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二人の旅も折り返し
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パラダイスに潜入したフローラは、キャサリンがいるという部屋で鉢合わせしそうになる。
「ギャレン様だからですよ~」
フローラはキャサリンの声に首をかしげる。
お姉ちゃんと違うような・・。
姿を見ようとまっているが、おしゃべりしていて一向に入ってくる気配がない。
焦れたフローラは、顔を見ようとテーブルクロスをめくる。
すると、中年の男とキャサリンと呼ばれていた娘の顔が見えた。
・・お姉ちゃんじゃない。
ペタリと、その場にへたり込む。
ドキドキしていた心臓が、ゆっくりとなる。
何のために苦労して潜入したのか?
お金を払って買ったメイド服も、ジャックの苦労も、全部無駄になってしまった。
「ちょっと!何よこれ」
怒りながらキャサリンが、何かを蹴る音に我に返る。そうだ。 桶をおきっぱなしにしていたことを思い出す。
しまった。匂いにつられて忘れてた。 まったく何やってるんだか。これじゃあ、ジャックが心配するのは無理はない。お姉ちゃんじゃないなら、ここにいても仕方ない。さっさと出ていこう。 遅くなるとジャックが心配する。
「ちょっと待ってくださいね。すぐ片付けさせます」
コツコツと言う足音が小さくなっていく。キャサリンは、いなくなったようだ 。残るはもう一人の男。
床とテーブルクロスの隙間から、男の動きを探る。すると靴先が、こちらを向く。来る!
息を殺してテーブルの下で縮こまっていると、男の靴が目の前を横切る。
フローラはそろりと顔だけ出して、男の姿を目で追う。
ごちそうの並んでいるついたての向こうに消えた。大丈夫だ。あそこなら私の姿は見えない。テーブルの下から這い出ると、フローラは立ち上がって桶を持つ。
「失礼します。置き忘れてた桶を回収しに来ました」
ドアの前で 前まで移動すると、大声で一方的に話して返事を待たずに部屋を出る。 その足でトイレに誰かと会わないよくに早足で向かう。
「はぁ~」
とぼとぼとジャックのもとへ歩きながら、フローラはため息をつく。
本当にお姉ちゃんはいないの?
キャサリン違いかもしれない。
どうしても諦めきれなくて、あの後も他のメイドに確かめたが お姉ちゃんはここにいなかった 。
一体お姉ちゃんはどこにいるの?
グリッド村にもいなかった。ここにもいなかった 。
じゃあ、お姉ちゃんは貴族の所?
本当に? 村娘の奴隷をわざわざ自分の村まで連れて帰る?貴族の興味を引くような歌や踊りが 上手いわけじゃない。やっぱり人違いかもしれない。
だけど ・・わずかな可能性はある。
でも・・今回みたいに空振りだったら?
(駄目。駄目!)
首を振って弱気になる自分を振り払う。 私が諦めたらお姉ちゃんはどうなるの?そうでしょ。こうしてる間も、きっと姉ちゃんが悲しくて泣いてる。
お姉ちゃんを助けられるのは私しかいない。諦めたら、そこで終わり。
まだよ。まだ。まだ。スバイア村が残ってる。
両頬を叩いて喝を入れる。
*****
搬入口の近くでジャックは、ぶつぶつ言いながら行ったり来たりする。
建物から異変は感じない。静かで、助けを求めるフローラの声もしない。
大丈夫だ。フローラを信じろ! やればできる子だ。だか、時間がかかってる。本当に大丈夫なのか? 探しに行った方がいいので ?
いや待て。もう少し待とう。様子だけでも見に行った方が・・。しかし・・。
「ジャック」
気を揉んでいたところに、片手を挙げてフローラが明るい顔で小走りにこちらへ来る。無事な姿にホッとしたが、 喜んでいる風でもない。
素直と言うか、子供みたいなフローラは自分の感情を表に出す。
だから、尚更不思議に思う。
「おかえりフローラ。 どうだった? 姉さんだったか」
「違いました」
ふるふると首を横に振る。
だから喜んでなかったのか。しかし、そのわりに 吹っ切れた顔をしている。 「そうか・・」
ジャックは自分の口から出た声の調子に驚く。
フローラは人違いだったと、がっかりしているんだから、悲しまないといけないのに・・。慰めたい気持ちもある。でも、先延ばしになったことを心のどこかで喜んでいる自分がいる。
他人の不幸を喜ぶような男ではなかったはず。 別にフローラのことが嫌いというやけでない。どちらかと言えば好きだ 。
(それなのにどうして?)
ジャックは、自分の心が 変わりそうなことに不安を感じる。
**ちょっと寄り道**
ジャックの提案で、報告も兼ねてグリット村に立ち寄ることになった。
フローラはリンダの家の庭で、ふんふんと鼻歌を歌いながら 桶の中の洗濯物を踏み洗いする、隣ではリンダが自分と同じように洗濯している。目が合うたびにお互いに微笑む。
汗を拭うと手の甲で額をこすると、目の前に雲ひとつない青空が広がっている。今日は天気がいいし、風もある。
洗濯物もすぐ乾くだろう。
その頃ジャックは、事後処理のために居候しているザップと3人でコーヒーを飲みながら、ずり落ちる毛布と格闘していた。
フローラに身ぐるみ剥がされて、今は体一つで心もとない。
「そうか。違ったか。じゃあ、フローラはがっかりしただろう」
「それが、これではっきりしたとスッキリしたようでした」
本音かどうかは分からないが、パラダイスの話はそれきり口にしなくなった。だから俺もあえて聞こうとはしなかった。フローラの中で決着がついていることを 他人の俺がとやかく言うことじゃない。
「フローラは決断力があるからな。このぶんだと尻にひかれそうだな」
「ブフッ」
ジャックは、むせて飲んでいたコーヒーを吹き出す。
「何言ってるんですか」
「 照れるな、照れるな」
ザップがニヤリとして言うと、俺の第10肋骨を小突く。他人事だと思って好き勝手言って。
結婚など、とんでもない。人間のフローラを幸せにできるのは人間の男だ。 これ以上ザップに構っていられないと、話をリンダの父親に振る。
「それで、村の方はどうなんですか?」
「まだまだ時間がかかりそうだが、徐々に日常に戻り始めている」
リンダの父親の言葉に、自分たちがやったことが無駄でなかったと喜ぶ。
***
グリット村を出発して旅も折り返し。 川や湖で体を洗い。宿に泊まれない時は薪を枕に、一枚の毛布を分かち合って寝る。もうすっかり二人旅には慣れた。お互いに役割分担が出来てるから無駄がない。
フローラはジャックより一足先に目を覚ますと、コーヒーポットを焚き火に入れる。
今度こそ会える。
そう思いたいのに、もう一人の自分が期待するなと囁く。
(このまま会えなかったら・・)
姉を探して一生を終える。
そんな自分の人生が容易に想像できる。探すのをやめてしまえば、後悔と後ろめたさが自分を苛む。そうなれば、自分の幸せに影を落とす。
次こそは、次こそはと終わりがない。
諦めることができれば・・。
でも、自分の中の何かが諦めることを許さない。そんな自分を疎ましく思う。私は・・自分の幸せを望むことにためらう。どうして私は不器用なんだろう。
姉の幸せが私の幸せ。
1月前は、その事に何の疑問も持たなかった。
でも、ジャックと出会って、外の世界に触れて、他の幸せがあると知ってしてしまった。
(・・・)
骨を鳴らす音がジャックが 目を覚ましたこと告げる。
立ち上がったジャックが 大きく伸びをして首を回している。 毎朝の光景にフローラは微笑む。
初めは、その音に驚いたけど 今はもう慣れた。
「おはよう」
「んーおはよう」
コーヒーの入ったマグを渡すと、ジャックがあくびをする。
「フローラは、野宿続きなのに元気だな。ベッドで寝たいと思わないのか?」
「それはもちろん寝たいです。でも、ジャックと一緒じゃなきゃ嫌です」
ジャックがコーヒーを飲み干すと新しく注ぐ。朝が弱いらしく何杯も飲む 。「どうして二人に拘る。俺に対して申し訳ないと思っているのか? もし、俺に気兼ねしてるんだったら、無理するな。アンデッドと人間では体のつくりが違うんだから」
気兼ねも、無理もしてない。 一緒にいたいだけ。
ジャックは私にとっては、家族のようなものだもの。ここにお姉ちゃんがいれば完璧なのに・・。
「ところでフローラの姉さんは美人なのか?」
「えっ」
「ギャレン様だからですよ~」
フローラはキャサリンの声に首をかしげる。
お姉ちゃんと違うような・・。
姿を見ようとまっているが、おしゃべりしていて一向に入ってくる気配がない。
焦れたフローラは、顔を見ようとテーブルクロスをめくる。
すると、中年の男とキャサリンと呼ばれていた娘の顔が見えた。
・・お姉ちゃんじゃない。
ペタリと、その場にへたり込む。
ドキドキしていた心臓が、ゆっくりとなる。
何のために苦労して潜入したのか?
お金を払って買ったメイド服も、ジャックの苦労も、全部無駄になってしまった。
「ちょっと!何よこれ」
怒りながらキャサリンが、何かを蹴る音に我に返る。そうだ。 桶をおきっぱなしにしていたことを思い出す。
しまった。匂いにつられて忘れてた。 まったく何やってるんだか。これじゃあ、ジャックが心配するのは無理はない。お姉ちゃんじゃないなら、ここにいても仕方ない。さっさと出ていこう。 遅くなるとジャックが心配する。
「ちょっと待ってくださいね。すぐ片付けさせます」
コツコツと言う足音が小さくなっていく。キャサリンは、いなくなったようだ 。残るはもう一人の男。
床とテーブルクロスの隙間から、男の動きを探る。すると靴先が、こちらを向く。来る!
息を殺してテーブルの下で縮こまっていると、男の靴が目の前を横切る。
フローラはそろりと顔だけ出して、男の姿を目で追う。
ごちそうの並んでいるついたての向こうに消えた。大丈夫だ。あそこなら私の姿は見えない。テーブルの下から這い出ると、フローラは立ち上がって桶を持つ。
「失礼します。置き忘れてた桶を回収しに来ました」
ドアの前で 前まで移動すると、大声で一方的に話して返事を待たずに部屋を出る。 その足でトイレに誰かと会わないよくに早足で向かう。
「はぁ~」
とぼとぼとジャックのもとへ歩きながら、フローラはため息をつく。
本当にお姉ちゃんはいないの?
キャサリン違いかもしれない。
どうしても諦めきれなくて、あの後も他のメイドに確かめたが お姉ちゃんはここにいなかった 。
一体お姉ちゃんはどこにいるの?
グリッド村にもいなかった。ここにもいなかった 。
じゃあ、お姉ちゃんは貴族の所?
本当に? 村娘の奴隷をわざわざ自分の村まで連れて帰る?貴族の興味を引くような歌や踊りが 上手いわけじゃない。やっぱり人違いかもしれない。
だけど ・・わずかな可能性はある。
でも・・今回みたいに空振りだったら?
(駄目。駄目!)
首を振って弱気になる自分を振り払う。 私が諦めたらお姉ちゃんはどうなるの?そうでしょ。こうしてる間も、きっと姉ちゃんが悲しくて泣いてる。
お姉ちゃんを助けられるのは私しかいない。諦めたら、そこで終わり。
まだよ。まだ。まだ。スバイア村が残ってる。
両頬を叩いて喝を入れる。
*****
搬入口の近くでジャックは、ぶつぶつ言いながら行ったり来たりする。
建物から異変は感じない。静かで、助けを求めるフローラの声もしない。
大丈夫だ。フローラを信じろ! やればできる子だ。だか、時間がかかってる。本当に大丈夫なのか? 探しに行った方がいいので ?
いや待て。もう少し待とう。様子だけでも見に行った方が・・。しかし・・。
「ジャック」
気を揉んでいたところに、片手を挙げてフローラが明るい顔で小走りにこちらへ来る。無事な姿にホッとしたが、 喜んでいる風でもない。
素直と言うか、子供みたいなフローラは自分の感情を表に出す。
だから、尚更不思議に思う。
「おかえりフローラ。 どうだった? 姉さんだったか」
「違いました」
ふるふると首を横に振る。
だから喜んでなかったのか。しかし、そのわりに 吹っ切れた顔をしている。 「そうか・・」
ジャックは自分の口から出た声の調子に驚く。
フローラは人違いだったと、がっかりしているんだから、悲しまないといけないのに・・。慰めたい気持ちもある。でも、先延ばしになったことを心のどこかで喜んでいる自分がいる。
他人の不幸を喜ぶような男ではなかったはず。 別にフローラのことが嫌いというやけでない。どちらかと言えば好きだ 。
(それなのにどうして?)
ジャックは、自分の心が 変わりそうなことに不安を感じる。
**ちょっと寄り道**
ジャックの提案で、報告も兼ねてグリット村に立ち寄ることになった。
フローラはリンダの家の庭で、ふんふんと鼻歌を歌いながら 桶の中の洗濯物を踏み洗いする、隣ではリンダが自分と同じように洗濯している。目が合うたびにお互いに微笑む。
汗を拭うと手の甲で額をこすると、目の前に雲ひとつない青空が広がっている。今日は天気がいいし、風もある。
洗濯物もすぐ乾くだろう。
その頃ジャックは、事後処理のために居候しているザップと3人でコーヒーを飲みながら、ずり落ちる毛布と格闘していた。
フローラに身ぐるみ剥がされて、今は体一つで心もとない。
「そうか。違ったか。じゃあ、フローラはがっかりしただろう」
「それが、これではっきりしたとスッキリしたようでした」
本音かどうかは分からないが、パラダイスの話はそれきり口にしなくなった。だから俺もあえて聞こうとはしなかった。フローラの中で決着がついていることを 他人の俺がとやかく言うことじゃない。
「フローラは決断力があるからな。このぶんだと尻にひかれそうだな」
「ブフッ」
ジャックは、むせて飲んでいたコーヒーを吹き出す。
「何言ってるんですか」
「 照れるな、照れるな」
ザップがニヤリとして言うと、俺の第10肋骨を小突く。他人事だと思って好き勝手言って。
結婚など、とんでもない。人間のフローラを幸せにできるのは人間の男だ。 これ以上ザップに構っていられないと、話をリンダの父親に振る。
「それで、村の方はどうなんですか?」
「まだまだ時間がかかりそうだが、徐々に日常に戻り始めている」
リンダの父親の言葉に、自分たちがやったことが無駄でなかったと喜ぶ。
***
グリット村を出発して旅も折り返し。 川や湖で体を洗い。宿に泊まれない時は薪を枕に、一枚の毛布を分かち合って寝る。もうすっかり二人旅には慣れた。お互いに役割分担が出来てるから無駄がない。
フローラはジャックより一足先に目を覚ますと、コーヒーポットを焚き火に入れる。
今度こそ会える。
そう思いたいのに、もう一人の自分が期待するなと囁く。
(このまま会えなかったら・・)
姉を探して一生を終える。
そんな自分の人生が容易に想像できる。探すのをやめてしまえば、後悔と後ろめたさが自分を苛む。そうなれば、自分の幸せに影を落とす。
次こそは、次こそはと終わりがない。
諦めることができれば・・。
でも、自分の中の何かが諦めることを許さない。そんな自分を疎ましく思う。私は・・自分の幸せを望むことにためらう。どうして私は不器用なんだろう。
姉の幸せが私の幸せ。
1月前は、その事に何の疑問も持たなかった。
でも、ジャックと出会って、外の世界に触れて、他の幸せがあると知ってしてしまった。
(・・・)
骨を鳴らす音がジャックが 目を覚ましたこと告げる。
立ち上がったジャックが 大きく伸びをして首を回している。 毎朝の光景にフローラは微笑む。
初めは、その音に驚いたけど 今はもう慣れた。
「おはよう」
「んーおはよう」
コーヒーの入ったマグを渡すと、ジャックがあくびをする。
「フローラは、野宿続きなのに元気だな。ベッドで寝たいと思わないのか?」
「それはもちろん寝たいです。でも、ジャックと一緒じゃなきゃ嫌です」
ジャックがコーヒーを飲み干すと新しく注ぐ。朝が弱いらしく何杯も飲む 。「どうして二人に拘る。俺に対して申し訳ないと思っているのか? もし、俺に気兼ねしてるんだったら、無理するな。アンデッドと人間では体のつくりが違うんだから」
気兼ねも、無理もしてない。 一緒にいたいだけ。
ジャックは私にとっては、家族のようなものだもの。ここにお姉ちゃんがいれば完璧なのに・・。
「ところでフローラの姉さんは美人なのか?」
「えっ」
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