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【第一部】 8章
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しおりを挟むアナウンサーの一言一句聞き逃さないようにテレビにかじりつく。
『本日、日本時間の7:26ごろに墜落した463便に乗っていた乗員乗客合わせて478名全員の死亡が確認されたとのことです。懸命の救助活動が行われましたが生存者は0とのことです。現在、身元確認が進められております。・・・・・・
その後も何か言っていたけど、何も入ってこない。
生存者は0?
空が乗っていた飛行機が?
じゃあ空は?
空はどこにいるの?
寝室に向かう。寝室にしまってあるアルバム。ここには空の誕生日のときに現像した写真も他の写真もしまってある。
1枚1枚思い出があって、どの写真もその時のことを思い出せる。
空がまだ小さい時の写真。
初めて会った時はただただ怖かったのに、空に抱きしめられるとなぜかあったかくなって安心して、涙が出たんだよなぁ。
空、もう本当にいないの?
嘘でしょ?
俺のこと置いて行っちゃったの?
涙が一筋頬を伝った瞬間にギリギリで繋がっていた糸がプツンと切れた。
俺は空の横にいなきゃいけないから、空のところに行かなきゃ。
そう思ってキッチンに向かう。
お腹?胸?首?どこを刺せばすぐに、空のところに行けるの?
最後に指輪にキスをする。
「空、すぐ会いにいくから。」
包丁を振り下ろそうとした瞬間に、
---バンッ!!!!!
腕を振り落とされて包丁が床に転がった。
大好きな人の匂いがする。
大好きな人の匂いに抱きしめられている。
「・・・っ、、はぁ、、、よかった。間に合った、、、っはぁ、はぁ、、、、」
息を切らした空がそこにいた。
空の顔をぺたぺたと触る。
「触れる、、、」
「そりゃそうでしょ。本物だよ。幽霊じゃない。
どういうことかわからないけど、何が起きているのかわからないけど、
そんなのどうでもよくて
「っっぅぁぁぁぁあああああ、、っぁあ」
大声をあげて泣いてしまった。
「・・っ、ごめんね、ごめん。心配させた。ごめん。大丈夫だから。僕ここにいるから。」
止まることなんてなくて、何回背中をポンポンされても、ギュッて抱きしめられても、さっきまでのあの恐怖が無くなることなんてなくて、何分も何十分も泣き続けた。
その間ずっと空はごめんね。って謝ってた。空に謝らせたくなんてないし俺はもう大丈夫って言えたらよかったんだけど、そんな余裕なくて、空がここにいる安心感に止めたい涙は止まらなくて、体中の水分がなくなるんじゃないかってほどに泣き続けて、大声出して泣くことなんてあんまりないから声もどんどん枯れていくのに止まらなくて、そんな俺を空はずっと抱きしめ続けてくれていた。
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