7人目の皇子

カエデ

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13話

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イエレルside

思った通り着いたのは1時ぐらいだった。このままこの建物に乗り込んでもいいものだろうか。騎士団がいない中で自分たちだけで大丈夫か。いや、チヒロを助けるのが最優先だ。執事にもらったタオルのようなものを持って、弟たちと一緒に入った。

中は真っ暗であかりすら見えない。こんなところに本当にいるのだろうか。探知魔法はないため、ここから離れてしまっていたら、また魔法士達を呼ばなくてはならない。魔法士を1人でも連れてこればよかった。失敗した。

「なんか少し肌寒い…。」

エリゼオが呟いた。確かに、ここは南東で暑いはずだよな?それにしては寒すぎる。


「!!」

しばらく行くと階段が見えてきた。階段の下はあかりが灯っている。やっとだ。

「みんな、慎重に行こう。」

弟たちは頷いてくれた。影からこっそり見ると、男たち3人が酒を飲んでいた。

「あいつ、なんて言ったっけ?えーっと…あっそうチヒロだ!かわいそーだよなあいつ!近々殺されるんだろ!俺が殺されるんなら自由にさせてもらいたいものだぜ。なのに拘束されてさー」

「アハハ!分かる!助けてとも言わないで、ただそれを受け入れているだけだよなー!笑」

まだ殺されていないことに安堵し、その男達に飛びかかった。3人なんて余裕だ。剣はカイン兄さんには負けるけれど、騎士団長よりも強い自信があるから。それにこっちは5人だ。相手は酒を飲んでいるし、行けないはずがない。

「誰だあんたら!」

「チヒロはどこだ!どこにいる!」

「お、おお追っ手か。こ、こにはいねぇよ。」

嘘だな。挙動不審すぎる。ここにいるんだな。

「ルイお願いできるか?」

「りょーかい!」

ルイは魔法で男達を縛りあげた。僕達は全員魔法も剣も得意だからね。魔法はレベル的にみんな同じくらいだけどね。

「左に部屋があるな」

ノアは察しがいいな。先を急ごう。次の部屋も確認しながら、進んで行った。まるで迷路みたいだな。
部屋は次の部屋に続いていて、通路の役目を果たしている。どこにもチヒロはいない。奥にいるのか?

しばらく進むと、小さく細い声が聞こえた。もっと奥だ、どんだけ続いてるの!?急いで行くと、護衛が2人部屋の前にいた。そいつらも弱かったのでルイが縛りあげた。お母様が出てこないのが不思議だ。いないのか?扉を開けると、そこには裸で縛られたチヒロが仰向けになっていた。

「チヒロ!」

そばには別の男が椅子に座っていた。なにかしていたのだろうか。チヒロの息が荒い。汚れてはいないが、アザが酷い。

「おっとぉ来ちゃったか。こっちもチヒロを取られたら怒られちゃうからね。本気で行くよ!出てこい!」

と、同時に10人以上の人が武装して出てきた。槍を構え出している。この部屋は他の部屋より断然広い。チヒロを傷つけずに戦えそうだ。問題は人数がこちらは圧倒的に不利だ。

ほぼ全員のてから光が出だし、魔法が飛んでくる合図となる。その手からは炎が上がった。さっきのやつらより相当強いのか、炎が僕たちを囲むように暴れ出す。とても剣では太刀打ちできそうにない。水魔法でどうにかするにも追いつかない。

「ノア!指揮を出せるか?……!!」

「無理だ、」

ノアの足からは大量の血が出ている。

「つ、よい!!」

剣に魔力を込め精一杯な力で振り下げるがビクともしない。もはや壁のようになった炎が徐々に狭まってきた。僕は後ろに倒れルイ達は一生懸命炎と戦っていた。はっきり見えた恐怖の文字に支配されそうになった時、

「皇子様!!」

騎士団長の声が聞こえた。後ろから大量の水が流れ、炎が消えていく。

「あとはお任せ下さい!」

そんな頼もしい声とともに相手が次々と倒れていく。少人数より多人数の方がいいということもあることを知った。

「早くチヒロ様をお願いします!」

そうだ。死ぬかもという恐怖で目的を忘れていた。
腰を上げ、タオルはいつの間にか遠くに飛んでいて、それを拾うと同時にチヒロの元へ駆け寄った。


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