7人目の皇子

5話

イエレルside

突然アドルフがそんなことをいうから少し体が固まってしまった。元々アドルフは、はっきり言う性格なため、気になったことをすぐに聞いてきたのだろう。ルイは不安な目で僕を見ていた。

「とりあえず、今日の夜の食事の時に詳細をお父様の前で話す。」

お父様、つまり皇帝の前でこの事件のことを話そうそうと言った。お父様は今のところ何も出来ていない。現代社会の問題に目を傾けていた。が、この噂が街に広がり始めたら皇室は頼られなくなってしまう。いつかは聞かれるのだからお父様やみんなが聞いている中で言った方がこれからどうしたらいいかの意見を貰える。そう思った。

食事の時間になった。案の定お父様に

「チヒロの件はどうなっている？」

と、聞かれたため、

「チヒロは客室で寝ています。」

と簡潔に答えた。すると、やはりアドルフが

「兄さん、昼の言っていたことを素直に話してくれ嘘はなしな？」
「チヒロは1度使用人達にいじめられていました。その現場をルイと一緒に見たため間違えありません。これまでの約15年もされてきたと見るべきだと思います。お母様にもいじめられていたのかもしれません。」

僕はこう答えた。ルイ以外はみんな戸惑っていた。僕達はもう少しで15歳を迎える。それはそうだ。自分達の知らないところで家族がいじめられていたかもしれないという事実を事後に知るのだから。お父様も知らなかったのか目を丸くし、しばらくして、目を閉じた。

「とりあえず、チヒロが起きて今までどんな状況で何をされてきたのか。そこをまず聞くことからだな。」

今の証言だけだと、実際にいじめられていたのかどうかなんて分からない。ただ躾のためにやられていたのかもしれない。今の状況からは何も動くことが出来ないため、チヒロが起きるのを待つことが最優先だ。

食事を終えたあとそれぞれ別室に戻って行ったが、僕はチヒロの様子を見に行こうとした。また、付きっきりでチヒロが起きるのを待とうと思った。

「なぁ兄さん。今日は寝なって。身体壊しちゃうよ。」

エリゼオ（第4皇子）が珍しく喋りかけてくれた。

「でもチヒロが心配だよ。」
「ダメだよ。今日は絶対寝ないと、優しすぎるんだから兄さんは。」

少し強引に客室とは反対の自室へ戻った。
だが翌朝目が覚めて、チヒロに会いに行っても
チヒロはまだ起きなかった。それどころか、動きも全くない。