【完結】優しくしないで

番外編【第一部】

モブ目線の空

この大学には圧倒的人気を誇る学生が1人いる。

高校在学中に司法試験に合格し、大学在学中に会計士の資格まで取ってしまったスーパーエリート。おまけにイケメン高身長。家もお金持ちらしい。

名前は武田空くん。

誰もが好きになってしまうようなそんな彼に近づく人はほとんどいない。

一年生の頃、彼を狙っていた女子学生が彼の恋人に暴力と暴言を振るい、数日後警察に捕まり、大学も退学。親もリストラされこの街から消えた。

彼の実家は日本最大の極道、武田組。
彼に手を出せばその大きすぎるバックが動く。だから誰も彼に近づかない。

私は彼のことをいつも見ている。好きなわけではない。私恋人いるし。なぜ見てるかと言うと、彼が恋人が大好きなのが伝わるから。

お弁当を開けるといつも写真を撮って愛しそうに微笑んでから食べる。
きっと彼の恋人が作ったものなんだろう。それに昼休みに電話しているのを何度か見かけたことがある。


「ちー？お弁当ありがとう。僕の好きなおかずにしてくれたんでしょ？昨日喧嘩したから？仲直りの印？ねぇ、ほんと、そんな可愛いことばっかしてると僕どうにかなりそうだよ。」


「ちー？お弁当ありがとうね。ん？今大学にいるから。大丈夫だよ。どこにも行かない。今日休みなんだっけ？授業あと一つだから終わったらすぐ電話する。家着くまで繋げとこ？そしたら安心するでしょ？」


空くんの恋人は束縛激しいのかな？とか思ったけど、空くん幸せそうだしな～と思っていたら


「ちー？お弁当ありがとう。・・・・ねぇ、今の何？千秋さんお昼一緒にいきましょうって、今の女だよね？何、会社の人だから気にすんなって？無理に決まってるでしょ。帰ったら詳しく話聞くから。僕以外のこと見たら許さないよ。」

空くんも相当なんだなって思い知らされた。

どんな相手なんだろう。
そう思っていたが最後にその恋人を見ることができた。

卒業式の日、空くんはその恋人と手を繋いで現れた。
2人で卒業式の看板の前で写真を撮って幸せそうにしていた。

空くんの家のことや3年前のことを詳しく知らない後輩たちは空くんに写真をお願いしていたが、すごい冷たい目で断っていた。

「ちー、卒業式の写真撮れたし人多いの嫌でしょ？帰りに甘いものでも食べて帰る？」

そう言って恋人の腰に手を回してデレデレになっている空くんに最後に声をかける。


「空くん、お互い卒業おめでとう。同性同士って大変なこともあるけど、お互い頑張ろうね。ねぇ、彼氏さん、空くんね、お昼休みに毎日お弁当の写真撮って幸せそうな顔してたよ！」

「っ！！」

「え、っちょ、お互い、、？」

「そう！私の恋人、女の子なの！だからなんか親近感湧いちゃって！素敵なカップルだね！」

そう言って私は恋人の元へ駆けていく。

後ろではその言葉が嬉しくて空くんの恋人が少し泣いてしまったことも知らずに。