146 / 199
【第二部】1章
4
しおりを挟む深夜2時ごろ、声が聞こえて暗闇の中目を開けると
「・・・冬夜?どうしたの?」
冬夜が1人で静かに泣いていた。
少し声を押し殺すようにして泣くのは、きっと泣いたらうるさいと怒られたんだろうな。
「っ、、ぅ、、と、や、こわ、かた。」
「・・・怖い夢見た?」
そう聞くと小さく頷いた。小さい手で大きな目から溢れる涙を必死に拭っている。泣いてるのがバレないように泣いていたんだろうな。
「よし、おいで。」
抱っこしてベッドから立ち上がる。
そうしていて空が起きないわけがない。
「どうしたの?」
「冬夜が怖い夢みたいだからちょっとあやしてくる。」
本当はわからない。どうしたらいいのか。でも、俺が小さい頃にしてもらいたいって思っていたことをしたらいいのかなって。そう思って冬夜を抱っこした。
この子達が泊まりに来る前までにたくさん勉強した。オムツの変え方も教えてもらった。おもちゃも買った。
でも子供が教科書通りなわけなくて、怖かったのに誰を起こすこともせずにただ1人で泣いていたこの子をとことん愛してやりたくなった。
「春夜には秘密な?」
俺は冬夜にホットミルクを作ってやった。
本当に飲んでいいのかと顔を伺ってくるから俺の分も作って一緒に飲もうと言うと少し笑って頷いた。
牛乳を飲んだ後ソファに座って抱っこしてやっていると眠くなってきたのかうとうとし始めた。
抱きしめながら背中をぽんぽんしてやると数分で眠りについた。
服を握って離さないこの手が、この子の寂しいと言う感情を表しているんだろう。本当はお母さんに抱きしめて欲しかったんだよな?
もしかしたらこの子達を引き取りたいのは俺のエゴなのかもしれない。
この子達を自分と重ねて、自分が叶えられなかった幼少期を叶えた気分になりたかっただけなのかもしれない。
大人の勝手な感情と事情で振り回されてきたこの子達を俺はもっと振り回すのか?
そう思うとぽろりと涙が溢れた。
どうするのがこの子達にとって幸せなのか分からないや。
「・ぃたぃいたぃ?」
「っ、、痛く、ないよ、大丈夫、、、」
「だいじょぶ?」
「うん。大丈夫。ごめんね。」
そう伝えるとヘヘッと笑ってまた眠りについた。べそべそしてちゃダメだよな。俺はこの子達の親になるって決めたじゃないか。
もう一度強く思い直して眠りについた。
泣いたのがバレていたのか朝一番に空から強い抱擁と深いキスがプレゼントされた。
朝ごはんを食べて、着替えさせて、今回のお泊まりは終了となった。
園まで送った時、それは起こった。
72
お気に入りに追加
1,588
あなたにおすすめの小説
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話
かし子
BL
養子として迎えられた家に弟が生まれた事により孤独になった僕。18歳を迎える誕生日の夜、絶望のまま外へ飛び出し、トラックに轢かれて死んだ...はずが、目が覚めると赤ん坊になっていた?
転生先には優しい母と優しい父。そして...
おや?何やらこちらを見つめる赤目の少年が、
え!?兄様!?あれ僕の兄様ですか!?
優しい!綺麗!仲良くなりたいです!!!!
▼▼▼▼
『アステル、おはよう。今日も可愛いな。』
ん?
仲良くなるはずが、それ以上な気が...。
...まあ兄様が嬉しそうだからいいか!
またBLとは名ばかりのほのぼの兄弟イチャラブ物語です。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる