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【第二部】3章
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しおりを挟む「あんたなんか生まれてこなければよかったのに!!!!」
膝を抱えて泣いている子がいる。
生まれてきてごめんなさいと、泣いている子が、いる。
「ん、、、、、朝、か。」
久しぶりに昔の夢を見た。おかあさんに否定され続け、生きることも人も怖くなっていたあの頃の夢を。
「ちー?起きたの?・・・まだ寝てていいよ。今日日曜だし。」
そう言って俺を抱き抱えてまた眠りにつき始めた空が、そんな俺を救ってくれた人。
「昔の夢見た。」
そう言うと、
---ガバッ
勢いよく起き上がり俺の体を抱きしめて
「苦しくない?大丈夫?大丈夫だよ、ちーのこと求めてる僕がここにいる。」
「今日は大丈夫。なんでか平気だから。」
「うん、でも、いい夢ではないでしょ?だからぎゅっとさせて?」
俺の旦那はこういう人だ。俺の根底にある弱い部分を俺より理解して癒してくれる。救ってくれる人。
「空は、なんであの時俺のこと気に入ってくれたの?」
「初めて会った時ってこと?」
「うん。」
「んー、なんでだろうね。僕は運命でもあるし、必然でもあったと思ってる。あの日、なんとなく、あそこに行かなきゃいけない気がして、ちーのこと見た瞬間にそれまで白黒だった世界が色づいたみたいに明るくなった。って、よくわかんないか。僕も明確な理由聞かれたらよくわかんないや。でも、一緒にいるうちにどんどん好きになっていったのだけははっきり言える。ちーは?いつ好きになったの?再開してから?」
「俺は、初めて出会ってからすぐに好きになってた。おかしいだろ?あんなに小さい子供のこと愛しくて仕方なく思ってたなんて。」
「おかしくない。嬉しいに決まってる。」
「それだけ小さい相手だからこそ、未来を潰しちゃうって思ったんだよ。距離さえあれば空は俺のことなんて忘れるって」
「逆効果だったけどね。」
確かにそうだな。でも、あの期間がなかったら俺は素直に空の愛を受け入れられなかったと思うから。だから俺たちにはあの期間も必要だった。そう思いたい。
「ほら、そらそろ朝ごはんにしよ。今日俺作るから。」
「いやいいよ、昨日無理させたから僕が作る。」
「じゃあ、一緒に作ろう?」
最近の土日はいつもこうだ。
金土の夜は空に美味しくいただかれるから腰が痛くはなるんだが、朝俺に気を遣った空と一緒にキッチンに立つ時間は楽しい。
「昨日買ってきたパン屋さんのパン食べよう。僕クロワッサンね。」
「わかってるって。それに合わせておかずとスープ作るか~」
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