7人目の皇子

カエデ

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16話

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チヒロside


それから毎日第1皇子様とイエレルお兄様は来てくださいました。もちろん他の皇子様方も。イエレルお兄様と言うと、兄さんの方が良かったけどなー。と度々仰ってくださいます。さすがにそれはできません。兄さんなんて、恥ずかしいです。まだまだ絶対安静が必要で食事は前よりもとれるようになってきました。ものすごく安心できます。

「チヒロ」

「第1皇子様」

今日もまた、第1皇子様が来てくださいました。

「イエレルに……その…名前でお兄様をつけて読んでいるのは本当なのか?」

「?はい。」

「じゃあ俺のこともそう読んで欲しいのだが、、」

思いがけない言葉でした。噂で聞いた第1皇子様はもっと冷酷な方で剣しか興味が無いから関わったら殺されてしまうかも。と言う噂を聞いて少し怯えた覚えがあります。今まで親しくしていなかったのにどうして私に毎日会いに来るのでしょう?

「チヒロ?具合が悪いのか?なら司祭を呼んで」

「い、いえ、大丈夫です。第1皇子様……あ、えっとカインお兄様……。」

「ん。」

その後にお腹をポンポンとして頂きました。司祭様の話では私はお腹辺りが弱いらしいです。

「チヒロ、敬語は直さないのか?もっと気楽に話してくれていいんだぞ。」

「癖でこれ以外の話し方が分からないと言いますか。なんて言ったらいいのでしょう。」

「別に変えろという訳では無いのだが、喋りずらいならと思って、」

「お気遣いありがとうございます。」

「時間だ。そろそろ仕事に戻らなくては。
すまんな。  また来る。」

と言って、ご退室されていきました。すっかりこの暮らしに馴染んできました。ちょっと前まではあんなに辛かった世界がこんなに華やかに見えます。

数週間経って、やっと立てるようになりました。しばらく立っていなかったので足に力が入らず不安定でした。手すりや壁に掴まってやっと立てる感じです。お兄様や皇子様には内緒で立つ特訓をしました。赤子のようなこんな姿は見せたくありませんでしたから。

ようやく少しだけ歩けるようになった頃、お父様に呼ばれました。ちなみにお父様は皇帝とは呼ばず、お父様と言うように言われました。執務室に行くにはとても長い道のりを歩かなければ行けません。約束の時間は16時、今は15時50分。普通に歩いていくとしたら5分くらいかかるそうです。壁に掴まってなるべく早く歩いていきましたが、執務室前に着いたのは16時を大分過ぎた16時12分でした。

「失礼致します」

と、入るとお父様とノアが仕事をしながら待っていました。


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