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19 蒼の国
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明芽(ミンメイ)が 連れてこらしたのは 高い城壁に囲まれた 更地だった。
***
何でこんな場所に?連れて来た意味が分からないと思いながら 角英(カクエイ)が、戻って来るのを待っていると、急に胸の痛みを感じて がくりと膝をつく。
体の丈夫さには自信があったのに 急にどうして?
「明芽?」
永春(エイシュン)が、心配して声をかけてくれたが 気遣う余裕は無い。
明芽は痛む胸を叩く。
そうしないと息がうまく吸えない。
「だっ・・大丈夫です。 少し・・胸が ・・」
「やはり感じるんだね」
( 感じる?何を?)
永春様の言い方だと 私が体調を崩すことが 最初から予想できたみたい。
「今 術をかけてあげるから」
痛みに体を折り曲げて耐えていると 永春様が背中に指で何かを書きながら 術をかける。
お陰で、軽くなった痛みに 明芽は 一息つく。
「私は、何を感じてたんですか?」
「明芽は、この場所が、どこだか分かるかい?」
永春様に質問したのに 質問を返されて明芽は 眉をひそめる。何が 言いたいんだろう?
胸の痛みは、この場所のせいなの?
しかし、自分が住んでいた山しか知らない明芽には、思い当たる場所など無い。
「 この場所は 何処なんですか?」
疑問を口にすると 永春様が言いにくそうに答える。
「 ここは・・蒼の国だよ」
「っ」
その言葉に ハッとしてもう一度辺りを見回す。
(まさか・・)
『 十日 経って 門を開けると そこは 更地になっていた。 人も建物も 全て燃え尽きて 砂粒一つ 木の葉一枚落ちていなかったと言われている』
頭に暗瞬様の言葉が蘇る。
じゃあ・・ ここが蒼の国? 私の祖国なの・・。
「 本当に ここが蒼の・・」
事実を知っていそうな永春様に聞こうとしたが、何か他のことに気を取られているようで 別の方向付けを見ている。
その視線の先では角英が 何か言いながら踊っている。喜んでいる?違う。顔が真剣だ。
「 何をしているんですか?」
「 補足を踏んでいる」
「 ほふ?」
それは何ですかと 聞こうとした時 埃っぽい風が吹く。何?風をおこしたの?顔を伏せて 風が止むのをやり過ごす。
風が止んで目を開けた明芽は、 あたりの豹変ぶりに絶句する。
「っ」
ただの更地だったのに 目の前に 数千人の人間が出現していた。明芽は ふらふらと近付いていく。
この人たちが、蒼の国の民たち?
角英が言っていた通り 大人も子供も 様々な人々が絶命した状態で固まっている。
地獄絵図その物。
その形相に まるで自分がその場にいるかのような錯覚をさせる。 今にも叫び声が聞こえてきそうなほどだ。
余りにも酷い。
涙が溢れる。
こうなった全ての原因が 自分かと思うと心が壊れそうだ。
あの時 私が死んでいれば こんな事にはならなかったのに・・。 私のせいで15年も 間こんな状態で ほったらかしにされていたなんて・・。
「ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
謝っても 許されることではない。
崩れ落ちそうになった私を永春様 支えてくれる。
「 自暴自棄になっては いけないよ」
「でも、私は公主です」
責任があると首を横に振る。
角英の条件など 私だって 断れるものなら断りたい 。 でも、 それでは蒼の国の民を 見捨てることになる。
「 違うよ。 君は暗瞬の可愛い人だ」
「駄目です」
私だって そうありたい。でも、 この惨状を前に 自分だけ幸せになることは、許され無い。
それは、出来ないと首を振る。しかし、永春様が 言葉を重ねる。
「だから 君が犠牲になる必要は無いないんだ。暗瞬の為にも自分を大切にして。ねっ」
「・・・」
言いたい事は分かる。しかし、私には 他に選択肢が無い。蒼の国の民を助けるには、角英を頼るしかない。頷け無い明芽は 永春様の視線を避ける。
すると永春様に、両肩を掴まれて 揺さぶられる。
「暗瞬を信じるんでしょ! それとも、もう暗瞬を待たないのかい?」
そう問われて、明芽は 我に返る。
そうだ。 信じ抜くと決めたのに。 ここで挫けていてはダメだ。
「いいえ!」
私が犠牲になることが 責任を取ることではない。角英の子供を産んだら、それこそ大罪だ。
蒼の国の民 全員が、角英に 屈したことになる。
「居たぞ。 ここに居たぞ。永春! 明芽を早く連れて来い 」
角英の無情な声に 明芽は 息吸うと立ち上がる。
揺れては駄目だ。
私は、蒼の国の公主なんだから。
たとえ どんなに険しくても 何か別の方法があるはず。一生掛かってでも 探そう。
心配そうな顔の永春様に大丈夫だと頷く。
「行きましょう」
言われた通り 角英のそばまで行くと誰かと 言い争っている。
身なりからして 高貴な人だと察しがつく。
その人は、紫色の髪を爆発させたような 髪型で、体格の良い 20代後半の若者だ。
(いったい誰なんだろう?)
「 全く死んでからも手こずらせやがって」
『 当たり前だ。 また何か悪いことをしようと 企んでるな。 お見通しだ 』
その若者は、角英に怯むこと無く渡り合っている。二人の会話からして 昔からの 知り合いのようだ。
「口の減らないやつだ」
『ふん』
怒った若者が腕を組んで、そっぽを向く。
角英が何か言おうとしたが 私たちに気づくと 若者の肩を持って クルリとこちらに向かせる 。
「来たか。ほら 前を向け」
『馴れ馴れしい、放せ』
若者が肩を動かして角英の手を外す。しかし、角英が、もう一度ど若者をこちらに向かせる。
「明芽。こいつが お前の父親だ」
***
何でこんな場所に?連れて来た意味が分からないと思いながら 角英(カクエイ)が、戻って来るのを待っていると、急に胸の痛みを感じて がくりと膝をつく。
体の丈夫さには自信があったのに 急にどうして?
「明芽?」
永春(エイシュン)が、心配して声をかけてくれたが 気遣う余裕は無い。
明芽は痛む胸を叩く。
そうしないと息がうまく吸えない。
「だっ・・大丈夫です。 少し・・胸が ・・」
「やはり感じるんだね」
( 感じる?何を?)
永春様の言い方だと 私が体調を崩すことが 最初から予想できたみたい。
「今 術をかけてあげるから」
痛みに体を折り曲げて耐えていると 永春様が背中に指で何かを書きながら 術をかける。
お陰で、軽くなった痛みに 明芽は 一息つく。
「私は、何を感じてたんですか?」
「明芽は、この場所が、どこだか分かるかい?」
永春様に質問したのに 質問を返されて明芽は 眉をひそめる。何が 言いたいんだろう?
胸の痛みは、この場所のせいなの?
しかし、自分が住んでいた山しか知らない明芽には、思い当たる場所など無い。
「 この場所は 何処なんですか?」
疑問を口にすると 永春様が言いにくそうに答える。
「 ここは・・蒼の国だよ」
「っ」
その言葉に ハッとしてもう一度辺りを見回す。
(まさか・・)
『 十日 経って 門を開けると そこは 更地になっていた。 人も建物も 全て燃え尽きて 砂粒一つ 木の葉一枚落ちていなかったと言われている』
頭に暗瞬様の言葉が蘇る。
じゃあ・・ ここが蒼の国? 私の祖国なの・・。
「 本当に ここが蒼の・・」
事実を知っていそうな永春様に聞こうとしたが、何か他のことに気を取られているようで 別の方向付けを見ている。
その視線の先では角英が 何か言いながら踊っている。喜んでいる?違う。顔が真剣だ。
「 何をしているんですか?」
「 補足を踏んでいる」
「 ほふ?」
それは何ですかと 聞こうとした時 埃っぽい風が吹く。何?風をおこしたの?顔を伏せて 風が止むのをやり過ごす。
風が止んで目を開けた明芽は、 あたりの豹変ぶりに絶句する。
「っ」
ただの更地だったのに 目の前に 数千人の人間が出現していた。明芽は ふらふらと近付いていく。
この人たちが、蒼の国の民たち?
角英が言っていた通り 大人も子供も 様々な人々が絶命した状態で固まっている。
地獄絵図その物。
その形相に まるで自分がその場にいるかのような錯覚をさせる。 今にも叫び声が聞こえてきそうなほどだ。
余りにも酷い。
涙が溢れる。
こうなった全ての原因が 自分かと思うと心が壊れそうだ。
あの時 私が死んでいれば こんな事にはならなかったのに・・。 私のせいで15年も 間こんな状態で ほったらかしにされていたなんて・・。
「ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
謝っても 許されることではない。
崩れ落ちそうになった私を永春様 支えてくれる。
「 自暴自棄になっては いけないよ」
「でも、私は公主です」
責任があると首を横に振る。
角英の条件など 私だって 断れるものなら断りたい 。 でも、 それでは蒼の国の民を 見捨てることになる。
「 違うよ。 君は暗瞬の可愛い人だ」
「駄目です」
私だって そうありたい。でも、 この惨状を前に 自分だけ幸せになることは、許され無い。
それは、出来ないと首を振る。しかし、永春様が 言葉を重ねる。
「だから 君が犠牲になる必要は無いないんだ。暗瞬の為にも自分を大切にして。ねっ」
「・・・」
言いたい事は分かる。しかし、私には 他に選択肢が無い。蒼の国の民を助けるには、角英を頼るしかない。頷け無い明芽は 永春様の視線を避ける。
すると永春様に、両肩を掴まれて 揺さぶられる。
「暗瞬を信じるんでしょ! それとも、もう暗瞬を待たないのかい?」
そう問われて、明芽は 我に返る。
そうだ。 信じ抜くと決めたのに。 ここで挫けていてはダメだ。
「いいえ!」
私が犠牲になることが 責任を取ることではない。角英の子供を産んだら、それこそ大罪だ。
蒼の国の民 全員が、角英に 屈したことになる。
「居たぞ。 ここに居たぞ。永春! 明芽を早く連れて来い 」
角英の無情な声に 明芽は 息吸うと立ち上がる。
揺れては駄目だ。
私は、蒼の国の公主なんだから。
たとえ どんなに険しくても 何か別の方法があるはず。一生掛かってでも 探そう。
心配そうな顔の永春様に大丈夫だと頷く。
「行きましょう」
言われた通り 角英のそばまで行くと誰かと 言い争っている。
身なりからして 高貴な人だと察しがつく。
その人は、紫色の髪を爆発させたような 髪型で、体格の良い 20代後半の若者だ。
(いったい誰なんだろう?)
「 全く死んでからも手こずらせやがって」
『 当たり前だ。 また何か悪いことをしようと 企んでるな。 お見通しだ 』
その若者は、角英に怯むこと無く渡り合っている。二人の会話からして 昔からの 知り合いのようだ。
「口の減らないやつだ」
『ふん』
怒った若者が腕を組んで、そっぽを向く。
角英が何か言おうとしたが 私たちに気づくと 若者の肩を持って クルリとこちらに向かせる 。
「来たか。ほら 前を向け」
『馴れ馴れしい、放せ』
若者が肩を動かして角英の手を外す。しかし、角英が、もう一度ど若者をこちらに向かせる。
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