【完結】優しくしないで

にゃーつ

文字の大きさ
上 下
186 / 199
【第二部】 2章

21

しおりを挟む


喉乾いちゃった。

深夜に目が覚めた。空を起こさないようにそっとベッドから出ると腕をパシっと掴まれた。

「どうしたの?」

「喉乾いただけ。大丈夫だよ。」

心配そうに俺の顔を覗き込む空は俺の行動一つ一つが不安でたまらないみたいだ。そりゃそうか、心的な部分では俺はそらに心配ばっかりかけてきてるしな。

自分としては不安要素ないように思えるけど、空から見たら怖いみたいだ。

キッチンに行き、自分のマグカップをとる。これまでは4人分並んで置いていたが今は2つしかない。子供達の使っていた食器は空がしまった。今はまだ思い出すには辛いからって。


「っ、、」

水を飲み、マグカップを洗い、寝室に戻ろうとした時にふと視界に入ったものから目を離せなかった。

ペットボトルの蓋とアルミ缶のプルタブ

これは、小学校で集めてたものだ。毎月10日に小学校に持って行ってクラス毎に数を競うんだって言って2人が喧嘩しないようにそれぞれ2袋ずつここに置いてたんだった。ゴミ箱の影のところに置いていたから気づかなかったんだ。

このたまったの、もう小学校に持ってけないんだよ?だって、持ってく人がいないじゃないか。

あぁ、全然平気じゃないじゃんか。平気に見せようとしてただけで、平気じゃない。苦しい。辛い。


「どんだけ泣いたっていい。だから、無理に笑うことだけはしないで。お願い。」

いつの間にきたのか空が座り込んだ俺の横に来て背中をさすってくれた。

どれくらい泣いただろうか。この家は子どもたちとの思い出が多すぎて、どんどん溢れてくる。

だって、子供たちと俺たち4人のためにデザインして建てた家だから。

「僕がずっとそばにいる。ちーもずっとそばにいて?僕たちだけは、絶対にお互いから離れないから。」

「ぅぅ、、、そら、そ、らぁ、、、」

「ほら、こっち向いて。」

涙でぐちゃぐちゃになった顔を向けるとその涙を拭き取るように目元から口にかけて空からのキスが降ってきた。

「ん、、、っ、」

「ちー、、、んっ、、ん、好きだよ。」

「そ、ら、、今日は、寝たくない、」

「ん、僕も。おいで。・・・捕まって」

空の首に腕を回すと軽々と抱き抱えられる。同じ男なのにこんなに軽々と抱えられると少し悔しい気もするけど、いつもそれ以上にキュンとしてしまう。

カッコ良すぎて、子供達のことで悲しい気持ちと空へのドキドキで心臓がおかしくなりそうだ。

空だけは、いなくならないで。

空だけは。俺のそばにいて。

俺も、ずっとそばにいるから。

「空がいなくなったら、俺すぐ死ぬ。」

「僕もちーがいなくなったらすぐに死ぬ。ちーのいない世界なんていらないからね。」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜

Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、…… 「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」 この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。 流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。 もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。 誤字脱字の指摘ありがとうございます

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話

かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。 「やっと見つけた。」 サクッと読める王道物語です。 (今のところBL未満) よければぜひ! 【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

処理中です...