
(おかしいな……)
妹が、もう一度 叩いた。やはり 返事がない。三日目にして異変だ。
どうしたんだろうと、妹が振り返る。何かあったに違いない。こういう時は様子を見た方がいい。
「帰ろう」
「ええー!」
「今日は居ないんだよ」
「桂花コウ、食べたかったのに」
「仕方がないだろう。留守ないんだから」
「 ……… 」
しゃがんで、なだめるように肩に手を置く。それでも、妹が不満げに唇を突き出す。
「明日来よう。なっ?」
「……うん……」
納得できないようで、機嫌の悪い妹と手を引いて帰ろうとすると、後ろから声をかけられた。
****
春花は 何をしているのかと物陰から覗くと、幼い兄妹が家の柱の前で何かしている。
あの兄妹が叩いたのかな?
変わった遊びだ。そう思っていたが ハッとした。ここが遊び場なら、あの兄弟は、ここで起きている事を知っているかもしれない。「ちょっと……」
声をかけるとさっと、お兄ちゃんが妹の前に出た。
( 警戒されてる)
知らない人だもの、そうなるよね 。笑顔を笑顔。そう心がけて近づく。
「聞きたいことがあるんだけど」
「あなたは誰ですか?」
言葉は遮るように お兄ちゃんが食ってかかってきた。喧嘩腰の態度に、ため息がでる。ここまでカードが硬いとは……。
ポリポリと頬を掻く。
(困ったな……)
「私はこの家の住人よ」
そう言うと、一気に二人の態度が変わった。やっぱり何か知っている。
「えっ? ここ空き家じゃなかったんですか」
「本当! この家に住んでるの?」
兄の後ろに隠れていたい妹が前に出てきた。その妹の嬉しそうな顔に気を良くして頭を撫でた。
「そうだよ」
「じゃあ」
「でも、見たことありません」
胡散臭そうに私を見ていたお兄ちゃんが 話し掛けてきた。
(疑り深いな)
お兄ちゃんの方はまだ 警戒を解かないと……。
「 だって、日中は仕事で出かけてるから今日は たまたま居たのよ」
「 ……… 」
お兄ちゃんが顎に手を当てて横を見ている。何か考えている様子だ。クイクイと袖を引っ張られ、そちらを向くと妹が顔を近づけてきた。
「あのね」
「なあに?」
妹が話しかけようとすると、それに気づいた兄が腕を引っ張って妹を引き寄せると何か耳打ちした。すると、妹が しょんぼりした顔になった。
(何? 何を言ったの)
そこまで、がっかりされると余計に気になる。
「どうしたの?」
「お邪魔しました」
「えっ? ちょっと……」
そう言ってお兄ちゃんが頭を下げて帰って行く。春花は 手をつないで帰っていく二人の後ろ姿を何もかも出来ずに見送った。
「参ったなあ……」
(少し話しただけなのに……)
私、怖い顔してる?
もしかして 男の格好してるから?
何か知ってそうだったのに……。
まあいいや、チャンスは またあるだろう。雨が降る前に薬草を売りに行こう。そう考えるを切り替えた。
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