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【第一部】 6章
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しおりを挟む話を聞いて驚いた。
おかあさんと若姐さん、あ、もう違うけど、2人が俺が捨てられる前から知り合いだったなんて。
それに俺、売られる予定だったんだ。
だから育ててたんだ。
食べるために牛とか豚育ててる感覚だったのかな。
って言ってもおかあさんが連れ込んでた人たちが世話してたって言ってたけど。
お父さんがそんな風に言ってたって聞いて嬉しかった。まだまだちゃんと親子になりきれていないとは思うけど、お父さんとお母さんの息子なんだな、俺。
空は話聞き終わってからずっと黙ってる。
何か考え込んでいるみたいだけど、でもそっか、空にとってはたった1人のお母さんなのに今回のことあって、そりゃあ簡単に受け入れられないよね。
大丈夫だよ。俺ずっとそばにいるよってそう思って空に抱きつく。
すると、頭撫でてくれた。嬉しい。
嬉しいって思って撫でられていると、耳を塞がれた。
「~~~~~~」
「・・・~~~~」
「~~~~~~」
空と若が何か話してる。
俺には聞かせたくないことだったみたい。
空が聞かせたくないなら、聞かない。
空の手が耳から外されるとほとんど同時にお父さんとお母さんが病室に来た。
「千秋、これ空くんと食べなさい?甘いもの好きでしょう?」
そう言ってお母さんが机に置いてくれたのは
「・・・ばうくむーへん」
「「ばうくむーへん?」」
お父さんとお母さんは不思議そうに顔を傾ける。
「千秋、僕がちっちゃい頃間違えて教えちゃったのそのまま覚えちゃったの?これね、本当はバウムクーヘンって言うの。小さい頃はうまく発音できなくてばうくむーへんって言っちゃっただけ。」
そう言われて恥ずかしくなってしまった俺は布団の中に潜って空に顔を埋めた。
「千秋~出てきてちょうだい?昨日来れなかったからあなたの顔見たいわ。一緒に食べましょう?」
お母さんがそう言って手を差し出している。
だからお母さんの手を取って布団から出た。
お母さんも椅子に腰掛けてバウムクーヘンを食べる。
俺は空に食べさせてもらう。
久しぶりに食べたバウムクーヘンはあの日を思い出すような味がしてとてもおいしかった。
お母さんがいっぱい話しかけてくれる。
「千秋、今度泊まりに来たら何が食べたい??」
「・・・こないだの、肉じゃが、おいしかった」
「じゃあ和食いっぱい作りましょうね!!
あと、この間ねお父さんと買い物に行った時に千秋と空くんに似合いそうな服があったから買ったの!今度持ってくるわね!」
「2人がいつ泊まりに来てもいいように2人の着替え一式と部屋着にパジャマも買ってあるからね。いつでも泊まりに来なさい。」
俺と空、いつでも行っていいって。
「うん。行く。ありがとう。」
「ありがとうございます。千秋の実家だもんね。退院したら行こう。」
「じっ、、か?」
「うん。実家だよ。千秋のお父さんとお母さんがいるところだからね。」
「俺、実家、あるのか。そっか、うん。お母さん、お父さん、退院したら実家行くね。」
そう言うと2人とも優しく抱きしめてくれた。
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