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【第一部】 8章
6 空side
しおりを挟む「・・・ごめんなさい。」
「でも切らなかったんでしょ?怪我してないなら、、いいよ。寂しい思いさせてごめん。」
切りたくなるほどに心が追い詰められてしまったんだ。
それほどまで追い詰めたのは、僕だ。
「僕、寂しかった。ちーが隣にいないことが、声が聞けないことが。寂しかった。ものすごく。」
あの家にいれば声は聞こえなくてもちーの存在を感じることができたしちーの匂いもした。
ちーがいなくてもちーがいたんだ。
でもここにはちーはいなくて、そんな存在すらなくて心が押しつぶされそうになっていた。
「・・・俺も、寂しくて寂しくて仕方なかった。なんで空隣にいないのって何回も思った。会いたかった。」
「うん。うん。僕も、会いたかった。来てくれてありがとう。」
ちーが、いる。僕の腕の中にいる。
「今は?苦しくない?大丈夫?まだ切りたい、、?」
「空に会えたから平気。やっぱり俺空がいないとダメみたい。」
分かっていたのに。ちーが不安定になることは分かっていたのに、我慢をたくさんさせてしまった。この1ヶ月でたくさん苦しませてしまった。
「ごめんね。苦しい思いさせて。我慢させてごめん。」
「謝んなくていいよ。・・・でも、ここにいる間はできるだけそばにいて、欲しい。」
不安そうな顔でそう言う僕の愛しい人。
僕の返答が怖いのか目をぎゅっと閉じている。
「明日明後日休みだからアメリカ観光する?僕もまだしてないんだ。それで、夜は毎日一緒に寝よ?」
「・・・うん。」
今にも泣きそうじゃないか。
相当不安にさせてたんだな。僕は決めた。もう2度と出張とか行かない。
2人とも落ち着いたところで、聞きたいことがあった。
「あとさ、、部屋、、、見たよね?
片付いてるし、、その、、」
「写真?」
「うん。引いた?」
2ヶ月もちーと離れるだなんて考えられなくて、ちーからもらったカメラでこっそり撮っていたちーの寝顔とかの隠し撮りを持ってきていた。
それを、見られた。丁寧に全部重ねて机の上に置いてあるし。
「・・・俺も、空の写真、ほしい。」
斜め上すぎる返答。
「空ばっかりずるい、から。」
か、かわいい。拗ねてる感じ出してる。
かわいい。どうしよう。本当に僕の彼氏がかわいすぎる。
「ちー、かわいい」
「んなっ、!!なんでそうなるんだよ!!もう30過ぎた男にそんなこと言うなよ!!」
起こっててもかわいい。怒り方がほっぺ膨らませて怒ってんだよ?そんな30歳いないだろ。
「ちー、大好き。今日はギュッてして寝ようね。」
「だから、話が、、、、ま、いいや。着替えて寝よ。」
僕は1ヶ月ぶりに大好きな人を腕に抱いて寝た。正直それだけで泣きそうになった。
ちーは、泣いてた。
泣きながら、僕の存在を確かめるように頭を擦り付けて抱きしめて、満足するとスイッチが切れたかのように眠ってしまった。
ありがとう。
不安が大きくて、怖くて、寂しくて、会いたかったのは僕の方が強いかもね。
ちーの匂いを嗅いで、抱きしめて、髪を撫でて、寝ているちーにキスをして、そうしたって全く満たされてないんだから。
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