初恋の人は・・。 紅の双方は見つめる

あべ鈴峰

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離愁の告白

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私の気持ちとは裏腹に 空には雲ひとつ無く 満月が浮かんでいる。
 その中を明芽(ミンメイ)は、 月明かりだけを頼りに山頂へと登っていく。

 10年も通い続けたこの道も、今夜で終わり。
 そう思うと足取りが重くなり、 いつのまにか立ち止まっている。 そんな自分を叱りつける。
( こうするしかないのよ。・・ お母様と約束したでしょ!)
 自分に言い聞かせると一気に駆け上る。

 最後の一歩を踏み出すと 同時に 明芽の目に 、この世で一番美しい 真紅の双方が飛び込んでくる。
 (ああ、今宵も美しい ・・)

野ざらしの何もない 岩場に 少しだけ、せり出ている場所がある。 そこが特等席。

 ここから毎晩 見つめていたのは、 反対側の谷に棲んでいる 名も知らぬ妖魔。
 初めは 赤い目をした人だと思っていたけれど 、それは妖魔の証だった。

 背が高く いつも長い髪を夜風に弄ばれている 。その美しい横顔は、 変わらず私を捉えて離さない。
 何も無いこの地で 唯一の楽しみだった。
 でも 、明日には下山する。 そうなれば 二度と会えない。
 だから最後に 自分の気持ちを伝えようと決心した。

明芽 は、気持ちを落ち着かせようと 瞳を閉じる。 そして 瞳を開けると コクリと頷いて 両手を口に当てて大声で叫ぶ。
「さよならー。 初恋の人。大好きでしたー」
 瞳には 涙がうっすらと浮かぶ が、心は晴れ晴れとしている。

 結局 まともに顔を見ることも、 言葉を交わすこともなかった。 そもそも 相手は私の存在自体知らない。 
一度でいいから こちら側に来てくれれば、 知り合うチャンスもあっただろう 。

そして 「明芽」と名前を呼んで貰えたかも。
(ふふっ、私ったら)
 何百回も そんな たわいのない場面を想像していたけれど、  今となっては 夢で終わってしまう。

 そう思うと このまま立ち去るには未練が残る 。1秒でも長く その姿を目に焼き付けたい 。
朝陽が出るまで ここに居よう。 どうせ家に戻っても 怒る人も、 もう居ない 。

「それって俺のこと?」
「っ!!」
突然、後ろから 聞こえてきた男の声に 明芽は驚き絶叫する。
「ギャー!!!」

 この山には私以外の人間は住んでいない。何より 動物や昆虫だっていない 。
となれば、考えられる答えは・・ 幽霊だ 。
絶対、幽霊だ!

返事をしては駄目だ 。取り憑かれる。
明芽 は、見ないように 目をぎゅっと瞑ると 手を擦り合わせて拝む。
( どうか、居なくなりますように。 私は 美味しくありません。 だから、食べないでください 。お願いします)

『ギャー・・ギャー・・ギャー・・』
 私の叫び声が 山並みに、こだまするのを聞きながら 幽霊が、いなくなるのを待つ。
待つ。
もう少し、待つ 。
念のため、待つ。

 こだまも消えて辺りに静寂が訪れる。
夜明けまで 居ようと思ったが  帰ることにする。 恋心と幽霊なら、残念ながら幽霊が勝つ

 (・・・もう、大丈夫かな?)
 固く閉じていた目をゆっくりと開けると 反対側の山頂に 残った雪が 太陽の光で輝いている。
 あと1時間もすれば こちら側も朝日に照される。
これで安心。

 帰ろうとすると 何かが邪魔している。見ると 自分の足元に若い男が 耳を塞いでしゃがんでいる。
いつの間に?  足音も気配もしなかった。

 もしかして・・明芽 はゴクリと唾を飲み込む。
恐る恐る若い男に気取られないように チラリと足を見る。 
黒い履物が見える。 幽霊ではない。

 ほっとして緊張解く。人だ。 どうして居るのかは知らないが人、だ。
( じゃあ、何者?・・ 迷子?でも、大人だ )
小首をかしげて見ていると 若い男が耳を塞いだままゆっくりと顔をあげる。

 年の頃は20代後半で 、絵姿の様に整った顔立ち。 長い黒髪を真紅の組み紐で、くくって 青い  直領半臂 を着ている。
 私を見上げる瞳は・・。
 赤い、 紅い、 朱色 の光彩が花びらのように 幾重にも重なり合って 一つの大輪の花を咲かせている。

 本物は、こんなにも美しい 。
私が見ていた目は上辺だけの美しさだったと思い知る。
瞳に花を咲かせているなんて反則。 うっとりと見惚れていたが、 その瞳とカチリと 目が合った瞬間 、本日2度目の悲鳴を上げる。

「キャー!」
明芽は真っ赤な顔で 首を振りながら後ずさる 。
(うっ、嘘だ 。そんなはず無い。 これは幻だ )
頭では否定しても 心は本人だと確信している。
私の初恋の人。
 ずっと その姿を見続けてきたんだもの間違いようがない。
 その瞳に自分が映る日を夢見て。

 でも、突然すぎる。
 心の準備が出来てないし、 紅ひとつ差さずに 普段の格好している。
 会えて嬉しいのに 素直に喜べないのが乙女心。

出来ることなら 時間を巻き戻したい。
 ああ神様。 願いを叶えてくれるなら、 そうと言ってくれないと。

*****

耳を塞ぎながら 暗瞬(アンシュン)は、自分の好奇心を呪う。
 さっきまで山の峰で宵の月を楽しんでいたが 、不意に聞こえてきた少女の言葉に 本当かどうか、どうしても確かめたくなって 来てしまった。

 それなのに 声をかけただけで、悲鳴をあげられた。 一度ならず、二度までも・・。
 もとより人間が妖魔を好きだなんて、 ありえぬ話。 淡い期待は 簡単に砕かれるのが、世の常。

 もう 悲鳴は こりごりだと 両の掌を見せて 落ち着かせようと優しく声をかける。
「 落ち着け。 落ち着け。 いいな。 落ち・・着くん・・」
しかし 少女を見た途端 言葉が途切れる。

( 可愛い。めっちゃ可愛い!)
 蒼く大きく、少し垂れている目。 困り眉に ちょこんとついた鼻。林檎 を思わせる赤い頬。 紫色の髪は 両角で結び 、16、7歳ぐらいで 小柄な体を 色あせた衣で包んでいる。

 思わず 「おいで」 と言って、手を差し出してしまいたくなるほどの 小動物のような愛らしさがある。

*****

平常心を取り戻した明芽は 初恋の人に対して 大変失礼な態度をとってしまったと 恐縮すると 拱手して 非礼を詫びる。

「ごっ、 ごめんな・・。もっ、 申し訳ありません。 何と言って お詫びすればいい良いのか、 言葉もございません」
 頭を深く下げていると 初恋の人が 、しなやかな動きで立ち上がる。
 虎みたいだ。 野性的な中に優雅さがを兼ね備えられている。

「・・・」
 初恋の人が黙って私を凝視している。何か顔についているのかと 確かめようと手を伸ばしかけたが、 途中で止まる。

もしかして・・ わざわざ会いに来たのは 返事を言うため?
 確かに告白はしたけれど、 別に返事が欲しかったわけではない。 ただ気持ちを伝えたかっただけ。 でも 答えてくれるなら、 それに越したことはない。

 たとえ失恋したとしても、 悔いはない。
 明芽は、高鳴る胸を抑えつつ その時を待つ。
「驚かせたなら、 すまなかった」
「・・へっ?」
 違うの?すっかりその気になっていたので、 内容が なかなか 入っていかない 。

「 妖魔だから 恐ろしかったんだろう?」
 がっかりしたが、気を取り直して 質問に答える。
「いいえ。 最初から妖魔だと知ってましたから 恐ろしくありません」
 宝物を見つけたと お母様に話したら、それは妖魔妖だから  二度と近づいてはダメだと注意された。 けれど 私は言いつけを守らず 何度も見に行った。 恐ろしい存在なのかもしれないけれど 、好きだという気持ちの方が 強かったから。

 初恋の人が 合点がいかないと首をひねる。
「 なら何故 悲鳴を上げたんだ?」
「 だって さっきまで 、あそこに居たんですよ」
 明芽は、初恋の人が、さっきまで居た場所を指差す。

 向こうの山からこちらへ来るには 谷を一つ越えなければいけない。 いくら妖魔でも 早すぎる。 私が目を閉じた僅かな時間で 移動するなんて 想像もつかない。
「どんなに足が速くても 『来る。来る。来た!』って 感じでだんだん近づいてくるのが 普通です。 それなのに 言い終わった とたん 後ろから声がしたら誰だって驚きます」

 だから 悲鳴を上げたのは 私が悪いんじゃない。 驚かせた初恋の人が悪いと 拗ねて組んだ手を ブラブラと左右に揺らす。
「 なるほど・・ じゃあ二度目は?」

 そう尋ねられて 落ち着いたはずの心臓が また激しくなり出して 頬が熱くなる。
 「そっ、それは・・」
「 それは ?」
「だって・・ すっ、好きな人が、いきなり現れたら、 だ っ、誰だって・・」
小さい声でモゴモゴと言い出したが 最後は恥ずかしさに言葉が消えてしまう。
「 本当に?」
 初恋の人が信じられないと 念を押して聞いてくる。
明芽は、 上目遣いで 初恋の人を見つめて深く頷く。
 こんなふうに姿を近くで見ることも、 言葉を交わすことも、 これが最初で最後かもしれない。 たら 存分に楽しまなくちゃ!

 「はい」
「 そうか? だが 私はお前のこと見たことがないぞ。 こんな可愛い娘なら 見逃すはずが無いんだが・・」
 初恋の人が顎に手をやって記憶をたどっている。 その姿に思わず微笑む。
「 こっそり見てたんです」
「 こっそり?」
「 はい。 ここから声が届くとは思いませんでしたし、見るだけで十分でしたから」
 それに 大声を出してお母様にバレたら、 どんなお仕置きをされるか心配だった。

「なら、  どうして 急に告白する気になったんだ?」
 不意に尋ねられて 明芽は、 泣きそうになる。 泣いては駄目。初恋の人を困らせるだけ。 こらえようと唇を噛む。
 お母様が、亡くなくなって7日。 散々、泣いて気持ちの整理がついたはずなのに。 悲しみが、こみ上げる。

「 おっ、お母・・様が 、死ん・・だんです。だっ、だから・・」
 キチンと話そうとするのに 、喉が詰まって 思うように言葉が続かない。
「 そうか。 それは残念だったな」
 優しい言葉に、ぎこちない笑みを返す。
 私を見る眼差しには 同情の色が浮かんでいる。 改めて 私が好きになった妖魔は  悪い妖魔ではないと確信する。

 「死因はやはり 瘴気か ?」
そうだと頷く。 山から流れ出る 瘴気が原因で、 この山は死の山とか、地獄の山と言われて、 誰も近寄りたがらない。 それなのに 、私が子供の頃から住み着いている。

「早く下山していれば 、若くして死ぬこともなかっただろうに ・・」
「私も引っ越そうと 何度も言ったんです。 でも 頑として聞き入れてくれなくて・・」

自分の具合が悪くなっても 首を縦に振らなかった。
 どうして、そこまでして ここに住み続けなくてはいけないのか最後まで教えてくださらなかった。 家族のことも同じ。
 私は私のことをよく知らない。
 『あなたは、あなたらしく 生きれば、それで良い』と、お母さんが言っていた 。

 [お前は大丈夫なのか?」
 初恋の人が ポンと私の肩に手を置いて、顔を覗き込んでくる。
その大きな手に 驚く 。大人の男の人って、 こんな感じなんだ。

「 はい 。幼い頃から暮らしているせいか 私は平気です」
 心配しなくて大丈夫だと 両手を広げて見せる。 初恋の人が満足げに頷く。
「 それは良かった。 ところで、 これからどうするんだ。このままここで暮らすのか?」
「 いいえ。 山を下りて、麓で働こうと思います」

 現実的な話 我が家に蓄えはないし、 この森では食べ物が手に入らない。 必然的に生きるためには 外で働かないと飢え死にしてしまう。

*****

母親が死んでまだ辛いだろうに、 働かなくてはいけないとは 悲しむ暇もないな。
 その健気な姿に、同情してしまう。
 この歳で一人で生きていけるのか? まだ子供だ。

「 そうか 。それで 何か仕事のあてはあるのか?」
「 それは大丈夫です。 お母様の知り合いの方を訪ねて 仕事を紹介してもらおうと思っています」
 少女が元気よく返事をする。
 しかし 暗瞬は怪しく思う。
「 知り合い? 親族は、いないのか?」
「 親戚はいません。お母様の話だと 私が幼い頃に流行病で お父様や  兄姉、親戚達も一緒に亡くなったそうです」

「 一族全員か?」
「はい お母様からそう聞いています。 生き残ったのは、私とお母様だけだと言っていました 」
「・・・」
一族といえば 、相当な人数だ 。そんなに大勢の人間が同時期に死んだ話など ・・。

真っ先に浮かんだのは『十日業火』。
 しかし、 アレは流行病ではない 。ただの惨殺だ。
 少女を見ると 、つぶらな瞳が自分を見返す。
 嘘はついていない。

 母親が、どうしてそんな嘘をついたのか知らないが、 身寄りがないことは本当だろう。
 いくら私が初恋の相手でも 無防備に、なんでも話すところを見ると 世間知らずだ。
 肉体的には苦労しただろうが 、心は無垢のまま。一度も騙された事などないだろう。

 このまま放っておいたら すぐに餌食になってしまう。妖魔の私を初恋の人と呼んでくれたんだ。 少しは力になってあげよう。
「あの・・ 父親って、どんな感じですか?」
「さー、 俺も知らない。 物心頃着いた頃から一人だ。 だから兄弟がいるかさえ知らない 」

「ごめんなさい 。お父様が居たらと考えていたものですから・・」
身寄りが無いと勘違いした少女が 頭を下げる。暗瞬は、謝らなくていいと手で払う。

「 最初から居ないないんだから 、気にしようもない」
「でも・・」
 少女が私の腕に手を添える。 何気ない仕草なのに 心を掴まれる。 その小さな手の暖かさが 、全身に染みていく。

 自分を見る瞳には 傷気遣わし気な 感情が宿っている。
 そんな風に見られたことなどなかった。
 他者を思う その優しさが苦しい。
 私は生きたくて、生きてるわけではない 。死ねないから、生きているだけだ。
 同情してもらう価値などないと 暗瞬は薄く笑って手を外す。

「私の事は良いから。 それで 、その知り合いはどこに住んでるんだ?」
 「 えーと、 満の国の国境と 街の村の間の村です」
「・・・」
名前を知らないのか?
 ざっくりとした答えに不安が 過ぎる。 こうなると 本当かどうかも怪しい。 私を心配させまいと 嘘をついている可能性もある。

「 では 、その知り合いは どんな仕事をしているんだ?」
「その・・ 詳しいことは・・何も・・」
安心したくて聞いたのに、 聞けば聞くほど不安になる。 
世間に疎いと  思っていたが 、ここまでとは。暗瞬 は二の句が継げない。

 何も知らない相手のところに わざわざ会いに行くのか ?
少女が後ろめたそうな顔で話を続ける。
「 実は・・遺品整理をしていて 信のを見つけました。 何回もやり取りをしている方なので、 親しい方なのかと・・」
 「母親から、何者か聞いていないのか?」
「 特には。・・でもでも 信を取っていたと言う事は、 いざとなった時 頼りにする方かと・・」

 少女の言わんとしていることもわかる 。
しかし、本当に 相手が信頼できる人物なら、とっくに 山を降りてる。
何か曰くがありそうだが・・。
 すると慌てたように少女が早口でまくしたてる。

「 大丈夫です。 お母様とは私が生まれる前からの知り合いです。 付き合いが長いですから、 私が尋ねても邪険には それないはずです」
 それで大丈夫だと思っているようだが 、暗瞬は 心配でたまらない。
どうしたものか。
「・・・」
 母親なら自分の死期が近いと悟ったら、 娘の今後の事をあれやこれやと 心配するはず。 
 どうも しっくりこない。
「 母親が信をやりとりしていたのに、 何も聞かなかったのか?」
「 それが・・」

少女の話では ここ10年余り 信が途絶えているらしい。
 しかも 頼れる相手は その者以外居ないようだ。 もしかしたら 音信不通になった理由が 相手が死んだからかもしれない。
 そうなれば 少女は本当に 天涯孤独になってしまう 。

暗瞬の心が揺れ動く。
 深入りするのは危険だと もう一人の自分が警告する。 人間は心が弱い 。保身のためなら 私を裏切るかもしれない。

 だが、しかし、 この少女を放っては置けない 。眉間に皺を寄せて考えていたが 、 心を決める 。このまま別れても 気になって仕方ないに決まっている。 それなら、もう少し 一緒にいて面倒を見よう。
「 そういう事なら 私が連れて行ってやろう」
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