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【第一部】 8章
13 空side
しおりを挟む千秋を布団に寝かせると僕の服をガッチリと握っていて離すのに一苦労だった。
「玄関にお前の荷物置いてあるぞ。タクシーのやつがインターホン鳴らして置いてってくれた。」
「あ、うん。ありがとう。」
「違う便に乗ってたのか?」
そう言われて、二本早い便に乗っていたこと。驚かせたくてちーに黙っていたこと。空港で携帯を盗まれたことを話した。
---バキッ
「千秋の精神面が普通とは違うことわかってんだろうが。2ヶ月離れてるだけでも負担かかってんのに、それ以上負担かけてどうすんだ!」
「・・・」
なにも言えない。その通りだ。
「確かに今回のことは予測なんてできねえだろうよ。飛行機に乗っていた間に起こっていたことだ。知らなかったんだろ。だけどな、朝ニュース見てからお前が帰ってくるまで千秋はギリギリだった。俺の言葉に見向きもしねぇし、1人でいたいって言うし、終いには生存者0のニュース見て死ぬ直前だったじゃねえか。お前にとって千秋が大切かもしれねえがな、俺にとってもあいつは息子同然なんだよ。頼むから、泣かせんな。あいつは、もう普通の奴らの何十倍も泣いてきたんだよ。これ以上泣かせないでくれ。
・・・・空、無事でよかった。」
父さんに初めて、抱きしめられた。
父さんが泣いてるのを初めて見た。
「・・・俺は、息子を2人も失くすとこだったんだからな。」
「・・・ごめん。」
父さんが帰ってからすぐに寝室に戻ると
「ちー?ごめんね。離れてごめん。」
千秋が床に座り込んで泣いていた。
「そ、ら、、、いる?いなくなんないで。お願い、、いなく、ならないで。」
そう言って震えた手で僕の服を掴んでくる。
「大丈夫だから。いなくならないから。だから、一緒に寝よ?」
首を横に振るちー。
「寝たら、いなくなってた、から、寝ない。」
「じゃあ布団に一緒に入ってるだけでもいいからさ、ね?」
そうしてちーをベッドに運んで僕もその横に寝転がる。ちーを抱きしめて背中をぽんぽんしてみるがちーは全く寝ようとしない。
僕の頭や頬や体を触って、ここにいるのかを確かめているかのようだった。
「ごめんね。ちー。僕、ちーの驚く顔が見たくて早めの飛行機に乗ったんだ。携帯をアメリカの空港で盗まれちゃって、連絡取れなくて。ごめんね。僕が乗る予定だった飛行機があんなことになって、怖かったよね。僕のこと追いかけようとしてくれてありがとう。僕もちーが死んだらすぐ追いかけるからね。」
「・・・そ、ら。どこにもいかないで。」
弱々しい声。不安でいっぱいな声。
僕の服を握って離さないちーの手はまだ震えていて、あの数時間のちーの恐怖はどれだけのものだったんだろう。
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