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1章:俺は魔王見習いのようです
第8話:勇者のベッドメイキングにビビる
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『魔王見習い』として何をすべきか?
色々とあるだろう。
例えば、ハーピーによる空中飛行アトラクションを考案する。
もちろん安全確保は最優先。
例えば、テーマパークの大体の見取り図を描き上げる(あんまり覚えてないけど)。
魔法の勉強はもう少し先延ばしにしてもらった。
さすがに身体が保たない。
スキルの取得も優先事項に入る。
しかし……魔王に部下をつけてもらうことはできない。
「魔王としての道を歩くのならば、己の手で進むの当然である。部下は勝手についてくるものだ」と言われてしまった。
俺はあくまで、『魔王見習い』なのだ。
思った通り、魔王はスパルタ教育をやろうとしている。
いっそ、魔王に俺が異世界から来てスキルを使えることを話すか?
いや――どうもあの目を見ているとあまり大きな事はしない方が良い。
そもそもが、肥え太り力を持った人間たちを滅ぼした魔王なのだ。
自分より力を持ち、制御できないような人間が現れたらどうするか……。
当然、戦いを挑んでくるだろうな。
自慢じゃないが、俺は勇者のような高潔さなんて微塵もないからな!
こちらは頼むのではなく少しずつスキルを覚えていくべきだ。
そして気づかれず、さも俺の力で行ったかのように見せつける。
「俺ってば、すげーだろ」みたいに。
力があるのではなく、知識・戦略があると考えさせた方がいい。
あーあ、自分で決めたこととは言え、けっこう面倒だな。
勇者みたいに表側で力を使って無双するわけじゃなく、あくまで裏から。
……ま、俺のいいところは何事も楽しむという所だ。
だから、魔王軍を編成しようか、なんてすぐに考えたわけだ。
これもまた、楽しんで行こうじゃないか!!
「リュウジさ~ん、リュウジさんいますー?」
これはランの声か。
俺は『魔王見習い』になるにあたって、部屋を一つもらった。
まだ机と椅子、ベッドしかない部屋だけど、いずれ色々なものを集めていきたい。
たとえば……人間の彫刻家が作った実寸の猫耳娘フィギュアとか。
実在しているのだから、リアリティも追求できるだろう。
この世界じゃ研究のため置いてる、と言っとけば大丈夫だろ。
「おー、こっちにいるから入ってきて!」
「おじゃましまーす!」
「どうも……お邪魔……します……」
……ん? 声が二人分聞こえたぞ?
顔をあげると、ランの他に誰かいる。
フリルにカチューシャの少女……俺、前に見たよね。
「べ、ベッドメイキングをしにきました……」
……マジで勇者がベッドメイキングするのか。
この前見た勇者とはまったく違う。
仕事も慣れないようで、ガタガタとぎこちなくシーツを整えていてる。
何? このギャップ?
最初の出会いがあまりにもインパクトがあったので、戸惑う。
と共に「あれ? 勇者って可愛いじゃない」という俺の心の声が聞こえる。
「お、おわったと思うのですが……どうでしょう? 僕、まだ経験が浅いので……」
どうと言われてもなあ。
驚きすぎて、ベッドなんかどうでもいいよ。
「勇者さんが、どうしてもというから連れてきたんですが……」
ランの声は明らかに不満そうだ。
それはそうだろう。
あれだけ嫌っていた勇者がすぐそこにいるんだ。
ただ、勇者とは一度話してみたかった。
ランには悪いが少し時間をもらおう。
「ラン。ベッドメイキングの仕事って、少し遅くなっても大丈夫?」
「ええと……はい……だいじょぶ……です……」
とても嫌そうにそう言った。
足のくねり方が今までと違う。
解けないイヤホンのコードみたいになっている。
「ま、まあ。俺って『魔王見習い』になったからさ、勇者のことは知っておかなくちゃいけないんだ。後で魔王様には報告しておくから」
「わかりました……」
しぶしぶ、といった表情でランは帰っていった。
たぶん、さっとベッドメイキングだけさせて帰るつもりだったんだろうな。
……もしかして……嫉妬してたりするのかな?
いや、この前会ったばかりなのに、そりゃあないよな。
自意識過剰だぞ、俺!
自分を諌めながらも、ちらりと勇者を見る。
それにしても……何をしにきたんだ?
色々とあるだろう。
例えば、ハーピーによる空中飛行アトラクションを考案する。
もちろん安全確保は最優先。
例えば、テーマパークの大体の見取り図を描き上げる(あんまり覚えてないけど)。
魔法の勉強はもう少し先延ばしにしてもらった。
さすがに身体が保たない。
スキルの取得も優先事項に入る。
しかし……魔王に部下をつけてもらうことはできない。
「魔王としての道を歩くのならば、己の手で進むの当然である。部下は勝手についてくるものだ」と言われてしまった。
俺はあくまで、『魔王見習い』なのだ。
思った通り、魔王はスパルタ教育をやろうとしている。
いっそ、魔王に俺が異世界から来てスキルを使えることを話すか?
いや――どうもあの目を見ているとあまり大きな事はしない方が良い。
そもそもが、肥え太り力を持った人間たちを滅ぼした魔王なのだ。
自分より力を持ち、制御できないような人間が現れたらどうするか……。
当然、戦いを挑んでくるだろうな。
自慢じゃないが、俺は勇者のような高潔さなんて微塵もないからな!
こちらは頼むのではなく少しずつスキルを覚えていくべきだ。
そして気づかれず、さも俺の力で行ったかのように見せつける。
「俺ってば、すげーだろ」みたいに。
力があるのではなく、知識・戦略があると考えさせた方がいい。
あーあ、自分で決めたこととは言え、けっこう面倒だな。
勇者みたいに表側で力を使って無双するわけじゃなく、あくまで裏から。
……ま、俺のいいところは何事も楽しむという所だ。
だから、魔王軍を編成しようか、なんてすぐに考えたわけだ。
これもまた、楽しんで行こうじゃないか!!
「リュウジさ~ん、リュウジさんいますー?」
これはランの声か。
俺は『魔王見習い』になるにあたって、部屋を一つもらった。
まだ机と椅子、ベッドしかない部屋だけど、いずれ色々なものを集めていきたい。
たとえば……人間の彫刻家が作った実寸の猫耳娘フィギュアとか。
実在しているのだから、リアリティも追求できるだろう。
この世界じゃ研究のため置いてる、と言っとけば大丈夫だろ。
「おー、こっちにいるから入ってきて!」
「おじゃましまーす!」
「どうも……お邪魔……します……」
……ん? 声が二人分聞こえたぞ?
顔をあげると、ランの他に誰かいる。
フリルにカチューシャの少女……俺、前に見たよね。
「べ、ベッドメイキングをしにきました……」
……マジで勇者がベッドメイキングするのか。
この前見た勇者とはまったく違う。
仕事も慣れないようで、ガタガタとぎこちなくシーツを整えていてる。
何? このギャップ?
最初の出会いがあまりにもインパクトがあったので、戸惑う。
と共に「あれ? 勇者って可愛いじゃない」という俺の心の声が聞こえる。
「お、おわったと思うのですが……どうでしょう? 僕、まだ経験が浅いので……」
どうと言われてもなあ。
驚きすぎて、ベッドなんかどうでもいいよ。
「勇者さんが、どうしてもというから連れてきたんですが……」
ランの声は明らかに不満そうだ。
それはそうだろう。
あれだけ嫌っていた勇者がすぐそこにいるんだ。
ただ、勇者とは一度話してみたかった。
ランには悪いが少し時間をもらおう。
「ラン。ベッドメイキングの仕事って、少し遅くなっても大丈夫?」
「ええと……はい……だいじょぶ……です……」
とても嫌そうにそう言った。
足のくねり方が今までと違う。
解けないイヤホンのコードみたいになっている。
「ま、まあ。俺って『魔王見習い』になったからさ、勇者のことは知っておかなくちゃいけないんだ。後で魔王様には報告しておくから」
「わかりました……」
しぶしぶ、といった表情でランは帰っていった。
たぶん、さっとベッドメイキングだけさせて帰るつもりだったんだろうな。
……もしかして……嫉妬してたりするのかな?
いや、この前会ったばかりなのに、そりゃあないよな。
自意識過剰だぞ、俺!
自分を諌めながらも、ちらりと勇者を見る。
それにしても……何をしにきたんだ?
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