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12:勇者と魔王は最後の戦いをします?

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 フェイントだと見抜けなかったとは、俺の判断ミスであった。前へと倒れた勇者は、見事な赤髪をなびかせて、剣を持ち直す。剣から光が溢れ出ている。


「うぬ! ここで、それを使うというのか勇者よ! 人間の子もいるのだぞ!!」

「僕だって、女の子を巻き込みたくはない。だが……ここでやらなければ、もっとたくさんの命が失われる!」


 俺の魔法力を全開にすれば、後ろの2人は守りきれるか? だが部下はどうなる? 魔王城はまた建てれば良い。しかし……。

 腕を前に出すと、闇が集まってくる。もう使わんと思っていたが、仕方がない。出来る限りあがいてみせよう! それに俺は以前とは違う。

 ここは魔王城。そして、相手は勇者なのだから、手加減などできん。たとえがこの身が滅びようとも。


「俺の手にあるもの! すべてやらせはせんぞおお!!」

「今さら魔王が何を言う? あまたの城を陥落させ、国王、貴族たちを殺したお前に何が言えるというんだ!!」

「そうだ……そうだな。お前から見ればそうなのだろう! 確かに俺は人間を殺した。虐殺者だ。だが……本当にお前はそう思っているのか? そう思い込みたいだけではないのか――」

「お前が行き倒れていたのが、その証拠ではないか!? 肥え太った豚どもが、勇者を排斥した。もう必要がないから、とな」


 一瞬、勇者の動きが止まった。真剣勝負をしてやりたいが、今の俺は背負うものがあまりにも大きすぎる。……いや、以前もそうであったはず。
 きっと俺は変わってしまったのだ。だが、気分は悪くない。本当に悪くない。

 俺は勇者を覆うように身体を締め上げた。剣が身体にめり込んでいくが、ささいなことである。
 花の香がする。ふと、戦いには似合わぬ感情が芽生えた。クリスと同じだな。勇者でなければ、本当に美しい女性になっていたかもしれぬ。どこぞの姫とは比べ物にならないほどに。


「はな、せ! はなせええええ!!!」

「ナーガ、クリスを連れて図書館へと向かえ!! 皆にも念話で伝えろ。1分は持ちこたえて見せようぞ」

「ま、魔王様は! こないんですか!!」

 今にも泣き出しそうなクリス、いや泣いておるなこれは。魂に刻んでおこう。彼女の顔を。


「俺にはかまうな。お前も知っているだろう? 強く気高き魔王を。それが死ぬと思うているのか? 行け」


 暴れるクリスをナーガが取り押さえて、食堂を出る。行ったか。これで存分にやれる。

「茶番は終わったか魔王よ!! 人間を助けるなどと偽善もいいところだ」


 締め上げている勇者が俺の力に逆らい、徐々に姿を現そうとしている。


「フ、フハハハ!! 茶番……確かに茶番であるな」

「だが、ここでの暮らしは存外に楽しいものであったぞ」

「何を言う。ここで終わりだ!!」


 剣がまばゆく光る。それは俺の身体にも影響を与え、徐々に侵食していく。このままでは、あの時と同じ状況になる。最後に戦い、負けたときと。だが――


「ぬるいわあ!! お前の剣も鈍ったものだな。俺は少しではあるが魔王城で人間を学んだ。面白いものだぞ。人間というのは。ずっと見ていたかったが、こうなっては致し方あるまい。見せてやろう、新たな魔王と言うものを」

 俺は締め上げた右手に闇を、そして左手に微かな『光』を作り出した。


「な、何!! 魔王が……光……だと!?」

「俺たちは、もう過去の遺物だ。お前は誰からも必要とされず、俺でさえ……部下やあいつらに任せておけば例え消えようとも満足であるぞ」


 俺は球体のバリアをはりつつ、闇と光を合わせた――。


「魔王。お前は、お前は――」


 俺の身体がバリアへと叩きつけられるのがわかる。しかし、これを解くわけにはいかない。我々が消えるまで保ち続ける!

 強烈な閃光は勇者も俺も飲み込んでいく。
 部下たちは逃げおおせたであろうか。ナーガは図書館へ着いたであろうか? あそこには結界魔法の権化とも言える爺さんがいる。この距離ならば問題あるまい。

 そして、クリス。面白かったぞ。たった2度であったが、人間というものにとても興味を持てた。叶うのならば……もう少し……。


 弾けた。


 ……これが、死ぬ……と……いうことであるか……。生まれ変わり……がある……とするならば……また会おうぞ!!

 俺の身体、記憶すべてが……闇の中へと溶け込んでいった。



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ここまで読んでいただきありがとうございます!
もちろん、ここで終わりではありません。


主人公が代わり、再び魔王城のテーマパーク化は続けられていきます。


魔王は、クリスは、勇者はどうなっていくのか――。
そして、以前の魔王と勇者の戦いとは?


主人公が代わりつつも、異様な存在感を放つ魔王がサブ主人公として活躍していく物語。

もう少々、お付き合いいただければ幸いです。
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