異世界最強の武器は私のスマホでした～勇者ダウンロード中～

第10話：ニコル、覚醒する！

アプリ名：僧侶（有料版）
現在のバージョン：2.0
神的評価：★★★★
神的レビュー：非常に使いやすくなりました。この金額なら満足です！
詳細説明：

職業　僧侶
HP　50
MP　65
攻撃力　15
守備力　16
素早さ　30
使用できる魔法
キュア　HP5回復
アンチポイズン　毒を消す
テキュア　HP30回復
キュアオール　全体10回復
ホーリー　攻撃魔法？

「す、すごいわニコル！　今持ってるお金をすべて使えば、もの凄く強くなる」

　こんな事なら、もっと早くに機能制限を解除してあげるんだった。
　私のレベルが上がらなさ過ぎて、他に目がいってなかった。
　ニコルやジキルは気づいていたんだろうけど、私が強くなるのを待っててくれたんだろうな。

「信じられないです！　これなら皆さんのお役に立てます。魔法の詠唱も早くなったと思いますし、僕に……僕に……攻撃魔法まで！　今まで皆さんだけを戦わせてしまっていて歯がゆかったんです。嬉しいです」

　攻撃魔法……攻撃魔法？
　僧侶の攻撃魔法も聞いたことはある。
　けど……ホーリーって1番強いやつじゃない？
　さすがにそんなの覚えられるはずがない。
　しかも『？』がついてるし。
　前のクリーナーの時と同じ怪しさを感じる。

「とりあえず、スライム退治に行ってみましょう。……攻撃魔法はしばらく使わないでね」

　私たちは再びスライムのいる場所に戻った。
　RPGの定番とはいえ、スライムにはお世話になるな。

　ジキルが供養している、と言っていたので、しばらくは気が乗らない日もあったんだけど、よく考えると倒すとお金を落として消えるのはおかしい。

　これは、異世界の人間・動物とは違うものなんだと思う。
　例えば、自称神が用意した敵役、とか。
　十分に有り得る。
　もしかしたら、魔王でさえ……。

「お嬢様、この辺りでよろしいかと」

　新しい服がずいぶん気に入っているようで、慎重に歩いていたジキルが言う。

「よっし！　ニコル、準備はいい？　もしかしたら背格好も変わるかもしれないけど」

「ナオさんのお役にたてるなら、喜んで！」

　急に制限解除するのをためらってしまう。
　もしかしたら、ニコルは今のニコルじゃなくなってしまうんじゃないか？
　この赤い爽やかな短髪の少年がいなくなって、代わりに成長した別の誰かが来る。
　それは……やっぱり嫌だ。

　でも、フリー版では、これからの戦いに連れて行くことができない。
　この街に残しておいても、きっと付いてくるだろう。

　私は思い切って全ての機能制限を解除した。
　周囲に風がおき、ニコルを中心として小さな竜巻ができる。

「私たちが信じてあげなきゃ。ニコルの成長を」

「大丈夫ですよ。ニコル様ならきっと」

　ジキルは優しく微笑んでいた。
　スライムまで巻き込みそうなほど大きくなった竜巻は、一瞬天へと伸びる柱のようになったかと思うと、消えた。

　ニコルは……ニコルは……。
　いた！
　彼は――