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偶然の出逢い
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アランは 前回の失敗を取り返したい。そう思って 自分でもここ数日 ティアスが所有している家を 尋ね回っていたのに、 なぜかシャーロットではなく マロニアを見かける。
アランは、自宅へと戻りなから馬車の中で首をひねる。どうして、こうもマロニアに行く先々で会うんだ?
ここまで来ると、偶然では無いのかもしれない。
しかし、マロニアが 私に用とは何なんだ?
まさか、才能が無いと言った事を根に持って? いや、それはない。 花を贈って 誤魔化した。
だとしたら、女が男をつけ回す理由とは何だ?
恨みでないなら・・。
・・私のことが好きなのか?
だから、アプローチしようと私の行く先々に姿を現してるのか?
誤解されるような態度をとった覚えは、ないんだが ・・。ニコニコと私に話しかけてきたマロニア
の顔が浮かぶ。
もしかして・・ 私が婚約していることを知らないとか?そうかも しれない。
あの笑顔は 婚約している者に向けるには 眩しすぎる。 それは、不味い。
どう対処したら いいのかと指で顎をこする。
あの男爵の娘だ。もし、本気になったら面倒なことになりそうだ。
やはり、二度と会わないようにしないと。
これ以上問題が増えるのは困る。 今度姿を見かけたら逃げよう。
***
自宅で自主練をしていたマロニアは ふと思い出して 台本を置くと、本棚から一冊の本を取り出して パラパラとめくる。
中には とっても大切な物が挟まっている。
見つけた!
上に乗っている薄紙をはがすと 押し花が現れる。マロニアは押し花を優しく指でなぞる。
彼が贈ってくれた花籠の花だ。
(これを大事にしているから 忘れられないのかな・・)
セリフを覚えなくちゃいけないのに 気付けば彼の事ばかりを考えている。
寝ても覚めてもとは、 こう言うことを言うんだろうか? 思っては駄目だと分かっているのに 考えてしまう。そして、会いたくなる。 そんな事したら婚約者を傷つけるし 自分も傷つく。
忘れたいのに恋する気持ちは今も 心の奥で 燻っている。 この押し花を 捨ててしまえば、いいのに・・。 そしたら二人の縁が切れるんじゃないかと思って捨てられない。
(縁なんて最初から無いのに・・)
出会ったときには、既に婚約していた。
でも、これは彼が私のことを思って 一本一本選んでくれた 特別な思い出の品だもの。
やっぱり、捨てられない。
マロニアは本を閉じるとぎゅっと抱きしめる
思うだけなら罪にならない。
だから、今だけ。 彼が結婚するまで許して。
*****
アランは一人書斎で、両肘を机に ついて 手を組むと これまでの事を省みる。
思えば伯爵を当てにした私が 愚かだったんだ。
シャーロットの捜索も 上手く行ってない。
ティアスの線も断たれてしまったし 使用人を含めて誰も役に立ちそうにない。
( となると、やはり ・・)
コンコン
ノック の音に返事をする。
「入れ 」
「旦那様 。先日頼まれました 私立探偵のリストを持って参りました」
ペコペコと頭を下げながら 小間使いがリストを差し出す。
ちょうど考えているところだった。
金は かかるが プロに任せようと考えて 探すように 小間使い指示しておいた。
それが、このタイミングで リストアップされるとは ・・。
(これは 運が回ってきたな)
「どれ、見せろ」
上機嫌でリストを受け取ると パラパラとページを捲りなから 素早く 料金と実績を チェックする。しかし、バラバラで これという決め手がない。
「どこに致しましょう?」
小間使いが催促してくるが、無視してもう一度リストを見直して みるが、やはり どこにするか決めかねる。
「・・・」
式まで日にちもない。
どこに依頼するか 今は選べ時間さえ惜しい。
どうしたら、効率的だ。
だったら ・・。
アランは思い切った手に出ることにする。
一枚一枚リストを見ながら頭の中で調査費用を合計する。
合計額を割り出すと 軽く頷く。
これぐらいなら払ってもいいだろう。
「全部に依頼を出せ。 条件は 、期限は2日 ・・いや、4日以内に 見付だす事だ」
「ぜっ、全部ですか ?」
「そうだ 。他にも依頼してあると 必ず 言え!」
そうすれば、お互いに競走して もっと早く居場所がわかる 。
目を見開いて驚く小間使いに 構わないと頷く。
「かしこまりました」
別に払うのは着手金だけだ。 成功報酬として払うのは 一社だけだから、節約出来る。
私が訪ねたことで 向こうも何かアクションを起こすかもしれない。 だから、今は1日も早くシャーロット奪還しないと手遅れになる。
「 待て!」
「はい」
こそこそと出て行こうとする 小間使いを呼び止める 。
「 一番高い所は、 依頼しなくていい」
「・・はい 」
振り返った小間使いが 小さい声で返事をするとドアを閉める。
アランは笑顔で手を擦り合わせる。
(これで私の勝ちは決まりだな)
ティアス覚悟しろよ。と、 アランは一人笑いする。
****
ティアスを探し続けているマロニアは 今日調べる屋敷の前で 辺りの様子を伺いながう。
誰も居ないのを確認すると、足を忍ばせて 窓まで近づくとそっと中を覗き込む。
部屋の中には 高級な家具が備え付けられている。それを見てマロニアは、ここがティアスの自宅かもしれないと 期待して勝手口に向かう。
マロニアは 中庭の扉を閉めると はずれだったとがっかりして、とぼとぼと歩き出す。
( ここも 違った・・)
いつになったら会えるんだろう。
ティアスの 自宅かも しれないと 思ったのに。
家具があったのは、一階だけだった。 他の生活用品は何もなかった。 2階の寝室には 埃が積もっていた。 どうして、こんな手の込んだ事をしてるんだろう?
玄関周りだけ手入れをしたり、たった一人だけ使用人を置いたり。 何より不思議なのは 出入り口の鍵が壊されたり、開いているままになっていることだ 。まるで入って下さいと・・。
もしかして、面と向かって断れないから、やんわりと諦めさせる為? でも、そこまでする?
(・・・)
それでも、ティアスに恋人になって欲しいなら、 探し続けるしかない。
でないと・・。
ガサッ
葉を踏みしめる音に ハッとして音のした方を見ると あの人が、こちらに向かって歩いてくる。
どうして、ここに? 神様のイタズラ?
それとも構わない。
私に気付いたあの人が 私を見て眉をひそめる。
あの人も私と、こんなところで会うとは思っていなかったんだ。
こうして、ちゃんと顔を見るのは久しぶりだ。
(ああ、 やっぱり素敵だ)
いけない事なのに 胸がときめく。 会えば辛くなるだけなのに 一時の喜びを選んでしまう。
あの人が歩みを止めることなく近づいてくる。 マロニアは、それをドキドキしながら待っていると 彼が私の目の前で立ち止る。
せっかく会えたんだから 何か話したい。 声が聞きたい。 挨拶の一つもしたい。
でも頭に浮かぶのは別の言葉。
( 会いたかった。結婚してほしくない。私では駄目?)
「・・・」
「・・・」
口を開いたら自分の思いを言いそうで怖い。
そう考えて ためらっていると彼が無言で ポケットに入れていた手を出して私へと伸ばす。
(何?何?)
何をするつもりなのか 分からなくて怖い。
でも、何にするか知りたい。それなのに、 耐え切れず思わず ぎゅっと目を瞑る。
胸の中に期待と不安が、ないまぜになる。
私の髪に触れた彼の指が震えている。
( どうして震えている?)
その指が ゆっくりと私の頬を撫でる。 硬く冷たい指の感触に首をすくめる。 でも、触れられた部分が 火傷したようにズキズキと疼く。
本当に私の近くにいるのか 彼の息遣いさえ感じられる。
( 私の姿は彼に、どんな風に見えているのだろう。 彼の心の中が知りたい)
指 がどんどん下がっていく。どこまで行くの? 彼の指が耳の横を通り過ぎると行く先を変えて
曲がりだした。
(あっ)
くっ、唇に振れようとしている。
そう分かっているのに、止められない。 もうすぐ、もうすぐ彼の指が ・・。
不埒なことを許してしまったら 私は泥沼に入ってしまう。
「やっ、止め ・・て」
なんとか声を絞り出して 後ろへ下がる。 目を開けると彼の金色の瞳が私を見下ろしている。
マロニアは、彼が、どんな理由で、こんなことをしたのか、彼の本心を探るように見る。
すると彼が、くすりと笑う。
「髪 についた木の葉を取ってあげただけだ」
証拠だと言うように彼が手にした木の葉をくるりと回す。 たとえ、そうだったとしても嘘だ。
葉っぱを取るだけなら、私の頬に触れる必要はないんだから。
ごまかそうとする彼に嘘をつかないでと
「うっ」
「 それじゃあ」
そのことを指摘する前に彼が、これみよがしに木の葉を私の目の前で 落とすと、後ろ手に手を振って去っていく。
「 嘘つき・・」
その後ろ姿に向かってポツリと言うと 未だ感触が残っている頬に手を触れる。
あのまま許していたら 私たちは、どうなったんだろう・・。
どうして、会ってしまうんだろう・・。
忘れたいのに目を閉じると すべて思い出せる。 背の高さも ポケットに手を入れた独特の歩き方も 私を見る黄色の瞳も 笑いをこらえる口元。
何れも 鮮明に蘇ってしまう。
*****
自分のした行動に驚いて 逃げ帰ってしまったアランは 書斎でイライラと絨毯が擦れる
のも構わず 行ったり来たりする。
(どうかしている)
ティアスの自宅かどうかを確認するの忘れてしまっている。 何のために行ったんだ。 時間の無駄だ。
何度も その姿を目にしてるうちに 後ろ姿を見ただけで彼女と分かってしまった。
そのまま帰ればいいのに 元気なないその姿に その理由が知りたかった。
(なぜ知りたいと思う?愚か者め!)
他人との関わりをな持つなどど 煩わしいだけだ。 それなのに・・。
私を見る彼女の瞳に、吸い寄せられていた。
どうしても無視できない。 真っ直ぐに私に向けられる暖かなその瞳に、自分を写したくなってしまう。
(・・・)
どうして、そう思う?おかしいじゃないか。
まるで・・。
アランは、立ち止まると自分が導き出した答えを頭を振って否定する。
これは気まぐれだ。気まぐれ。そう、気まぐれ。そんな事あり得ないだろう。
アランは、その考えを叩き潰すように バンと両手を机に打ち付ける。
馬鹿馬鹿しい。恋愛小説あるまいし。
「 アラン・ラングスボード。血迷う
んじゃない。 お前は誇り高い貴族だ。 情に流されてどうする」
一時の感情で全てを台無しにする気か?
今までかかった費用考えろ!
こんな考えを持つのは小説の影響だ。 あれは架空の物語だ。鏡を見ろ! 主人公って柄じゃないだろ。
アランは、自宅へと戻りなから馬車の中で首をひねる。どうして、こうもマロニアに行く先々で会うんだ?
ここまで来ると、偶然では無いのかもしれない。
しかし、マロニアが 私に用とは何なんだ?
まさか、才能が無いと言った事を根に持って? いや、それはない。 花を贈って 誤魔化した。
だとしたら、女が男をつけ回す理由とは何だ?
恨みでないなら・・。
・・私のことが好きなのか?
だから、アプローチしようと私の行く先々に姿を現してるのか?
誤解されるような態度をとった覚えは、ないんだが ・・。ニコニコと私に話しかけてきたマロニア
の顔が浮かぶ。
もしかして・・ 私が婚約していることを知らないとか?そうかも しれない。
あの笑顔は 婚約している者に向けるには 眩しすぎる。 それは、不味い。
どう対処したら いいのかと指で顎をこする。
あの男爵の娘だ。もし、本気になったら面倒なことになりそうだ。
やはり、二度と会わないようにしないと。
これ以上問題が増えるのは困る。 今度姿を見かけたら逃げよう。
***
自宅で自主練をしていたマロニアは ふと思い出して 台本を置くと、本棚から一冊の本を取り出して パラパラとめくる。
中には とっても大切な物が挟まっている。
見つけた!
上に乗っている薄紙をはがすと 押し花が現れる。マロニアは押し花を優しく指でなぞる。
彼が贈ってくれた花籠の花だ。
(これを大事にしているから 忘れられないのかな・・)
セリフを覚えなくちゃいけないのに 気付けば彼の事ばかりを考えている。
寝ても覚めてもとは、 こう言うことを言うんだろうか? 思っては駄目だと分かっているのに 考えてしまう。そして、会いたくなる。 そんな事したら婚約者を傷つけるし 自分も傷つく。
忘れたいのに恋する気持ちは今も 心の奥で 燻っている。 この押し花を 捨ててしまえば、いいのに・・。 そしたら二人の縁が切れるんじゃないかと思って捨てられない。
(縁なんて最初から無いのに・・)
出会ったときには、既に婚約していた。
でも、これは彼が私のことを思って 一本一本選んでくれた 特別な思い出の品だもの。
やっぱり、捨てられない。
マロニアは本を閉じるとぎゅっと抱きしめる
思うだけなら罪にならない。
だから、今だけ。 彼が結婚するまで許して。
*****
アランは一人書斎で、両肘を机に ついて 手を組むと これまでの事を省みる。
思えば伯爵を当てにした私が 愚かだったんだ。
シャーロットの捜索も 上手く行ってない。
ティアスの線も断たれてしまったし 使用人を含めて誰も役に立ちそうにない。
( となると、やはり ・・)
コンコン
ノック の音に返事をする。
「入れ 」
「旦那様 。先日頼まれました 私立探偵のリストを持って参りました」
ペコペコと頭を下げながら 小間使いがリストを差し出す。
ちょうど考えているところだった。
金は かかるが プロに任せようと考えて 探すように 小間使い指示しておいた。
それが、このタイミングで リストアップされるとは ・・。
(これは 運が回ってきたな)
「どれ、見せろ」
上機嫌でリストを受け取ると パラパラとページを捲りなから 素早く 料金と実績を チェックする。しかし、バラバラで これという決め手がない。
「どこに致しましょう?」
小間使いが催促してくるが、無視してもう一度リストを見直して みるが、やはり どこにするか決めかねる。
「・・・」
式まで日にちもない。
どこに依頼するか 今は選べ時間さえ惜しい。
どうしたら、効率的だ。
だったら ・・。
アランは思い切った手に出ることにする。
一枚一枚リストを見ながら頭の中で調査費用を合計する。
合計額を割り出すと 軽く頷く。
これぐらいなら払ってもいいだろう。
「全部に依頼を出せ。 条件は 、期限は2日 ・・いや、4日以内に 見付だす事だ」
「ぜっ、全部ですか ?」
「そうだ 。他にも依頼してあると 必ず 言え!」
そうすれば、お互いに競走して もっと早く居場所がわかる 。
目を見開いて驚く小間使いに 構わないと頷く。
「かしこまりました」
別に払うのは着手金だけだ。 成功報酬として払うのは 一社だけだから、節約出来る。
私が訪ねたことで 向こうも何かアクションを起こすかもしれない。 だから、今は1日も早くシャーロット奪還しないと手遅れになる。
「 待て!」
「はい」
こそこそと出て行こうとする 小間使いを呼び止める 。
「 一番高い所は、 依頼しなくていい」
「・・はい 」
振り返った小間使いが 小さい声で返事をするとドアを閉める。
アランは笑顔で手を擦り合わせる。
(これで私の勝ちは決まりだな)
ティアス覚悟しろよ。と、 アランは一人笑いする。
****
ティアスを探し続けているマロニアは 今日調べる屋敷の前で 辺りの様子を伺いながう。
誰も居ないのを確認すると、足を忍ばせて 窓まで近づくとそっと中を覗き込む。
部屋の中には 高級な家具が備え付けられている。それを見てマロニアは、ここがティアスの自宅かもしれないと 期待して勝手口に向かう。
マロニアは 中庭の扉を閉めると はずれだったとがっかりして、とぼとぼと歩き出す。
( ここも 違った・・)
いつになったら会えるんだろう。
ティアスの 自宅かも しれないと 思ったのに。
家具があったのは、一階だけだった。 他の生活用品は何もなかった。 2階の寝室には 埃が積もっていた。 どうして、こんな手の込んだ事をしてるんだろう?
玄関周りだけ手入れをしたり、たった一人だけ使用人を置いたり。 何より不思議なのは 出入り口の鍵が壊されたり、開いているままになっていることだ 。まるで入って下さいと・・。
もしかして、面と向かって断れないから、やんわりと諦めさせる為? でも、そこまでする?
(・・・)
それでも、ティアスに恋人になって欲しいなら、 探し続けるしかない。
でないと・・。
ガサッ
葉を踏みしめる音に ハッとして音のした方を見ると あの人が、こちらに向かって歩いてくる。
どうして、ここに? 神様のイタズラ?
それとも構わない。
私に気付いたあの人が 私を見て眉をひそめる。
あの人も私と、こんなところで会うとは思っていなかったんだ。
こうして、ちゃんと顔を見るのは久しぶりだ。
(ああ、 やっぱり素敵だ)
いけない事なのに 胸がときめく。 会えば辛くなるだけなのに 一時の喜びを選んでしまう。
あの人が歩みを止めることなく近づいてくる。 マロニアは、それをドキドキしながら待っていると 彼が私の目の前で立ち止る。
せっかく会えたんだから 何か話したい。 声が聞きたい。 挨拶の一つもしたい。
でも頭に浮かぶのは別の言葉。
( 会いたかった。結婚してほしくない。私では駄目?)
「・・・」
「・・・」
口を開いたら自分の思いを言いそうで怖い。
そう考えて ためらっていると彼が無言で ポケットに入れていた手を出して私へと伸ばす。
(何?何?)
何をするつもりなのか 分からなくて怖い。
でも、何にするか知りたい。それなのに、 耐え切れず思わず ぎゅっと目を瞑る。
胸の中に期待と不安が、ないまぜになる。
私の髪に触れた彼の指が震えている。
( どうして震えている?)
その指が ゆっくりと私の頬を撫でる。 硬く冷たい指の感触に首をすくめる。 でも、触れられた部分が 火傷したようにズキズキと疼く。
本当に私の近くにいるのか 彼の息遣いさえ感じられる。
( 私の姿は彼に、どんな風に見えているのだろう。 彼の心の中が知りたい)
指 がどんどん下がっていく。どこまで行くの? 彼の指が耳の横を通り過ぎると行く先を変えて
曲がりだした。
(あっ)
くっ、唇に振れようとしている。
そう分かっているのに、止められない。 もうすぐ、もうすぐ彼の指が ・・。
不埒なことを許してしまったら 私は泥沼に入ってしまう。
「やっ、止め ・・て」
なんとか声を絞り出して 後ろへ下がる。 目を開けると彼の金色の瞳が私を見下ろしている。
マロニアは、彼が、どんな理由で、こんなことをしたのか、彼の本心を探るように見る。
すると彼が、くすりと笑う。
「髪 についた木の葉を取ってあげただけだ」
証拠だと言うように彼が手にした木の葉をくるりと回す。 たとえ、そうだったとしても嘘だ。
葉っぱを取るだけなら、私の頬に触れる必要はないんだから。
ごまかそうとする彼に嘘をつかないでと
「うっ」
「 それじゃあ」
そのことを指摘する前に彼が、これみよがしに木の葉を私の目の前で 落とすと、後ろ手に手を振って去っていく。
「 嘘つき・・」
その後ろ姿に向かってポツリと言うと 未だ感触が残っている頬に手を触れる。
あのまま許していたら 私たちは、どうなったんだろう・・。
どうして、会ってしまうんだろう・・。
忘れたいのに目を閉じると すべて思い出せる。 背の高さも ポケットに手を入れた独特の歩き方も 私を見る黄色の瞳も 笑いをこらえる口元。
何れも 鮮明に蘇ってしまう。
*****
自分のした行動に驚いて 逃げ帰ってしまったアランは 書斎でイライラと絨毯が擦れる
のも構わず 行ったり来たりする。
(どうかしている)
ティアスの自宅かどうかを確認するの忘れてしまっている。 何のために行ったんだ。 時間の無駄だ。
何度も その姿を目にしてるうちに 後ろ姿を見ただけで彼女と分かってしまった。
そのまま帰ればいいのに 元気なないその姿に その理由が知りたかった。
(なぜ知りたいと思う?愚か者め!)
他人との関わりをな持つなどど 煩わしいだけだ。 それなのに・・。
私を見る彼女の瞳に、吸い寄せられていた。
どうしても無視できない。 真っ直ぐに私に向けられる暖かなその瞳に、自分を写したくなってしまう。
(・・・)
どうして、そう思う?おかしいじゃないか。
まるで・・。
アランは、立ち止まると自分が導き出した答えを頭を振って否定する。
これは気まぐれだ。気まぐれ。そう、気まぐれ。そんな事あり得ないだろう。
アランは、その考えを叩き潰すように バンと両手を机に打ち付ける。
馬鹿馬鹿しい。恋愛小説あるまいし。
「 アラン・ラングスボード。血迷う
んじゃない。 お前は誇り高い貴族だ。 情に流されてどうする」
一時の感情で全てを台無しにする気か?
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