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1章:俺は魔王見習いのようです

第3話:モンスター用の飯を食う

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「幻覚じゃなかったか」

 白い天井と、隣にいるタコ足のランを見て、俺はそう呟いた。

「何のことです?」

「いや、まったく問題ないよ。それよりランには敬語を使ったほうがいいのかな? 何歳?」

 宙を見ながら「うーん」と考えている。
 こうして見ると、肌以外は普通の女の子に見えるんだけどなあ。
 むしろ人間よりも髪はふんわりとやわらかくて、肌はすべすべ。
 そして……何とも言えないい匂いがする。媚薬ってこんな感じなのかなと思う。

「1,000歳……よりは下だと思いますけど。リュウジさんは何歳なんですか?」

「お、俺は……」

 ハッタリ言ってもいいのかな? 1,017歳とか。
 けど、さすがに人間の姿でそれは無謀なような気がする。
 ここは信頼感を与えるために正直に!

「17歳……だけど」

「わあ、ここで働いている人たちと年齢近いですよ。一番近いのは……クリスちゃんかな? 15歳って言ってたので。あと敬語とか止めてください。なんかこう……とにかく嫌なんです」

「へ、へえ。人間も働いているんだ。でも……さ、モンスターと人間って戦ったりしないの? ほら、人間代表の勇者と、モンスター代表の魔王も戦ったわけでしょ」

「戦わないですねー。勇者と魔王様の戦いもしょうがなかったというか、早まったというか」

 何なのこの異世界!
 普通、モンスターが人を襲って、それを倒したら経験値が入る……じゃなかった。
 倒したら平和になるわけだよね。なんで仲良くしてるの?

 しかもさらっと、早まって勇者と魔王が戦ったって言ったぞ。
 早まるも何も、魔王城での決戦だったはずだよね。

 色々聞きたいことがあったけれど、少し……本能の方に任せてみるか。
 オーバーヒートしそうだし。

「ランちゃん、悪いんだけどご飯食べに行ってもいいかな?」

「はい! さっそく行きましょう!」

 ランに連れられて外に出ると、俺がいた部屋が部屋ではなかったことがわかった。
 俺の知っている言葉だと、四角いテントのようなものが並んでいる。
 外側はこうなってたのか。

 彼女は足をくねらせながら、ひときわ大きいテントへと向かう。
 足をマジマジと見てみると、ちょっと可愛い気がする。

「どうしたんですか?」

「あ、いや何でもないよ」

 皆まだ眠っているのか、あるいはどこかへ出かけているのか、大きなテントの中には誰もいなかった。
 正確には客はいなくて、下半身が蛇の女の人が調理場で働いていた。

「あ、あの人? はわかるな。確かナーガって種族だっけ?」

「そうですね。私たちの仲間では、今いるラジャさんだけですけど、本当はもっとたくさんいるんです」

 ナーガラージャからつけた名前かな?
 親はけっこう適当な人? なのかもしれない。

「あ、いらっしゃーい。もしかして、君が魔王様の言っていたリュウジ君かしら?」

「え、俺の名前を魔王……様が?」

「ええ。何故か大層喜んでいて、一緒に働くぞーって言ってたわ。お酒飲みながら」

 サラリーマンみたいなことしてるな。
 そもそも魔王レベルと一緒に働いたりなんか無理だろ。
 一応、俺に、部下がめっちゃいれば別だけど。

「魔王城壊れちゃったからね。魔王様も大変なのよ」

 何かパンのようなものを置きながら、ラジャが言う。
「これ食べて大丈夫ですか?」と聞くのも失礼な気がしたので、そのままかぶり付いた。

「か、かた……」

「あー! ラジャさん。また、モンスター用のパン出したでしょ」

「あらあら、ごめんなさいね。人間用はこっちだったわ」

 若干やわらかいものが出てくる。
 ただ、フランスパンよりもかたいので、水を飲みながらじゃないと腹に入っていかない。

 しばらくして、俺とパンとの戦いは終わった。
 腹も膨れて少しだけ余裕が出てきた。何がどうなってるかわからないから、大まかな状況だけ聞いとこう。
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