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【第一部】 7章
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しおりを挟む「お父さん、お母さん。話したいことがあるんだ。」
お母さんが作ってくれた料理を4人で食べている食卓に緊張でいっぱいの俺の声が響く。
組員さんと会うのも緊張したけど、それ以上に緊張する。
「どうしたんだい?なんでも話してくれ。」
「お、俺、空にプロポーズした、、んだ。その、空と、結婚したくて、さ。」
「・・・・・・・・・・。」
2人の顔を見るのが怖くて少し下を向いてしまう。
何も話さない2人。
付き合うの賛成とは言ったけど結婚ってなったら話は別だ。孫の顔は見せることができないし、男同士っていうのもある。
反対されるのかな。と思いながら顔を上げると、
「え、2人とも、、なんで泣いてんの。」
2人は静かに涙を流していた。
「っっ、自分の大切な息子が、っ結婚するんだ、、こんな、嬉しいことはない、、。」
お母さんは泣きすぎて声が出ないみたいだ。
お父さんはいつもは優しいけど威厳のある組長なのに、結構涙脆い。
でもこうして涙を流すのは俺のことばっかり。俺のことを本当に大切に思ってくれている。
「空くん。千秋のこと、よろしく、お願いします。僕たちの、本当に大切な、世界で一番大切な息子です。僕たちが自分たちの命より、大切な息子です。空くんのこと、信用しています。でもこれだけは言わせてほしい。お願いです。大切にしてやってください。笑って過ごさせてやってください。」
「私からも、っっぅ、、お願いします。何よりも大切な大切な息子を、幸せにしてやってください。」
こんな涙脆いお父さんとお母さんの子どもである俺ももちろん、涙脆い。
「お義父さん、お義母さん。お2人の大切な千秋さんを僕にください。誰よりも幸せにしてみせます。必ず。喧嘩する日もあるかもしれません、でも、必ず千秋が笑顔でいられる日常を僕は約束します。僕は千秋以外考えられません。千秋が僕の全てです。」
空だって、涙脆い。
「お父さん、お母さん。ありがとう。」
これが俺の家族。
「そっか。空くんが卒業してから結婚するのか。」
「うん。今はとりあえず、婚約って形なのかな?まあこれまでと特に変わらないけどね。空も働くようになったら2人で住む家建てようと思ってる。」
「そっか。武田さんが土地をくれたのか、、、、、なら僕から家をプレゼントしようかな。」
「え!?どういうこと、」
「武田さんがプレゼントしたんだから、僕からも何かあげたいじゃないか。」
「ふふっ、千秋、もらってあげたら?この人産まれる前に男の子か女の子かもわからないのに子供用のおもちゃとか服とかランドセルまでカタログ開いて買おうとしてたのよ。それぐらい千秋にお金使いたいのよ。」
「おい、美織、それは言うなよ、、」
「お父さん、俺、もらおっかなプレゼント。」
「あぁ!ど、どんな家がいいんだ?」
「まだ気が早いよ。」
「そ、そうだよな。ゆっくり決めていこう。僕から千秋へのプレゼントだ!」
「うん!ありがとう!」
「千秋、よかったね。本当に、ありがとうございます。お義父さん。」
どんどん変わる俺の環境。
あの頃はこんな幸せなこと想像すらつかなかったのに。
「ちー、僕ちょっとお手洗い行ってくるね。」
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