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【第一部】 5章
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不安定になってた空。
昼からずっと様子がおかしかったから少しでも空の気持ちが楽になったならよかった。
さすがにお父さんとお母さんのいるこの家で同じ布団で眠ることはできなかったから、隣同士の布団から手だけ出して繋いで眠った。
朝起きて、空とリビングに向かうとお父さんとお母さんが待っていた。
「おはよう。よく眠れた?千秋も空君もご飯にしましょ!!!」
「おはよう。ほら、席につきなさい。」
「おはよう、ございます。」
空が席についたけど、俺はまだ動けない。
「ちー?どうしたの?」
「朝起きて、空以外とこうして朝ごはん食べることなんてなかったし、お父さんとお母さんから言ってもらえるおはようって、なんか、嬉しい。」
このぐらいの歳の人には何人にも会ったこともあるのに不思議だ。
俺にちゃんとした家族はいなかったのに、急に家族ができた。
「千秋、いつでも泊まりにおいで。そしたら、夜ご飯も朝ご飯も一緒に食べれるわ。」
「・・・うん。ありがとうございます、お母さん、お父さん。」
お母さんの作る卵焼きは、俺と同じ、少し甘い卵焼きだった。
「また機会があれば空君のお父さんやお母さんにも組としてではなく、千秋の父親として挨拶がしたいと思っているんだ。」
「父もそれは望んでると思います。母は訳あって今は家を離れてるんですが、父の側近達も千秋のこと心配していましたから。」
「千秋はいい出会いをしたんだね。」
「うん。俺、幸せだよ。お父さんとお母さんに会えてもっと幸せになれた。」
「そうか。・・・・・・千秋、空君、千秋のことを攫って行った女のことなんだが、そちらの若頭の蓮さんによると5年ほど前から行方がわからなくなっているらしい。」
ドキリとした。
「行方がわからない?」
「そうだ。私たちから千秋を攫ったあとは武田組の敷地内にいたから私たちは辿り着けなかったんだが、千秋が武田組に拾われてから蓮さんは監視していたらしいんだが、5年前に消えたらしい。また接触してくるかは分からないが、用心してくれ。私たちはもう、千秋を失いたくないんだ。もちろん、空君も十分注意するんだよ。」
おかあさんが、消えた。
なんで俺を攫ったんだろう。何であんな嘘ついてまで俺の母親のふりをしたんだろう。どうして攫ったのに殴ったんだろう。
会う勇気はないけど、少し、聞いてみたかったなって思ってしまった。
「千秋、はいこれ。」
帰り際にお母さんに手渡されたのはタッパーに詰められたたくさんのご飯だった。
「お母さんの得意料理とか、いろいろ作ったの。まだ千秋の好みわからないから、また感想教えてちょうだい?」
「うん。ありがとう、お母さん。嬉しい。」
---ギュッ
「本当に、生きててくれてありがとうね。お母さん、千秋のおかげで今幸せよ。」
「お母さんだけずるいな~僕も千秋を抱きしめたいのに。」
そう言ってお父さんも抱きしめてきた。
「空君と仲良くね。またいつでも2人で帰っておいで。」
そう言って別れを惜しむ2人と俺たちはまた必ず来ると約束したその場を去った。
昼からずっと様子がおかしかったから少しでも空の気持ちが楽になったならよかった。
さすがにお父さんとお母さんのいるこの家で同じ布団で眠ることはできなかったから、隣同士の布団から手だけ出して繋いで眠った。
朝起きて、空とリビングに向かうとお父さんとお母さんが待っていた。
「おはよう。よく眠れた?千秋も空君もご飯にしましょ!!!」
「おはよう。ほら、席につきなさい。」
「おはよう、ございます。」
空が席についたけど、俺はまだ動けない。
「ちー?どうしたの?」
「朝起きて、空以外とこうして朝ごはん食べることなんてなかったし、お父さんとお母さんから言ってもらえるおはようって、なんか、嬉しい。」
このぐらいの歳の人には何人にも会ったこともあるのに不思議だ。
俺にちゃんとした家族はいなかったのに、急に家族ができた。
「千秋、いつでも泊まりにおいで。そしたら、夜ご飯も朝ご飯も一緒に食べれるわ。」
「・・・うん。ありがとうございます、お母さん、お父さん。」
お母さんの作る卵焼きは、俺と同じ、少し甘い卵焼きだった。
「また機会があれば空君のお父さんやお母さんにも組としてではなく、千秋の父親として挨拶がしたいと思っているんだ。」
「父もそれは望んでると思います。母は訳あって今は家を離れてるんですが、父の側近達も千秋のこと心配していましたから。」
「千秋はいい出会いをしたんだね。」
「うん。俺、幸せだよ。お父さんとお母さんに会えてもっと幸せになれた。」
「そうか。・・・・・・千秋、空君、千秋のことを攫って行った女のことなんだが、そちらの若頭の蓮さんによると5年ほど前から行方がわからなくなっているらしい。」
ドキリとした。
「行方がわからない?」
「そうだ。私たちから千秋を攫ったあとは武田組の敷地内にいたから私たちは辿り着けなかったんだが、千秋が武田組に拾われてから蓮さんは監視していたらしいんだが、5年前に消えたらしい。また接触してくるかは分からないが、用心してくれ。私たちはもう、千秋を失いたくないんだ。もちろん、空君も十分注意するんだよ。」
おかあさんが、消えた。
なんで俺を攫ったんだろう。何であんな嘘ついてまで俺の母親のふりをしたんだろう。どうして攫ったのに殴ったんだろう。
会う勇気はないけど、少し、聞いてみたかったなって思ってしまった。
「千秋、はいこれ。」
帰り際にお母さんに手渡されたのはタッパーに詰められたたくさんのご飯だった。
「お母さんの得意料理とか、いろいろ作ったの。まだ千秋の好みわからないから、また感想教えてちょうだい?」
「うん。ありがとう、お母さん。嬉しい。」
---ギュッ
「本当に、生きててくれてありがとうね。お母さん、千秋のおかげで今幸せよ。」
「お母さんだけずるいな~僕も千秋を抱きしめたいのに。」
そう言ってお父さんも抱きしめてきた。
「空君と仲良くね。またいつでも2人で帰っておいで。」
そう言って別れを惜しむ2人と俺たちはまた必ず来ると約束したその場を去った。
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