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おしゃれは誰のため?
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アランはイライラと 何が原因なんだとベッドの前を言ったり来たりする。
このところ 思い通りにならない事ばかりだ。
マロニアに、会わないように気をつけているのに、 ニアミスばかりが続いている。
会ったと言っても、 どちらかが 馬車の中から見かけた程度だ。だか、確かに目が合った。 私に気付いていたのは間違いない。 二人で同じ家を ほぼ同じ時間に訪ねている。
しかし、私を待つ事もせず 挨拶もなしで、姿を消した。
私に会いたくないのか? それとも 何か私に隠したい秘密を抱えているのか?
「ふ~む」
どうにも 何を考えているか、さっぱり分からない。お手上げ状態だ。 そもそも何故 マロニアはティアスの 持ち家を巡っているんだ。
二人は恋人同士? 否、それは無い。
マロニアからは 女の匂いがしない。
どちらかと 言えば、 恋に恋する乙女という感じだ。
「う~ん」
なんとか答えを見つけようと腕組みして考えてみたが止めた。別にマロニアが 何をしようと構わない。 ただ、こういう はっきりしない状態が好きではない。
すっきりしない事と言えば、もう一つ。
ティアスの会社を潰したいとグランドに話すと一蹴されてしまった 。
(こっちは 本気だったのに・・)
冗談だと お茶を濁して誤魔化したが、おの時の屈辱を思い出して 腸が煮えくり返る。
貴族の私が、元使用人に 太刀打ち出来ないなど 許されない。
しかし、冷静になれば 無謀な考えだったと分かる。 金も時間も かかりすぎる。
やはり、 当初の予定通りに 計画を進めよう。
そうすれば、アイツが大事に匿っている シャーロットを奪って 自分の身の程を 思い知らせてやれる。 そうなれば 一石二鳥だ。
この状況を打開するためにも 早く探偵からの連絡が欲しい。
*****
馬車から降りたマロニアは 稽古場へと歩いていた。すると、後ろから誰かが追いかけてきたかと思うと 追い越して行く。
マリアベルだった。
何を急いでいるんだろう?
稽古の開始時間まで、まだ余裕があるのに。
ところが、マリアベルが立ち止まると クルリと方向転換して戻って来ると、私の粗探しをするかのように顎を手に上から下まで見る。
おかしな行動だが気にせず挨拶をして通り過ぎようとしたが、
「おはようございます」
「 あらあら、イメージチェンジ?」
「えっ?」
その言葉に立ち止まる。
なんで、そういう事を言うんだろう?
マリアベルは嫌味を言うタイプの人間ではない。 だから 余計にマリアベルの指摘が気になる。
髪も切ってないし、化粧もいつもと変わらないのにと、 首をかしげる。
すると、マリアベルが両手を広げて肩をすくめる。
「 だって、今までは流行りの 最新のドレスしか着なかったのに。今日のドレスは あなたの好みと言うより・・好きな男の好みね」
そんなはずないと自分のドレスを見て、はっとする。3年前に仕立てたドレスだ。
そう自覚すると思い当たる節がある。
今着ているのは白と緑のスッキリしたデザインのドレス 。今朝、これに決めるまで散々悩んだことを思い出した。
メイドに髪をセットしてもらい。着替えよつと昨夜 決めたドレスを持ってこさせる。
「クローゼットに 掛けてあるドレスを持ってきて」
「はい」
受け取ったドレスを姿見の前で当ててみる。
何かが違う?
昨夜は完璧だと思ったのに、今朝になると気に入らない。
マロニアはドレスをベッドに放り投げる。
「 他のドレスにするわ 」
「かしこまりました 」
メイドがクローゼットから取り出した最新流行のドレスを当ててみる。
白と水色の可愛らしいドレスだ。
マロニアは鏡に映る自分を見つめる。
どうだろう・・子供っぽい?
ベッドに放り投げると次のドレスを持ってこさせる。
「次のドレスを持ってきてちょうだい」
「はい」
今度のは 青と紫色の おとなしめのドレス。
彼の隣を歩いている自分を想像する。
おかしくないけど ・・。気に入ってくれる?
「他の色のドレスを持ってきて」
「かしこまりした」
ベッドに放り投げると次のドレスを受けとる。
若草色でレースをあしらったデザインのドレス。 これなら瞳の色が 映える。
綺麗だと 思ってくれる?
「このところ随分ドレス選びに、時間をかけていらっしゃいますね」
「えっ?」
メイドの言葉にマロニアはベッドに積まれたドレスを見て思わず目を閉じる。 まるで、デートに行く服を選ぶ娘みたいだと自分の行動を思い出して落ち込む。
今まで 私にとってドレスは 使い捨てのナプキンみたいなものたった。 一度 着れば 二度と袖を通さなかった。 それなのに今は、自分をよく見せたい一心で昔のドレスをまで引っ張り出している。
新しく仕立てたドレスも 彼好みでないと化粧箱に入ったままになっている。
未だに心の中を占めているのは、あの人だ。
いくら ティアスの事を好きになろうとしても、思いは消えない。 だから、会えるとも限らないのに 彼の為にドレスを選んでいる。
そんな事を毎朝繰り返している自分が 可哀想だ。 それでも 止められないと自分でも分かっている。
マロニアは、うなだれると秘密の想いをため息にして吐き出す。
「はぁ~」
マリアベルが 私の肩に腕を回すと内緒話をするように引き寄せる。
「 その様子じゃ、未練たらたらね」
「 たらたらって・・」
マリアベルの言葉を否定したかったけど、 この前彼が落とした葉っぱを拾ったこと思い出して 言葉が続かない。 自分でも馬鹿みたいだと思う。
でも、押し花は見るたび、 木の葉を見るたび、心が躍る。
きっと、このままティアスに会えない日が続く。
何か別の方法を考えないと。
彼の式まで残りの日にちが少ない。 その焦る気持ちが余計に 彼に会いたいと思ってしまう。
そんな状態で彼に会ったら どうなるか・・。
マロニアは、マリアベルの 腕を掴んで自分を向かせる。
「 どうしたら、忘れられるんですか?」
「・・ 忘れる必要があるの?」
「なっ」
こっちは、すがる思いで切り出したのに。
思い出にで、もしろと言うきなの?
そんなに待てない。私は今、忘れたい。
「私は、真面目に相談してるの!」
そう言うとマリアベルが私の両腕を掴むと真剣な顔をする。
「こう言ってはなんだけど あなたが片思いに身を焦がしてから 演技力が格段に上達したわ」
「えっ?」
「人の心の機微を知りたいと 思うようになったという事よ。 その事が、あなた自身に深みを与えたの 。やっぱり、恋は芸の肥やしね」
「・・・」
マリアベルに褒められて嬉しいし 言わんとしてる事も分かる。 でも・・・この気持ちを抱え続けるのは あまりにも辛い。
姿を見かけただけで、好きな気持ちが溜まっていくのに 無理だと首を横に振る。
だってこの先 彼は結婚して 子供が生まれる。
彼が婚約者と幸せになるたび、 私は不幸になっていく。 そんな自分の人生を想像したら涙が溢れる。だから、素直に彼を祝福する気持ちにはなれない。
「マロニア・・」
「恋などしたく なかったのに・・」
「ああ、可愛いマロニア。それが 恋と言うものなのよ」
マリアベルが、そう言って私を抱き寄せると 子供のように頭を撫でる。
マロニアは その胸の中で 声を出して泣く。
「よし、よし」
私の気持ちをマリアベルだけが、知っている
だから、素直に 自分の感情をさらけ出してしまう。
どうして私には『好きだ』と言うチャンスさえないの。
*****
アランは 満足げに微笑む。
競争相手が いると 言ったことは 効果覿面 。
依頼したその日の夜には 最初の調査書が届けられた。
(こんなに早く 結果が出るなら 最初から頼めば良かった)
久しぶりにぐっすり眠ったアランは清々しい気分で朝を迎えた。
さっそく 調査票を読もうとペーパーナイフに手を伸ばす。
(さてさて、シャーロットは どこかな ?)
コンコン!
するとノックの音がする。 今から読もうと思ったのに出鼻をくじかれた形になったが急用かもと返事をする。
「入れ 」
小間使いが 封筒を手に入ってくる。
2件目が届いたか 。
「旦那様 。 アダム探偵事務所から 調査書が届いております」
「ん」
小間使いが封筒を差し出す。それを受け取ると最初に届いた分から読もうと、ペーパーナイフに手を伸ばすが、ぐずぐずと小間使いが出ていかない 。
「何だ?」
「 それが・・ビルズ探偵事務所と キャメル探偵社からも 届いています 」
「分かった」
そう言って隠し持っていた封筒を出す。
アランは、ひったくるように受け取って脇に置くと、さっさと出て行けと 小間使いを手で追い払う。
いっぺんに 4社に増えた。調査内容を比較検討すれば、自ずとシャーロットの居場所が分かるぞ。
アランは、小間使いが出て行くと いそいそとペーパーナイフに手を伸ばす。
コンコン!
が、 また ノックの音がする。
(用があるなら いっぺんに済ませろ!)
要領の悪さに 呆れながら返事をする。
「入れ」
さっきとは別の小間使いが入ってきた。
「 旦那様。 デヴィッド探偵事務所の者が、 直接報告したいと 訪ねてきております」
「なっ」
こっちの都合を考えない勝手な行いに苛立って瞼が ピクリと動く。
どうして、 わざわざ来る? 紙に書いて届ければいいものを。
来客は嫌いだ。 金も時間も とられる。
(・・・)
断りたいが 報告内容が知りたい。
とっとと、聞いて 帰ってもらおう。
「分かった」
アランはペーパーナイフを戻すと 渋々重い腰を上げる 。
コンコン!
すると、また ノックの音がする。
落ち着きがない。 騒がしいのは好きじゃないのに。アランはイライラと髪を撫で付ける。
「入れ」
3人目の小間使いが顔を出す。
「旦那様 。フォード探偵社の方が お会いしたい と来ています」
何なんだ今日は!
次から次へと、人が訪ねてくる。
これでは 面接と変わらないじゃないか!
そう考えると憂鬱でしかない。
この分では、話を聞くだけで 午前中に終わりそうだ。アランは 痛み出したこめかみを押さえる。
「旦那様。お薬・・」
心配して声をかけてきた小間使いを視線で黙らせる。
怒鳴り出したいのを なんとか耐えていると ドアがゆっくりと開いて4人目の小間使いが 中の様子を伺うように 、こっそりと見ている。
「 旦那様。・・・ イース」
「五月蝿い! どいつもこいつも 勝手に来やがって!」
小間使いの話を 遮るように怒鳴る。
すると、3人目の小間使いが謝って 4人目の小間使いを連れて部屋を出て行く。
「もっ、申し訳ありません」
この調子では 1日中 来客が絶えない 。
今更ながら 全員 に声をかけたことを後悔する。
「はぁ~」
アランは 深いため息をつくと 仕方なく 重い足取りで 応接室に向かう 。
これで シャーロットの居場所が 分からなかったら、 ただじゃおかないと、ギリギリと歯ぎしりする。
このところ 思い通りにならない事ばかりだ。
マロニアに、会わないように気をつけているのに、 ニアミスばかりが続いている。
会ったと言っても、 どちらかが 馬車の中から見かけた程度だ。だか、確かに目が合った。 私に気付いていたのは間違いない。 二人で同じ家を ほぼ同じ時間に訪ねている。
しかし、私を待つ事もせず 挨拶もなしで、姿を消した。
私に会いたくないのか? それとも 何か私に隠したい秘密を抱えているのか?
「ふ~む」
どうにも 何を考えているか、さっぱり分からない。お手上げ状態だ。 そもそも何故 マロニアはティアスの 持ち家を巡っているんだ。
二人は恋人同士? 否、それは無い。
マロニアからは 女の匂いがしない。
どちらかと 言えば、 恋に恋する乙女という感じだ。
「う~ん」
なんとか答えを見つけようと腕組みして考えてみたが止めた。別にマロニアが 何をしようと構わない。 ただ、こういう はっきりしない状態が好きではない。
すっきりしない事と言えば、もう一つ。
ティアスの会社を潰したいとグランドに話すと一蹴されてしまった 。
(こっちは 本気だったのに・・)
冗談だと お茶を濁して誤魔化したが、おの時の屈辱を思い出して 腸が煮えくり返る。
貴族の私が、元使用人に 太刀打ち出来ないなど 許されない。
しかし、冷静になれば 無謀な考えだったと分かる。 金も時間も かかりすぎる。
やはり、 当初の予定通りに 計画を進めよう。
そうすれば、アイツが大事に匿っている シャーロットを奪って 自分の身の程を 思い知らせてやれる。 そうなれば 一石二鳥だ。
この状況を打開するためにも 早く探偵からの連絡が欲しい。
*****
馬車から降りたマロニアは 稽古場へと歩いていた。すると、後ろから誰かが追いかけてきたかと思うと 追い越して行く。
マリアベルだった。
何を急いでいるんだろう?
稽古の開始時間まで、まだ余裕があるのに。
ところが、マリアベルが立ち止まると クルリと方向転換して戻って来ると、私の粗探しをするかのように顎を手に上から下まで見る。
おかしな行動だが気にせず挨拶をして通り過ぎようとしたが、
「おはようございます」
「 あらあら、イメージチェンジ?」
「えっ?」
その言葉に立ち止まる。
なんで、そういう事を言うんだろう?
マリアベルは嫌味を言うタイプの人間ではない。 だから 余計にマリアベルの指摘が気になる。
髪も切ってないし、化粧もいつもと変わらないのにと、 首をかしげる。
すると、マリアベルが両手を広げて肩をすくめる。
「 だって、今までは流行りの 最新のドレスしか着なかったのに。今日のドレスは あなたの好みと言うより・・好きな男の好みね」
そんなはずないと自分のドレスを見て、はっとする。3年前に仕立てたドレスだ。
そう自覚すると思い当たる節がある。
今着ているのは白と緑のスッキリしたデザインのドレス 。今朝、これに決めるまで散々悩んだことを思い出した。
メイドに髪をセットしてもらい。着替えよつと昨夜 決めたドレスを持ってこさせる。
「クローゼットに 掛けてあるドレスを持ってきて」
「はい」
受け取ったドレスを姿見の前で当ててみる。
何かが違う?
昨夜は完璧だと思ったのに、今朝になると気に入らない。
マロニアはドレスをベッドに放り投げる。
「 他のドレスにするわ 」
「かしこまりました 」
メイドがクローゼットから取り出した最新流行のドレスを当ててみる。
白と水色の可愛らしいドレスだ。
マロニアは鏡に映る自分を見つめる。
どうだろう・・子供っぽい?
ベッドに放り投げると次のドレスを持ってこさせる。
「次のドレスを持ってきてちょうだい」
「はい」
今度のは 青と紫色の おとなしめのドレス。
彼の隣を歩いている自分を想像する。
おかしくないけど ・・。気に入ってくれる?
「他の色のドレスを持ってきて」
「かしこまりした」
ベッドに放り投げると次のドレスを受けとる。
若草色でレースをあしらったデザインのドレス。 これなら瞳の色が 映える。
綺麗だと 思ってくれる?
「このところ随分ドレス選びに、時間をかけていらっしゃいますね」
「えっ?」
メイドの言葉にマロニアはベッドに積まれたドレスを見て思わず目を閉じる。 まるで、デートに行く服を選ぶ娘みたいだと自分の行動を思い出して落ち込む。
今まで 私にとってドレスは 使い捨てのナプキンみたいなものたった。 一度 着れば 二度と袖を通さなかった。 それなのに今は、自分をよく見せたい一心で昔のドレスをまで引っ張り出している。
新しく仕立てたドレスも 彼好みでないと化粧箱に入ったままになっている。
未だに心の中を占めているのは、あの人だ。
いくら ティアスの事を好きになろうとしても、思いは消えない。 だから、会えるとも限らないのに 彼の為にドレスを選んでいる。
そんな事を毎朝繰り返している自分が 可哀想だ。 それでも 止められないと自分でも分かっている。
マロニアは、うなだれると秘密の想いをため息にして吐き出す。
「はぁ~」
マリアベルが 私の肩に腕を回すと内緒話をするように引き寄せる。
「 その様子じゃ、未練たらたらね」
「 たらたらって・・」
マリアベルの言葉を否定したかったけど、 この前彼が落とした葉っぱを拾ったこと思い出して 言葉が続かない。 自分でも馬鹿みたいだと思う。
でも、押し花は見るたび、 木の葉を見るたび、心が躍る。
きっと、このままティアスに会えない日が続く。
何か別の方法を考えないと。
彼の式まで残りの日にちが少ない。 その焦る気持ちが余計に 彼に会いたいと思ってしまう。
そんな状態で彼に会ったら どうなるか・・。
マロニアは、マリアベルの 腕を掴んで自分を向かせる。
「 どうしたら、忘れられるんですか?」
「・・ 忘れる必要があるの?」
「なっ」
こっちは、すがる思いで切り出したのに。
思い出にで、もしろと言うきなの?
そんなに待てない。私は今、忘れたい。
「私は、真面目に相談してるの!」
そう言うとマリアベルが私の両腕を掴むと真剣な顔をする。
「こう言ってはなんだけど あなたが片思いに身を焦がしてから 演技力が格段に上達したわ」
「えっ?」
「人の心の機微を知りたいと 思うようになったという事よ。 その事が、あなた自身に深みを与えたの 。やっぱり、恋は芸の肥やしね」
「・・・」
マリアベルに褒められて嬉しいし 言わんとしてる事も分かる。 でも・・・この気持ちを抱え続けるのは あまりにも辛い。
姿を見かけただけで、好きな気持ちが溜まっていくのに 無理だと首を横に振る。
だってこの先 彼は結婚して 子供が生まれる。
彼が婚約者と幸せになるたび、 私は不幸になっていく。 そんな自分の人生を想像したら涙が溢れる。だから、素直に彼を祝福する気持ちにはなれない。
「マロニア・・」
「恋などしたく なかったのに・・」
「ああ、可愛いマロニア。それが 恋と言うものなのよ」
マリアベルが、そう言って私を抱き寄せると 子供のように頭を撫でる。
マロニアは その胸の中で 声を出して泣く。
「よし、よし」
私の気持ちをマリアベルだけが、知っている
だから、素直に 自分の感情をさらけ出してしまう。
どうして私には『好きだ』と言うチャンスさえないの。
*****
アランは 満足げに微笑む。
競争相手が いると 言ったことは 効果覿面 。
依頼したその日の夜には 最初の調査書が届けられた。
(こんなに早く 結果が出るなら 最初から頼めば良かった)
久しぶりにぐっすり眠ったアランは清々しい気分で朝を迎えた。
さっそく 調査票を読もうとペーパーナイフに手を伸ばす。
(さてさて、シャーロットは どこかな ?)
コンコン!
するとノックの音がする。 今から読もうと思ったのに出鼻をくじかれた形になったが急用かもと返事をする。
「入れ 」
小間使いが 封筒を手に入ってくる。
2件目が届いたか 。
「旦那様 。 アダム探偵事務所から 調査書が届いております」
「ん」
小間使いが封筒を差し出す。それを受け取ると最初に届いた分から読もうと、ペーパーナイフに手を伸ばすが、ぐずぐずと小間使いが出ていかない 。
「何だ?」
「 それが・・ビルズ探偵事務所と キャメル探偵社からも 届いています 」
「分かった」
そう言って隠し持っていた封筒を出す。
アランは、ひったくるように受け取って脇に置くと、さっさと出て行けと 小間使いを手で追い払う。
いっぺんに 4社に増えた。調査内容を比較検討すれば、自ずとシャーロットの居場所が分かるぞ。
アランは、小間使いが出て行くと いそいそとペーパーナイフに手を伸ばす。
コンコン!
が、 また ノックの音がする。
(用があるなら いっぺんに済ませろ!)
要領の悪さに 呆れながら返事をする。
「入れ」
さっきとは別の小間使いが入ってきた。
「 旦那様。 デヴィッド探偵事務所の者が、 直接報告したいと 訪ねてきております」
「なっ」
こっちの都合を考えない勝手な行いに苛立って瞼が ピクリと動く。
どうして、 わざわざ来る? 紙に書いて届ければいいものを。
来客は嫌いだ。 金も時間も とられる。
(・・・)
断りたいが 報告内容が知りたい。
とっとと、聞いて 帰ってもらおう。
「分かった」
アランはペーパーナイフを戻すと 渋々重い腰を上げる 。
コンコン!
すると、また ノックの音がする。
落ち着きがない。 騒がしいのは好きじゃないのに。アランはイライラと髪を撫で付ける。
「入れ」
3人目の小間使いが顔を出す。
「旦那様 。フォード探偵社の方が お会いしたい と来ています」
何なんだ今日は!
次から次へと、人が訪ねてくる。
これでは 面接と変わらないじゃないか!
そう考えると憂鬱でしかない。
この分では、話を聞くだけで 午前中に終わりそうだ。アランは 痛み出したこめかみを押さえる。
「旦那様。お薬・・」
心配して声をかけてきた小間使いを視線で黙らせる。
怒鳴り出したいのを なんとか耐えていると ドアがゆっくりと開いて4人目の小間使いが 中の様子を伺うように 、こっそりと見ている。
「 旦那様。・・・ イース」
「五月蝿い! どいつもこいつも 勝手に来やがって!」
小間使いの話を 遮るように怒鳴る。
すると、3人目の小間使いが謝って 4人目の小間使いを連れて部屋を出て行く。
「もっ、申し訳ありません」
この調子では 1日中 来客が絶えない 。
今更ながら 全員 に声をかけたことを後悔する。
「はぁ~」
アランは 深いため息をつくと 仕方なく 重い足取りで 応接室に向かう 。
これで シャーロットの居場所が 分からなかったら、 ただじゃおかないと、ギリギリと歯ぎしりする。
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