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【第一部】 7章
3 空side
しおりを挟む「空様。少しよろしいでしょうか。」
トイレから出ると玲さんに声をかけられた。
なんだ。敵意は感じない。
「!?!?!?え!!!っちょ!玲さん!やめてください!!」
いきなり僕の前で土下座をし始めた玲さん。なんなんだ。意味がわからない。どういうことだ。
「いえ!このまま聞いてください。私は、組長に恩があり一生組長にお仕えする所存です。その組長が、涙を流すほど後悔されていたあの事件は私にとっても後悔しかない。忘れたいほど辛い30年だったのです。もちろん、組長や姐さんは私以上に辛い日々を過ごされていました。私はこの30年、うちの組の管轄の場所は調べ上げておりました。坊ちゃんが見つかることだけを希望としてきました。ですのでどうか、どうか坊ちゃんをよろしくお願いします。私がこんなこと申し上げるだなんて失礼に値します。しかし、私にとって組長や姐さんと同じように、坊ちゃんも、本当に、大切な方なんです。今後、何か危険等ありましたら私に申し付けください。この命に代えても坊ちゃんをお守りいたします。」
床に涙を流しながら僕に頭を下げるこの人になんて言葉をかければいいんだろう。この人にとってこの組は本当に大切なものなんだ。だからこそ千秋を自分自身の手で守りたいっていう思いもあるんだろう。
「・・・必ず、幸せにすると誓います。玲さん、千秋の義理のお兄さんですもんね。これからも末永くよろしくお願いします。千秋、人見知りだから慣れるまで時間かかるかもしれないけど、玲さんのこと信用してると思いますよ。僕も玲さんのこと大好きになりました。だってこんなにも僕の大切な人を大切にしてくれている人ですもん。」
「空様、ありがとうございます。」
「玲。」
全く気づかなかった。お義父さんがいつからいたのかすぐ近くにいた。
「お前は本当によくしてくれているな。千秋のことも含めこれからも頼んだぞ。」
「は、はい!組長に一生ついていきます!!」
千秋、千秋にはこんなに素敵なお義兄さんもいるんだね。
「それと空様、千秋様もでしたが首に跡がついておりますよ。実家にやってくるのに大胆でびっくりいたしました。仲が良いのはよろしいことですが実家に出向く前はほどほどに。」
わ、見えるか見えないかギリギリのところにしたはずなのにバレてる。
僕も千秋も退院してから昨日までこれまでを埋めるように愛し合っていた。
それに、プロポーズしてくれたっていうスパイスも相まってそれはもう盛り上がった。
僕が修士生の仕事に復帰してしまったから昼間はなかなか時間が取れなくなった分、夜に大盛り上がりを見せている僕たちの生活。今日ここにくるから首とかは気をつけていたんだけど、まあバレるよな。
「すいません。千秋はバレてないって思っているので黙っててやってくださいね。」
そういうと2人とも頷いてくれた。
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